ゼンゼロ世界に来た元MSF兵さん 作:何処にでもいるエセBIGBOSS
姜霊からの仕事を片付けてから数日後、コヨーテはツイッギーとリュコスと共にヘリの中にいた。
結果として姜霊は託した兵器を壊された不満からか何処か不機嫌そうな表情ではあったがデータは取れたからと納得して終わった。
姜霊が連れていた兵士達も防衛軍を離脱する決意を固めて一度、軍に戻ると何名かの兵士達を連れ、ヘリを数機を手土産にコヨーテの元に渡った。
規模は一気に拡大された事でツイッギーは本格的に目を付けていた拠点候補となる海上のプラントへと仲間達を伴ってヘリを飛ばしたのだ。
数時間にも及ぶフライトの末、コヨーテ達は打ち捨てられていたプラントへと来るとそこは錆やカモメの糞で汚れきった正に海の廃墟と呼べる場所だった。
リュコス達はそれを見て唖然とし、ツイッギーは辺りを見渡した後、軽い溜め息を吐く。
「……今日から此処を私達の拠点にする。見ての通り人が住むにはまだ不向きね。でも、見た目は薄汚れてるけど基礎構造はしっかりしてる。手入れして私達なりに改装すれば十分に使えるわ。さて、異論を聞くわ。溜め込まないで話して」
ツイッギーは流石にこれは不満があるだろうと最後に不満の声くらいは聞くつもりでそう言った時、コヨーテがヘリからモップやバケツを持ってプラントの中心に建てられている建物へ向かって行こうとする。
「コヨーテ。まだ話しは終わってないわよ?」
「おいおい、ツイッギー。呑気に話してても仕方ないだろ?早く掃除をしてせめて寝泊まりくらいは出来る様にしよう。……懐かしいな」
コヨーテは錆だらけ、糞まみれのプラントを見て懐かしさを覚えた。
BIGBOSSが任務を受け、コスタリカに向かった際にミラーと共に任務の報酬として手に入れた海上プラントへ足を運んだ時だ。
見事に錆だらけで糞で汚れきったプラントにコヨーテも絶句し、止めた方が良いんじゃないかと思った程だ。
だが、ミラーが率先して掃除を始めてしまい、コヨーテを含めた仲間達も退くに退けなくなって懸命に掃除を行い、基地らしく改装していったのだ。
「あれは大変だったな……」
コヨーテはそう呟いて掃除を開始した。
リュコス達は唖然としているとツイッギーも掃除用具を手にして向かって行き、リュコス達は互いに目を合わせた後、掃除用具を手に分担してプラントの清掃を始めた。
「私はヘリで研究資料を纏めてるから頑張っ」
「貴方もするのよ。うちに入るなら手伝いなさい」
コヨーテ達にちゃっかり着いてきていた姜霊はヘリの中に閉じ籠ろうとしたがツイッギーに首根っこを掴まれて掃除に強制参加させられた。
モップで拭き、錆を落とし、しつこい糞の汚れを懸命に落とす。
外も中も大掃除になり、到着してから数時間が経過して夜になると綺麗にして使える様にしたプラントの一室に集まって全員で熟睡する。
そして朝日が昇ればまた掃除を始める。
プラントの日差しはキツく、コヨーテやリュコス、ツイッギーも上半身をTシャツにして暑さに耐えながら掃除する。
「あづいぃ~……」
「ンナ~……」
「不満を言ってる暇があるならとっととやって」
インナーは着てないのかブラ丸出しの姜霊とフメが不満げを隠さずにいる所をツイッギーに怒られる。
「よし!錆も取れてきたぞ!もうひと踏ん張りだ!」
リュコスのその言葉に兵士達が更にやる気を出す。
コヨーテは黙々と掃除をしていれば周りの兵士達はそれに合わせて動く。
錆と糞に満ちたプラントはみるみると嘗ての姿を取り戻していき、遂にその時が来た。
「やったぞぉ!」
「やってみるもんだな!」
プラントは見事に綺麗になり、プラントの全てが使える様になった。
外もそうだが中も清掃を行き届かせ、電気まで使える様に整備したのだ。
技術者である姜霊がいた事でその面の問題は比較的早く解決し、電気の無い暗い中で唯一の頼りとなったランタンや懐中電灯を使う事はもうないのだと兵士達は泣きながら電気の有難味を痛感していた。
建物内はそれはそれは暗く、夜中にトイレに行こうものなら必ず同伴をする者が多発した程だ。
それがスイッチ一つで電気が点くとなるともう暗い廊下を歩く事などないのだと廃墟特有の暗がりが怖い兵士には有難い話なのだ。
「此処が本当に俺達の拠点なんだな!」
「もう根無しくさ生活とはおさらばだ!」
兵士達が喜び、抱き合ったり、笑いあう光景にコヨーテは満足していると兵士の一人が駆け寄ってきた。
「ボス!折角ですので記念撮影致しましょう!カメラは用意しております!」
「お、良いな。俺達の拠点の門出だ。全員の集合写真を撮ろう」
コヨーテも乗り気になり、兵士達は集まって集合写真を取る体勢になる。
コヨーテは当然、中心となり、ツイッギーはその隣に立つ。
「コヨーテ」
「何だ?」
「……ありがとう。貴方のおかげで此処まで拡大できたわ」
「らしくないな。どうした?」
「別に。これから忙しくなるから今の内にお礼くらいは言おうと思っただけよ」
ツイッギーはそう言って微笑むとカメラのタイマーをセットした兵士が合図を送る。
「カメラ撮ります!笑ってください!」
兵士はそう言ってカメラを起動させ、タイマーが切れる前に集合写真に加わるとカメラのシャッターが切られた。
写真が撮られると全員でわらわらと集まって写真の出来を見る。
「おい!俺にも見せろよ!」
「馬鹿!ボスが先だ!」
「押すな押すな!」
「全員煩い!順番に並びなさい!」
わらわらと集まって騒ぐ兵士達にツイッギーが最終的にキレて順番に並んで待つ事になった。
因みに並び順はジャンケンだ。
「上手く撮れてるな」
コヨーテは写真を見ながら微笑む。
コヨーテを中心にツイッギー、リュコス、姜霊そして仲間の兵士達が各々な立ち振舞いやポーズをとって写真に写っている。
「もう少し落ち着きがあれば良いのだけどね」
「そう言うな。思い出は楽しい方が良い」
「……そうね。今回は許してあげるわ」
ツイッギーはそう言って微笑むと写真の入ったカメラを順番待ちしていた兵士に渡す。
コヨーテとツイッギーは写真を見ている兵士達から少し離れて海を見つめる。
「コヨーテ。私達は漸く腰を落ち着ける場所を得たわ。此処からより拡大させるわよ」
「その為には仕事をこなさないとな。次の仕事はあるか?」
「あるわ。私が前に走り屋連盟について話した事があるわよね?」
「あぁ、確かトライアンフと言う走り屋のチームが纏めているって言ってたな」
「そうよ。彼ら、トライアンフからの依頼よ。やるだけの価値はあるわ。郊外で最も影響力のある勢力からの依頼。それを達成して信用を得れば私達の名は一気に轟くわ。やってくれるわね?」
「他ならぬ副司令からのお願いだ。やるさ。それにそろそろ仕事に取り掛からないと彼奴らを早々にひもじい思いをさせてしまうからな」
コヨーテはそう言って笑うのだった。