黎明の魔法師   作:ノスフェラトゥ

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episode:7

部活勧誘―――蓮夜とほのか、雫が部活へ入部してから一週間あまりが経った。

だが、成績上位である蓮夜たちは入部していたとしても、色々と大変な毎日を送っていた。

ほのかの光学系の魔法で光学迷彩みたいな壁を作り出して移動したり、逃げ道をふさがれた時は、魔法を駆使して逃げ遂せたりと心身ともに若干疲れ果ててしまった。

 

それでも一番大変なのが達也だ。

部活勧誘期間初日で一気に目立ったため、魔法による不意打ちを受けているとの事だ。そして『魔法を使わずに並み居る魔法競技者(レギュラー)を連破した謎の一年生』という噂も流れていた。

 

大変なんだな、と思ったのだが、どうもただ傍観している場合ではなくなったのだ。

達也を闇討ちしている中に、ブランシュの若年層で構成されているエガリテのメンバーらしき者がいたのだ。その場の近くに俺が居たのは本当に偶然だった。達也に追われている生徒の右手首には青と赤のラインで縁取られた白いリストバンドを付けていたからだ。

 

蓮夜はこの件に干渉しようかしないか考えたが、結果としては達也の行動次第と結論付けた。もし達也が介入いなくても、十師族が解決するだろうと思っている。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

部活勧誘一週間が経過した。

ここ最近でやっと、蓮夜が部活に入っている事が知れ渡ったようで、勧誘はあまり(・・・)来なくなった。それは雫とほのかも一緒だ。

そして、今現在蓮夜たちはいつものようにカフェで談笑をしているのだが、蓮夜の目にはやや呆れを含んだ視線を対面に座っている女子三人に向けている。

 

「―――お前等バカか?」

 

「いきなりバカ呼ばわりは酷くない!?」

 

そういって蓮夜にうがー、と怒っているのは、明智英美という女子生徒。本名はアメリア=英美=明智=ゴールディという。愛称はエイミィであり、蓮夜もそう呼んでいる。英美の両隣にはほのかと雫が居る。ほのかは表情をコロコロ変え、雫はいつも通りの表情。いったいどういう組み合わせなのか全く分からない蓮夜。

 

「いや、だってさ……何故に達也のために動く必要が?」

 

この三人は、ここ最近―――体育館の騒動が収まってから多発している誤発と偽った明確な闇討ちを達也が受けてる場面を見たらしいのだ。そこで、憧れでもある深雪と蓮夜の親友と深い繋がりを持っている達也の力になりたいとの事だ。

ほのかは本気でそう思っているお人好しであり、雫はほのかがやるから手伝っている感じだ。そして英美は、

 

「…………」

 

「ん?どうしたの?―――ハッ、まさか惚れちゃった!?」

 

「え、えぇぇぇぇ!?」

 

「んなワケあるか」

 

完全に遊び心八割だと、何故か確信できた。

 

「蓮夜くんだって司波さんのお兄さんの事は心配でしょ?」

 

全く以って心配ないんだが、とは言えない。それ以前に達也には高位の知覚系魔法を持っているから闇討ちに関しては心配していないが、精神的に疲れているようだから、労ってはいる。蓮夜は達也の実力を知っているが、ほのかたちは知らないのだ。

だから蓮夜は「まぁ、多少は……」としか言えない。

 

「だが、心配ないだろ?もうすぐ勧誘期間も終わるし」

 

「それでもよ!私たち探偵団はそのような悪事を見過ごすわけにはいかない!私たちで証拠を捉えてひっ捕らえるぞー!」

 

「おい待て、なにさり気無く俺を頭数に入れてる?」

 

やる気ゲージがMAXである英美を見て、蓮夜は手に負えないと悟る。唯一の頼みである雫にアイコンタクトでどうにかしろ、と言うが首を横に振られてしまった。ようするに、止められない、という意味だ。

 

「はぁ……とにかく俺を巻き込むな。俺は俺で忙しいんだよ。この事を生徒会に報告した方がい―――いや、止めておこう」

 

生徒会に報告すれば万事解決、となるのだが達也を闇討ちした犯人は、深雪は絶対に許さないだろう。下手をすれば氷漬けにしてしまう。

その意図が分かったのか、ほのかは若干顔を青褪めて振るえている。

 

「雫、この二人のストッパー役任せてもいいか?」

 

英美のやる気に感化されたようにテンションを上げているほのかを見て、一番冷静な雫に頼んだ。

 

「うん、任せて。けど、蓮夜さんは一緒に来ないの?」

 

「時間があればそれでもいいんだけどなぁ……」

 

ここ最近蓮夜は調べ物に勤しんでいるし、くだらないとまでは言わないが達也に関しては然程心配していないからそんな事に時間を割くのは勿体無いと感じている。

そんな非情な意図を汲み取れなかった雫たちは、「それならしょうがない」といった感じで纏まった。

 

「それじゃ、この三人で親睦を深めましょー!」

 

話が180度変わり、親睦会となった。自由人というのが、蓮夜から見た英美の第一印象だ。

それと同時に蓮夜は思う―――こんな感じで騒いだ事がなかったのを。

旧山梨県の本拠から中学には通っていたが、有り余る才能のせいで友人らしい友人が誰一人居なかった(その時、蓮夜には手加減という言葉を知らず、どんどん他の生徒を追い抜いて孤立していた)。

だから蓮夜にとっては新鮮であり、興味深いのだ。

 

(偶にこういうのも、悪くはない……か)

 

 

―――蓮夜の心に温かみが帯び始めてきた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

達也にとってはトラブルの毎日だったが、蓮夜にとっては平穏に近い毎日だった。そんな日常も終わりつつある。部活勧誘期間がもう少しで終わるからだ。

トラブルメイカー事司波達也は教室で集まって昼食を摂っている。

メンバーはE組の達也、美月、エリカ、レオの四人とA組である蓮夜、深雪、ほのか、雫の四人の計八人だ。

今日行った魔法実技の居残りメンバーとなったレオとエリカに合わせた食事となっている。

今回の実技は基礎単一系魔法の魔法式を制限時間内にコンパイルして発動する、という課題を行う。

 

「ねえねえ達也くん。そういえばさ、何で手を重ねただけで、あんなにタイムが上がったの?」

 

エリカは達也に問いかける。エリカとレオの居残りに付き合わされた達也はコツを教えたのだが、その時授業用のCADに両手を重ねて発動したら、制限時間内にクリア出来たのだ。それは達也の助言であり、エリカは何故か知りたいようだ。

 

「なに簡単なことだ。エリカは片手で握るスタイルのCADに慣れているだけだ」

 

「両手を重ねる……?ああ、剣術を習得しているからか?」

 

エリカが千葉の人間とは調べがついているので、自然とその結論に達した蓮夜。エリかも「あ、ナルホド」と納得しているようだ。

 

「そうだ。A組も同じ実技受けたんでしょ?ねえ、参考までにどれ位のタイムがやってみてくれない?」

 

「私が、ですか?」

 

「そそ、いいでしょ」

 

エリカの言葉に深雪は目を丸くしている。

 

「いいんじゃないか、深雪」

 

達也の一声で、深雪の意思は決まった。深雪に達也の言葉を否定する、ということ事態全く無い。

一番近くにある授業用のCADの前に立ち、パネルに両指を置いた。

余剰想子(サイオン)光が閃き、一瞬で魔法式を構築し、発動した。

 

「……二三五ms……」

 

「えっ……」

 

「すげ……」

 

見月の言葉に、達也を除くE組が驚愕を露わにした。それほど凄いことなのだ。A組である蓮夜たちはすでに知っているため、相変わらず凄いなぁ、程度だ。

 

「蓮夜、お前もやってみたらどうだ?」

 

「はっ?俺が?」

 

達也に何の前触れも無く、言われ柄にも無く戸惑ってしまう。

 

「深雪の両手をパネルに置くスタイルと、蓮夜の片手にパネルを置くスタイル。どちらも見ておいた方がいいと思うからな」

 

「……まあ、いいか」

 

蓮夜は呆れたようにため息を吐き、面倒そうに立ち上がる。

CADの前に立ち、左手の手の平をパネルの上に乗せて、集中する。

計測が始まったのと同時に、蓮夜の余剰想子光は全く放出されなかった。

余すことなく想子を使った蓮夜の技量に、蓮夜の事を殆ど知らないレオたちは驚き、同時に蓮夜の技量を思い知った瞬間である。

しかも、それだけではない。

 

「……二七三ms、です」

 

「なんかもう……言葉が思いつかねえや」

 

驚きの連続であったレオは若干投げやり気味に呟く。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「はぁ……はぁ……もうむりぽ」

 

若干キャラ崩壊しつつある蓮夜は、地面の上に寝っ転がって息を整えている。

 

「いやはや……達也くんもそうだけど、蓮夜くんもやるねえ……これは僕が負ける日も遠くないかな?」

 

大の字で転がっている蓮夜を縁側に腰を下ろしながら、見下ろしている人物がいた。

 

「はぁ……ふぅ……達也と一緒にしないでください、八雲さん」

 

九重八雲。忍術使いと言われる古式魔法の使い手であり、近接格闘を主体とする魔法師の大半は知っている『忍び』だ。忍者ではない、といつも言われる。

 

「俺は、あそこまで至る事は出来ませんよ」

 

「分からないよ。達也くんも並々ならぬ努力の果てに手に入れた力だしねえ……才能溢れる蓮夜くんならきっと追い抜けるさ」

 

「……どうでしょうね。精神面もそうだが、アイツには一生勝てない気がする」

 

息を整え終わったら立ち上がり、魔法を使って土を落とす。そんな蓮夜を見て、八雲は口を開く。

 

「魔法の才能は蓮夜くん。戦闘の才能は達也くん。ふむ、相反する二人は見てて面白いよ。だから僕も君たちを応援しているんだよ」

 

「魔法の才能、か。達也を見てると本当に分からなくなりますよ。果たして自分は魔法師として未熟すぎるのではないかと」

 

「それは違うよ。今まで僕が見た魔法師の中でも、蓮夜くんはトップクラスだ。そうだね……蓮夜くん、君は達也くんをどう思う?」

 

八雲の問いに蓮夜は僅かに考え込んでしまったが、元々思っていた事を口にする事にした。八雲にはウソが全く通じないからだ。

 

「―――魔法師の天敵。この世を根本から揺るがす危険因子」

 

「……親友(とも)である達也くんに随分と辛辣な評価をしているんだね」

 

歯に布を着せぬ物言いに八雲は苦笑しているが、その答えは予期していたようで全く驚いていない。食えない僧だ、と蓮夜は内心で舌打ちする。

 

「俺も達也のことは親友だと思っている。敵対しない事を祈るよ」

 

蓮夜はそう言葉にしたが、内心では絶対に敵対する、という確信がある。蓮夜が四葉であり、達也と深雪も四葉である限り絶対に避けては通れない道だ。

八雲はまるで心を見透かしたように頷いているが、その表情が何処か寂しげに映ったのは気のせいではないと思う。

 

「お互い、譲れない道があるのは見てて分かるよ。けれど、僕は愛弟子同士の死闘は見たくないかなぁ……」

 

「…………」

 

蓮夜はその問いに答えられない。軍人以外の者たちならば、騙す事が出来るが元軍人でもあり、心理戦に長けている八雲を騙すのは蓮夜では実質不可能。だからこそ、余計な言葉を発するわけにはいかないのだ。

 

「まぁ、そんな辛気臭い話しは置いておこうか。どうだい、蓮夜くん、『仙術』の感触は」

 

「そこそこ、ですかね。かなり使えるようにはなっていますが、案外―――いや、かなり難しいです」

 

仙術とは、古式魔法の一つであり習得するのが困難な系統の一つ。想子制御を主体とした古式魔法であり、現代魔法風に言うならば無系統魔法に分類される。

仙術の使い手となった者は、中々居ない。それ以前に会得している者が比較的少な過ぎる。

 

「うーん、もう僕を超えちゃっているかもね。仙術に関してはそこまで得意じゃかったし……うん、もう教える事は何も無いよ」

 

「えっ、それは本当ですか?」

 

「本当だよ。蓮夜くんはサイオンの制御に天性の才能を感じるよ。いや、サイオンだけじゃないね、魔法も精密さを誇っているから仙術も生かされているようだ」

 

蓮夜は必要最低限の力で敵を殲滅する能力を持ち、生来の魔法の特性にも影響居ているのだろう、と推察した。

 

「褒められるのは吝かではないですが、本題に入りましょう」

 

「そうだね。じゃあ君が知りたい事―――ブランシュの日本支部リーダーの事と本拠地について教えよう」

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