このダークライダー達の力を与えられた(押し付けられた)者に祝福を! 作:フュー
〜???side〜
「…………ん?」
この時俺は、まるで深い眠りから覚めた後かのような感覚を覚えながら目を覚ました。
段々と意識が覚醒していく中、俺の視界には黒と白のタイルが交互に並ぶ床が映り、その時気付いたがどうやら椅子に座っていたらしい俺が顔を上げた先には薄暗いような明るいような不思議な空間が広がっていた。
「此処、は?」
「おはよう。目が覚めたみたいね」
「?」
目が覚めて直ぐ、俺の耳に女の声が聞こえた。
すると突然の事で困惑している俺の目の前の空間が突然歪む。そしてその歪んだ空間の中心からソイツは現れた。
「…誰だ、アンタ」
「あっそうそうそうだったわ。初めまして、で良いのかしらね?」
「?」
その女は、長袖の黒いドレスの様な服を着て腰まで伸びてる黒い髪に黒い瞳をした世間的には美女と呼んでも良いであろう容姿をしていた。
だが、目の前の女には今の言葉含め何処か違和感を感じてしまう。
しかしそんな俺の様子を知ってか知らずか、目の前の女は構わず話を続けた。
「それでは自己紹介ね、
私は“ゼリス“。女神ゼリスよ、」
「めが、み?」
「そう、女神よ。信じるか信じないかは貴方の勝手だけどね、“アキト“君」
「
「そう、それが貴方の名前よ。何も覚えてないかしら?」
「…ああ。全然」
ゼリスというこの女の言葉は普通に聞けば頭のおかしい奴とか厨二病を拗らせたイタイ奴とかと思うかもしれないが、何故かこの女の言葉を俺は素直に信じた。
この時の俺には“ほぼ何の記憶も無かった“からなのか、その理由は今でも分からない。
「まぁ良いわ、簡潔に教えてあげる。
アキト君。貴方はついさっき、不幸にも交通事故に遭って死んでしまったの。記憶が無いのはその時のショックによるものかもね。まぁこんな事例は初めてだけど。
そして貴方の様な若くして死んだ魂を導く為に存在するのが、私の様な女神というわけ」
「は、はぁ…」
正直この時は寝起きということもあって何一つ理解できてなかったし、ゼリスの言葉が本当のことを言っているかは半信半疑であった。
そもそも自分が死んでその場所にいたという事自体いきなり信じろというのが無理な話である。
それでも俺はただ話を合わせて頷くしかなかったのだ。
そして、その後だったのだ。
奴の俺を見る目の色が変わったのは。
「さて、早速本題に入るわ。貴方には3つの選択肢があるのよ。
1つはこのまま天国へ行って、娯楽も何も無い退屈な時間を永遠に過ごす事。1つは記憶も何もかも真っさらな状態にして転生して一から人生をやり直す事。
そしてもう1つは記憶などを引き継いで、ゲームや漫画なんかでよくあるファンタジーな異世界に好きな転生特典を1つ授かった状態で転生する事」
「へ、へぇ。そうなのか「けどね」?」
「そもそも貴方にそんな選択肢なんて無いわ。強制的にあの世界に転生してもらうわよ」
この時、ゼリスの目は最初の優しげな雰囲気など完全に消え去っていた。
言うならば、まるで俺の事を物か何かとしか思っていない様なそんな目だった。
「は?」
ゼリスの変わり様に当然俺は困惑するしかなかった。だった今まで優しげに話しかけてきたと思った女が、突然雰囲気が変わったのだから。
そして、そんな俺に構わずゼリスは手をかざす。
「別に理解する必要は無いわよ、どうせあの世界に行けば嫌でも慣れるから。
とにかく貴方は“コレ“を受け入れれば良いのよ」
そこまで言い合えると、ゼリスがかざした手の平に黒と紫が入り混じった、正に闇そのものと言える謎の光の球体がバスケットボール程の大きさで現れた。
「ッ⁉︎あ“ッ…ぐっ⁉︎」
俺は、その謎の球体を見たのは初めてのはずだった。
しかし何故か、その球体を見ていると、頭の中には謎の鎧を纏った戦士達の姿が思い浮かび、それと同時にその戦士達の情報のようなものが頭に流れ込んでくる。
「仮面…ライダー…」
「そう。これは仮面ライダー、その中でも悪のライダー、またはかつて悪のライダーとして存在していた者達。そして正義のライダー達と敵対した事のある、所謂“ダークライダー“達の力を1つに収束した闇のオーブ。まぁ流石に全部のライダーの力をまとめる事は出来なかったけど。
今からコレを貴方の中に埋め込むわ。安心しなさい、最初は死ぬ程苦しい筈だけど貴方なら耐えられる筈よ。
それにあの世界に行って直ぐに死なれても困るから色々とオマケは付けといてあげるわ」
そう言うとゼリスはその闇のオーブとやらを俺へと近づて来る。
その時俺の脳内は、ただ目の前の物は危険だ。コレを受け入れてしまってはいけないという思考で埋め尽くされた。
「ゃ…やめ、ろ…」
「残念だけど、貴方には選択肢も無ければ拒否権も無いわ。
そうね、『貴様の意見は求めん』。ってところね」
俺のせめてもの抵抗も全く意味を成さず、オーブはゼリスの手から離れそのまま俺の胸の中へと吸い込まれて行ってしまった。
当然俺はそれを拒もうとしたが、頭の痛みに満足に動けずにいた俺の手はそれを止める事が出来なかった。
「ッ!!ガッ!あ“ッ…あ、ガッアァァァァァッ!!」
オーブが吸い込まれた瞬間、まるで胸の内側が焼かれる様な熱さと身体全体が引き裂かれそうな痛みが走った。
たまらず俺は椅子から転げ落ち、胸を押さえたままその場でのたうち回る。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!)
余りの激痛に最早言葉なんてまともに発せないどころか、死んでいると言われていたのに目や口からは血が吹き出し、もし死んだのが本当だとしたらまた死んでしまうのではないか。
最早自分でも訳の分からない事をその時はひたすらに痛みと一緒に頭の中で連呼してたと思う。
それほどまでにその時は苦しかった。早くその痛みから解放されたいとさえ思った。
だがそんな俺の願いを嘲笑うかの様に激痛は続き、頭の中には更に次々と仮面の戦士達の情報が流れ込んでくる。
頭も割れる様に痛くなり、いよいよ完全に正気を失ってしまいそうになっていた。
しかし何故か俺は意識を手放す事ができなかった。一度死んだからか、それともゼリスが何かしたのか。
そんな事を考える余裕も無かった俺は、ただただ終わりのない痛みに耐えるしか出来なかった。
「ッはぁ、ぐっ…ぁぐ!」
「へぇ、もう少しのたうち回ってるかと思ったけど、意外と早く“適合“出来たみたいね」
あれからどれだけの時間が経っただろう。
何時間も経ったのか、それともほんの数秒の出来事だったのか。どちらにせよ、やっとあの痛みから解放された。
まださっきの激痛により身体のあちこちが痛み、頭も痛い。少しでも気を抜けば意識を簡単に手放してしまいそうだった俺は少しでも痛みを和らげる為に呼吸を整えようとするが、痛みのせいで中々上手くいかず息も絶え絶えになり、手足はまるで産まれたての子鹿の様とでも言えばいいのか震えてしまっていおり、まともに立ち上がる事さえ出来ない。
床には俺が吹き出した血がべっとりと付き、鏡が無かったので確認できないがきっと涙だって流していた事だろう。
そんな俺の様子をゼリスは先程と全く変わらない声色で見下しつつ何処か関心でもしたかの様な雰囲気を纏わせていた。
「ぁガッ…い、っだい…なにがもぐでぎ、なんだ…なんで…」
「何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないのか?とかありきたりな質問なら答える気は無いわよ。
それにしてもこんなに早く適合出来るなんて、予想以上ね貴方。
これはほんの少しご褒美をあげなくちゃね」
「⁉︎」
俺の質問には全く答えようとしないゼリスは、自分の中だけで勝手に色々と完結させると片手を俺に向けて翳した。
すると今度は先程とは違い何処か温かみのある光が放たれる。そしてその光は俺を包み込むと、俺の身体から吐き出していた血は止まるどころか綺麗さっぱり消え、身体の方も傷一つない状態へと戻っていた。
先程の痛みのせいか身体は少し怠かったし、若干痛みも残ってるが何とか自力で立ち上がる程度にはなっていた。
恐らくゼリスの能力だろう。
が、そんな事はその時の俺にとってはどうでも良かった。
「はぁ…はぁ…。どいういつもりかは知らないが、態々治してくれてどうも。けどいきなりこんな所で目覚めたかと思えば人にあんな訳も分からない物埋め込みやがって…。
流石にこちとらイラついてきたわ。殴られる覚悟程度はしてるんだよな?」
「あら?さっきまで記憶が無くてつまらない反応しかしてなかったのに急に好戦的になったわね。
これならあの世界でも十分やっていけそう」
「さっきからごちゃごちゃと自分1人だけで完結してるんじゃねえぞ。いい加減に…⁉︎」
ゼリスに一発入れようと近づこうとした俺だったが、目の前に謎の灰色のオーロラが現れた事でその歩みは強制的に止められる。
「何だコレ⁉︎」
「全く、目覚めたかと思えば色々と騒がしい子よね貴方。まあ良いわ。どちらにしても力に適合出来たのだから後は強くなってもらうだけ。
今から貴方をあの世界に送ってあげる。精々死なない様にしなさい。私の目的の為に」
「ッ!ふざけんなよ。何が目的か知らないが、まるで人の事を自分の都合の良い道具のように見やがって!くそっ!」
俺はゼリスの言葉に段々怒りを募らせ、目の前のオーロラを殴り続けるが俺と奴を隔てるそれは文字通り壁のように固く全く割れる様子など無かった。
「だから言ったでしょう、貴方の意見は求めんってね。それじゃあ、死なない様に頑張りなさい」
「このっ!待ちやがれ!」
一通り自分の言いたい事だけ言い終えたゼリスは、再び手を翳すと灰色のオーロラは俺目掛けて動き出す。
オーロラをぶち破ろうと駆け出そうとしたが、それは全く無意味と言わんばかりに俺の身体はオーロラの中へと飲み込まれて行った。
「さて、何とか他の神にはまだ勘づかれた無いわね。後は“彼等“をあの世界に送ったり…はぁ色々やる事が沢山残ってるわね、やだやだ」
「何だよ此処。あの女今度は何をしやがった!」
灰色のオーロラに飲み込まれた俺は次の瞬間、ゼリスといたあの空間とは全く別の場所に居た。
周囲に何も無い平原。何かあるとすれば遠くに丘、または山の様なものが見える程度だ。
「くそっ!何なんだよ!あの女ふざけやがって!」
目の前にいたはずのあの女に対するやり場のない怒りを俺は思わず地面に拳を叩きつける。
しかしそんな事をしても何も起こるはずなどない。だが目が覚めた途端に様々な事が起こりすぎた上に、最終的に待っていたのは何処かも分からない場所に強制的に飛ばされたという事実だけ。
とにかくこの理不尽に対する怒りを何かにぶつけたくて仕方なかったのだ。
「……チッ。こんな事してても埒があかないな」
地面に拳を何回か叩きつけたところで、一応少しは頭に登っていた血が降りた俺は少しばかり痛む片手を軽く押さえながら周囲の状況を再確認する。
周囲は変わらずほぼ何も無い平原。
しかも何処も似た様な風景なのでどの方角に進むのが正解かすら分からない。
そもそも何の情報も無いまま飛ばされてきたのでこの周辺に街などが有るかも不明である。
だからと言って何の情報も無いこんな場所をただ闇雲に歩いたところで状況が好転するとも限らない。可能性はゼロではないが、最悪の場合はただ体力を無駄に消耗して野垂れ死ぬ可能性すらあるのだ。
「……はぁ〜。けどこんな所にずっと居ても仕方ないか。とりあえず適当に……ッ⁉︎」
適当歩き出そう。そう口にしようとした俺の言葉は遠くから見えた一瞬の閃光により中断された。
「何だ⁉︎」
一瞬身構えるが幸い光はまるで雷の様に一瞬で消える。音も特に大きくはなかった。
しかしそれでも雨雲ひとつない、それどころか雲よりも明らかに下の辺りから光が落とされた場所を遠目とはいえハッキリと確認した俺は明らかに自然現象では無い何かの力によるものであると何故か悟った。
「……」
正直行こうかどうか迷った。ついさっきゼリスという理不尽な塊と言っても過言では無い女と遭遇したばかりだというのにあの場所に向かって更に厄介な事に巻き込まれる可能性すらあるのだ。
だが他に何の手掛かりもないのも事実。選択肢などあってない様なものだった。
「行くしかない、か…ん?」
諦めて光が落とされた場所を目指そうと歩き出そうとした俺だが、次の瞬間、また目の前にあのオーロラが現れる。
咄嗟に身構えるがオーロラは今度は俺に向かって来ることはない。その代わりその場から少し後ろにズレたかと思えば、先程まで何も無かったその場所に一台のバイクが現れ、そのバイクの全容が顕になるとオーロラはそのまま消えていった。
「これは…」
バイクなど、ある程度の知識は目覚めた時から一応持っていた。しかしこのバイクはピンク(後から知ったが正確にはマゼンタ)、白、黒のカラーリングをし、ベッドライト周辺のパーツが特徴的なそれに関する知識は、先程ゼリスから押し付けられた仮面ライダーとやらの中にあった。
「マシン、ディケイダー。だったか?」
正直何でこのバイクの名前を知ってるのかや、何故今突然出てきたのか、考える事は色々とある。
さっきのオーロラからしてゼリスが関係している可能性もあった為何かの罠かもしれないという考えも過った。
しかし、何故か俺はこのバイクに乗っても何も問題は無いと感じた。
「……あの場所それなりに距離あるし、仕方ない。よな?」
そして気付けば、俺はマシンディケイダーに跨っていた。
ご丁寧にバイク用のヘルメットまで用意されていたので一応被っておく。
「(何で俺、バイクの乗り方なんて知ってるんだ?)」
俺にはある程度の一般的な知識が最初からあったが、何故か初めて乗るはずの
「……とにかく行くしかないか」
色々と腑に落ちないところが有りつつも、折角目の前にこの世界について少しでも知れるチャンスがあるのだ。
俺は一旦考えるのをやめ、エンジンをかけたマシンディケイダーを目的地に向けて走り出させる。
この時の俺は知る由もなかった。
まさか向かった先のその場所で、あのボッチ女や頭のおかしい爆裂娘と出会うことを。
そしてそんな彼女達との出会いが、俺の物語の始まりになるという事を。