身体強化ができるようになったからといって、直ぐに劇的に何か変わるかというと変わらない。
そもそも魔力を体内に蓄えられる量が少なくて、身体強化を行なっても30分程度でガス欠になってしまう。
なので、30分の身体強化ができるならと、お父さんは睡眠の質を上げるのに使いなさいって言われた。
「記憶を整理したり、身体の成長に睡眠が大切。だから睡眠の導入に使うことで、強制的に深い眠りに入れるようにする。魔力が切れても、深い眠りに入っていれば目が覚めることも少ないからな。慣れないうちはお父さんが作った睡眠薬を使うと良い」
普通の睡眠薬とは違って、体内の魔力と反応する薬で、深い眠りに入る魔法を慣れないうちには自動で発動してくれるらしい。
「何回か身体強化の状態でこの薬を使えば、深い眠りに入る魔法は自然と体が覚えることができるだろう」
というわけで、俺達3人は身体強化の魔法が使える様になったので、お父さんから貰った睡眠薬……いや、睡眠導入剤の錠剤の入った小瓶をそれぞれ受け取った。
「お父さんって魔法の薬とかも作れるんだよね? それって俺達でも作れるようになるの?」
「あぁ、ただ作るのにも魔力が必要になるからな。結局は魔力をどれだけ体内で蓄えられるかだ。身体強化で体が大きく育つ下地は準備できた。あとは魔法を使いまくって体を魔力に慣れさせる。それで魔力を蓄えられる量は増えていくからな」
まだ魔法の道具を作るとかには至らないか。
でもそのうち魔法の道具を作ることができるということは、俺がお父さんからプレゼントされたエアーガンを本当の銃の様に扱うことも将来的には可能になるのか?
(ちょっと楽しみ)
新しい習慣に寝る前に身体強化を発動して、お父さんが作ってくれた睡眠導入剤を飲む様になるのだった。
「全然違う」
たかが30分、されど30分。
朝の目覚めが全然違うし、起きた時に俺は若干低血圧で朝起きるのに苦労していたのだが、深い眠りに入る魔法を使ったお陰か、朝から絶好調。
とにかく頭も冴え渡っている。
時計を見るとまだ朝の5時。
いつも8時に登校しているので、家を出るのは7時10分。
いつも起きるのが6時40分くらい。
いつもより1時間40分も起きるのが早い。
「兄さんも起きた?」
「和人も起きたか。目覚めヤバくないか?」
「めっちゃスッキリしてる。気持ちいいねこんなに目覚めバッチリだと……お母さん起きてるかな?」
「見てみるか」
俺と和人はリビングに移動すると、お母さんは朝食の準備をしてくれていた。
「あら2人とも今日は起きるの早いわね」
「お父さんに深く眠るトレーニングをするようにって言われて、深く眠る魔法を練習しているんだ。もしかしてお母さんが毎朝早く起きられるのも?」
「うーん、そうね。私もお父さんに早く眠れる薬を使わせてもらっているけど、私には魔法の才能が無いからちょっと違うのかも」
毎朝早く起きれるようになったのは俺達の朝の支度をしないといけないからっていうのが大きいけどねって言われてしまった。
そんなことを話していると、恵とお父さんも起きてきた。
「お、3人ともぐっすり眠れたか?」
「うん、今日絶好調!」
俺はピースサインを作ってお父さんにアピールをする。
「これを1週間ちょっと続けていけば、薬を飲まなくても、体が魔法を覚えると思うからな。毎日寝る前に1錠飲むのを忘れないように」
「「「はーい!」」」
「よろしい。まだ時間があるから勉強とかで分からないところがあれば教えるけど」
お父さんがそう言ってくれたので、教科書の英文の和訳について聞いたりするのだった。
「おはよう八雲さん」
「おはよー森久保君、今日は調子良さそうだね」
「うん、ぐっすり眠れたから。絶好調」
「それはよかったね!」
学校に到着すると、ホームルームが始まるまでの30分くらいはゆったりする時間がある。
俺の場合はその時間は読書の時間として、同じくらいに登校してくる八雲さんと本を交換し、黙読する。
だいたいこの30分と授業合間の休み時間、食後の昼休み30分、持ち帰って家で寝る前1時間かければ文庫本だったら1冊読み終えることができる。
八雲さんからはそれで読み終えるって結構早いねって言われるけど、お父さんは魔法を使っているからかもしれないけど、文庫本程度だと10分で全て読み終えてしまう。
大学の学生達の論文を読んだり、俺達に魔法の練習をするために時間を作るためには速読が必須だって言っていたっけ。
それで内容もちゃんとインプットできているのだから凄いや。
というかお父さん360年も生きているから知識量とかヤバそう。
普通の人って完全記憶でも150年とかはインプットできるってラノベで読んだけど、お父さんはどうなのだろう。
流石に魔法を使って全部の出来事を覚えていることはないだろうけど……。
「はい、今日も面白かったよ! ヒロインと妹による主人公の取り合いが良かったな!」
「でしょでしょ! このラノベはヒロイン達の主人公の奪い合いが面白いの! それがコメディ部分にもなってね!」
「なるほどな〜」
だいたい本を返す時に、俺は八雲さんに本の感想を言うようにしている。
勉強しろって思われるかもしれないが、身体強化と魔力量が上がれば巻き返せると俺は確信していた。
ただ授業は勿論真面目に受けるけど……。
(八雲さんは勉強しっかりしているのだろうか?)
偶に俺はそう思うのだった。
深い眠りに就く魔法は小瓶に入っていた薬を飲み終わっても、寝る前に身体強化を発動させて、ベッドに潜り込むと、直ぐに意識が落ちるようになっていった。
朝起きても目覚めバッチリで日の出と共に起きることが多くなり、朝に軽く予習復習をする時間を取るようになった。
朝イチは頭が冴え渡っているし、分からない部分は出勤前にコーヒーを飲んで新聞を読んでいるお父さんに聞けば教えてくれるので、前回のテストでは不甲斐ない結果だったけど、今度こそは……と燃えていた。
物事1つ前に進むと、他のこともゴロッと前に前進できる感じで、お父さんがよく言うのだが、成長は階段状にはなっていなくて曲線だって口にしている。
伸びているのがわかる頃には一気に前に進めるから、その地点に到達できるまで努力するのが大切だと……。
耳が痛い話ではあるけど、魔力量の蓄えられる量が上がってきていた。
わかったのは風呂場で水を手から出して、溜めている時に、今までは魔力が枯渇するから、魔力補給を行う飴玉を舐めていたのだが、それがいつの間にか要らなくなっていた。
スマホの魔法について教えてくれるアプリでも、魔力量が最初1だったのが、3に上がっていた。
魔力の蓄えられる量は魔法の練習ができる量が増えれば増えるほど増えていくので、今まで1の魔力量でトレーニングしていたのが3でトレーニングできるようになったとなれば……効率が変わってくる。
「二へへ」
スマホを覗き込んで、俺は二へ〜っと笑みを浮かべるのだった。