このダークライダー達の力を与えられた(押し付けられた)者に祝福を! 作:フュー
色々と予想外な出来事がありつつ、冒険者登録を終えたアキトは早速ギルドから簡単なクエストを受注した。
クエストの内容は街周辺に出没するジャイアントトードという巨大なカエルの姿のモンスターを3日以内に5匹討伐するというものである。
そのモンスターは繁殖の季節になると産卵の為の体力をつけるために餌の多い人里にまで現れるらしく、毎年繁殖の季節には農家が飼っているヤギを始め農家本人や小さな子供が行方不明になることがあるらしい。
ただそのモンスターの肉は淡白だが意外と美味しく、ギルドではよくカエル肉の唐揚げが人気らしい。
そしてジャイアントトード自体はその巨体こそ脅威だが基本的にはジャンプをしながら進み、長い舌を使って獲物を捕らえたり直接その大きな口で捕食したりするのみ。
なのでこのモンスター討伐のクエストはかなり簡単な分類である為、アキトにとって昨日変身したディケイド以外のライダーの力を試すのには丁度いい相手なのだ。
「ところで、そろそろ聞きたいんだが何で2人ともついて来てるんだ?」
ジャイアントトードが出現する場所まで歩いて移動していたアキトなのだが、何故かめぐみんとゆんゆんの2人が彼のクエストに同行していた。
めぐみんはあの後冒険者ギルドに人が集まって来た頃を見計らい自身のカードを照会。
その際に彼女の高い知力や魔力のステータスが知れ渡った事により彼女は他の冒険者達から自分達のパーティーに入らないかと早速勧誘され始めた。
なので彼女はその勧誘きて来た冒険者達と共にクエストに出るものとアキトは考えていたのだ。
そしてゆんゆんも、めぐみん程積極的に目立つ行動などはしていないとはいえめぐみんと同じ紅魔族。更にルナも言っていたが魔力も知力も高くそれだけでも優秀な魔法使いである事は間違いないので、遅かれ早かれ勧誘されるだろうと思っていた。
「えっ⁉︎や、やっぱりご迷惑でしたか!」
「いやそうじゃないけど。2人とも優秀な魔法使いなんだから、態々俺みたいな冒険者なりたてで、しかも素性もろくに解らない奴に付き合う必要は無いだろ。
他のパーティーには俺より経験豊富な奴とか2人と同じ上級職が入ってるパーティーが幾つかあっただろ?それに何名か熱心に勧誘もして来たろ」
実際、2人がアキトと共にクエストに出ると知った満面の中には少し不満気な顔をするもの達もチラホラと見受けられた。
「確かに、我々の能力を考えればある程度の知識や実力のあるベテランや同じ上級職のパーティーに加わるのが無難でしょう。
だがしかし!昨日のあの鎧の戦士としての戦いをもう一度見られるこのチャンスを益々逃す手はありません!
パーティーの勧誘の件は明日以降にでも受ければ良いだけですし、何より昨日は色々あってじっくり見る余裕などありませんでしたからね。
それに、アキトに我が爆裂魔法を見せつける良い機会です!相手がカエルなのが少々不満ですがそれはそれです!」
感情が昂ってるのかまた瞳を赤く光らせる彼女をゆんゆんが宥めている横で、アキトは別の事を考えていた。
「(2人が付いて来たのは予想外だったが相手は初心者でも油断しなければ簡単に倒せるレベルのモンスターだ。万が一にも食われて死ぬ事はないだろう。
それよりも…)」
アキトの手には昨日消えたはずのディケイドライバーが握られていた。
どうやらギルドで登録した際に就いた『仮面ライダー』という役職のスキルの1つには彼が使えるライダーのベルトを自由に出現させたり消したり出来るらしい。
それ以外にも彼の冒険者カードに記されているスキルの中には特定のライダー限定ではあるが“鏡を創り出す“物など色々とあるようだ。
「(このベルトも力も、全部あの女が俺に取り込ませた物なのは分かる。使い方が分かるのもあの女が言ってたオマケの1つとかなんだろう。
けど…何で俺は知識としてだけでなく“身体の方もどう動けば良い“かなんて…戦い方まで知ってるんだ?)」
そう。実は彼は先日からその事についてずっと考えていた。
先日アーネスと戦った際に、彼はまるで最初からこの力をそう使うのが分かっていたかのように変身し、更にはどのカードがどのライダーの力で、どの様な効果なのかも分かった上に、力を使うまでの一連の動作を何の迷いもなく実行できた。
まるで以前にもこの力を使った事があるかの様に。
「……んな訳無い。よな」
「ん?」
「アキトさん?」
「いや何でも無い。それよりそろそろ目的地だから、いつ戦闘が起こっても大丈夫な様に準備はしておこう」
◯◇◯◇◯◇◯◇
と、色々と疑問に感じる事を抱えつつアキトは紅魔族の2人と共に討伐対象のモンスターがよく出没するポイントに到着した。
したのだが。
「ぁっ……」
「あの、アキトさん。大丈夫ですか?」
「へっ?あ、ああ!大丈夫だ、大丈夫!」
アキトは初めて遭遇する巨大なカエルの姿に思わず引きそうになる。
彼の頭の中の知識にあるカエルとは、大体が手の平かそれより小さめのサイズが一般的だと記憶している。
しかし今彼らの視線の先で鎮座しているカエルは、大きさは小さな小屋程の大きさであろうかどう見ても人間よりは巨大な巨体を有し、更に緑だけでなく青や赤色と無駄にカラフルな個体が居た。
前情報である程度知ってたとはいえ、実際に見てみるとどうしても多少なりとも動揺してしまうのである。
「よ、よし。確かクエストの内容は3日以内にあのカエルを5匹討伐だったな?」
「はい。けど多分早ければ今日で終わりますよ。アキトさんはあの仮面ライダーっていう姿で上位悪魔を倒せるくらい強いですし。
私は中級魔法しかまだ使えませんけどジャイアントトードくらいなら余裕で倒せますから大丈夫ですよ!」
「おい、何故私をサラッと戦略として無視したのか聞こうじゃないか」
今回のクエストの内容の確認を改めて確認しているとゆんゆんの話してる内容に不満があったのかめぐみんが突っかかってくる。
「だってめぐみん爆裂魔法撃つと魔力直ぐに使い果たしちゃうし何より動けなくなるじゃない」
「だとしてもまるで私が戦力外みたいな言い方をする必要がありましたか⁉︎このっ、里ではずっとボッチだった中級魔法使い!」
「だ、だから前にも言ったけどそんな紅魔族の出来損ないみたいな呼び方やめなさいよ!それにボッチじゃないから!
ふにふらさんとかどとんこさんとか、ちゃんとお友達だから!」
「おいお前ら静かにしろ!あんまり大声出すと……あっ」
「「アキト(さん)急に黙ってどうし……あっ」」
紅魔族の2人が些細な事で急に言い合いを始めついには取っ組み合いにまで発展したそれを宥めようとしたアキトがジャイアントトード達の方に目を向けた時だった。
アキト達が確認した全てのジャイアントトードの目線が彼等に向けられてる。
どうやら2人の言い争う声に反応して完全にロックオンされた様だ。
「あ〜、完全にバレたな。見つからない内に一気に終わらせるつもりだったんだが…」
「全く、短気なゆんゆんが大声を出すからですよ」
「最初に声を上げたのも喧嘩を売ってきたのもめぐみんの方じゃない!」
「なにを〜⁉︎」
再び取っ組み合いを始めそうな2人。しかし彼等の様子に構わずジャイアントトードは見つけた獲物を捕食するためにその巨体で跳ねながら近付いてくる。
「お前ら良い加減にしろ!今は喧嘩なんてやってる場合か⁉︎つか結局人の手伝いに来たのか邪魔しに来たのかどっちだよ!」
「ふんっ!まあ良いでしょう。アキトの言うとおりゆんゆんと言い争ってる場合ではありません。
あんなカエル程度には勿体無いですが仕方ありません!とくと見るが良いですよアキト!我が奥義“爆裂魔法“を!」
声高にそう宣言しためぐみん。
彼女は自身が持っていた杖をジャイアントトード達に向けて翳す。すると杖の宝玉の様な部分に魔力が集まり始めた。
「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。
覚醒のとき来たれり、無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」
めぐみんが魔法を放つ詠唱を進め始め、その間も魔力は彼女の杖に収束していきそれは魔法を昨日初めて直接見たアキトの目から見ても膨大な量であり、それだけで今から放とうとする魔法がどれ程強力なのかが伺える。
ジャイアントトード達は突然一箇所に収束し始めた魔力の流れを見たからかその歩みを止めるが、カエル達の頭上には既に全ての個体を飲み込まんとする様に巨大な魔法陣が展開されていた。
「踊れ、踊れ、踊れ。我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。
万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!
これが人類最大の威力の攻撃手段。これこそが究極の攻撃魔法!」
次の瞬間、カエル達は巨大な光に包まれ、爆散した。
「っ!」
巨大な魔法陣から放たれた膨大な魔力を内包した攻撃は、一瞬で魔法陣が展開されていた範囲の地面を消し飛ばすほどの大爆発を巻き起こした。
そしてその爆発が引き起こした爆風に思わずアキトは体勢を低くするが、幸いな事にカエル達がいた爆心地から少なからず距離があった為か吹き飛ばされる事はなかった。
数秒後、爆発により巻き起こった土煙が晴れてくると、大爆発が起こった地点は丸々抉り取られ大きなクレーターが焼け跡と共に出来上がっていた。
「これが、爆裂魔法か…」
たった今放たれた強大な魔法の威力を目の前にし、アキトは目を見開く。
昨日アーネスが撃ってきた魔法よりもかなり強力な魔法。
こんな魔法を自分より歳下の女の子が放った事に対して驚きと共に、先程の短気な性格で今後所構わずこれを撃ち込まないか少々恐怖を感じた事を胸の内だけで思い始めていた。
「(ま、まぁ流石にそんな心配は無い…よな?)」
何故だか色々と今後が不安になる未来が見えそうな気がしたが、とにかく今は2人の安否の確認からだ。
「ゆんゆん無事か?」
「は、はい!私はなんとか。それにしても。もうめぐみんったら…勢いに任せて爆裂魔法なんて撃つなんて…」
「ははは…確かに想像してたより凄い威力だったな。そのお陰で見た感じカエルは全部消し飛んだみたいだし(明らかにオーバーキルだとは思うが…)。
っと、そうだ。めぐみん!そっちは大丈…夫ぅ?」
アキトは直ぐにめぐみんの安否の方も確認しようと彼女が立っていた場所に向けて声をかけるが、その場所のある光景を見て思わず奇妙な声を出してしまうがそれも仕方のない事だろう。
何故なら彼の視線の先には杖を手放し、地面にうつ伏せの状態で力尽きた様子で倒れているめぐみんの姿があったのだから。
「め、めぐみん?」
「あっ。そういえばアキトさんにはまだ爆裂魔法について詳しく話してませんでしたね…。えっと」
「ゆんゆん、此処からは私が説明しましょう。
我が奥義爆裂魔法は、その絶大な威力故に消費魔力もまた絶大。まぁ要約すると限界を超えた魔力を消費するので……身動き1つ取れません…」
「えぇ…」
その説明に、思わずアキトはそんな声を出してしまう。
つまり、この世界の魔力の回復速度がどの程度かは分からないが一度撃ってしまえばその日はほぼ使いものにならなくなってしまうという事ではないか。
しかもそんな場面によっては切り札ともなり得そうなものを彼女は何の躊躇もなくその場の感情に任せて更にはカエル相手に放ったのだ。
「(確かめぐみんは知力は高いらしいから馬鹿ではないんだろうが、もしかしなくても…)」
「あの、アキトさん…何となく考えてる事は分かりますけど。今だけはそっとしておいてあげてください…」
「お、おう…」
何となくめぐみんという紅魔族がどういう人物なのかが大体掴めてきた。
そんな事を思いつつジャイアントトードの討伐自体は目標討伐数にはまだ到達してないにしてもキッチリこなしてはくれたので一旦安堵しようとした時だった。
周囲の地面の下から先程とは別の、しかも倍以上の数のカエルが出て来たのである。
「えっ⁉︎」
まさかの事態に驚きのあまり声を上げてしまう。
その数は、合計11達居た。
「ちょっと!明らかにさっきの倍以上の数のジャイアントトードが出て来ちゃったんだけど⁉︎」
「…恐らく爆裂魔法の爆発の音でこの下で眠っていたカエル達が一斉に目を覚ましたのでしょう。それにしても先程の倍の数とは…まさか我が魔法が魔物達を目覚めさせる目覚めの光となってしまうとは」
「無駄にカッコ良く言った風にして誤魔化さないで!要するにめぐみんが勢いに任せて爆裂魔法なんて撃つから余計なカエルまで呼び寄せちゃったんじゃない!」
「……はぁ、仕方ない。元々このクエスト受けたの俺だし、こんだけの数討伐したら報酬も上乗せされるかもしれないしな」
アキトは周囲から出現したカエル達を少し見回した後、流石にここまでの展開に色々考えるのに疲れたのかため息をついた後、先程まで持っていたディケイドライバーを構えて腰に当てる。
すると昨日と同じ様にベルトが巻かれ、ライドブッカーからカード1枚取り出して構え、裏に描かれているディケイドのライダーズクレストが前に来る様に翻す。
「変身」
《KAMENRIDE DECADE!》
昨日と同じ様に、ドライバーにカードを挿し込みバックルを閉じると幾つもの幻影がアキトの身体と重なり合う様に1つになり、ディケイド激情態へと姿を変える。
「おぉ〜!昨日は遠目からでしか見えませんでしたがやはりカッコ良い姿ですね!
最初はピンク色で大分奇抜だとは思いましたがこうやって間近で見てみるとかなり良いデザインです!」
「そりゃどうも。あとピンクじゃなくてマゼンタな」
母だけを横に向けて変身した姿を見ためぐみんの発言に軽くツッコミを入れつつ、ディケイドは迫ってくるカエル達を見据えながらブッカーから1枚のカードを取り出す。
「ゆんゆん。あのカエル達2、3体ほど任せて良いか?」
「えっ?そりあ勿論大丈夫ですけど。まさか、残り全部相手にする気ですか⁉︎いくらなんでも…」
「問題ない。多分この力ならあのカエル程度何体居ても変わらないだろうし(本当なら他のライダーの力も試してみたいけど、昨日は使えなかったカードもあったから今回はそれを使ってもみたかったし)」
ディケイドの力の一端しか知らないゆんゆんは多数のジャイアントトードの方へ余裕そうに歩いていく姿に不安を覚えたが、ディケイドに変身したアキトは取り出した変身に使ったのとは別のカードをベルトに挿し込んだ。
《ATTACKRIDE GIGANT!》
その音声が鳴り響くと、ディケイドの右肩にG4型強化体携行用多目的巡航4連ミサイルランチャー『ギガント』が出現し、それを担いだ彼は1番近くにいた4匹のジャイアントトードに狙いを定める。
「…ハァッ!」
狙いを定め体勢を整えると同時に引き金を引く。
装填されていた4発のミサイル全てが一斉に放たれた。
放たれたミサイルはそれぞれ4匹のジャイアントトード目掛けて一直線に飛んでいき、着弾した瞬間その場で先程のものと比べれば小規模ではあるが4匹のジャイアントトードをまとめて爆発により消し飛ばした。
それにより爆発四散したジャイアントトードの血と肉片が辺りに散らばるが、他の個体はそれに対して少し反応こそ見せるが直ぐに標的であるディケイド達に向かって飛び跳ね始める。
「す、凄い。魔法を使ってる様子はなかったのにあんな爆発を簡単に起こすなんて…」
「それじゃゆんゆん、そっちもちゃんとやれよ」
「あっ」
ミサイルが全て無くなったギガントを放り投げ、ゆんゆんにそれだけ言い残すとディケイドは向かってくるカエル達に向かって走り出す。
「アキトさん!ッ⁉︎」
1人突っ込んでいくディケイドを止めようとしたゆんゆんだったが、彼が任せると言っていた3体のジャイアントトードがもう直ぐ近くまで来ている事に気付く。
自身はともかく魔力を使い果たして殆ど動けないめぐみんを置いて行く事はできず、だからといって魔法を使って戦うとはいえ人1人背負って戦いながら彼に追いつくのは少々戦闘のやりずらさなどの問題からあまり最適解とは言えない。
つまり彼女に出来る選択は1つ。この場でジャイアントトードを直ぐに全滅させて直ぐに彼のサポートに向かう事だった。
「ゆ、ゆんゆん!カエルが直ぐそこまで来てますよ!早く倒してください!
このままじゃ今や無力な私が真っ先に喰われてしまいます!」
「あぁもうっ、分かったわよ!『ライトニング』!」
「ハッ!」
ゆんゆんが魔法を撃ち始めたのと同じタイミングで、ディケイドはソードモードにしたライドブッカーで1匹のジャイアントトードを跳躍し上段から切りつける。
ジャイアントトードはその皮膚の柔らかさから打撃などには強いが斬撃に対しては弱い。
なので容易く頭から切り裂かれ絶命する。
そして直様近くに居た2体目に斬りかかろうとするが、流石にそうはいかないと言わんばかりにそのカエルは口を開き長い舌を伸ばして反撃に出る。
「うわ気持ち悪っ」
しかしディケイドは一瞬動きを止めるも、舌の動きをしっかりと見定め回避して行く。
「そういやギルドじゃお前らの唐揚げが何故か人気って話だったが、丸焼きはどうだ?」
《ATTACKRIDE》
舌を回避しつつ一旦後退し、ディケイドはブッカーから新たなカードを取り出しベルトに挿れる。
その間もカエルは攻撃を仕掛けてくるが、段々と慣れてきたのか難なく躱していく。
「焼き加減は……とりあえず“焼き過ぎ“でいくか」
《STRAIKU VENT!》
サイドバックルを閉じ、ディケイドが軽く右手を上に向けると何処からともなく何かの物体が炎の様な物に包まれながら降下され、そのまま導かれる様に上げられていた手に装着される。
赤い竜の頭を模した手甲型の打撃武器『ドラグクロー』が装着されると、竜の口の部分に赤い炎が溜まり始める。
「はぁー…」
ディケイドはドラグクローが装着された右手を後ろに引き、左手を前に突き出す構えを取り、腰を少し低くしつつ目の前のジャイアントトードを見据える。
「……ハァァァァッ!」
そしてそのジャイアントトード目掛けてドラグクローを思い切り前に突き出した。
すると口内の部分に溜めてあった炎が一気に前に放出され、目の前のジャイアントトードを一気に包み込み文字通り丸焼き、いやそれを通り越して黒焦げにして見せた。
これで残るは2匹。
「おぉー見事に真っ黒焦げだな。こりゃ焼き加減ミスったか…。ま、良いか」
黒焦げになったカエルから直ぐに視線を逸らして残った2匹のカエルへの目を向ける。
「最後はコイツで決めるか」
《ATTACKRIDE EXPLOSION!》
「はっ!」
ディケイドが1枚のカードをドライバーに挿れ手を翳すと、2匹のジャイアントトードの周りを複数の魔法陣が取り囲む様に展開された。
するとその魔法陣全てから爆発が巻き起こり、その中心にいたジャイアントトード2匹を容赦なく飲み込んだ。
飲み込まれた2匹は最初の4匹同様にその巨体は消し飛ばされ、肉片が辺りに飛び散った。
そしてその場に残ったのは、ディケイドと彼が短時間で処理したジャイアントトード達の原型が分かる物の方が少ない死体のみであった。
「ふぅ。昨日の悪魔に比べたら、大した事無かったな(けどやっぱり何で俺が戦い方を知ってるのかは分からないままか…。適当なカード使ってみたら何か思い出すと思ったんだが…)」
ディケイドは仮面の下でそんな事を思いながら何となくたった今使った3枚のカードを取り出してみる。
3枚のカードはそれぞれG4、龍騎、そしてワイズマンと呼ばれる仮面ライダー達が使っていた武装や魔法などを扱えるカードである。
特になんの関連もないライダー達の力だが、それ故に適当に使っていけば何か思い出す手掛かりになるかもしれない。
そう思い使ってみたのだが、矢張りそう都合良くは行かないらしい。
「アキトさーん!」
「ん?」
そんな事を考えていると、少し離れた場所から彼の名前を呼ぶ声がする。
その方向に目を向けると、魔力切れで動けないめぐみんを背負った状態で走って向かって来てるゆんゆんの姿があった。
彼女達の後方にはゆんゆんの魔法で倒れたのであろう3匹のジャイアントトード達が転がっており、どうやら無事倒す事が出来たらしい。
「はぁ、はぁ…あ、アキトさん大丈夫でしたか⁉︎私の方は問題なく終わりましたけど…」
「おう、こっちは問題無し。それよりそっちは予想より早く終わったっぽいな。流石は紅魔族だな」
「いえいえ、私なんてまだまだですよ。アキトさんこそ、あんなに沢山居たジャイアントトードを一気に倒しちゃって……。私、最初は正直アキトさんが無茶しすぎるんじゃないかってヒヤヒヤしてたんですからね?」
「あはは、悪い悪い」
「全くですよ。いくら相手が駆け出し冒険者でも簡単に倒せるカエルとは言えあの数を相手に1人で突っ込むとは無茶も良いところですよ」
「元はと言えばアンタが考えなしに爆裂魔法を撃つからでしょうがぁ!」
「あっ、ちょっ!ブンブン揺らさないでください!私が悪かったので!ちょっ!やめっ、ヤメロォーッ!!」
「(仲良いなコイツ等)」
めぐみんの発言にイラッとしたゆんゆんが身体を左右に大きく揺らしながら背負った彼女を振り落とそうとする様子を少し微笑ましいものを見る目で見ていたディケイド。
しかし、先程の爆発音に釣られていつ他のモンスターが来るか分からない。
ディケイドとゆんゆんはともかく魔力を使い果たして動けないめぐみんを守ったり背負ったりしながら戦うのは少々骨が折れるかもしれない。
ギルドから聞いた話によればこの辺にそこまで強いモンスターは滅多に出ないとの事だが万が一という場合もある。
「2人とも、今回は一旦街に戻るぞ。クエストがどういうものなのかも分かったし、他にモンスター達がやって来ないとも限らないしな」
「あっ、はい!」
「ふぅ…確かに、私は今日はもう動けません。よしゆんゆん、しっかりと丁寧に運んでくださいね」
「…もう一回ブンブン揺らされたいのかしらアンタ」
「いや、流石に人1人背負いながら歩くのも少し疲れるだろ。俺に良い考えがある」
そう言うとディケイドは、何も無い場所に向かって片手を翳す。
するとその先に灰色のオーロラが現れる。彼もついさっき冒険者カードを見て気付いた事だが、どうやらディケイドの姿になってる間のみこの灰色のオーロラ『オーロラカーテン』を自在に出す事が出来るらしい。
ただし、彼の知識にあるオーロラカーテンの様に時間の移動などは出来ない。そして場所の移動にも一度行った事のある場所、または具体的にイメージできる場所に限る。しかもこの場所の移動に関しては彼の場合一定のレベルに到達する必要があるらしく、今の彼には出来ない。
しかし、レベル関係なくある物を出し入れする事は可能の様で、彼はそのオーロラカーテンから昨日乗っていたマシンディケイダーを取り出した。
「アキトさん、これって」
「昨日アキトが乗っていた、確かバイクという物でしたか。もしかしてこれに乗ってアクセルまで戻るんですか?
というかコレ、3人も乗れるのですか?」
「まぁこのままじゃ流石に無理だな。コレ出来ても2人乗りが限界だし。
だかはちょっと形を変える」
「「?」」
ディケイドはそこまで言うと、もう一度ブッカーから今度は先程まで使ってたのとは別のカードを取り出す。
《ATTACKRIDE SIDE BASSHAR!》
音声が流れると同時に、マシンディケイダーの前にとあるライダーのライダーズクレストが浮かび上がる。
そのマークは出現すると同時にマシンディケイダーを包み込む様に通過すると、バイクの形をマゼンタと黒のバイクから黒と黄色のカラーリングのサイドカー付きのバイク『サイドバッシャー』へとその姿を変えた。
「おぉー!バイクの姿が変わりましたよ!一体どんな魔法を使ったのですか⁉︎」
「うーん、まぁ秘密って事で(ぶっちゃけ言うと俺にもよく分からん。何でカード1枚で別のバイクになっちゃうの。というかこのバイクのライダーって魔法というよりどちらかと言えば科学とかオカルト寄りな感じな気がする)」
ディケイドは仮面の下で、このバイクに主に乗っていたギリシャ文字のχをモチーフにしたライダーの事を思い浮かべつつ、めぐみんを彼女の杖と一緒にサイドカーに乗せて、自分とゆんゆんはバイク部分に乗った。
その際に何故かバイクに用意されていた2つのヘルメットを2人に被せるのも忘れない。
「よし、ゆんゆんはしっかり捕まって。めぐみんは杖落とさない様に注意しろよ」
「は、はい!」
「分かりました。それにしてもこの乗り物、馬車とは違う感じですが中々悪くありませんね」
2人がしっかりヘルメットを被ったのを確認して、ディケイドはサイドバッシャーのエンジンをかけそのままアクセル方面へ向けて走り出した。
「(あっ、これ。前にあるえが貸してくれた小説に出て来る白馬に乗った王子様の後ろに乗るお姫様みたい!)」
因みにアクセルに向かう道中、過去に友人から借りた小説の展開に似たシチュエーションを偶然にも体験する事になっているという事に気付いたゆんゆんは、ヘルメットの下で顔を赤くしていたが、幸いその様子は彼女が抱きつく形で捕まってるアキトにも、バイクが走り抜ける際の風に感動した様子のめぐみんにも気付かれる事は特に無かった。