「えー、皆集まっとるな。よろしい……まずこのクラスの担任になる納戸や。よろしゅうな」
エセ関西弁というか、糸目狐顔のいかにも裏切りそうな信用しづらい人物が俺達C組の担任らしい。
『うちのクラスが実質学年で学力トップのクラスやけど、クラス対抗戦は学力以外で戦うことが多いやもんね』
漏れてる漏れてる。
思考盗聴しているから先生の裏のことがダダ漏れであるけど……。
「じゃあ最初に……クラスの皆に配られたスマホについて説明を始めていくで」
納戸先生はスマホについて説明を始める。
学校側から配られた端末であり、現時刻までアプリがロックされていて開くことができなかったが、開くようになった。
納戸先生の説明を聞きながら開いてみると、1つ目のアプリはお財布アプリ。
そこにはDポイントが7万ポイント入っていた。
納戸先生によると、最初に入っているポイントは入学試験の点数(面接含む)と内申点を加算した点数分をポイントとして支給されているとのこと。
俺の場合、内申点が120点、試験点数が500点満点、これに面接が80点だったということだろう。
チビヒロに指示を出して、クラスメイトのポイント数を調べてもらうと、おおよそ6万4000前後がこのクラスの平均支給額だろう。
「この高専は卒業か退学するまで学校行事や校外の大会を除いて外出は許可されてないんや。Dポイントの入手方法は現金からの換金、学校行事に合わせての支給、校外の大会での成果による支給の3つが基本となるんやで。Dポイントは学校敷地内で使用可能なポイントや、基本学校の敷地内であれば何でも使うことができるで〜」
『成績も多少は買えるんよね。まぁテストの点数1点に付き10万ポイント支払ってもらうんやが……』
なるほど、テストの点数も買えるのか……資本主義を重点に置いている高専らしい。
続いて成績アプリと言うのを開くように指示される。
そこにはA+やAやB+、Bの表記が俺はズラッと並んでいた。
「学力、知力、運動能力、社交性を現段階だと中学校から送られてきた調査書と入試成績、運動能力は中学の体育の成績や大会に出ていた場合は大会成績を考慮して決められる」
学力A+
知力A
運動B+
社交性B
これが俺の学校側の現段階評価ってことか。
これは随時学校側が更新してくれるとのこと。
社交性とか計測しづらい項目だと思うけど、どうなのだろうか?
確かに体育では魔法の力で凄い成績が出ないように多少セーブしたのが響いたか?
『大翔君』
(ん、念話でどうした怜?)
『今データ出たけど、大翔君の能力どんな感じかなって』
(あぁ、俺はこんな感じ)
俺は怜に能力値を説明する。
怜は驚いた様子は無く、納得って感じだった。
『私はこんな感じ』
怜のデータを怜の電子精霊であるチビトキが俺のスマホに持ってきてくれた。
チビトキは怜を2頭身にし、デフォルメしたキャラクター。
うちのチビヒロとは恋人みたいな関係である。
(さて、怜のデータは)
学力A+
知力A
運動B
社交性B
運動が俺にはあった+が外れただけで、残りは一緒。
知力はこれ何なんだろう。
学力以外の知力だから、5教科以外の成績に当たるのだろうか?
「自身のデータの確認も終わったところで、授業の進め方について説明していくで〜」
まず中学では紙媒体が普通だったが、今はペーパーレスの時代。
授業は基本タブレットを使って行われる。
テストの時は流石に紙だが、それ以外はタブレットが基本で、教科書とかも電子書籍化していて、教材配布時にタブレットさえあれば授業が受けられる仕組みが整えられているし、黒板も電子黒板に変えられていて、黒板に映像が映し出されるようになっていた。
「で、授業なんやけど、うちの学校は個人の能力を高める教育が行われているって学校のパンフレットとかで読んだことがあるやろ? それに伴い、授業は上位グループ、中位グループ、下位グループで時間割が違うようになっとるんや」
中学以上の授業は専門性が出てくる。
それ故に各教科担当の教員がいることになるが、1学年1000人、25クラスが全部同じカリキュラムで動いたら教員が足りなくなる。
なので学力を個人単位にして、上位、中位、下位とグループを更に分ける。
定期テスト毎に入れ替えが起こり、上位グループ、中位グループ、下位グループでテスト毎に貰えるポイントの倍率が変わるようになっていたり、学食や学園内にある施設の割引や優遇措置が上位グループほど適用されるようになっているのだとか。
上位の生徒は今の地位を守るために、中位、下位は優遇処置を受けられるように努力を促す仕組みになっていた。
実家のバックアップがある生徒は下位グループでも不自由なく暮らせるが、そうでない生徒は死に物狂いで努力をする仕組み……正直現代社会の縮図にも見える。
というか金のある生徒は成績優秀な生徒を家庭教師にして成績を底上げすることができるってことだからな。
このC組は最初は上位グループとして授業を受けることができると説明されて、クラスメイトは安堵していた。
ある程度この学校についての説明が行われた後、入学式が行われ、入学式後は解散を納戸先生から指示されるのであった。
「とりあえず自己紹介をしない? 私は伊達春奈! 中学ではソフトボール部でした! よろしく!」
解散が指示されたけど、まだ全員クラスに残っていたので、クラスメイトの1人が自己紹介を始めた。
流石にこの場で拒絶するほど社交性が低い奴は居なかったので、全員が答えていく。
クラスの男女はちょうど20人ずつの40人。
運動部に所属していた人は少なく、最初に自己紹介をした伊達さんを含めても10人しか居ない。
「森久保大翔、最初に言っておくけど、八雲怜は俺の彼女な。同じ中学で昔から付き合ってる。この学校に来たのは将来起業する時に補助金が受け取れるからだ。起業する時に必要な人材を求めて入学したから、大学に進学する気は無い。よろしく頼む」
皆の目線が俺に突き刺さる。
興味、警戒、彼女がいることによる嫉妬……色々な感情が入り混じっている。
「彼女の八雲怜です! 趣味は料理をすることです! 中学では特に部活動はしていなかったけど、運動はそこそこ自信があります! よろしくね!」
怜も無難な自己紹介を行う。
影が薄い影浦さんは自己紹介をスルーされそうになるが、俺が助け舟を出して、影浦さんがいることを皆に伝える。
「あ、あの! 影浦李です! 自分……生まれつき影が薄くて気がついてもらえないことが多いんですけど! 高専では友達が沢山できるように頑張ります!」
そう言い切る。
すると1人の男子が声を挙げた。
「高専は友達作りの場所じゃねぇ。将来どうするかについて決める場所だ」
眼鏡をかけて、いかにもガリ勉って感じのやつ。
発言的に性格が歪んでいるな。
「ここの高専は実力主義。学力や実績があるやつが正義だ。友達なんか作っても意味ねぇだろ」
「そんなことないんじゃないかな?」
伊達さんが声を挙げていた男子……藤代に反発する。
「社交性を身につけるって社会に出てから学力よりも大切になる能力だと思うの。現に能力表でも社交性の項目があるし……それを疎かにすると痛い目に合うんじゃないかな?」
「そんなの圧倒的な実力で黙らせれば済む話だろ」
藤代は反論されて機嫌が悪くなるが、伊達さん的にもクラスが険悪になるのは見過ごせない感じ。
「社交性は必要だが、それぞれ信念があるんだからそれはそれで良いんじゃないか?」
俺が改めて発言すると、皆が俺のほうを見る。
「どっちの意見も俺は正しいと思うけど、ここで争う場ではない。まずは全員の自己紹介を終えて、名前と顔を覚えるのがスタートライン。藤代、自己紹介で茶々を入れるのは全員が終わってからにしてくれ」
「……悪かった」
「よろしい」
とりあえず場は収めた。
その後全員自己紹介を終えて本当に解散することになるのだった。