恵まれた血筋と才能をネタ職業でふいにするクズ 作:ひよこ鑑定士
14歳になると神から職業が授与される。
【木こり】であれば樹木の伐採と木材の生産に大幅な補正がかかり、今までやったことが無くてもまるで熟練の木こりのように振る舞うことができる。
【漁師】であれば漁の全てに大幅な補正が。
【戦士】であれば、戦闘に補正が。
ただし、似た職業であっても明確な上下は存在する。
【剣士】は【剣豪】に勝てず、【剣豪】は【剣聖】に勝てない。
このように、同じ系統の職業であっても明確な差があるのだ。
勿論潜在能力の高い職業ほど授与される確率は低いのだが、だからこそ、この世界では授与された職業が全てだった。
職業が授与される仕組みの全貌は未だ明らかにはなっていないものの、恵まれた血筋と才能がある人間に上位職業が授与される──これは紛れもない事実だった。
【剣聖】の家系には必ず【剣聖】が生まれ。
【国王】の家系には必ず【国王】が生まれ。
勿論、突然変異的に上位職業が生えてくるパターンも往々にしてあるにしろ、基本的には強力な職業を親に持つ子は何らかの恵まれた職業を授与されることは常識なのだ。
☆☆☆
俺の目の前には王都の占い屋で見たことのある、アルカナカードのようなものが五つほど浮かんでいた。
どれも複雑な文字列が並んでいたが、感覚的に俺はそのカードに何が書かれているかを理解することができた。
──【勇者】【聖剣士】【魔導王】【皇帝】【女体鑑定士】
「スゥーーーーーーー」
──女体鑑定士
あかんダメだ。脳内全てが女体鑑定士で埋め尽くされてる。めちゃくちゃカッコいい強そうな職業が浮かんでるのに、視線が女体鑑定士から離れん。
「ライズ第四皇子様……どのような職業が授与されたのですか……? 貴方様のお父上は【皇帝】の職業を……妃様は【魔剣聖】の職業を授かっておられる方々です。きっとレヴィ様も素晴らしい職業を……!!」
何か後ろでゴタゴタ言ってる側付きがいたのだが、今の俺には【女体鑑定士】がどんな能力なのかを推測することに夢中で、何も話が入ってこなかった。
……まずもって【女体鑑定士】はレア職業だ。
職業大全に載っていないということは、今まで授与されたことが無いか、在野の犯罪者や奴隷が授かっていた可能性もある。
基本的には国が全国民の職業を管理するからな。
【職業鑑定士】という職業があるから、絶対に嘘をつくことはできないし。
420年の職業の歴史をまとめた本に記述されていないということは、間違いなくレア職業であることは確かだ。
問題はどのような職業なのか。
女体鑑定士。
女体を鑑定する……つまり女性限定で鑑定することができることは字面から予測ができるが、問題は何を……ナニを鑑定するのだろうか……もしや乳のサイズなど……ブフォッ!
「ら、ライズ様!? な、なぜ鼻血を……!? もしや国を左右する職業が複数個……!? お悩みになられるのも当然でしょう……!!」
ふ、ふぅ、落ち着け。鼻血が止まらん。
死ぬほど過保護に育てられたせいで女性経験が微塵も無いんだ。女中の裸すら見たことがない。
こちとら王城の図書館の春本で精通を迎えたというのに!!
権力に傘を着せて無理やり……というのもどうにも俺の性癖には合わなかったし。純愛こそ至高だぞ諸君。もしくはあっち側から襲ってくれればヨシ。
……話を戻そう。
全力で思春期を迎えている俺の予想は、女性限定での情報開示……だろうか。読み取れることはそれ以上無い。
希望的観測を言えば、スリーサイズだったり鑑定した女性の性癖を見ることも……可能かもしれない。
────くっ、見たい!!
鑑定したい!! 気になるあの娘の情報見たい!!
だ、だが俺は世間からの期待を受けている第四皇子。
そんな俺が【女体鑑定士】などという死ぬほどふざけた職業を授かってしまえば一体どうなる!?
国民からは白い目で見られ、両親からは汚いものをみるかのような目で見られ、周辺貴族からは陰でバカにされ、兄弟からはドン引きされること間違いない。
……危なかったな。
危うく修羅の道に行くところだった。
ここは波風立たない魔導王辺りの職業を──
ふと、思い出した。
職業授与式に行く前に両親と交わした会話を。
『ライズよ、もしもそなたの授かる職業が、我々の期待に応えるものでなくても──私は味方であり続けようぞ』
『そうよライズ。あなたの選択なら、私たちは尊重する』
「俺の職業は────【女体鑑定士】だ!!」
投獄されて廃嫡されて王城から追放された。なんでや
☆☆☆
「どれだけ力の持たぬ職業でも良かった。バカにはされるだろうが、誤魔化しは利く。だが──【女体鑑定士】はダメだ。ほら、あれだ……世間体が悪すぎる」
牢屋の鉄格子越しに交わした父上との会話がコレだ。
どれだけ息子を愛していようと、流石に国王としてネタ職業を授かったボンクラの後始末はちゃんとするらしい。
まったく、この国は安泰だな。
「ただ愛する息子であることに変わりはない。廃嫡はワシの権限で取り消しておくから、とりあえず外の世界で常識を学んでこい」
──撤回。ちゃんとボンクラの後始末はしたほうが良いっすよ。
というわけで俺は王位継承戦からドロップアウトし、寛大な父上による執行猶予期間を得た。
いついつに戻ってこいとか言われてないから実質廃嫡やんけ。
「──性欲に負けなきゃ良かった……っっ!!!」
お、俺がまだ精通してなかったら……!!
権力に傘を着せて無理やりヤッてれば……!!
夜伽文化の蔓延ってる国だったら……!!
──女体鑑定士なんてワードに勃起すること無かったのに。
「くっ……一夜にして居場所を失うとはな。残ったのは当面の生活費として渡された大金と【女体鑑定士】か。……十分じゃねぇか寛大すぎるだろ」
あれだな、皇族が平民の前に姿を現すのは職業授与後……ってシステムがあったから俺の職業が世間にバレることはないのか。
まあ、未だ皇子としての権限はありつつも何の援助も無いってのは罰の一種なのかね。十分すぎるけど。
てくてくと夜の王都を歩きながら、俺はため息を吐く。
とにかく王城から追放されるまで期間で会ったのが男しかいなかったせいで、未だ【女体鑑定士】の能力を使うことはできていない。
こんな能力使ったところで何なんだって感じだけど。
ハァ……とりあえず宿を探すか。
王都には何度かお忍びで遊びに行ったことがあるし、中級宿屋の居場所も何となくは分かる。
「あら、こんな夜更けに珍しいわね。一泊で良い?」
「……あー、一週間ほど頼む」
歩くこと数分。
適当な宿屋に入ると、金髪ロングの若女将が出迎えた。
質の悪い召し物でなければ、思わず貴族と見違えてしまうほどの上品さと優雅さがあった。
歳はそう変わらないくらいだろうか。
……なんだろうな。豪華絢爛なドレスを着た美人令嬢よりも、町娘っぽい麻布の服とスカートを着た美人のほうが……こう、グッとくるんだよなぁ……。
兎にも角にも出迎えた若女将は美少女だった。
これには俺も一泊の予定を一週間に切り替えるほど。
すると少女は目を輝かせて机から身を乗り出すと、俺の手を掴んでぶんぶんと振りながら言った。
「一週間!? た、助かるわぁ……うち、ちょっと経営が怪しくてね。最近はお客さんも全然来ないし……って、こんなこと言うことじゃないわね。ごめんなさい」
バツの悪い表情でパッと手を離す。
あっ……危ない危ない。あと2秒握られてたら好きになるところだった。女性の免疫が無いんだからそうやって男心をくすぐってくるのは普通にやめてほしい。
……にしても、おかしな話だな。
「立地も悪くないだろう? それに、君の美貌があれば集客なんて容易いと思うが」
「び、美貌なんて……。……う、うん、立地は悪くないし、あたしの父さんが経営してた時は良かったんだけど。……はぁ、やっぱあたしのせいなのかなぁ……」
少女はため息を吐きながらしゃがみ込んだ。
どうやら何らかの理由で、父が経営していたこの宿屋を引き継いだとのこと。 ……経営方針さえ変えていなければ、突然客が来ないなんてことはあり得るのだろうか。
そう思案していると、少女は再び「ハッ」と、変な話をしてしまった……と謝ると部屋の鍵を渡してきた。
「二階の奥の部屋をどうぞ。ごゆっくりお休みください」
営業スマイルを貰った俺は、その笑顔が可愛くて軽く勃起した。
……ふむ、晴れて自由の身になったとも言えるし、部屋で全力で過酷な自慰行為でもするとするか。咎める人間も見つかる心配もいらないんだ。
折角だから今もらった笑顔をオカズに……いや、オカズならきっと俺の能力で補給できるじゃないか──!!
俺は笑顔を浮かべる少女に向かって心の中で念じる。
──【女体鑑定】!!!
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アイリス
職業:【宿屋王】Lv.8
年齢:16歳
tips:父親の病死により、若くして女将になった。
最近は経営難に悩まれているが、実は近隣の高級宿屋のオーナーが圧力をかけることにより、客が来ないように妨害している。
その狙いはアイリスの圧倒的な美貌を我が物にするため。
困っているところに手を差し伸べ、不当な契約を結ばせる目論見を立てているが……。
『未解禁情報』
スリーサイズ:B[?]W[?]H[?]
性癖:??????
現在のあなたへの好感度:???
※更なる情報の閲覧には、困り事を解決する必要があります。
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な、なんかおもてたんとちゃう……。