「うーん」
お父さんに聞いたところ、魔法使いの才能がある人が戦力としてカウントできるまで異世界だと3年から5年かかると言っていた。
これは異世界にある学校みたいな組織が子供を教育しているらしいが、お父さんはこの世界に来てから、現代にある道具や技術を使うことで1年ちょいに圧縮することができないか……と言うのを息子や娘である俺達で試している。
異世界からするとこの世界の技術は恵まれているとお父さんは断言していた。
魔法のイメージをしやすい物が映像(アニメ)としてあったり、格闘技や武術を習うことができる環境も多い。
銃については民間に開放されていない日本は少し不便とも言っていたが、食糧不足に怯えることもなく、平和に暮らせるこの世界は得難いと……。
お父さんは異世界人だが、この世界を愛している。
愛している故にこの世界を守るための人材育成が必要。
「うーん」
人材育成……中学生の俺が考えるのもあれだけど、俺達が育ったら、俺達以外にも魔法が使える人を増やす必要がある。
ただ闇雲に増やすわけにもいかないし、組織化するなら給料とかも発生する。
お金も必要になってくる訳だ。
「明確に異世界からの侵略が起こらない限り魔法を表に出すことは出来ないけど、準備は必要。準備の為には金や人員が必要……あれ? 詰んでね?」
中学生の俺の発想でここに至るってことは、お父さんもわかっていそうだし……。
というか俺達が育つまでの12年間は、魔法教育の効率化についての研究とこの世界で魔法が使える人材の発見方法とかの基礎固めや理論化で10年かかったって言っていたし……。
「魔法使いの才能がある人だけでも見分けられるようになればなぁ……そのためには身体強化の魔法や魔力を感知する魔法を覚える必要があるし……足りないことが多すぎる」
まぁお父さん曰く、あと10年は異世界からの侵略が発生することもないだろうとのことだったので、俺は訓練に集中することができるが……。
そう考えると、異世界転移に成功したお父さんって異世界での立場は一体……。
「二へへ」
「上機嫌だね八雲さん」
「うん! 読みたい本が読めるからね。そりゃ楽しいよ」
中間テスト以来、俺と八雲さんは本の回し読みを続けていた。
八雲さんには自身が持っている過去の文庫本を持ってきてもらう代わりに、俺はお小遣いで買ったライトノベルを持ってきて、交換して読み合う。
そして感想を言い合うのをやっていた。
これ結構女子とやれるって青春ができているんじゃないだろうか?
「森久保君は将来成りたいこととかあるの?」
「成りたいことか……」
魔法使いで自警団じみた組織作りたいって和人と約束しているけど……それは言えないからなぁ……。
「誰かを守れるような人に成りたいかな?」
「なにそれ……面白いこと言うね森久保君」
「変かな?」
「いや、変じゃないけど、そこは将来成りたい職業とかを言う場面だよ」
それは確かにそうなんだけどさ……。
言えないからなぁ。
どうしたものか。
「逆に八雲さんは何に成りたいとかあるの?」
「私はそうね……物書きになれれば良いなって。作家になれれば最高だけど、難しいからね」
「そうなんだ……じゃあ八雲さんも何か書いてみれば?」
「書いてみる?」
「ネットとかで自分が書いた作品を投稿することができるんじゃないの? それをやってみれば?」
「うーん、うん! そうだね! やってみることにするよ!」
そんな会話を八雲さんとするのだった。
6月半ば……体に魔力が循環していると言うか、全身に力が湧き出てくる様な感覚を掴むことができた。
「お父さんこれって……」
全身から魔力が漏れ出ている様に、蒸気の様な白いモヤが溢れ出している様に見えた。
「うん、身体強化の魔法に目覚めたね」
「よし!」
お父さんから身体強化に目覚めたと言われて、飛び上がるように喜んだ。
「大兄おめでとう!」
「ありがとう! でもあれだ、全身に魔力が巡る感覚がふと目覚めるんだな」
「いきなり感じるようになるの?」
和人が質問してくるが、俺はそうだと答える。
ただこれは自転車でトレーニングしていたのもあるけど、スマホで魔法のアプリを起動させる全身に衝撃を与え、毛細血管が広がって血流が速くなるような感覚があったから、今日の身体強化の魔法のきっかけに繋がることができた。
「ただ、その状態だと魔力がダダ漏れで効率が悪い。漏れ出ている魔力で全身に膜を作る感じで、魔力を抑制するんだ」
俺はお父さんに言われた通りに試してみる。
できているかどうかは手に膜ができるので、水を垂らすとステンレスフライパンみたいに弾くらしい。
洗面台のある場所に移動して、全身から湧き出ている魔力を膜を作るイメージで塞いでいく。
「漫画とかでもあったな……あれは何だっけ……オーラを体に留めるだっけ?」
漏れ出ている魔力を汗に見立てて、皮膚にある汗腺を閉じる様に、魔力が漏れ出ている体の穴を意識して閉じていく。
すると徐々に魔力の放出量が安定してきて、白いモヤは消えていった。
洗面台に溜めた水に手を突っ込んで確認してみると、水は皮膚と魔力の膜にある間をツルツル滑って綺麗に丸い水滴になっている。
「大翔おめでとう。それが身体強化だ。あとは魔力の流れを体内でどう変換するかだ。自己治癒能力を上げたい、代謝を良くしたい、脳を活性化させたい、身体の成長を促したい」
身体強化ができれば、力を強くする他に、色々なことができるとお父さんは言う。
「ここからが始まりだぞ、大翔」
「はい! お父さん!」
やれることが増えたことに対する喜びを俺は爆発させるのだった。
ちなみに俺が身体強化を覚えた数日後に和人と恵も俺がアドバイスを送ったらできるようになるのだった。