蜂の巣と属性十倍の間で命乞いをするだけの簡単なお仕事です   作:翔田美琴

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第13話 罪状暴露

空気が硝煙と紫電で焼き切れる瞬間、再び空間が紙を裂くような音を立てて歪んだ。

 

「ちょっと待った!!」

 

猛吹雪を強引に押し退け、虚空から仁王立ちで姿を現したのは創造主・翔田美琴だった。

氷点下の冷気も、規格外ハンターたちの威圧もどこ吹く風。美琴は苛立ちを露わにしながら、雪まみれで震えるジェシカとユウキの目の前まで大股で歩み寄ると、ビシッと指を突きつけた。

 

「前科4犯と前科6犯のプライドはどうしたのよ! 綺麗に叫びなさいよ!」

 

容赦のない過去の罪状暴露とメタダメ出しが、雪山に響き渡る。

 

「友人の金を漁って逮捕、逆恨みして闇討ちして逮捕、コンビニ強盗で逮捕、スーパーのレジ襲撃で逮捕! そこまで悪辣なフルコンボ決めておいて、いざ追い詰められたら『ひぇえええ』!? あんたのその青髪と偽物シャネルバッグに詰まってるのは、そんな安っぽいテンプレ悲鳴なの、ジェシカ!?」

「な、なんでそれを……!? あんた何者なのよぉぉ!?」

 

ジェシカが顔面を蒼白にして後ずさるが、美琴の追撃は止まらない。視線が隣のユウキへスライドする。

 

「そっちの0円女王様もよ! 働かない、知性もない、反省もしない、都合が悪くなったらタコ踊り!? 『金がすべてでしょ』って豪語した悪女の矜持はどこ行ったの! もっとこう、己の浅ましさと虚栄心が粉々に砕け散る瞬間の、聞く者の脳髄を震わせるような叙情詩的一叫びを寄越しなさいよ! 美しく散りなさい!」

「む、無茶言わないでぇぇぇ! 詩とかわかんないし、語彙力ないんだからぁぁぁ!!」

 

ユウキが頭を抱えて喚き立てる。

三人の規格外ハンターたちは、美琴の背後で静かに整列していた。

 

「……前科の数まで把握されているとは。情状酌量の余地など、分子レベルで存在しなかったわけだな」

 

レム判事がジャッジメントコートの襟を正し、紫の瞳を氷のように冷たく眇める。

 

「やってられるか。前科の多さと悲鳴のクオリティが反比例しているな。……おい、創造主直々の指導だぞ。次こそは耳を傾けるに値する『綺麗な叫び』とやらを聞かせてもらおうか」

 

エリオットがクロームレイザーを肩に担ぎ、冷徹な笑みを口元に浮かべた。

 

「ふっ、私の夜砲のフルバーストをバックコーラスにしてやってもいい。……さあ、前科者たち。極上のアリアを歌ってもらおうか」

 

レンブラントが漆黒の銃口を再び二人の喉元へ突きつける。

世界の理を握る創造主の激怒と、逃げ場なき三人の処刑宣告。

ジェシカとユウキは、自らの薄っぺらい悪辣さを全て暴かれた恥辱と恐怖の極致で、喉を限界まで引き裂く息を吸い込んだ。

 

「綺麗な断末魔のアリアでも歌いなさい」

 

レム判事の低く澄んだ美声が、雪山の静寂を切り裂いた。

藍色のジャッジメントコートが冷風に翻り、紫の瞳には一切の容赦がない。『完全見切り』の構えから放たれる殺気は、ただそこに立つだけで獲物の神経を麻痺させるほどに鋭利だった。

 

「己の罪の深さも弁えず、他者を愚弄し、盗み、寄生し続けた薄汚い人生だ。せめて幕引きのその瞬間くらいは、聴衆の魂を揺さぶる最高傑作の絶望を奏でてみせろ」

 

レム判事は鬼哭斬破刀真打の切っ先を、ミリ単位の狂いもなくジェシカの喉元へと突きつけた。バチバチと弾ける黄金の雷光が、彼女の染められた青髪をチリチリと焦がす。

 

「ひ……っ、あ、アリアって何よぉぉぉ! 私、声楽なんて習ってないわよぉぉ!!」

 

ジェシカは泥まみれのドレスの胸元をかきむしり、恐怖と屈辱で目を血走らせて絶叫した。

 

「課金ゲームのランキングトップだったこの私が! Amazonで限定品買い占めてたこの私がぁ! なんでこんなクソ寒い雪山で、オカマに殺されなきゃいけないのよぉぉぉ!! 誰か助けなさいよ、この無能どもぉぉぉ!!」

「……相変わらず下品極まりない調子外れだな」

 

エリオット隊長がクロームレイザーをわずかに引き抜き、属性十倍の重圧で雪原を地鳴りとともに沈み込ませる。

 

「おいおい、テンポが早すぎるし音程も最悪だぞ。バックコーラスを合わせてやる隙もありゃしない」

 

レンブラント氏が夜砲【黒風】のロングバレルをユウキの額に押し付け、カチリとフルリロードの音を鳴らした。

 

「難しいこと言われても歌えないぃぃぃ!!」

 

ユウキは雪の中に頭を擦り付け、もはや芸術のかけらもない絶叫を絞り出す。

 

「0円女王様で何が悪いのよぉぉ! 金はないけどプライドだけはあるのぉぉ! 許してぇ! でも死ぬのは絶対いやぁぁぁぁぁっ!!」

 

創造主・美琴が腕を組み、心底呆れ果てたように吐き捨てる。

 

「……はぁ。やっぱり根本的に脳みそが足りてないわね。レム、もういいわ。その耳障りなノイズ、まるごとスライスして黙らせなさい」

「御意」

 

レム判事の唇に、氷よりも冷たい笑みが浮かんだ。

紫電を纏う太刀が一閃し、二人の空洞なプライドを根底から解体する、本当の地獄の旋律が幕を開けた。

 

 

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