面倒な事というのは、得てして巻き込まれるだけではなく、降りかかって来るという事を改めて知ったのだ。
「達也さん、蓮夜さん……会長さんとは知り合いだったんですか?」
「一昨日の入学式の日が初対面……の、はず」
「俺も達也に同意見だ。知り合いなら覚えているはずだ」
美月の質問に、蓮夜と達也は一緒に首を捻っている。
「そうは見えねえけどな」
「わざわざ走ってくるくらいだもんね」
達也と同じクラスである西城レオンハルト―――レオとエリカが言うように妙に親しげだったのだ。蓮夜なら、事情がアレであるため十師族との邂逅は絶対に忘れないものとなる。だから初対面と言い切れるのだが、
「……御二人の名前を呼んでいらっしゃいますね」
「……そうだな」
もう固定になりつつある朝の登校メンバーで高校に行くのは気分的に悪くは無い。達也に紹介された二科生であるエリカとレオ、美月は一科生だとしても偏見的な態度を取ってこないから、一科生である蓮夜と深雪は話しやすかった。
そんな感じで、一日の始まりを彩っていたのだが唐突に背後から、蓮夜と達也の名前を叫び声と共に小柄な少女が現われた。相手は生徒会長である七草真由美だが、直感的に関わりたくない、と思った。横にいる達也を見れば、表情こそ変わっていないがなんか蓮夜と同じく出来れば関わりたくないオーラを発している。
「達也くんに蓮夜くんオハヨ~。深雪さんもおはようございます」
深雪に比べて蓮夜と達也の扱いが随分と雑だ。良く言えば親しげだ。
「お一人ですか、会長」
達也が見て分かる事をわざわざ訊ねたのは、このまま一緒に来るのか、という問いかけでもあるのは蓮夜にも分かった。
「うん。朝は特に待ち合わせがないんだよ」
そこは十師族が一つ、七草家の者であって全く動じない(七草家とは全く関係ない)。
「深雪さんも少しお話したいこともあるし……ご一緒しても構わないかしら?」
やはり言葉の砕け方に違いがある。今の所達也だけしか真由美に話しかけていないが、恐らくは自分も達也と同じ対応をされるだろうな、と呆れている。
そして、自身の直感に従って蓮夜は速攻で離れようとする。
「じゃあ俺は先に言ってる。雫とほのかに訊きたい事があるしな」
蓮夜はそう言うと、達也は非難の視線を向けてきた。だが、それも完全にスルーしてそそくさと、けどいつも通りの歩幅で立ち去ろうとす―――
「あら、ダメよ。蓮夜くんも一緒に行きましょ」
速攻で真由美に止められた。
「……用があるのは深雪にでしょう?俺は関係ないと思うのですが……」
「けど、光井さんに北山さんとはご一緒のクラスでしょ。HR前に聞けば問題ないわ」
理に適っているだけあって蓮夜は反論の仕様が無い。もしこれが裏の方のやり取りならば、心を完全に沈めて母親譲りの腹黒さと化すのだが、真由美はもちろん達也ですらそういう蓮夜に気付いていないから、本性?を曝け出したくは無い。
「…………」
何も言えなくなった蓮夜は、チラリと達也を見る。その目には憐憫や同情、そして諦めの色があった。簡単に言えば、もう諦めろ、だ。
「……分かりました」
「よしっ、では行きましょうか」
真由美はいつも通りの笑顔で歩き出す。蓮夜はあまりの理不尽っぷりにため息を吐いて肩を落とし、エリカが優しく、慰めるように肩に手を置かれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そして昼休み。
蓮夜はこれから生徒会に行かなければならない、という強制という名の約束取り付けられた事実に端末の上で突っ伏していた。
行くのは蓮夜だけではなく、深雪と達也も同じ。一人だけじゃないから、幾分か気が楽にはなったが、それでも気分が重い。
「蓮夜さん、大丈夫?なんか元気がないけど」
そんな蓮夜の気遣ってか、雫が声を掛けてくれる。側にいるほのかも凄い心配しているようだ。後ろの席にいる深雪は何故こんなにも気落ちしているのか分かっているから、苦笑するだけ。
「ああ……なんか生徒会に行かなくちゃいけないらしくてな。ったく、いったい俺に何の用だか……」
「生徒会、ですか?」
ほのかが首を傾げ、疑問に思っている。それ以前に呼ばれた本人である蓮夜が分かっていないから、ほのかにも分からないだろう。
「生徒会に入る……のは有り得ないか。あそこは代々新入生総代―――入試成績トップが生徒会入りするのが慣わしだしな」
「新入生総代……という事は司波さんが?」
ほのかが蓮夜の言葉を聞き、後ろにいる深雪へと視線を向けていた。深雪もいつもの笑顔で、けど僅かに陰りが見えるのは気のせいだろうか?
「ええ。私も生徒会に呼ばれているけど、恐らくは生徒会入りの件だとは思うわ。けど、お兄様と蓮夜くんが呼ばれる理由は……」
「やはり深雪にも分からんか……」
蓮夜は行きたくない、と身体で表現するように突っ伏しているが、これで行かなければこの後何が待っているのは恐ろしくて行かない、という選択肢は存在しない。『行く』、『行かなければならない』、『Let's Go』の三択しかない。
「はぁ……じゃあ行くとするか、深雪」
「そうですね。お兄様を待たせるわけには参りません」
深雪はそう言って立ち上がる。蓮夜もゆっくりとした動作で立ち上がる。雫とほのかは、そこまで行きたくないのか、と蓮夜の雰囲気やら行動を見て思う。
生徒会に行くまで、気落ちしている達也と蓮夜そして軽い足取りの深雪という何とも対照的な雰囲気を醸し出している。
「……体調悪くなったから、帰っていいかな?」
「ダメだろ。まあ今の気分で行けば早退出来るかもな」
ここまで暗い雰囲気ならカウンセラーに行かされそうな気がするけど、それでもいいや、と思ってしまう。
「しかし、今行かなければ後で報復でも食らいそうだな」
「それ言うな。一番真っ先に考え付いて尚且つ否定出来ないことなんだから」
「……蓮夜くん、もう諦めたらどうですか?」
どう理由を付けて逃げようと画策している蓮夜に深雪は諭す様な口調で言う。
「……はぁ」
もう諦めたかのようにため息を吐くのと同時に、生徒会室まで辿り着いた。プレートにはしっかり『生徒会室』と刻まれている為、間違いないだろう。
先ほどのような暗い雰囲気を持っていた二人だが、表面上だけとはいえいつも通りの調子となった。切り替えが早い蓮夜と達也である。
深雪がドアホンを鳴らすと、スピーカーから明るい歓迎するような真由美の声が聞こえてきた。それと同時にドアのロックが解除され、達也が深雪を護るようにして戸を開く。その行為に、蓮夜はガーディアンとしての心構えは問題ない、と判断した。
もちろん、一高でそんな身の危険な事が起こるはずも無く、中に入れた。
「いらっしゃい。遠慮しないで入って」
奥の机に座っている真由美から声を掛けられた。
達也は深雪のニ歩後ろに立ち、蓮夜は深雪の一歩後ろに立っている。
深雪は礼儀作法のお手本のようなお辞儀を見せた。蓮夜も母である真夜に四葉の者として恥かしくないように作法は徹底的に仕込まれたが、ここでそんな作法をするわけにはいかない。色々と勘繰られそうだからだ。
「えーっと……ご丁寧にどうも」
あまりに洗練された動き、そして深雪の容姿からどこから宮中晩餐会にでも通ったような所作で、真由美はたじろいているようだ。
「どうぞ掛けて。お話は、お食事をしながらにしましょう」
蓮夜、深雪、達也はそれぞれ席に座る。
そして、ダイニングサーバーがあるのは知っていたが、どうやらメニューも複数ある事に、驚き半分呆れ半分だ。
「入学式で紹介しましたけど、念の為、もう一度紹介しておきますね。私の隣が会計の市原鈴音、通称リンちゃん」
「……私のことをそう呼ぶのは会長だけです」
表情を崩さず、淡々と述べる姿は雫を思い出すが、容姿や雰囲気からは雫とは違いきつめの印象がある。だが、仕事は忠実かつ真面目にやりそうな感じだ。
「その隣はしていますよね?風紀委員会の渡辺摩利」
「よろしく」
摩利は簡単に挨拶を済ませた。
「それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」
「会長……お願いですから下級生の前で『あーちゃん』は止めて下さい。わたしにも立場というものがあるんです」
あずさは同学年からみても結構な小柄であり、童顔。中学生にも見えるし、ちょっと気が小さい性格から確かに『あーちゃん』だと思う。
「もう一人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会役員です」
「私は違うがな」
「そうね。摩利は別だけど。あっ、準備が出来たようです」
ダイニングサーバーのパネルが開き、それぞれ頼んだ料理が出て来た。
その数、合計五つ。
二つほど足りないが、摩利と蓮夜がおもむろに弁当箱を取り出した。ちなみに蓮夜は予め不要だと伝えていた。
「なんだ、君も弁当なのか?てっきり昼食は取らないかと思ったのだが」
「いえ、流石に無理があります。俺もしっかりと食事をとりますよ」
そして、蓮夜は水波が作ってくれた弁当を開けた。
中は相変わらず全て手作りであり、栄養バランスを考えられている色彩際立つ野菜。水波のメイドに賭ける本気度が窺える。
弁当からその迫力が伝わったのか、真由美たちだけでなく達也までもが感嘆していた。
「凄いわね、そのお弁当。本格的だけど、蓮夜くんは自分で作ったの?」
「自分で作っていませんね。作ろうと思えば作れるんですが……まあ同居人がそれを許してくれません」
「同居人?親とかではないのか?」
「ええ、年が一つ下のメイドが家事全般やってもらっています。この弁当もメイドが作ってもらいました」
水波はメイドとして主人である蓮夜の手を煩わせようとしない。ガーディアンとしても達也のように本格的ではなく、見習いなので責めて家事だけでも役に立ちたい、と思っているらしい。とは言っても帰ってくるとき、出迎えがいるというのは心も安らぐ。十分に役に立っているのだ。
だが、そんな蓮夜の心情を他所に、全く事情を知らない生徒会役員+兄妹は訝しげな視線を送っている。メイドと暮らしているのは達也たちも知らない事実なのだ。最も、約数ヶ月前に同居し始めたばっかだから仕方が無い。
「メイドと一つ屋根の下、か……」
「しかも一つ年下、という事実ねぇ……」
摩利と真由美が少し棘のあるトーンで呟く。無理もない、未だ十代半ばという思春期の時にメイドと―――しかも一つ年下という年が近い者同士ならば、発展してもおかしくはないとでも思っているのだろう。
蓮夜は一呼吸置いてからその考えを拒否する。
「それに関しては問題ありません。俺は彼女の事を妹のように思っていますし、彼女も俺の事を信頼してくれていますから。そんな彼女を裏切る事など有り得ません」
水波とは会って僅か数ヶ月という仲だが、それでも妹のように思っているのは確かだ。そんな彼女と間違いを起こすなど、到底有り得ない。
その確固たる意思が伝わったようで、全員が納得してくれた。そして、この雰囲気を打ち消す為に、深雪が摩利を見て口を開く。
「渡辺先輩のお弁当は、ご自分でお作りになられたのですか?」
深雪に問われ答えた後に少し意地悪な口調で少し答えにくい質問を返した。
「いえ、少しも」
「……そうか」
質問した摩利の方が狼狽する、という結果に終わってしまった。本来なら下級生である深雪を軽くからかっただけだが、手痛い仕返しが来てしまった様だ。
「お兄様、私たちも明日からはお弁当に致しましょうか」
「深雪の弁当はとても魅力的だけど、食べる場所がね…」
「そうですね、まずはそれを探さなければ……」
二人の会話はとても兄妹のものとは思えずあるいは恋人、はたまた新婚のような雰囲気を醸し出している。そして、こんな雰囲気を見たことある蓮夜は、ああまたかこの兄妹は……、と呆れている。
「兄妹というよりは、まるで恋人同士の会話ですね」
鈴音は何も表情を変えずに爆弾発言を投下した。その言葉を今まで蓮夜が言いたかったけど、言えなかった言葉だ。
「そうですか?まあでも…考えた事はあります。血の繋がりがなければ恋人にしたいと」
その言葉は不発どころか誤爆に終わり、その結果少々ヤバイ発言となってしまった。冗談でもその言葉に、蓮夜はドン引きしている。
「……もちろん冗談ですよ」
本気にして顔を赤くしているあずさと、マジで引いている蓮夜が分かったのかすぐさま修正した。達也も別に焦りの表情など見せず、鈴音のように無表情で告げた。
「そろそろ本題に入りましょうか」
唐突ではあるが、確かに本題に入った方がいい。昼休みの時間は有限だ。
「当校は生徒の自治を重視しており、成果と会は学内で大きな権限を与えられています。これは公立高校では一般的な傾向です。当校の生徒会は伝統的に、生徒会長に権限が集められます。大統領型、一極集中型と言ってもいいかもしれませんが」
蓮夜はフットワークの軽い真由美に任されているのに一種の不安に駆られたが、七草の名を背負っているから取り合えずは大丈夫だろうと思った。
「生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられます。各委員会の委員長も一部を除いて任免権があります」
「私が務める風紀委員長はその例外の一つだ。生徒会、部活連、教職員会の三者が三名ずつ選任する風紀委員の互選で選ばれる」
「という訳で、生徒会長には自由に役員を任免することができますね。これは毎年の恒例なのですが、新入生総代を務めた一年生は生徒会の役員になってもらっています。ここ五年はそういうパターンが続いています。深雪さん、私は貴女が生徒会に入ってくださることを希望します」
珍しく真顔で真由美は深雪を見据えて勧誘をする。深雪は悩んでいるのか達也の方を一度見ている。達也は背中を押す意味を含めて小さく頷く。それを見た後深雪は顔を上げて真由美を見て声を発する。
「会長は兄の入試の成績をご存知ですか?」
「っ!?」
予想外の深雪の言葉に達也は顔色を変える。深雪を抑制しようと深雪の名前を呼ぶが深雪は止まらない。そして、その事は蓮夜にも予想外なことであり目を丸くしている。
「成績優秀者―――有能な人材を迎え入れると言うのなら、兄の方が相応しいと思います。デスクワークならば、実技の成績は関係ないと思います。むしろ、知識や判断力の方が重要かと存じます」
深雪は熱意を込めて言っている。こんなに熱くなる深雪は滅多に無い。しかも、兄である達也の意思関係なく押すことは殆ど無い。
「残念ながら、それは出来ません」
そんな深雪の願いを一刀両断したのは、真由美の隣に座っている鈴音だった。
「生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。これを覆す為には全校生徒の参加する生徒総会で制度の改定が決議される必要があります。決議には必要な票数は在校生徒の三分の二以上ですから、一科生と二科生がほぼ同数の現状では、精度改定は事実上不可能です」
事務的に淡々と話す鈴音だが、決して冷たいわけでは無い。鈴音も言いたい事はわかるようであり、声色にはすまなさそうに感じる。
「……申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください」
だから深雪も謝るしかない。だが、深雪の言う事も最もでありここが魔法科高校でなければ、通っていたかもしれない考案だ。だから誰も深雪を咎めたりはしない。
「えと、それでは、深雪さんには書記として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」
「はい、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願い致します」
了承の意を示す深雪を見て満足そうに真由美は頷く。
「ふむ、時間もあるし丁度良いか……風紀委員会の生徒会選任枠のうち、前年度卒業生の一枠がまだ埋まっていない」
「それは今、人選中でしょう?それに新年度が始まって月日も経っていないからそんなに急かさないで」
「確か、生徒会役員の選任規定は、生徒会長を除き第一科生徒を任命しなければならない、だったよな?」
真由美の言葉を取り合わずに、摩利は話を進めて行く。
「第一科の縛りがあるのは、副会長、書記、会計だけだ。つまり―――風紀委員の生徒会枠に、二科の生徒を選らんでも既定違反にはならないわけだ」
そこまでの言葉を言われれば、魔利の意図は誰しも分かる。真由美も驚いたような表情をしており、達也は僅かに眉を顰め、蓮夜も校則の穴を突くような意見に感心している。そして、そこで蓮夜は気付いた。
(あれ?じゃあ俺っていったい何のために呼ばれたんだ?)
生徒会に入るわけでも、風紀委員に入るわけでもない蓮夜は疑問に思った。そして、本当に用が無いのなら呼ばなくてもいいじゃないか、と。
「―――ナイスよ!」
「はぁ?」
唐突に真由美が歓声を上げ、達也は間の抜けた声が漏れた。恐らくは、こんな提案通る訳も無いと思っていたのだろう。
「そうよ!風紀委員なら問題ないじゃない。摩利、生徒会は司波達也くんを風紀委員に任命します」
いきなり過ぎる展開、そして予想以上にスムーズに事が運んでいる現状は、絶対に仕組んだと思われるが、全くそうではない。
「ちょっと待ってください!俺の意思はどうなるんですか?」
達也はもちろんの事、抗議の声を上げている。
達也はあずさに風紀委員とは、どのような仕事があるのかを聞き出した。風紀委員とは、校則違反者を取り締まる組織であり警察と検察を兼ねた組織だ。
「凄いじゃないですか、お兄様!」
「いや、深雪……そんな「決まりですね」みたいな目をするのはちょっと待ってくれ……」
深雪は親愛なる兄がそんな役職に就ける事を我が事のように喜んでいるから、達也もはっきりと断ることが出来ない。
「念のために確認させてもらいますが、風紀委員は喧嘩が起こったら、それを力ずくで止めなければならない、ということですね?」
「まあそうだな、魔法が使われていなくても、それは我々の任務だ」
「あのですね、俺は実技の成績が悪くて二科生なのですが……それに実力行使という意味では、この場にもう一人適任がいるでしょう?」
達也はそう言い、蓮夜を見る。
「なるほど、蓮夜くんか……確かに適任でもあるが、風紀委員の枠は一つしか無いのだよ」
「いえ、ですから俺じゃなく蓮夜を選んだ方がいいという意味なのですが」
どう動いても達也を風紀委員に入れる気満々な摩利は、達也を外すという選択肢が無い。
「それに、渡辺先輩は俺が起動式を読み取れる、という点で勧誘しているのかもしれませんが、その芸当ならば蓮夜にも出来ます」
「えっ?……それは本当なの、蓮夜くん」
「……ええまあ、読み取れますが……」
蓮夜は好奇の視線の中、言葉を濁しながら視線を明後日の方に向ける。その際、達也を一瞬睨み付けた。どうやら、このシスコン兄は親友を犠牲にしてでも逃れようとする魂胆らしい。
「残念ながら、私はそれでも達也くんが風紀委員に欲しいのだよ」
「……何故ですか?」
本当に分からないようで、達也は摩利に疑問を投げかける。
「今まで、風紀委員には一科生のみ任命され二科生は決して任命されていなかった。それはつまり、二科による魔法使用違反も、一科生が取り締まっていた、と言う事だ。一科生と二科生には大きな溝があり、私が指揮する委員会が差別意識は無い、という意思を生徒に知らしめる、という意味も含まれている。そのためには、一科生の蓮夜くんよりか二科生の達也くんを招き入れたいのだよ」
圧倒的に通る無いようなだけに、反論のしようがない達也はぐうの音も出ない状況だ。
蓮夜も、ここまで達也が論破された所を見るのもかなり珍しかった。
その後、また放課後という事となったが、特に用が無いのなら、私用で帰るというとあっさりと許可をくれた。
何故自分が生徒会室に呼ばれたのかと言われると、真由美曰く一緒に食べたかったらしい。
その言葉を聞いて唖然としていた蓮夜の肩を優しく叩く兄妹が居た。