「あ、あの……」
「ん? どうした影浦さん」
「あ、やっぱり私のこと見えてるんですね……」
俺と怜が昼休みの時間に教室で弁当を食べていると、一緒に食べてもいいかと影浦さんに聞かれた。
勿論良いよと、俺と怜は影浦さんのスペースを空ける。
「友達と食事するの初めてで緊張してきました」
と、凄い興奮していたが、落ち着かせて、座らせる。
「両方同じ具材のお弁当……しかも森久保君のお弁当は大きいですね」
俺達の弁当の大きさに若干驚いていた。
まぁ俺と怜は体を大きくして魔力量を上げる訓練をしていたから、よく食べる。
怜も普通の男子並みの大きさのお弁当を食べているし、俺に至ってはお正月に出てくるような重箱タイプの弁当である。
今日は怜が張り切ってくれたのか、餃子にシュウマイ、アスパラガスにベーコンを巻いて焼いたもの、卵焼き、ピーマンの肉詰め、ハンバーグ、ナスの炒め物にほうれん草のお浸しと、気合いの入った弁当がここに。
怜曰く、これぐらいの量だったら30分で作れるっていうんだから凄い。
まぁ魔法の力を使っているとはいえね。
「影浦さん、怜が作ってくれた卵焼きいる? 絶品だよ」
「え、良いんですか? ……じゃあ私は肉団子をあげます」
友達とお弁当を食べている時の定番、おかずの交換ができて、影浦さんは嬉しくて涙を浮かべていた。
「私、友達とお弁当のおかず交換をするのが夢だったんです!」
とのこと。
ちょっとしたら落ち着いて、
「八雲さんが全部作ったんですか?」
って聞いてきた。
怜は頷きながら、これくらいだったら30分も掛からないで作れるよって言うと、料理上手なんですねって感心していた。
「今度影浦さん私の部屋来る? 料理教えようか?」
「い、良いんですか?」
「勿論」
女子同士で会話が弾む。
話題は切り替わってDポイントについての話。
俺と怜は7万ポイントが学校側から支払われたけど、影浦さんはどうなのか聞いてみると、6万4000ポイントが支払われたと答えた。
「結構支払いに差があるんですね」
「入試成績によって支払われる金額が左右されるって納戸先生言ってただろ?」
「それはそうですけど、同じクラスでも6000ポイントも差があると……」
食材系や生活必需品の物価は安く設定されているが、娯楽品に関しては相場と同じ値段で売られている。
ゲームや小説、お洒落用の香水や化粧品何かを購入していけばあっという間にポイントは尽きてしまう。
それに無料で商品が売られているって訳でもないので、ポイントが無くなれば、この学校で生活するのはだいぶ辛くなる。
同級生同士や先輩から借金するって手もあるが、普通に利子がつくのでどのみち序盤で散財すると痛い目をみるらしい。
「学校の情報に関してですけど、学校の生徒だけが書き込める匿名掲示板があるので、そこら辺で色々な情報を収集することができます。結構バイトの募集とかクラブ活動、部活動の募集情報とかが書き込まれているので……参考にしてます」
「なるほどねー」
掲示板で募集するようなバイトはよほど人手が足りてないか、条件が微妙なバイトだろう。
先輩達が行なっている実験の手伝いとか、情報交換の掲示板も賑わっているらしいが、うちには電子精霊のチビ達がいるので、情報は直ぐに収集できるため、多分使わないだろうが、普通の生徒は掲示板とかを使って情報を集めていることを知れたのは大きい。
学校側が支給したスマホかタブレットからしか掲示板の閲覧、書き込みができないってことは、先生方も検閲していたりするのだろうな。
「掲示板の書き込みによると、テストの無い月や長期休みには特別試験が行われるらしいですよ」
「俺も情報集めているけど、優秀な成績を残すと、結構なポイントが支給されるんだろ」
「そうなんですよ。先輩の中には特別試験で毎回優秀な成績を残してポイント富豪になった人もいるのだとか」
ポイント富豪ねぇ。
中間、期末で行われる教科別テストの成績だと成績優秀者は結構なポイントが支払われるとチビヒロに調べてもらっているので分かっている。
保健体育みたいな副教科を除いた英国数理社……数Ⅰや数Aとかの各教科の全部の問題が入って、5教科各200点満点のテストに1年はなっているのだとか。
1点100ポイントでテスト自体ではマックス10万ポイント、ここから更に各教科の順位が50位以内だとボーナスが支給され、各教科及び、総合学年1位の生徒は5万ポイントが支給されるのだとか。
理論上、全教科満点かつボーナス込みだと5教科と総合の6つで30万ポイントのボーナス。
これに基礎の10万ポイントで40万ポイントが入ってくることになる。
そんだけ入ってきたらバイトしなくても悠々自適に生活できるもんなぁ……。
俺と怜は真面目にこれを狙っているけど。
「夢がありますよね〜」
「そうだな」
ただポイントは特別試験を有利にするために使えたりもするし、前年度の特別試験だったら先輩と1年生がペアを組んでそれぞれテストを受けて、合計点数で勝負する特別試験だったらしいが、その交渉材料としてポイントを先輩に支払ったり、先輩が優秀な後輩に支払ったり……中には自身を競売に掛けたりした人もいたのだとか。
極端な例だけど、ポイントがあればあるほど、学校生活は楽になるようにできている。
親からの仕送りで資金力がある生徒が有利になるようになっている。
それを能力を使って覆していくのもこの学校が求めている人材……ということなのだろう。
何ならバイトや学校外の大会の成績でもポイントは支払われるから、何かしら武器がある人は学校で活躍することができる設計になっている。
「面白い」
「面白いですか?」
俺が面白いと口に出してしまったが、怜もニヤニヤしていた。
俺に負けるつもりはないのだろう。
「そう言えば影浦さんはバイトとかするの?」
「考え中なんですよね……私の場合勉強をしないとこの学校の授業についていけない可能性もあるんで、バイトしている暇があるかどうか……」
「俺は早朝の風呂掃除のバイトを受けるけど、早起きできるんだったら受けてみれば?」
「風呂掃除のバイト……ああ、大浴場のですね。ちょっとバイト探ししてみようと思います」
「影浦さんだと接客よりも裏方の仕事とか合ってるかもしれないけど」
「確かにそうですね……裏方ですか……」
「影浦さんは何が得意なの?」
「得意……数学が得意ですね」
「だったら簿記について教えようか?」
「簿記ですか?」
「そう、簿記」
簿記について知っていれば財務関係の仕事ができるようになるし、多分この学校のことだから簿記に関わる仕事とかもあるだろう。
チビヒロに調べさせて影浦さんを紹介しても良いし。
実際に後で調べてみると、生徒会の会計補助で簿記の知識ある人がずっと募集がかけられていたし、給料も学校が休みになる土曜日半日勤務で月5万5000ポイントから7万ポイントってなっていたので、給料的にも美味しいバイトだと思えた。
「簿記ってどれぐらいで覚えられますか?」
「放課後に毎日2時間勉強すれば2ヶ月で簿記3級は合格できるレベルの知識は付けられるし、簿記2級も半年勉強すれば取れるレベルにはなると思うよ」
学校側でも年3回簿記の資格試験が行われているし、生徒会会計補助はバイトするための試験に受かれば簿記の資格を持ってなくてもできるので、簿記の資格は将来就職の役に立つ為の試験となっていた。
「お言葉に甘えて、放課後に簿記について教えてもらっていいですか?」
「良いよー俺の部屋おいでよ。怜も俺の部屋に来るし、夕食も一緒に食べようぜ」
「は、はい!」
徐々に俺は影浦さんの囲い込みを行っていくのだった。