魔訶不思議大冒険 作:一番好きなのは界王拳
波乱の個性把握テストがあった日の翌日。
雄英教師による授業が始まったのだが。
「じゃ次の英文のうち間違っているのは?」
(普通だ)
(普通だ)
(くそつまんね)
(関係詞の場所が違うから……4番!)
(ああ、やばい。まったく分かんない……)
初日があまりに濃すぎたため、身構えていた者たちも多かったのだがプレゼント・マイクの英語の授業はあまりに普通だった。
拍子抜けとはこのことだろうか。
その中でも普通についていけてない龍星はオーバーヒートしつつあった。
サイヤ人はバカの集まりなのだろうか、なんて思わず考えてしまうくらいには。
孫悟空はまだしも、ベジータはそこまで馬鹿ではなかったのだが。
ただ龍星は投げ出すことはせず、頑張って最後まで解こうとして最終的に分からなかったものは先生やクラスメイトに聞いて教えてもらっていた。
昼飯に関しては、クックヒーロー・ランチラッシュの物凄く美味しいご料理が安価で食べられる。
雄英側も個性の影響で食欲旺盛な生徒のために切らさないようにしてるわけだが、久々の大食漢の生徒ということもあって張り切って作ってるのはここだけの話。
カチャカチャ……パクパク! モグモグ! ガツガツ! カタッ! ムシャムシャ! ガブッ! モグモグモグモグ! ガツガツガツガツムシャムシャ!!
そしてそんな龍星は、それはそれはもうテーブルがほとんど一人で占領してしまうほどにお皿が山積みになっていく。
しかも食べ終わる度に流れるように皿が動くのにお皿に配慮してるのか安定した最適解のバランスで積まれている。
同席していた上鳴と葉隠、それから一緒になった耳郎は目を丸くしていた。――葉隠は姿が見えないが。
「すっげぇ食欲」
「ねっ、こんな山積みになってるの初めて見た! どこに入ってるんだろ?」
「見てるだけでお腹いっぱいになりそうだわ……というか太らないの?」
「ん? ……ゴクッ」
「ちゃんと噛めよ!?」
耳郎の質問。
彼女の姿は隙間から見えてるため、恐らくそこは配慮してたのだろう。
反応して目を向けた龍星は口の中に入っていた食べ物をそのまま飲み込む。
隣の席にいる上鳴が思わず心配で立ち上がって、片手に水を持ちつつ背中を擦っていた。
「太ったことはないな。そういう体質なんだと思う」
サイヤ人でも確か太ってる人がいた記憶がある龍星はそうだと思っている。
そもそもサイヤ人は本人の戦闘に向いた体質に変化している可能性の方が高いのだ。
まぁ例外的にフュージョンの失敗例でデブになったりガリガリになったりなどはあるが。
「あんた全国の女子を敵にしたからね」
「いや男からしても羨ましいよ」
「昔言われたなぁ」
「経験者だったか……」
「でもいいなー! スイーツとかたくさん食べれるじゃん! ちょっと羨ましいかも!」
「カロリー高いもんね、スイーツ」
「そうそう!」
とまあ、雄英でも普通の会話をしつつも更に山積みになった皿で満足したのか龍星は機嫌がめちゃくちゃいい状態でランチラッシュにお礼を言いに言った。
味もよく量も十分。
龍星にとってなんと素晴らしい環境か。
流石にサイヤ人を相手にするのは疲れたのかランチラッシュは疲労していたが、機嫌良さそうに、そして次はもっと早くより美味く提供すると燃えて、龍星とランチラッシュは握手を交わした。
今ここに、友情が生み出された瞬間である。
なお、他の生徒たちが龍星の食欲を見て自分って少食だったのか、と一般人からすれば大食いに分類される者までも錯覚してしまったとかなんとか。
サイヤ人全体がおかしいだけなので心配しなくていい。
そして午後の授業。
ヒーロー校だからこそある授業。
その授業とは。
「わーたーしーがー!
――普通にドアから来た!! 」
ヒーロー基礎学の時間である。
しかも他の高校と違い、雄英はあの平和の象徴にしてNo.1ヒーロー、オールマイトが担当。
恐らくこれからにおいても今の雄英生たち以外がオールマイトから授業を受ける機会はないだろう。
ビートは気で感じ取っていたが、当然大人気のオールマイトはクラスでも大人気。
大盛り上がりだ。
「すげぇ! 本当にオールマイトだ!」
「シルバー時代のコスチューム来てるけど、本当に教師やってるんだ!?」
「画風が違いすぎて鳥肌が……!」
クラス中が大興奮に包まれる中、オールマイトは仁王立ちで豪快に笑うと、早速と言わんばかりに口を開く。
「ヒーロー基礎学! ヒーローとしての素地を叩き込む科目だ! 単位も最多! 早速だが、本日行うのはコレ!!」
バシッとオールマイトが掲げたカードに書かれていたのは、『BATTLE』。
つまり。
『戦闘訓練!!』
その言葉に全員が身を引き締め、好戦的な者達は既に瞳もギラつかせていた。
龍星はワクワクと子供のような顔をしている。
「更に! 入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って作られた―――
「おぉ!!」
オールマイトが叫びや否や、教室の壁が飛び出し、中には細かく収納された戦闘服。
その登場にクラスのテンションも爆上がりするが、龍星はたまにこの世界の技術力がよく分からなくなっていた。
「さぁ! 着替えてグラウンド・βに集合だ!!」
オールマイトの言葉に全員が頷き、更衣室にて自分のコスチュームに着替えた一同はグラウンド・βへと集まった。
「形から入るってのも実に大切なことだ少年少女! なぜなら今日から君らは……ヒーローなのだから!」
トンネルを抜け、陽の光の下へと歩み出る1年A組の生徒たち。
各自の『個性』や要望に合わせて作られた思い思いが理想としたヒーローコスチュームを身に纏い、その表情には大半の者が誇りと高揚感が満ち溢れていた。
各自が褒め合う中で、遅れてやってきたのは龍星だった。
上半身に青のアンダーシャツ。その上には赤い武道着。
黄色いマント。
手首に青色のリストバンド。
下半身は同じくダボッとした赤い武道着。
それを止めるための青い帯。
グレーの靴下にホワイトブーツ。
どれもこれも機能としては重量を増す機能が搭載されており、それ以外は特に機能をつけていない。
オンオフが出来るため、今はオン状態にして修行モードに入っている。
が、多分本気出す時はオフにせずに脱ぐだろう。
ドラゴンボールを見て孫悟空に憧れた男たる者、やはり重りを脱いで強くなる展開が大好物なのだ。
後半ではピッコロくらいしか使ってなかったが……。
ある意味では自分の理想を貫く姿とも言えよう。
コスチュームというよりは武道家とも言うべき姿。
ただ青いインナーに関しては体のラインが出ているため、鍛えられた筋肉が浮き出ている。
だが孫悟空のインナー姿が1番好きで印象に残ってる彼はインナーだけは外せなかった。
実は黄色にするか青色にするかは悩んだのだが、ねじれに聞いたら青と即答されたという余談があったりする。
龍星は理由まで聞かなかったし素直に従ったが何故青と即答したのか少し考えれば分かることであるため、察して欲しい。
「おぉ! かっけーな!」
「武道家って感じがしていいなそれ! めちゃくちゃかっけぇ!」
「上鳴も切島も、みんなかっこいいよ」
興奮気味に駆け出してきた上鳴と切島に龍星は苦笑しつつ、ふと気になったのが耳のようなものがある緑谷の姿。
もちろんフルアーマーな飯田とか露出度高くないかと思ってしまう女子組など気になる面々もいるものの、個性把握テストの時に緑谷に興味を持ったからだ。
飯田が言っていた巨大ロボを倒したのも間違いなく緑谷だと。
そんな彼の耳。
思わずオールマイトを見ると、触覚のような髪を再現したのだと分かった。
オールマイトに憧れているんだな、と即座に理解する。龍星も孫悟空に憧れてるから似た服装にしてるのだから。
何はともあれラストの龍星が来たことで全員が揃うことになった。
そのため、オールマイトから説明が始まる。
「さて有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ! 今回の内容はズバリ、屋内での戦闘訓練!」
オールマイトが言うには、真に小賢しいヴィランは闇に潜むらしく、凶悪敵との出現率は屋内が高い。
それらを想定した内容であり、これからヒーロー組・ヴィラン組に分かれての2対2の屋内戦を行うとの事。
ルールとしては制限時間内に『核兵器』確保。もしくはヴィランを全員を確保すればヒーローの勝ち。
逆にヴィランは制限時間内まで『核兵器』守護。もしくはヒーローを全員を確保すればヴィランの勝ち。
と言った様に内容はシンプル。だが戦闘訓練のように壊せばいいだけではなく、屋内。それも核兵器を使うというのがこの授業のミソだろう。
周囲に気を遣わなければ核兵器を刺激してドガーンである。
場所も訓練用のビルで行い、チーム決めも公平にくじ引き。
適当ではなく、急造のチームアップも想定してるとのこと。
なお、オールマイトはカンペを読んでいた。
そしてくじ引きの結果。
「おっ」
「一緒だね!」
龍星は葉隠とペアだった。
知らない人ではない上に透明という分かりやすく強い個性。
透明人間は気を使えない時とはいえ、ヤムチャを苦戦させるくらいには視覚というのは人によって大切なのだ。
ちなみにその時は亀仙人の鼻血で透明人間の能力を無効化していた。
試合に関してだが。
第1戦:ヒーロー側、緑谷出久・麗日お茶子 対 ヴィラン側、爆豪勝己・飯田天哉という組み合わせになった。
龍星は1番手でなかったことには残念だったが、他の者たちはモニター室で戦いを見るという。
この試合はいきなり壮絶な戦いとなった。
何と爆豪が開始と同時に緑谷達に向かって単身で突撃したのだ。音声は入っていないが、モニターを見る限り完全に爆豪の独断であり、飯田との連携も取れていない。
それを読んでいたように奇襲を避けた後、爆豪の攻撃すら読んで緑谷は一本投げ。
それから個性を使わずに渡り合う緑谷に対してイラついているのか、爆豪の攻撃はどんどん苛烈になっていき、緑谷も渡り合ってはいるが一歩間違えれば大けがを負いかねない状況に陥っていた。
そしてついに訓練で撃つような威力のものではない爆破を放ち始めた。
モニタールームまで響き渡った轟音にクラスメイト達も困惑している。
核兵器を扱う場で出していい火力ではなく、建物の崩壊を起こす危険性も考えれば決していい行動とは言えない。
冷静さを欠いてるのは間違いなく、オールマイトも次にその火力を放てば失格にすると注意するほど。
それからは使えないと見たのか爆豪が殴り合いを仕掛けるが、緑谷は圧倒されていた。
その時に見た目や言動とは裏腹に繊細な力のコントロールを見たクラスメイトたちは本人のセンスの高さを知ることになり、追い詰められているのは緑谷なのに何故か余裕がないのが爆豪というおかしな戦況。
止めた方がいいと告げる声にオールマイトも止めようとして、ようやく個性を解放した緑谷は爆豪にではなく天井を貫いて、麗日が核を回収して勝利。
爆豪を出し抜いた緑谷の捨て身の策によって掴んだ、試合の勝利。
しかし勝ったはずの緑谷は個性を使った腕を破損させ、爆破を受けた腕までボロボロで気絶。麗日は許容範囲を超えたのか吐いていた。
果たしてどっちが勝ったのか怪しく見える様子で、勝負に負けて試合に勝ったとも言うべき状態だった。
それから講評して、八百万が言葉でボコボコにしていたが次の試合へ。
第2戦:ヒーロー側、轟焦凍・障子目蔵 対 ヴィラン側、龍星弥斗・葉隠透。
結果が出た瞬間、偶然にも轟と龍星の視線が交差する。
推薦入学という特別待遇で合格した生徒と、歴代1位を叩き出した首席の戦い。
間違いなく現最強同士の戦いになることは想像に容易い。
オールマイトに持ち場に着くように言われたので、龍星と葉隠は軽く建物を見回ってから4階に陣地を取る。
こんこん、と核の硬さを確かめたあと、持ち上げて重さを確認。
流石にハリボテらしく、ちょっと期待外れそうな目でゆっくりと降ろした。
本物だったら爆発させる気だったのだろうか。サイヤ人なら生き残るだろうが。
その程度で解決するならあの世界はピッコロ大魔王の脅威に怯えることなどなかったのだ。
それから軽くストレッチする。
「ねぇ、龍星君の個性って何? 私は見ての通り“透明化”の個性だよ!」
「まあ、見ての通りだよね。でも原理とかあるんでしょ?」
「うん、光を透過させてレンズみたいに屈折させてる感じ。あまり使えないよね……」
「そう? 俺は興味深いけどね。そもそも透明化って時点で色んなこと出来るじゃん。索敵から奇襲、情報収集だってお手の物。使えないって方がおかしくない? 葉隠はもっと自信持って良いんじゃないかな? そもそも光をレンズみたいに屈折させてるってのを信じるならもっとやれることも増える。俺とならコンビネーションも出来るだろうし、葉隠は自分が思ってるより凄いと俺は思うよ? というかまず透明化って――」
明らかに落ち込む葉隠はまさかべた褒めしてくるとは思わなかったのか、『ちょ、ちょっと待って。もう勘弁して!』と葉隠が何処か慌てた様子を見せる。
思ったことを言ってただけの龍星は不思議にしつつも大人しく従っていたが、もし顔が見えていたならば、顔を赤くする彼女の姿が龍星の目にも映っただろう。
ねじれが危惧していたことは間違ってなかった。
サイヤ人である龍星は同族意識こそ高いが、どうしても地球人相手だと異性に対しても同性に対しても他者への情が薄らいでしまってるので仕方ないのだろうが。
例え彼に前世があってもサイヤ人の本能には勝てない。
「そ、それより! 龍星君ってビームとか出したり凄い超パワー出してたり高速移動してたり色々してたよね? しかも尻尾まで生えてる! 猿の尻尾でしょ?」
「そこは合ってる。そうだね、俺の個性も言っておこうか。と言っても結構単純なんだけど」
話を変えた葉隠だが、そうなると案の定、個性について聞かれる。
龍星は予想してたので別に気にしていない。
そもそも最初に診断された個性から変更届を出して龍星は既に変えている。
その名は――
「俺の個性は“サイヤパワー”。普通の人間と違ってサイヤ人っていう特殊な戦闘民族でね。尻尾があるのもそれが理由。“気”という力を使える」
「き?」
「そう、こう書くんだ」
指先から気功波を撃って焼き文字を書く。
どういう漢字なのかそれで分かったらしい。
「簡単に言えば回復力が速い、頑丈、老いが他より遅い、戦いの中で成長する。身体的特徴がある程度の年齢に達すると変化しないとかあるかな。こっちが基本的にメインだけど、気という生命力を使ってビーム出したり浮いたり身体能力強化したりとかも出来る」
「めちゃくちゃ強いじゃん!」
そう、宇宙最強の戦闘民族とされるだけあって銀河系でも最強クラスの戦闘民族なのだ。
しかもサイヤ人は種族全体の戦闘技術で、圧倒的なフィジカル、舞空術のような飛行能力、気功波の類を撃つことを体得している種族である。
まぁ惑星ベジータ生まれではない上、ドラゴンボールの世界じゃないこの世界では龍星以外にサイヤ人なんて居ないし龍星は自分で身につけることになったが。
「気は生命力だから葉隠も使えるかもしれないけどね、修行次第で」
「え、私も?」
「うん。知り合いが使えるし。と言ってもその人は個性とたまたま相性が良かったら使えただけかもしれない。他の人だとどう化学反応を起こすか分からないから使えるかどうかはなんとも言えないかな。それに簡単に出来るものでもないよ」
ねじれの個性がねじれる性質ではなくコントロール可能になったように、各々特徴にあった進化もするかもしれない。
実際気にも多く種類があり、超能力だったり回復だったり属性を持ったりと有り得ない話ではない。
が、龍星はねじれ以外に使った誰かを見た事はないので、使えない可能性もある。
個性を使用してる姿を見ると気が上昇するため、個性=気になってるんじゃないかとも推測しているが、その辺は龍星でも分からないのだ。
「そっかぁ、でもそうだよね。そんなに簡単に出来るならみんな出来てるはずだし。他にはあるの? その、サイヤ人って」
「戦いに生き甲斐を見出してる」
「戦闘狂じゃん……」
「戦闘民族なので」
人にはそう言う葉隠だが、葉隠は葉隠で露出狂なんじゃないかと龍星は思った。
彼女のコスチュームは手袋とブーツだけなのである。
じーっと見つめてると、もじもじとしていた。
「な、何?」
「いや何でも……うん、趣味は人それぞれだよ」
「ちょっと待って! 何か誤解してない!?」
ポンッと肩を叩いた龍星は優しい目を向けていた。
彼女がどんな性癖を持ってようと自分には関係ないのもあるが、否定は宜しくない。その人の趣味は人格否定にも繋がるのだ。
というか龍星も龍星で戦闘に喜びを見出すある意味変態なので言えないのもある。
「って、作戦会議してなーい! 轟君って推薦入学って噂だよ。そんな相手にこのままでいいの!?」
「俺首席だけど?」
「そうでした!! でも何もないのは……」
「そう言うと思って既に考えてある」
「え、ほんと? 聞かせて聞かせて!」
ずいっ、と身を乗り出してくる葉隠に、自分のコスチュームのことを考えてないのだろうかとちょっと龍星は思ったが、作戦を共有しなければチームとして意味がない。
龍星の作戦。
それは。
「まず俺が轟と戦う」
「うん、それでそれで?」
首席合格の龍星が戦うのは1番正しいだろう。
少なくとも氷の力を使うことだけは分かってるため、葉隠よりも龍星の方がいい。
超人的なパワーを持つのは既に個性把握テストで証明されている。
「次に俺が障子と戦う」
「うん……うん?」
「終わり」
「私何もない!? というか戦いたいだけじゃん!」
無言で目を逸らした。
嘘をつくのが下手なのだと葉隠はすぐに理解したが、がっくしと肩を落としていた。
作戦なんてなかった。
「よーし! それなら私本気出すから!」
「本気?」
まさか彼女も変身を、と思った龍星だったが、葉隠は手袋とブーツすら脱ぎ、小型無線機を除いて完全に透明となっていた。
つまり、手袋とブーツしか履かない露出魔からただの全裸の変態へと進化した。
「ふふーん! これで姿が見えないでしょ。どう! 何処にいるか分かる? 触れられる?」
「そこでしょ」
「うっそぉ!?」
恐らく自信満々だったのだろうが、龍星は普通に葉隠の腕を掴んだ。
小型無線機があるとはいえ見えないのと同義だ。
「もしかして……見えてる?」
「姿は見えてないよ。気で位置が分かるだけ」
「その力、チート過ぎない?」
「それは思う」
ドラゴンボールの世界では基本の技術になっているが、この世界においてはバランスを崩壊させる力だろう。
なのでヴィランに広まったら大変なので龍星はねじれ以外に教えたことはないのだが。
誰でも使えることは知られたところで修行方法が分からなければ使えるものではない。
「というか、ついに全裸か……女の子がそれはどうなの? マントいる?」
「それは言わないで! あとマントはやばくない?」
「確かに」
全裸マントはむしろ逆に不健全になりかねないだろう。
言われて同意した。
「……じゃあ俺の服――」
「わぁー! 脱がないで脱がないで! そ、そういうのは恋人になってからというか気が早いというかっ!」
どうやら自分は全裸になっても誰かの全裸を見るのは恥じらいがあるらしい。正確にはパンツ一丁になるだけなのだが。
龍星は幼少期から恋人にパンツ一丁姿を見られてきた男である。今更羞恥心はない。なんなら全裸でも平気だろう。
よく分からない子だなと龍星は正直に思った。
「でもさ、透視の個性あったら丸見えじゃない?」
「た、確かに……」
「俺でも見える……というか葉隠は許容範囲を超えたら多分透明化解除されるよ?」
「えっ、出来るの」
「多分ね。とまあ、そういうわけだから体毛とか髪とか血とか提出したらそれらが透明でも専用の道具あるだろうし作ってもらえると思うよ。それでボディスーツ的なものは作った方がいいかもね。実物が必要なら1度俺の持つ光を発する技で透明化解除させるし。解除後に切り離しさえすれば切り離されたものまで透明化することはないと思うしね。透明化の状態だと透明のままかもしれないけど」
「うう、考えておきまーす……ってぇ! 結局何も話してなーい!」
『さぁ、そろそろスタートするぞ!!』
「えっ、どうしよっ!?」
「とりあえず服着たら?」
「えっち!!」
「えぇ……?」
正論を言ったのは龍星なのだが、まさかの反撃に理不尽さを味わった。
(入学したての学生とは思えない龍星少年に推薦入学の轟少年……この戦いは彼ら2人に掛かっているだろう。どう出る!?)
試合開始を伝えるオールマイトは、二人の戦いに注目していた。
教師として、ヒーローとして。
この組み合わせは興味深いものなのだろう。
「4階。北側の広間に二人。恐らく核部屋で待機している。もう一人は素足だが……透明のやつが捕まえる魂胆だろうな。だが作戦を決めきれてないのか焦ってるようだ」
「そうか、外出てろ。例え作戦があったとしても――俺には関係ねぇ」
索敵能力があるとはまさか露にも思っておるまい。
なお、今頃龍星は焦る葉隠に体を揺さぶられてたりするが、そんなことを知る由もない轟はビルに触れる。
その瞬間、ビルが凍結した。
「ん? ――葉隠!」
「え、きゃっ!?」
全裸であるため、素肌に触れることになるがそんなこと言ってられる場合では無い。
咄嗟にマントを葉隠に被せた龍星はお姫様抱っこで彼女を抱え、舞空術で宙に浮く。
その一瞬でビルが地面ごと凍結した。
核に関しては龍星が目で浮かせたため、凍結してなかったりする。もちろんゆっくり降ろした。気は超能力っぽいことも出来るのである。
目から気を飛ばして対象物を包み込んでる、と思ってもらえると分かりやすいだろうか。
ただその辺に置いていた葉隠の靴まで凍結してしまったため、龍星は着地しながらその場で靴を脱ぐ。
「とりあえず履いといた方がいいよ。凍傷になったら困るでしょ?」
「う、うん。ありがとう。龍星君は?」
「俺は頑丈だから大丈夫。それより離れないで」
流石に裸足は危険であるため、龍星の靴を履いていた。
それから離れないように伝えたら、何故か後ろからくっつかれた。
寒いのだろうか、と考えたところでそういえばマントを羽織ってるとはいえ、ほぼ全裸かと思い出した。
実際にプルプルしてるので寒そうだった。
とりあえず足場の氷を壊してからドーム状のバリアを展開する。
「あれ、寒くない?」
「この中だけね」
と説明してると、龍星は近づいてくる気に反応して入口を見つめる。
そこには歩いてくる轟の姿があった。
「――障子の報告で分かってたが、やっぱり無事か」
「随分な挨拶だね。効率がいいのは否定しないけどさ」
これがもし他の生徒だったなら今ので決着が着いていただろう。
もしくは龍星が気を読めなければ彼でも凍結は食らっていたはずだ。
「にしても、葉隠は全裸なんだからもっと手心とかはなかったの? 俺が抱えたからよかったけど、氷漬けは可哀想だよ。風邪引くじゃん」
「――今はヴィランだろ。それに勝負事にそんな綺麗事言ってられねぇよ」
「それもそうだね」
ならば、と龍星は手を轟に向ける。
訝しげにしながら身構える轟に対し、龍星はその手を横に向けた。
そして手には気弾が生み出される。
「お前、まさか……!」
「俺もヴィランらしく行こう。動くなよ轟。お前が動けば俺は核を
「ちょっ!?」
当然ハリボテなので爆発しないが、あくまで
それを理解している轟は龍星を睨んでいた。
何も聞いてない葉隠は泣いてもいい。
それを見ていたモニター室の面々たち。
「仲間を巻き込まずにビルごと凍結……!」
「最強じゃねぇか!」
「龍星君もよく避けたよねー! しかも核まで守ってんじゃん! どーいう個性!?」
「というよりは分かってたって感じだよな! 流石龍星だぜ!! でもあいつ、何してるんだ?」
仲間を巻き込まずにビルごと凍結。
その行動は凄まじいの一言だが、それを葉隠を抱えて守りつつ、核まで守った龍星に賞賛と感嘆の声があがる中、何故か龍星は黄色い弾を核に向けている。
音声が聞こえないため、見てるだけだと龍星が壊そうとしてるようにしか見えない。
「あれは“脅し”さ。追い詰められたヴィランは時に自分ごと全てを壊そうとする。龍星少年は核を人質に轟少年の身動きを封じようとしているのだ」
「確かにヒーローという立場である轟さんには出来ない上、龍星さんにとっては最も素早く確実に、そして何も被害を出さずに勝利できる方法ですわね……ハッタリでもそれは強力な武器になりますわ」
そして核を人質にされた轟は龍星に従うように動くことをしなかった。
核の確保はヒーロー側の勝利条件。
だが破壊もヴィラン側の敗北を意味する。
本気でやるつもりはないだろう、と見積もりつつ状況を打破すべく轟は思考を回す。
何らかの球体に覆われている龍星と葉隠。
恐らくアレは身を守るためのものだろうと。
つまり、優先すべきは。
「自分ごと自爆する気か?」
「どうだろうな? ハッタリかもしれないし本気かもしれない。だがヒーローなら守らなくちゃならないよな、ヴィランの命も」
「……っ」
ヒーローとは基本不殺である。
ヴィランを無力化するのがヒーロー。
言ってしまえば、ヴィランも守らなければならないのがヒーローだ。
「お前が動かなければ核も俺達も無事だ。だが動けば全てが終わる。よっぽどの馬鹿じゃないならどれが正解か分かるだろ」
「……そうだな」
ヴィランらしく普段とは違う口調で話す龍星だが、轟の足に気が集まっていくのを気づいておきながら敢えて無視していた。
多くのサイヤ人は手段を選ばないことも多い。実は孫悟空やベジータ、孫悟空の実親であるバーダックのような戦士は結構珍しい。しかし龍星としては戦いたい。が、戦うなら勝つ。
そのために必要なピース。
それは龍星と轟、双方が同じ考えを持っていた。
この拮抗状態を破るには。
「――轟っ!!」
後ろから窓ガラスが割れる音が響く。
反応した葉隠は驚いたように振り返り、気で読んでいた龍星は目だけを向けていたが、轟も龍星もこれを待っていた。
龍星は核を回収されるのを避ける為。
「障子君!? って、やばっ!!」
「だと思ったよ。勝つにはそれしかないからね!」
「もうやらせねぇよ!!」
そして轟は動くチャンスを作るためだ。
足から氷が発生し、龍星は横に向けていた手を氷に向けて気弾を発射。
氷の壁が防ぐのを無視して、バリアを解除後一瞬にして障子の前に辿り着く。
「そう簡単にはいかないか! だが!!」
「ハハッ! そうこなくっちゃ!!」
障子の個性は複製腕。
尚且つその力は三本だけで540kgの記録を叩き出したほど。
その腕が何本も形成され、連続で拳が放たれる中、龍星はふたつしかない拳を高速で繰り出すことで打ち合い、障子が僅かに怯んだ隙に放たれた回し蹴りが障子を吹き飛ばす。
すぐに地面に手を着いて勢いを殺していたが、追撃するように放たれた気弾を氷の壁が防ぐ。
「大丈夫か」
「すまない、助かった……!」
気弾によって氷が壊れていく中、龍星は口角を上げて手の感覚を確かめるように開いたり握ったりしていた。
「さて、これで正面対決しかなくなってしまったわけだが。どうする、ヒーロー」
氷漬けが失敗。奇襲も失敗。
他に手がないのであれば、ぶつかり合うしかない。
「だったら乗ってやるよ」
轟が氷を生み出すと、龍星は葉隠の前に移動して氷を殴り壊し、枝分かれするように迫る氷に対して手のひらを向け、衝撃波を放って消し飛ばす。
その隙に核に駆け出した障子に気功波を放ち、障子は回避行動を取る。
龍星が先に狙ったのは障子だった。
「俺か……!」
「索敵持ちでしょ。なら潰すに限る」
迎撃するように振るわれる障子の拳を逸らし、龍星は胸ぐらを掴むとそのまま背負い投げで叩きつける。
すぐにその場を退くと、着地を狩るように氷が次々と生成され、辺り一面が氷だらけになった。
しかしそれらは全部身軽な動きで龍星に避けられていた。
(こいつ、障子と戦う時は巻き込むように動いて、避ける時は核を常に視野に入れつつ俺の先を読んで行動してやがる。戦い慣れしてるな……しかも隙がねえ。核を狙ったところで妨害されるだけだ。無力化しねぇと)
「逃げてばっかでいいのかよ」
「そういう轟も俺を相手に手加減してて余裕じゃん」
「……!」
個性の詳細はまだクラスメイトになって1日しか経ってないため、お互いに分かっていない。
しかし龍星の目は誤魔化せない。他と違い、轟の気には二つ存在している。一つは今使っている氷。
そしてもう一つは個性把握テストの時にも使っていた氷を溶かす力。
すなわち。
「あるんでしょ、もう一つ。炎熱タイプの力」
「……だったらなんだ」
「なんで使わないの? 使えないわけじゃないよね? 氷結攻撃は無限に使える訳じゃない。だんだんと精度は落ちてる。恐らく体温か何かが影響を与えてる。でも、もう一つ使えば解決するんじゃないの?」
「……うるせぇ。お前には関係ないだろ! 俺は右だけで1番になると決めてんだ……!!」
「関係ない、ね。そりゃそうだけど」
龍星には轟の過去に何かあったとか知らないし氷しか使わない理由も知らない。背景を知らない。
だとしても、龍星からすれば手加減されてるようにしか思えない。
何より龍星は、現実を知っている。
迫る氷結攻撃に対し、龍星の雰囲気が一気に変わった。
突き出した手のひらが氷結攻撃を完全に受け止め、白い炎が溢れる。
気によってさらに上昇したパワー。
氷を掴むように指を閉じるとヒビが入り、一気に広がっていき。
「――加減してやっていけるほど世の中は甘くないよ。お前は他人の命がかかっててもそれに拘る気かよ。上には上がいる。それを教えてやる」
氷が砕け散った。
氷の欠片が宙を舞う中、龍星は両手を突き出して手首を合わせる。
その技は。
あの0ポイントヴィランを破壊し尽くした――。
「か……め……」
当然入試内容を見ていたオールマイトはその動作を知っており、青白い球体が生成されると共に通信が繋がる。
「は……め……」
『待つんだ龍星少年! 君のその技は――!』
「……! チィッ!!」
ヤバいと判断した轟が部屋中を覆い尽くすほどの分厚い壁を生成した。
が、龍星は轟に向けるのではなく。
「波ーーーッ!」
障子が割った窓ガラスに向かって放っていた。
しかも、放出したわけではない。
何かを狙って攻撃した技ではない。
故に、その姿を見ていたオールマイトは驚かされていた。
(そうか! 龍星少年は技を移動手段に……! 先入観に囚われていたのは私の方か!)
ロケット噴射のような小さな気功波は龍星の体を一気に加速させ、分厚い氷の壁に龍星のショルダータックルが激突。
気を開放したことによる戦闘力の上昇……かつ、かめはめ波の出力によって強化され、分厚い氷を掘るようにトンネルを生成しながら貫通する。
右半身に霜が降り、完全に動きが鈍くなっていた轟は龍星のロケット頭突きが反応出来なかった。
「がっ!?」
腹部に直撃し、彼は吹き飛んでいく。
氷を背後に生み出して勢いを殺そうとするも、部屋から一気に追い出される。
「轟!! 俺が……!」
すぐに龍星に駆け出す障子だが、龍星は横に跳ぶようにズレ、跳んだタイミングこそチャンスだと障子は飛び出した。
飛び出してしまった。
「障子、相手は俺だけじゃないよ」
「……! しまった!」
龍星ばかりが目立っていて、一番の脅威を排除することを優先にしすぎたのだろう。
索敵を怠った結果、今までずっとステルスしていた葉隠が着地した障子の足を引っ掛け、さらに背中を強く押すことで地面に押し付ける。
人とは思いがけない攻撃には弱く、なおかつヒーローにまだなってすらない経験の浅い学生には効果的だった。
既に持っていた確保テープに巻かれてしまう。
「ちゃんと活躍できた!」
「意外と動けるね、葉隠って。体術鍛えたら良さそうかも」
「龍星君のお陰で忘れられてたからね」
「なんだかんだ作戦っぽくなったな!」
「行き当たりばったりすぎるんだけど!!」
ちなみに話した訳ではなく、気の位置で葉隠のいる場所が分かったからこそ誘導しただけで、葉隠が何も出来なかったらそれはそれで自分が迎撃してただろう。
残る相手は轟のみ。
捕まえた以上は核が狙われる心配はないため、葉隠に念の為に待機してもらい、かめはめ波の余波で氷も消えて室温が戻りつつあるので部屋から出る。
「――轟」
「……もう来たのか」
氷によって壁にぶつかることなく途中で止まっており、背を預けていた轟はビートを見上げる。
「どうしてそんな頑なに使わない? 俺は本気のお前と戦いたい」
「……」
彼の素直な気持ち。
だが龍星の疑問に轟は何も答えず、何処か憎しみに満ちた目が宿っている。
残念ながら今世で人を憎んだことがない龍星には彼の目がどんな感情を持っているのか分からなかった。
「……ま、いいけど。本気の轟だったら俺に勝てたかもね。過ぎたことを言っても仕方ない。今回は俺の勝ちだよ」
『ヴィランチーム、WIN!!』
制限時間。
それによって勝負は決着が着き、道着を脱いでインナーになった龍星は轟に被せていた。
それから手を伸ばす。
「訓練とはいえ悪いね。痛かったでしょ」
「いや……俺の方こそ悪い。少し熱くなって……怒鳴っちまった。道着も……ありがとな」
互いに謝罪しつつ手を掴んだ轟は立ち上がると、もうひとつの個性で自分の体温を戻している。
それから感謝を述べると、龍星は首を横に振る。
「お互い様だよ。使わない理由があるんだよね? 俺も――使えない力があるからさ」
「……龍星でもか?」
「うん、俺でも。使ったら俺は、全部を壊しちゃうから」
何処か悔しそうで、悲しそうな顔を浮かべる龍星に、轟は『こいつもこんな顔をするんだな』と思っていた。
人間だから当然であっても、まだ1日しか経ってないとはいえ轟が見たことがある龍星はいつも明るく、笑顔を浮かべていたからだ。
確かにビームを撃ったり浮いたり、とんでもない身体能力をしてたり尻尾が生えてたりするが。
「でもいつかは話してよ」
「そこは諦めねぇんだな」
「そりゃ本気の轟と戦えるチャンスがあるなら是非とも掴みたいからな!!」
「……なんだそれ」
少し呆れつつも元気な姿を見せる龍星に、ほんの少し轟は笑った。妙なことに、龍星と関わって少ししか経ってない轟だが、何処か心を許しつつあることに不思議に感じていた。
それから2人は障子や葉隠がいるであろう核部屋にまず移動して合流しようと動く。
その最中。
「龍星。お前の個性って結局なんだ?」
「ああ、言ってなかったっけ。俺の個性は――」
葉隠にもした説明同様、龍星は自分の力について説明し、逆に轟からも個性のことを聞いて情報交換するのだった。
ついでに好きな食べ物なども。
なお龍星は全般。強いていえば肉である。
戻って来る頃には轟に道着を返され、身につけるとポカポカしていた。
いくらサイヤ人でも気があろうとも寒いものは寒い。なんなら龍星は実は寒さに弱い。
マントや靴は葉隠に奪われたままになってしまったが、轟が手袋なども乾かしてくれてるのですぐ帰ってくるだろう。というか今の葉隠に何か渡してないとマジで姿が分かるのが龍星と障子、あと探知出来る人物がいないと無理なので貸すしかない。
龍星は龍星で戻ってきたらクラスメイトたちに推薦入学者の轟を相手に有利に立ち回ったことで囲まれてしまったがオールマイトが宥めてから講評の時間も終わり、次々と授業も進んでいき、最後の組が終わった頃。
「お疲れさん! 緑谷少年以外は大きな怪我も無し! しかし真剣に取り組んだ! 初めての訓練にしちゃ皆、上出来だったぜ! それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて教室にお戻り!!」
まるで何か急ぐようにぱぱっと締め括ったオールマイトはバヒューンという効果音が聞こえるほどの凄まじい速度で、去っていった。
そんな急がなくていいのにな、と思いつつもオールマイトの気が途中で一気に減ったのを龍星は感じ取る。
(まさか……オールマイトは気が使えるのか……!)
と、気を使うものからすればそうとしか思えない現象なので、本当はオールマイトには活動の制限時間があるということは龍星は気づけなかった。
まぁ、まさか平和の象徴が仙豆が必要なクラスで大怪我をしているとは誰が思うというのか。
そして放課後、クラスでは切島の提案によってヒーロー基礎学についての反省会を行われていた。
モニター室ではワイワイとはしていたものの、訓練については真面目に反省会までやってることから最高峰とされるだけある。
ちなみに爆豪だけは先に帰った。
「お前、すごい食うな……」
「ほうか? ほんくれいほふうられふぉ」
「龍星君、なんて言ってるかわかんない」
「食べ終わってから喋ろうぜ」
轟と葉隠は元々席が近くで上鳴だけ遠いので来てるが、帰ったらご飯があるだろうに遅弁する龍星に三人は呆気に取られていた。
「にしても、第1戦と第2戦は特にすごかったよなー!」
「あんなの最初に見せられちまったからこっちも気合い入るよな!」
瀬呂の言葉に切島が続く。話題の中心はもっぱら第1戦と第2戦が掻っ攫っていた。緑谷と爆豪、轟と龍星の戦いはクラスメイトたちの心に少なからずインパクトを残したようだった。
そもそも推薦入学者VS首席合格の時点で注目の的だ。
「結局龍星の個性ってなんなんだ?」
「ケロ、確かに色々してて気になるわ」
「俺と同じく尻尾は生えてるのに違う感じだもんな」
緑谷は超パワー、爆豪は爆破、轟は半冷半熱と分かりやすいが、龍星はあまりに出来ることが多すぎて意味が分からないの一言だ。
ということで、サイヤパワー云々を説明した。
もちろん気のことも話した。
自分がサイヤ人だから使えるだけで他の人たちは使える保証はないことも。
予想通り気に知ってる者は居なかったが、サイヤパワーについて感心したり考察する者もいた。
同じ力も自分たちも使えると喜ぶのも束の間。
使える保証がないことには肩を落としていた。
まぁ正直な話、使えるかどうか分からない力を身につけるよりは個性を強化した方がいいとは龍星も告げた。
というのも中途半端に強化するくらいならどちらかを極め、究極の一を手にした方がいいからだ。
ねじれは個性の都合上、気を使えた方がいいし効率的にも個性の強化にも繋がったので両方鍛えた方がいい別枠として。
彼女の場合は元が活力を元にする個性であったがゆえに、生命力と同義の気を感じられる素質があったのが大きいだろう。個性にも言えることだが、結局は認識が大切なのである。
逆に言えば轟や上鳴、葉隠といった全然関係ない個性だと結びつけることも出来ないので使えないかもしれない。
だからこそ龍星はサイヤパワーという形で気を自分の個性という扱いにしたのだが。
ヴィランが使えるようになったらこの世界が困るというのもあるだろう。龍星としては強い相手と戦えるなら嬉しいが、地球の危機にしたいわけではない。
「なぁ龍星。オイラ、それよりも聞きてぇことがあるんだよ。いいや聞かなくちゃならねぇ!!」
ぶどう頭こと峰田。
何故か彼の鼻息は荒く、眼も血走っている。
しかしやけに真剣そうだったので、龍星は耳を貸すと。
「葉隠の感触どうだったんだよぉぉぉぉ!! 全裸JKの肌に直接触れるどころか抱えて! 尚且つ抱きつかれるとか男にとって夢みてぇなイベントを経験してよぉぉおお!! 羨ましすぎるぜ! 前世でどんな徳を積んだんだよぉ!! ――で、感触は? 胸は? お尻は? 分かる範囲でスリーサイズも含めて諸々全部話せぇええええ!!」
血涙を間近で見ることになるとは、A組の誰も思っても見なかっただろう。龍星も思ってなかった。
そして同時に女子がゴミを見る様な目で峰田を見ていた。まぁぶっちゃけ最低である。
「そう言われてもなぁ。軽かったし女の子らしい身体だったとしか。それに葉隠の魅力って別に身体じゃなくて彼女の明るさや性格でしょ。あまり透明人間の素顔をしろうとするもんじゃないよ」
嘘が付けないわけではないが嘘を付くのが苦手な龍星はこういった場でも素直に答えてしまったが、その場にいた葉隠を除く女子は無言で10点と書かれた点数プレートを挙げていた。
何処から取り出したのか謎である。八百万だろうか。
NGワードを避けた上で褒められて嬉しいことを言って見せたのだ。女子の反応も最もかもしれない。
葉隠は透明なので見えないがあからさまに袖が上を向いてるため、照れて顔を隠してるのだろう。
「ハッ! 紳士ぶってんじゃねぇよ龍星ェ!! お前も男なら分かるだろ! 本当は葉隠の全裸に! 感触に興奮したんだろ! 欲に忠実になろうぜぇ龍星! なぁ、オイラにも分かりやすく教えてくれや……!!」
「……亀仙人みたいだな」
思わずドラゴンボールの亀仙人を思い出してしまう。
ついでに老界王神。
だがここまで酷かっただろうか。いや結構酷かったな、と思い直した。
「逃げられると思うなよ龍星! なぁ、どうだったんだぁ!? オイラたち友達じゃねぇか……!!」
「そんな下心のためだけの友達は欲しくないよ……この話は終わり。次言ったらデコピンする」
流石に龍星のデコピンとなると吹き飛ぶこと確定だからか、あからさまに舌打ちした峰田は渋々引き下がった。
というかもうやる寸前まで行かれたのでビビって逃げたようだった。
正直な話、抱えた時は実際に軽かったし足は細くなくどちらかというと肌にハリや弾力があった。胸についても中々の物を持っている。
本当に女の子らしい体つきであったため、何一つ嘘は吐いていない。ただ詳細に言わなかっただけ。
が、そもそも龍星はサイヤ人であることもあるが雄英においてもトップレベルというか、容姿もプロポーションも良い、まさに絶世の美少女とも呼ぶべき彼女が居る。
そのため葉隠に興味がないのもあるのだが。
仮に葉隠の素顔が美少女であっても龍星は見た目で好意を抱くこともない。
というか恋人がいるのに葉隠に手を出す方が問題である。
この世界でも一応重婚は許可されていない。海外にいけば別だろうが。
とまあ、峰田のせいで話がズレたが変な空気になった中で緑谷が戻ってきた。
その空気感に困惑しているが、負傷した腕は包帯やギプスで固定されており、怪我の大きさを物語っている。
心配なのもあるが空気を変えるためにもごぞっとクラスメイトたちに褒められながら詰め寄られる緑谷。
龍星は気にせずに遅弁の続きを食べていた。
「デク君! 怪我治してもらえなかったの!?」
「いや、これは僕の体力のアレで……麗日さん。それよりかっちゃんは……」
「爆豪君? みんな止めたんだけど、さっき黙って帰っちゃったよ」
「っ! ごめん! 僕行かなきゃ」
緑谷が急いで走っていく。
それを注意しようとした飯田だったが、弁当を手に持ちながら食べ物をリスのように口に含んだ状態で龍星は肩に手を置いて首を振って止めた。
「おとほにふぁほんなへではなふぁなふったらならひゃなきゃはんないほきがあふんだ」
「すまない龍星君……食べ終わってからにしてくれないか」
ブレない龍星だったが、仕方ないので飲み込んだ。
「男には本音で話さなきゃならない時があるんだ。人生の転換期って言うんかな。今回は見逃してやって。そして俺も帰る」
「……うむ、規律は規律だ。だがもう行ってしまった以上は仕方ないか。今回だけは見逃すとしよう。龍星君も気をつけて帰るんだぞ!」
「ほーい」
「歩きながら食べたら危ないぞ!!」
鞄を気で引き寄せながら弁当の残りを歩きながら口の中に含み、龍星は1人3年のクラスに向かっていく。
先程帰る準備が出来たとねじれから連絡があったため、迎えに行くとメッセージを送り返したからだ。
その道中で、何かを話す緑谷と爆豪の姿がある。
流石に遠いしナメック星人のような聴力がない龍星には何を言ってるか分からない。
ただ泣きそうになりながらも決して折れては無い爆豪の姿が見えて、興味が失せたように歩いていく。
しかしその足取りは何処か機嫌が良さそうだ。
1度挫折した人間は何処までも強くなれる。何度も何度も挫折の人生で、それでも諦めずに修行したから今の龍星があるのだから。
前世という別の人生でもそれは同じく。
挫折に続く挫折が、奇跡を呼んだ。
「折れてくれるなよ、爆豪」
強者との戦闘は龍星にとっても生き甲斐だ。
孫悟空にベジータというライバルが居たように、龍星はライバルが欲しい。
そのためには決して折れずに上がってくる人物でなければならない。
龍星は彼には期待しているのだ。というか雄英という最高峰の学校なので同年代には期待している。
それはそうと3年生の教室に着いた龍星はノックをしたあと、扉を開けると姿を捉えた3年生たちに合格したことを祝福され、次々とパンやらお菓子やら渡されて喜んで受け取りつつ、龍星は素早く帰り支度を整えたねじれと共に雄英を出るのだった。
その道中。
「ビート君」
「どうしたの?」
「他の女の子とくっついたりした? 匂い残ってる」
「今日戦闘訓練あったからそれが原因かなぁ。ペアの子を抱えたりくっつくことになることがあったから」
「ふーん。へー」
明らかに機嫌が悪くなったねじれは背後に回る。
そんなねじれを龍星は不思議に思ってると、後ろから強く抱きしめられていた。
「ねじれちゃん?」
「上書き中」
そう言ってひっつき虫になってしまった。
意味が分からなかったが、“寂しかったのかな”、なんて思いながら龍星は背負うようにしながらそのまま帰るのだった。
大切な人に甘えられるのは悪い気はしないどころか、むしろ嬉しいのだから。