魔訶不思議大冒険 作:一番好きなのは界王拳
――中学3年性。
15歳になった時にはサイヤ人としての成長期を迎え、140台の身長しか無かった龍星の身長はあっという間に160cmになっていた。
16歳の頃にはより戦闘に向いた体格になり、徐々に固定化されるだろう。
突然の成長にクラスメイトや近所の人たち、ねじれの両親までも驚いたのは言うまでもない。
両親だけは普通に受け入れてたが。
ねじれとの仲も変わらず特に別れ話になることもなく良好だが、もう小さい姿は見られないことには残念がっていた。
まぁサイヤ人の特徴は伝えてあったので、ねじれは多くの写真を納めていたようなので見れないわけではない。
ただ大きくなったらなったでより磨きがかかったのもあって、カッコ良く思っているらしい。
実際顔はいいのでこのまま身長も大きくなれば高身長なイケメンになるだろう。
並んで歩いても血の繋がってない姉弟のようにしか見えなかったが、成長した今なら並んで歩いても十分カップルだと思われるようにはなった。
当然肉体だけではない。
弱点をいつまでも残すほどバカではないため、尻尾を鍛えることで握られても力が抜けないようになった他、尻尾をより自在に武器のように扱えるように。
気についても総量を増やし、レベルアップしている。
近接や身体能力においてもかなり上昇しただろう。
中学3年生となると、考えなければならないのは進路である。
が、龍星が今更進路に悩むはずもなく。
雄英高校一択だった。
強者が集うという理由だけだったが、今は違う。
彼女になったねじれと一緒に登校出来るなら選ぶしかない。
しかし問題がひとつ。
龍星の戦闘力は言うまでもなく問題ないはずだ。
同じ試験内容ならば負けることは無い。
ならば問題は――
「ねじれちゃん! 勉強教えて欲しい……!」
そう、勉強だ。
亀仙流の中に勉学があったことは知っている。官能小説だが。
流石に龍星もねじれがよく来るのに官能小説で勉強なんて馬鹿なことはせず普通に勉強していたが、やはり修行優先になりがち。
才能がないからこそ限界まで鍛えて休み、また鍛えてを繰り返してると疎かにもなってしまう。
そこでぶっちゃけ話す相手は居ても友達は居ない龍星が頼れるのは、雄英生であり彼女であるねじれだけだった。
そもそも雄英を目指すのも勇気が居るもので、雄英を受けるほどの勉強をした者が周囲に居ないのもある。
「もちろんいいよ! 私の部屋にする? それともビート君?」
「俺の部屋の方がいいかな。両親にも話してるからねじれちゃんさえ良ければお礼にご飯でもって言ってたから」
「じゃあそうしよっか。弥生さんの料理、すごく美味しいんだよね」
「自然と上手になったんだって。お父さんも結構大食いだからね。俺ほどじゃないけど」
「ビート君はたくさん食べるもんね〜それにビート君はとっても美味しそうに食べるから見ていて気持ちいいというか、見ていたくなるんだ」
「あまり自覚してないなぁ。ねじれちゃんに見られるのは照れるかも」
「私はいくらでも見れるよ?」
「うーん。ちゃんと食べてね?」
夜遅くになってしまうが、休みの前日に勉強会を開くことになった。
それなら雄英の授業で疲れて寝落ちしても次の日に響かないし、もしそうなったとしたら龍星がベッドに運んであげることも出来る。
次の日に寝不足で学校に、というのも避けられるというもの。
そして勉強当日。
早速小テストという形でやってみたわけだが。
正解に対して間違いが多数。
龍星は紙を見ながら机に顔を押し付けた。
「だぁー! 全然解けなかった!」
「そんなことないよ、惜しいところもあるしビート君は頑張った。頑張ってる!」
慰めるように龍星の頭を撫でるねじれだが、完全に甘やかしている。
龍星自身もこのままでは駄目人間――駄目サイヤ人にされかねないと顔を上げてブンブンと首を振った後、頬を叩いて気合を入れた。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、結果を出さなきゃねじれちゃんと同じ進路にはいけないから。これじゃダメなんだ!」
「ビート君……」
自分のために頑張ってくれている。
そのことに胸が熱くなるねじれだが、衝動的に抱きしめたくなるのを抑えた。
感情を抑え込むためにも別のことを考え、ふと気になったことが浮かぶ。
「ねぇねぇ、ビート君って社会人だったんだよね。前世だとあまり勉強出来なかったの?」
「いや、覚えてる限りは普通かな。ごくごく平凡な人間。……ちょっと憧れが強かったと思うけど。ただこの身体になってから出来なくなったというか……そもそも雄英が難しすぎる……!!」
そう、龍星は誰にも言えないが前世がある。ドラゴンボールが好きすぎるあまりリアルでドラゴンボール式の修行をやってのけるほどに憧れは強かったし気を追い求めて滝行などもするくらいの平凡詐欺の狂人に近い存在だったが。
それにこの世界でも勉強をしていたため、馬鹿ではあるが別に勉強が出来ない本当の馬鹿ではない。
雄英は難関校とされるだけあって偏差値が高いのだ。
故に賢いわけではない龍星は、雄英の試験となると合格ラインに達するかどうか怪しい。
「まだまだ期間はあるから、一緒に頑張っていこうね。ビート君に頼られるのは凄く嬉しいから、いっぱいいっぱい頼って」
「ありがとう。俺も頑張るよ」
「うんっ」
修行に勉強に学校。
忙しくなってきたが、応援してくれる彼女がいる。
それだけで龍星は何処までも頑張れる気がした。
改めて机と教材に向き合う。
――三時間後。
そこには白目を剥いて真っ白に燃え尽きた龍星の姿があった。
正解数は半分。
まだ初日とはいえ、これもまた1割にも満たない量だ。
流石にこれ以上は無理だと判断したようで、龍星の代わりに片付けをしていたねじれは終わると龍星の頬を突っつく。
つんつん、つんつん。
楽しくなってきたのか繰り返してるうちに色が戻ってきた。
「……ハッ!? 俺は何を……」
「燃え尽きてたね〜大丈夫?」
「ひとりだと無理だったけど……ねじれちゃんが居るから大丈夫。全然頑張れるよ!」
「もぉ、そんな嬉しくなること言っても何も出ないよ?」
「本当のことを言ってるだけだよ?」
「わかってるっ」
自然と休憩を挟むことになり、先まで対面に居たねじれは龍星の隣にそそくさと移動すると、龍星の肩に頭を乗せて指と指を絡める、恋人繋ぎした。
小さかった体はもうほとんど並ぶほど。
元々頼りになった背中は立派なものになっている。
ねじれ自身も成長してないわけではない。
より全体的に女の子らしい魅力的な体つきになっているし、胸だって中学時代よりも遥かに大きくなっている。
伸ばした髪も手入れを欠かさず、肌も毎日ケアを忘れていない。
すっかりと甘えモードに入ったねじれに対し、龍星は労わるように空いている左手で彼女の髪を梳かすようにそっと撫でていた。
こうやって年下なのに甘やかす時もあれば甘やかされる時もある。
ある意味では龍星に前世があるからこそであり、2種楽しめてお得。
少なくともねじれはそう思っていた。
どちらの龍星でも好きなことに変わりはない。
「ねじれちゃんは2年になっても変わらず大丈夫?」
「うん、有弓と天喰くん、通形とよく居るくらいかな?」
「いつも通りって感じだ。それが一番だね」
ねじれは彼氏が居ることを伝えており、龍星もねじれの交友関係上の相手――甲矢有弓、天喰環、通形ミリオといった者たちと知り合いだ。
初めて会った当時は明らかに子供というか、年齢は13歳でも見た目が小学低学年というのもあって当時はショタコン疑惑が発生してしまった。
ねじれ本人は龍星ならどちらでもイケると笑顔で言ってのけるタイプなのでいいとして。
サイヤ人の運命だと受け入れていた龍星は気にしてなかったが、ちゃんと誤解も解いたし幼馴染というのもちゃんと話して納得してもらっている。なおやっぱり二年下ということに驚かれた。
それはそうと強そうな環やミリオにすぐさま勝負を挑んだのはサイヤ人らしい。
「もしかして、嫉妬しちゃった?」
「うーん。そりゃねじれちゃんが俺以外と親しくするのは気にならないと言えば嘘になるけど、ねじれちゃんを縛るのは違うからね。特に何かは言わないよ」
「ビート君になら縛られてもいいけどなぁ。私だったら嫉妬しちゃうよ? ビート君に他の女が寄り付くって考えたら、それだけで嫌だもん」
「俺をそこまで想ってくれるのは嬉しいけど、俺別にモテないよ? ねじれちゃんは凄く可愛いからモテるかもだけど」
「甘いよビート君。女の子は結構ロマンチックなんだから。ビート君だって自覚してないだけですっごくかっこいいんだよっ? 私は昔から頼り甲斐があると思ってたけど今では知らない人が君を見ても筋肉質な体は頼り甲斐があると思うだろうし君の優しさや純粋さに触れた人達はきっと魅了されていくと思うんだ」
「そうかなぁ。でも俺はねじれちゃん以外に付き合いがないし、仮に関わることが増えても恋愛的な意味で付き合うつもりはないから。ねじれちゃん以外眼中にないから安心して」
「えへへ、それは私もだよ、ビート君以外にこんな気持ちにはならないから。傍に居るだけで、これからも傍に居られるって分かってるだけで幸せだもん。他の人からの評価なんてどうでもいい。ビート君さえ私を分かってくれたら私はいいもの」
時折ねじれには闇深い部分が見え隠れする時はあるが、お互いに想う気持ちは同じなのだろう。
正直、結婚出来る年齢になってたら結婚しててもおかしくはない二人だった。
龍星も龍星で幼馴染という関係性が邪魔してただけで告白されてねじれの気持ちに気づいた時に濁すわけではなく、すぐに想いを伝えて自ら告白する誠意を見せる男なのだから。
「……ミリオ先輩は個性改善出来たかな?」
「予測能力を手にしてるしだんだんと個性も実戦で使えるようになってきたからちょっと厄介になってる。体育祭では余計に厄介になってそうだなーって思うよ。あっ、でも負けてないし負けるつもりはないから!」
「ほとんど俺のせいだよね……」
はっきり言って悪くはないが良くもないという感想で、制御さえ出来れば“無敵”に近い力だが、使い方が宜しくなかった。
結果、小学生に負けるということになってしまったわけなのだが実力を知ったのもあってドラゴンボールの知識を活かした龍星のアドバイスの結果、大きく成長したらしい。
もちろんミリオたちとプライベートで会うこともあるが、だいたいアドバイスを聞かれたり修行を考えたりなどすることが多い。直接戦うことは、そもそもまだ免許がないので出来ないのもあるだろう。せいぜい個性なしで戦う程度だ。
個性なしだと龍星が勝ってしまうが。
ただ気で強さは分かってしまうので、強くなってるってことは理解していた。
それでも個性の練度などは分からない。あくまで基礎の実力のみだ。そのため、龍星やねじれのように戦闘力を抑えてるわけではないので気を探っても変わらない。
逆に龍星やねじれの場合は気を探られたら力を隠してる、などはバレてしまうのだが……そもそも誰も“気”について気づいてないだろう。
「天喰先輩は性格がなぁ……」
「天喰くんはノミの心臓なんだよ」
逆に環は強いといえば強いが、本人の精神が追いついてないといった感じで、体育祭で良い結果を出せなかったというのもビートは納得していた。
ねじれは龍星と鍛えてたのもあって堂々の1位を獲っていたが。
ただ雄英に入った時点で彼らも十分強い。しかし龍星が戦った時は職場体験を終えただけの1年というのもあった。少なくとも1年でそんなガチガチな授業をするわけもなく、1年の授業で得られるのはまだまだ基礎ばかりだ。
2年では仮免を目指して取得後インターンというのもあるため、本格的に強くなっていくのはこれから。
龍星はもっともっと強くなるであろう彼らの未来が楽しみになっている。同時に雄英には才ある者が集うのだと言う確信も。
ちなみに彼らが負けた理由も結構単純で、努力の差と言ってしまえばおしまいだ。
幼少の頃からこんなガチで鍛える存在の方が稀有なだけ。
ヒーローになりたいと夢見ても実際に鍛えるかどうかは別だ。
大半の人間は多少鍛えたところで、龍星のように修行ばかりはやらない。
だがその差は結構大きく。
サイヤ人は戦いにおいて成長していくが、個性は使えば使うほど成長する。
それはずっとねじれを見てきた龍星はすぐに理解して、彼女にアドバイスしたのだから。
お陰でねじれのレベルがとんでもない事になってるのだが。ドラゴンボールの知識を持つ存在と鍛えてたら強くなるに決まっている。
「でも私もまだまだ強くなるからね、ビート君」
「俺ももっと強くなるよ。ねじれちゃんを、家族を守るには力がまだ足りない。オールマイトより強くならなきゃ」
「だね、ビート君となら何処までも行ける気がする。これからもずっと一緒だよ、私は君を手放さないから」
「離れるつもりなんてないから大丈夫だよ。そういった感情が薄いサイヤ人の俺がねじれちゃんを好きと思って大切に思ってるってことはそれほどねじれちゃんのことが大好きだってことなんだから」
純粋なサイヤ人かと言われれば龍星の存在がイレギュラーなので怪しいところではあるものの、神がサイヤ人と入れ替わっても肉体が純粋なサイヤ人なら同じという扱いではあるので龍星もまた同じく純粋なサイヤ人なのだろう。
ただ彼も人間だった頃、前世よりそういった感情が薄いのを感じている。
だからといって孫悟空やベジータが妻を大切に思っていたように、サイヤ人だからといって人を愛せないわけではない。
魂的な意味ではハーフである龍星ならもっと。
「ビート君……」
「ねじれちゃん」
握られる手が強くなり、ねじれの瞳に熱が帯びる。
上気した頬は彼女をより蟲惑的だった。
今では昔よりも遥かに魅力的な外見になっているねじれだ。昔も昔で別の魅力があるとは思っているが、そんな彼女に見つめられて、長くいるだけあって意図を汲んだ。
手を握り返しながら自然と顔が引き寄せられるように近づき、目を閉じるねじれの唇に龍星はそのまま――
「弥斗ー! ねじれちゃん! ご飯出来たよーッ!」
びくぅっ、とあからさまに驚いた二人は思わず互いに顔を背けた。
おっぱじめるつもりではなかったし軽いキスで済ませるつもりではお互いにあったが、まさかこのタイミングでリビングから聞こえてくるとは思わなかったようだ。
プライベートを尊重する親だったからよかったものの、いくら認められていても両親の前でイチャついてるところを見られて恥ずかしく思わないわけがない。
もしドアを開けられてたならキスしようとした場面を見られてたわけで。
二重の意味で心臓がバクバクする中で、龍星とねじれは顔を見合わせると似た反応をしたことに遅れて笑い合う。
「お腹空いちゃった。行こっか、ねじれちゃん」
「そうだね、今日はなんだろう? 楽しみ!」
いつまでも降りてなければ訝しまられてしまうこと、もうそんなムードではないのもあって二人は手を繋ぎながらリビングに向かうと、弥生が気づいたようにじっと見つめると。
「もしかしてお邪魔だった?」
それはもう、ニヤニヤが止まらなそうないい顔をしながら反応を窺う弥生に、分かりやすくねじれの顔が赤くなる。
「だっ、大丈夫ですっ!」
「はは……」
嘘を付くのが苦手な龍星は答えるという選択が出来ないため、目を逸らすしか出来なかったが、分かりやすい未来の義理の娘と答えを告げている息子の反応にいい空気を吸ったと言わんばかりに満足そうな顔を浮かべていた。
とまあ、2回目の勉強会においては逆にねじれの宅にお邪魔して彼女の両親に大歓迎されて可愛がられたり、孫の姿を楽しみにしてるだと気の早いことを言われて流石の龍星も振り回されたが、勉強したり修行したり。
雄英に向けての特訓や、雄英体育祭でねじれを応援――ついでに環やミリオを応援したり。
時に修行して、時にイチャついて、時にデートして、時に勉強して、青春とも言うべき人生を謳歌しつつ、ちゃんと雄英に向けて努力をしていき、あっという間に2月。
雄英高校ヒーロー科。
国立の高校であり、なんと倍率300を誇る超難関校。
ねじれに誘われてデート――文化祭で来たこともあるので初めてではないが、それでもやはり大きいと思わざるを得ない。
既に卒業した3年生はともかく入学前から龍星は現1年生と2年生たちから注目の的であり、絶対に合格するだろうなと確信が持たれてるのを知らず、龍星は己の首元にある青いマフラーに触れる。
『このマフラーはビート君の為だけに編んだマフラーなのっ。合格祈願、的な感じでね、作ってみた! 私のイメージカラーにして見たんだけど……これを私だと思って試験に臨んでくれると嬉しいな。実技に関してはビート君なら大丈夫だと思うけど……気をつけてね? あと! くれぐれも浮気しちゃダメだからね! したら怒るしお仕置きだよ!』
冬の寒い時期にはマフラーは最適だ。
最後に関しては必要ない心配だと龍星は思ったのだが、彼の頭ではそういう意味では無いことまでは辿り着かなかったらしい。
この世界でも十分イケメンに分類される、自分の外見を忘れてるのだろうか。
いや単純にねじれしか眼中にないだけだろう。
「っし、いっちょやってみっか!!」
憧れの人の言葉を借りて、見上げていた校舎を見るのを辞めた龍星は会場まで足を運んでいく。
大切な人から貰ったマフラーが、自分に勇気を与えてくれる。緊張すら解してくれる。
その足が重たくなることは、ない。
会場内は当然ながらぎっしりだった。
どこもかしこも人、人、人。
果たしてこの数千は超える中から一体何人が生き残るのか。
36名である。
そのうちの4人は推薦入学という特別枠で、龍星の学校は対象外だ。
故に狙うのは、首席ただ一つ。
「今日は俺のライヴにようこそー! エヴィバディセイヘイ!」
奇抜な髪型。派手なジャケット。壇上に立つ男性はプロヒーローのプレゼント・マイク。
膨大な数がいる受験者が居るというのに誰もその言葉を返さない。正確には大半の者が緊張しているのもあるだろう。
「こいつぁシヴィーー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHHHH!!!」
変わらず無言だった。
それでも問題なく続けられるのは流石プロと言うべきか。
プレゼント・マイクの説明を聞き逃さないようにしながら資料を見る龍星は頭の中で情報をまとめる。
持ち込み自由の10分間の模擬市街地演習。
三種の仮想ヴィランが存在し、1〜3ポイントのヴィランを倒してポイントを稼いでいく。戦闘不能なので、別に壊さなくたっていいのが肝だ。戦闘向きでない人のために停止ボタン的な何かも存在しているだろう。
もちろんポイントが高いほどロボットは強い。
他人に対しての攻撃は失格。
その中で龍星はDの0ポイントというのが気になった。
他はポイントある中で0ポイント。しかも説明にもなかった。
つまり――それはどのロボットよりも強いのでは? と思わず笑みを濃くする。レッドリボン軍の海賊ロボをイメージした。
龍星がそう考えたところで気になった人も他にいたらしく、メガネを掛けた真面目そうな男性が質問。そのついでに縮れ毛らしい誰かに文句を言って、周囲が嘲笑に包まれていたが龍星は真顔だった。
この件に関しては下手に刺激せず宥めたプレゼント・マイクはそういったことにも慣れてるのだろう。
0ポイントついても説明され、案の定お邪魔虫で各会場に一体存在するとの事。
無視が推奨されていた。
「ラスボス討伐だな」
やるべき事はもう決まっていた。
首席は当然だが、そんなお邪魔虫的な存在が居て戦いに行かないなどサイヤ人としての面汚しだ。
当然、龍星はぶっ潰す気満々だった。
「俺からは以上だ!! 最後にリスナーに我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った『真の英雄は人生の不幸を乗り越えていくもの』と!! “Plus Ultra”!! それでは皆良い受難を!!」
「更に向こうへ……か。いいセリフかも。サイヤ人の強さに限界はない。そんな俺にもピッタリだ……!」
プレゼント・マイクの言葉。雄英の校訓を聞いた龍星の頭の中にはあるサイヤ人が言っていた言葉が思い起こされていた。
龍星だけではない。
雄英の校訓を聞いた受験生たちはその言葉を胸にそれぞれが指定会場に向かっていく。
龍星もまた、試験会場に向かっていった。
バスで移動して数分。
用意された指定会場ははっきり言ってとんでもなく広かった。
本当に街ひとつ使ってるのではと思うレベルでこれが複数あるのだから雄英の予算は凄いのだろう。
スタートラインで準備体操をする龍星は緊張する周囲と違って酷く自然体だ。
この場ではそれが、あまりに異質。
空気がまるっきり別物で、そこに一人の男が近づいていく。
「な、なぁ。あんた、緊張とかしてねーの?」
金髪の何処か見た目だけはチャラそうな男性。
全く知り合いでもないビートは、クエスチョンマークを浮かべた。
あまりに分かりやすい反応に男性も気づいた様子。
「ああ、悪ぃ! 俺は上鳴電気ってんだ!」
「俺は龍星弥斗。よろしく、上鳴」
「よろしくな、龍星。そんで……龍星は緊張とかしないのか?」
「緊張はしてるよ。でも緊張したって力が出せなきゃ意味無いと思わない?」
「そりゃそうだろうけどさぁ……」
簡単に自己紹介をしたのち、先の質問に戻る。
龍星は緊張してないのではない。
緊張よりも――
「本番は一回。ならこの一回に全部を出し切った方がいいじゃん。緊張するのは合格するかどうか不安だからでしょ? だったらせっかくの試験、むしろ楽しまなきゃ損だ!」
わくわくが勝っている、ただそれだけである。
雄英が用意した試験。それを1番で突破する。
「楽しむって……」
眩い笑顔を浮かべる龍星に対して、既に上鳴は負けてる気がした。
合格しようとは思っても、誰も試験を楽しむなんて考えることもないし考える人間なんてこの場に居ないだろう。
不安がっているよりも、強気で居た方がいい。
「そうだよな……それくらいの気概で行かなきゃだよな! ごめん! 試験前なのに話しかけて」
「いいよ、君も多少は緊張が解れたんじゃない?」
「おお、そういやさっきよりも……」
「お互い頑張ろう」
「ああっ!」
一通りの会話を準備体操しながらしていた龍星は、終えると目を閉じて肩を揺らしながら軽く跳ぶと集中する。
体の解しが終わった今、スタートダッシュを決めるのみ。
「それと上鳴。俺から離れておいた方がいいよ」
「え?」
「巻き込むから」
『スタートォ!!』
タイミングよくスタートの声が聴こえた瞬間。
龍星の姿が消えるように加速した。
風圧に吹き飛ばされかける上鳴だが、呆然とした後にスタートの合図に混乱するよりも無意識に、龍星の姿を追いかける。
それから少ししてもう始まってるのだと理解した受験者たちは一斉に駆け出していた。
スタートダッシュを無事に決めた龍星は舞空術による移動で低空飛行している。
そんな彼の体には白いオーラが纏われていた。
『コロセ! コロセ!』
『チマツリ! チマツリ!』
『ギャーッ!』
発見した龍星に攻撃するより早く、龍星が駆け抜ける。
移動における巻き添えを食らって何体か壊れてしまったが、龍星は広い場所に辿り着くと着地する。
気の探知は気が存在しない機械には意味を成さない。
故に目を閉じた龍星は気を使わない気配の探り方でロボットの位置を確かめる。
だがそれも杞憂だとすぐ理解した龍星はすぐさま背後に肘打ちを食らわせると、ロボットのメインカメラが壊され、行動が停止される。
仲間意識があるのかどうかは定かではないが、正面から次々と向かってくる仮想ヴィランに笑みを濃くした龍星は自ら突っ込み、そんな彼を迎撃するように向けられた巨大な拳の形をしたアーム。
龍星は真正面から拳を叩きつけ、アームを壊しながら頭部を破壊。
敵を見据え、次々と加速しながら一瞬にして蹴りや拳、腕を活かして破壊し尽くす。
ものの数秒で10体以上の撃破。
『キケン! キケン!』
『キョウイドマックス!』
『カカレ! カカレー!』
息を一つも切らすことなく、周囲を見ると音を聞きつけたロボットが囲むように襲いかかってくる。
流石にこれは無理だと思われるかもしれないが――
「フッ――だりゃあッ!!」
龍星は腰を深く落とすと両拳を胸の前で交差し、両腕を左右に大きく広げた。
その瞬間、囲んでいたロボットはまとめて吹き飛び、衝撃波だけで機能が停止する。
周囲を見てこれ以上は来ないと見た龍星はその場から抜け出すように跳躍し、ビルの屋上に立つと舞空術で再び加速する。
「うわっ!?」
『標的発見! チャンス!!』
「やべえ……っ!」
尻餅を着いた受験者。
通りがかりに頭上に居た龍星は握っていた拳を開き、下方に叩きつけるように投げつけると、黄色い弾がロボットを消滅させる。
「た、助かった……のか?」
「大丈夫?」
「あ、ああ」
混乱させても仕方ないため、龍星が着地して声を掛けると、何となくだが助けてくれたのだと理解したのだろう。
受験者は困惑しながらも頷いており、怪我がないのを見た龍星は背を向ける。
「じゃあ、気をつけて」
すぐに飛び立った龍星は、近接の他に気弾や気功波など出し惜しみすることなく救助活動しつつヴィランポイントも稼いでいる。
「あ、ありがとう!」
「あいつ、なんで助けに……」
「危なかったぁ、サンキュー!」
「お、おいこいつ倒さなくていいのか!?」
龍星の行動に疑問を抱く者も時には居たが、龍星はただただ放っておけなかっただけである。
孫悟空だって困ってる誰かが居たら無視したりせず何かする。
なら余計に助けなければならない。
龍星自身の性格もあるが、戦いながら守るということも大切なことのひとつだ。ただ強くなって勝つだけの存在になったところで、誰も救えないならそれは本当の強さではない。
そもそも龍星が目指す強さは孫悟空のような強さ。大切な者を守れなければ辿り着ける世界ではない。
特に今の龍星にはもう、誰よりも護りたい大切な人が居るのだから。
この行動は例えポイントが貰えなくたって目先のポイントだけを獲りにいくのは違うと思った故の行動だ。
そうして気合い砲で吹っ飛ばした時からポイントが分からなくなった龍星はとりあえずサーチアンドデストロイしつつ気弾を使って危ない人たちを助けたり細いビームにして援護程度に収めたり状況によって出力を変えてると、残り時間がだんだんと迫ってくる。
「ねじれちゃんは合計120ポイントくらいって言ってたっけ。俺はどれだけいったかな?」
まだまだ余力を残しているだけでなく、気もそれほど減っていない。
もうだいぶロボットの数が減ってきている。
――ここからラストパートを掛けるか、と龍星が更に気を開放しようとした、その時。
まるで地震のような揺れに殆どの者が動きを止める中、龍星は音の発生源に目をやる。
ソレは市街地を蹂躙しながら現れた。
「――デカ」
ビルと同等くらいの巨体。前足のような機体を巧みに使い、市街地を押し退け、建物を粉砕しながら前に進む機械――記載にあった、お邪魔虫の0ポイントヴィラン。
流石に龍星もこれほど大きいとは思わなかったため、目を見開いて驚いている。
が、驚くだけ。
対して他の受験生達は、その巨体な存在を前に顔色を真っ青にし、恐怖のあまり叫び声を上げながら逃げ出す。
ついこの間までただの一般人だった受験生達にとって、0ポイントヴィランは命の危険を感じるレベルの脅威である為、仕方のない事だ。
むしろ逃げることすらせず見上げたまま口角が上がっている龍星がイカれている。
いくら1度ヴィランと交戦した経験があるとはいえ、彼もまた一般人だというのに。
「うわぁぁぁっ!!!?」
「あんな巨体とか聞いてねぇぞ!?」
「に、逃げろ、早く逃げろ!! 死ぬぞ!!」
「こんなの無理だろ!!」
「こ、腰抜けて……だ、誰か、誰か! お願い!! 連れていって!!」
0ポイントヴィランほどの巨体となれば動くだけで被害が生まれる。
崩れ落ちていくビルを気功波で壊しながら龍星は逃げ遅れた受験者を抱えて通り道ではない場所に降ろし、人がある程度減ってきたところで早歩きで0ポイントヴィランの元に歩いてると、急接近してくる気があった。
見覚えのある気。
人混みの中から、龍星の手が掴まれる。
「龍星!!」
明らかに息を切らしている上鳴。
龍星の姿が見えてわざわざ引き返してきたのだろう。
予想もしなかったことに龍星は驚く。
「何してんだよ!? 逃げよう! あんなの勝てねえよ。あぶねえって! ポイントも稼げねぇんだし意味無いだろ!?」
間違っていない。
プレゼント・マイクも無視を推奨していた相手だ。
上鳴はさっき知り合った相手の為だけにわざわざ戻ってきて逃げる選択をしようとしている。
その気持ちは龍星にとって嬉しくはある。
が。
「だからこそだよ。誰かがあいつを止めないと他の人が危ない。まだ逃げ遅れた人たちもいる。人を助けるのがヒーローだから」
「……!」
「何より他のロボットとひと味も違うロボットがいるんだから挑戦しなくっちゃ! どうせここまで来たなら上鳴は他に逃げ遅れた人を頼んだ!」
腕を振りほどいた龍星は0ポイントロボットに向かって駆けていく。
上鳴はその後ろ姿を見るしか出来なかった。
自分は何をしていたんだと。頬を叩いて、上鳴は龍星の言葉に従うことにした。
あいつは絶対合格する、とまだ入学すらしてないのにヒーローのように思える姿に確信を持って。
だからこそ再会するためにも自分も頑張らなければと。
上鳴はもう龍星を心配していない。
今、自分に出来ることを。
そして0ポイントロボットの居る方へと駆け出した龍星だが。
「お前の相手はこっちだッ!」
出力の抑えた気弾をぶつけると、0ポイントロボットが無造作ではなく、標的を定めて動き出す。
巨大な腕を振り上げ、龍星が加速する。
振り下ろされるより早く龍星の蹴りが胴体に炸裂する。
分厚い装甲に阻まれ、軽く下がらせた程度。
しかしここなら既に0ポイントロボットが破壊した範囲内であり、周囲に気も感じない。
一応何か気が感じれないような、そういう個性がある可能性も考えて目視したが、特に反応もなく。
ここでなら問答無用で消し飛ばせる。
本当は龍星は今の蹴りで壊すつもりだったが――
「流石に頑丈か。だったら」
空中で両腕を真っ直ぐに突き出した龍星は手首同士をくっつけ、腰部に添える。
「か……め……」
全身から白いオーラが立ち上り、青白い球体が手の中で形成される。
何かしてくると理解したようで、0ポイントロボットが腕を真っ直ぐに伸ばした。
「は……め……」
当たるギリギリで前方宙返りした龍星はそのまま腕に着地し、一気に駆け出す。
そんな彼を叩き落とそうともうひとつのアームを叩きつける。
姿がない。
落ちた――わけではなく。
頭上。
腰を捻りながら0ポイントロボットの頭上を取っていた龍星は、ついに溜められた気を一気に解放する。
「波ァ!!」
突き出された両手から放たれる、高出力の破壊エネルギー。
一直線に頭部に突き刺さり、すぐに胴体、脚部と破壊のエネルギーが覆い尽くす。
「ハァアアアアアッ!!」
分解していく中で、さらに出力を高めたかめはめ波は0ポイントロボットの強固な装甲を容赦なく削り、巨大な爆発が起きる。
爆煙に覆われる中、そこから歩いて出てくるのは無傷の龍星。
球体のようなエネルギーを貼られており、龍星が完全に出てくるのと同時に。
『終了〜!!』
終わりを知らせる合図が響き渡る。
龍星はエネルギーを解くのと同時にマフラーを見て、汚れてないことに安堵の息を吐いた。
爆発に巻き込まれて危険だからではない。
マフラーが汚れたら困るからわざわざ消費の激しいバリヤーを貼ったのである。
余裕がある状態でなければ使えない力だ。
ただ彼が0ポイントロボットを倒した光景は、果たして何人の人が見ただろうか。
そんなことは龍星にとって些細な問題なのだろう。
彼はすぐに怪我人の救助に向かっていた。
もう試験が終わったにも関わらず。
職員が来る頃には怪我人はもう集められていたという。
これ似て、雄英高校ヒーロー科の入試試験は終わりを迎える。
メテオコンビネーションの時のかめはめ波というかメテオコンビネーションそのものが好きなんですよね、その理由がドラゴンボール改サイヤ人来襲で大変お世話になりました。不満はある部分はあるけど良ゲーでした。新作あったらやりたいと思うくらいには。