「森久保、直ぐに家に帰ってるけど、何かやってるのか?」
ある日、クラスの男子から質問された。
特に他意はないのだろうが、部活動に入らないで、速攻家に帰っている俺に疑問を持ったんだろう。
流石に魔法の訓練をしているとは言えないからなぁ……。
「うーんと……親父の手伝い」
「親父さんの? 森久保の親父さんって何してる人なの?」
横で聞いていた八雲さんも話に入ってきた。
「大学の教授してる。俺はその実験の臨床をやらされているというか……」
「臨床? なんか難しいこと言うな。まぁ親の手伝いさせられているんなら納得だわ。そりゃしゃーないわ」
男子は納得してくれたみたいだが、八雲さんは大学の教授ってことに興味を持ったらしい。
「親父さんが教授ってことは森久保君って頭良かったりするの?」
「いやぁ……普通だよ、普通。親が頭良くても、子供は普通ってことはよくあるだろうし……両親も勉強に関してはとやかく言ってこないし」
「そうなんだね〜」
興味を失ったのか、その後八雲さんとは俺も購入して読み込んだラノベの話の方で盛り上がるのだった。
あっという間にゴールデンウィークが始まり、俺と和人、恵の3人は相変わらず魔法のトレーニングを続けていた。
ただ、ゴールデンウィークも中盤のある日に、恵がお父さんにこんな質問をしていた。
「魔法で分身を作って、経験をフィードバックするってことはできないのかか」
「うん、忍者が出てくる漫画でそんなことをやっていたから。もしくは本体は分身に意識を乗り移らせて、戦闘訓練を行うことで、怪我を気にしないで実戦形式の訓練ができたりしないかなって……」
「なるほど……いい着想だ」
どちらも漫画やアニメで似たようなのがあったのだろう。
お父さんは頬に手を当てながら考え込み、
「うん、ちょっと待っていてくれ……作ってみるから」
お父さんはそう言うと、裏山で何かを作り始めるのだった。
ゴールデンウィーク最終日に、お父さんは恵が言ったことについて検証してくれたらしく、教えてくれた。
まず分身で経験を積む方法……これは魔力量が多くなればできるが、魔法の訓練には向かないと言われてしまった。
分身を魔法で作り出しても、魔力によって作られているだけだから貯蔵する魔力が尽きれば分身は動かなくなる。
物質化を限定して、魔力が尽きれば消滅するという設定にしても、作り出せる分身は良くて5体。
本体の魔力量も5分の1に減少するから注意が必要。
経験のフィードバックは魔法の設定次第では可能で、勉強したり、ゲームをやったりした経験を本体も同様に知識として覚えるのは可能だと言われた。
「魔力の変換効率が優れているハイエルフの恵達で5体だから、魔法の才能がある普通の人だと2体くらいが限度かな〜」
と、お父さんは言う。
ただ逆に分身に意識を乗り移らせて、戦闘訓練を行わせるというのは面白い発想だと言われた。
「依り代に憑依する形で戦闘訓練を行うことで、身体へのダメージを無くしながら、魔法による攻撃を行う……勿論それだと身体能力を鍛えることは出来ないけど、戦闘訓練としては理想的かもしれないね」
お父さんはササッと人の動きができる人型のゴーレムを作りだすと、手を当てて、ゴーレムの方に意識のコピーを移す。
そのまま、お父さんとゴーレムで組手を始めるが、身体強化の魔法を使っているので、超人的な跳躍からのライダーキックで地面が陥没したり、手刀で木が大きく削れて倒れたりと、魔法を使いこなせれば、戦隊ヒーローみたいな動きが自然とできるんだって、俺は改めて感動していた。
俺達兄弟は目を輝かせながらお父さんとゴーレムの戦闘を見届け、ゴーレムはボロボロになって消滅し、お父さんは無傷でそこに立っていた。
「うん、これはこれでなかなか……でもこれを覚えるにはやっぱり、身体強化を使いこなせるようにならないとな」
お父さんはそう締めくくり、俺達兄弟はお父さんの凄さについて再認識するのだった。
ゴールデンウィークが終われば、中学生の俺は中間試験が待っている。
小学校とは違い、中学の中間と期末試験は高校受験に関わってくる内申点というのが大きくなる。
で、俺はと言うと……。
国語85点、数学80点、英語90点、社会70点、理科72点。
合計397点。
基準が分からないので、お母さんにこの点数を見せると、
「うーん、悪くはないけど良くもないわね」
「あーやっぱり……」
学年順位は27位。
お母さん的には最初のテストは420点は取って欲しかったと言われてしまった。
和人と恵は俺の点数を知って戦々恐々。
「兄さんより勉強できない俺と恵だと中学行ったら勉強ヤバいって……」
「落ちこぼれたらどうしよう!」
「大丈夫、まだ2人は中学まで1年あるんだから。予習、復習すればなんとかなるって」
「なるかな?」
「なれるさ」
俺達には魔法という頼もしい存在もある!
そんな感じで中間試験も終わったわけであるが、八雲さんがちょっと絶望していた。
「ヤバい……テストの点数悪くてお小遣い削られた……」
「そんなに悪かったの?」
「350点だった……親から1学期の中間試験でこれはヤバいって言われちゃった……もしかしたら塾に入れさせられるかも」
「そりゃまずいな……でも俺にできること無いし……」
「あぁ……ラノベの新刊が買えないよぉ……」
テストの点よりお小遣い減らされて新刊が買えない方が深刻そう。
「もしよかったら欲しい本買ってこようか? 回し読みしない?」
「え……森久保君、良いの?」
「その代わりに面白いラノベのタイトルを教えてよ。それ買ってくるから……俺もお小遣い多いわけじゃないから月に5冊くらいが限度だけど」
「全然! とってもありがたいです!」
パァァっと顔が明るくなり、八雲さんは大喜び。
まぁ互いに勉強頑張ろうと言い合うのも忘れないのだった。