中学入学から3週間。
「やっとできた……」
ペットボトルの中に水を湧かせて味や色を変える魔法を教えてもらってから2週間目で、ようやく、ペットボトルの中身をオレンジジュース風味にすることに成功した。
味は果汁100%のオレンジジュースと変わらないが、成分は殆どが水。
オレンジジュースに味が付いているように魔力が錯覚させている状態とお父さんは言う。
「でもやろうと思えば、魔力によって本当のオレンジジュースを生み出すこともできる。これを魔力から物質への置換と呼ばれる現象だ」
俺だけでなく、和人と恵の2人もペットボトルの中に水を湧かせて、好きなジュースの味にすることに成功する。
魔法への適性があっても、水を生み出すというイメージができなくて前に進めない……という人は多いらしいが、俺達は無事に第一関門は突破することができたらしい。
「食事の時に飲む水はこれから自身が生み出した水にしなさい。あとできればお風呂のお湯も。飲む、浸かることで、体に魔力の流れをより感じやすくさせれば、魔法の出力も自然と上がってくるからな」
「「「はい!」」」
「じゃぁ次は魔法についての勉強だ。イメージが大切と言ったが、初歩的な魔法を覚えることで、形が決まってくるからな」
お父さんはノートにメモしていく。
そこには属性と書かれていた。
「魔法はイメージだけど、明確に強い、弱いの差が存在する」
お父さんはノートを俺達が見えるようにテーブルに置くと、指を指しながら説明していく。
一番わかりやすいのは火と水の関係。
火は水をかけられれば消えてしまうので水に弱い。
他にも電気は水に通電するから強かったり、水と石は、石は水を弾くので強いという感じにある程度の相性があるとのこと。
「と、異世界では考えられているんだが、それすらもイメージの世界……じゃぁ、属性に関わらず一定の攻撃力を与えるこの世界ならではの魔法があってもいいんじゃないか……とお父さんは研究していてね」
お父さんはそう言うと、手の中に光の玉を出してきた。
「お父さんこれは?」
「魔力をそのまま物質化した物……俺はマナと呼んでいる」
現在ある物質を作るのでは無く、この世界には無い物質を作り出すことも魔法では可能。
お父さんは漫画ではダーク・マターとか未確認物質とか言われているのだと説明する。
「これには既存の相性が存在しない。これを使って鎧を作れば物理攻撃が効かない擬似的な無敵状態になることもできる」
「す、凄い!」
俺は思わずそう口にするが、お父さんはこれには明確な弱点があるとも言われた。
まず燃費が悪い。
魔力を常に別物質に変換している状態を維持しないと離散してしまうので、ただ攻撃を防ぎたいなら鉄の鎧とかを魔法で生み出したほうが、燃費はよい。
次に万能属性とも言えるだけに、使い方を誤れば容易に人を殺し得る技術であるということ言われた。
「このマナを操れるようになることが中期的な目標だ。ただ今は、水を生み出すことから始めて、火を灯す、石を生み出す、電気を生み出すといったことに慣れてもらいたい。電気は自転車漕いで体に流れる感覚から始めてイメージを拡張していけば良い。雷の様な大出力は当面出せないだろうからな」
火はマッチやライターで火を灯して眺めることで、指先から火を灯すイメージを、石は泥団子を作ってみて、それを石の様に固くしていくところから始めれば良いとお父さんは言う。
「案外最初は地味だけど練習していけば上手くなっていくからな! 頑張ろう!」
魔法はイメージが大切とお父さんはよく言うが、魔法の練習になるんだったらこんなことができるんじゃないかと、粘土を使って人形を作ってみた。
「うーん……ちょっと作ってみたけど、これじゃあ不格好だよな」
粘土を造形して人形を作ってみたはいいものの、初めて作ったので、不格好で人形としては駄作も良いところ。
ただこれを別の物質に置き換える練習には役立った。
石にしてみたり、プラスチックみたいな感じにしてみたり……。
それも上手くできているとは思わないけど、形を作るイメージは粘土で色々作って勉強してみるのが良さそう。
最初から人型の人形でやるから上手くいかないのであって、もっと簡単な物から真似を始めてみることにした。
「大翔、人形でイメージを作っているのか?」
「あ、お父さん。いや、お父さんがマナっていう物質を使って色々できるって話をしていたから、魔法で既存の形にセットしておいてってことができないかなって思って」
まだ初歩段階で物質化のイメージが掴めなかったから、粘土人形を石化させてみたりしたが、やるべきは銃とかの複製。
一瞬で銃を作って魔弾とかを発射できればかっこいい……と思ったのであるが……。
「うん、良いイメージだ。そのためには銃についての知識が必要になってくるな。それも課題としよう」
「うん!」
お父さんはイメージしやすいからとしてエアーガンをプレゼントとして買い与えてくれた。
普通のバネ式で人に当たっても軽く痛みを感じる程度の威力。
まずはBB弾を魔法の力で作るところから始めてみるのだった。
「むむむ」
魔法の練習で、身体強化の初歩の練習方法をお父さんから教わった。
それは指先……具体的には爪に魔力を集めて、伸びるのを促すことだとか。
身体強化にも段階があって、力を倍化させるにも基礎筋力があった方が何かと有利。
そこで、自己治癒の魔法を覚えるのだとか。
自己治癒の魔法を覚えることで筋肉を鍛える際に超回復を常に起こして、筋力を高めるトレーニングが解禁できる。
そのための第一歩で治癒魔法を覚えなければならず、治癒の一瞬として髪の毛を伸ばす魔法もしくは爪を伸ばす魔法を覚えるのが良いらしい。
どちらでも良いが、お父さんが魔法が指先に集まっていることが直ぐに分かるシャーペンを作ってくれたので、俺達兄弟は勉強を解きながら魔法の練習を続けていた。
身体強化の魔法体系を伸ばしていけば、記憶力の強化とか、勉強が有利になる魔法も覚えることができるから、お父さんも優先的に俺達に覚えさせたいらしい。
それを踏まえて、自転車でモーター動かして電流を体に流し、電気が流れる感覚で体の感じをつかめればっていうので、お父さんなりに考えてのトレーニングが仕組まれていた。
リビングで勉強しながら、俺は弟の和人と妹の恵に声をかける。
「そう言えば2人は勉強ってできる方なのか? あんまり聞かないけど」
「えっと……」
「その……」
2人はおずおずと100点満点の国語と算数のテストを見せてきた。
和人国語85点、算数78点。
恵国語65点、算数80点。
「んん~ヤバくないか?」
俺は小学校のテストは平均95点でほぼ100点か間違えても90点以上は取っていた。
中学の先生に聞いたけど、小学校のテストは基本100点が取れるように作られているが、中学のテストは難易度が跳ね上がる。
小学校の気分でテストに挑むとひどい目にあうぞと忠告されていた。
「何処が苦手なんだ? 教えるから言ってみろ」
「ごめん兄さん」
「大兄、国語の読解問題ってどうやって点数取ればいいの?」
読解……作者の気持ちを考えろという問題だが、読むのに時間がかかるのなら速読力を鍛える。
要点が見つけられないなら適当に読んだ本や物語を要約や感想を書いて面白い部分、伝えたい部分を言語化する。
あとは接続語で結構大切なところを示されていたりするから、そこに注目する……とかか?
「これも魔法で見つけられるようにならないかな?」
「イメージが大切って言っていたし、苦手な部分を魔法で補うって発想はいいかもしれないな……」
算数や数学とかだったら、魔法で頭の中に電卓を作り出すとか……英語だったら見ただけで自動翻訳される……とか。
「日常生活や学校生活を便利にする魔法を作るのも魔法の練習になるのか……」
そんなことを俺は考え始めるのだった。