ゼンゼロ世界に来た元MSF兵さん 作:何処にでもいるエセBIGBOSS
コヨーテとツイッギーを追い詰めた兵士が引き金を引こうとした時、兵士を後ろから押さえつける者が現れた。
「逃げろぉ!」
その人物はツイッギーを手術した医者で白い白衣は他人のものなのか赤い血が付着しており、酷い状況を生き抜いていたのだと分かった。
医者は必死に兵士を押さえつけ、コヨーテとツイッギーを逃がそうとするが兵士の激しい抵抗を受け、壁に叩きつけられると重い蹴りを腹に受けた。
医者は咳き込みながら倒れ、兵士は再びコヨーテ達に銃口を向けるが倒れていた医者が足を掴んで引っ張り、兵士を転ばした。
「逃げろ!早く!」
医者が必死に叫び、コヨーテ達に逃げる様に訴えていた時、兵士の銃口が医者に向けられ、そのまま頭を撃ち抜かれた。
医者が死んだ事で兵士は体勢を立て直そうとするがコヨーテがその隙を逃さず、兵士の頭を蹴り上げ、一撃で気絶に追い込んだ。
「……おい、大丈夫か!」
コヨーテは医者の元へ行き、安否を確認するも当然、絶命しており、コヨーテは暫く項垂れた後、医者の瞳を閉じてやると近くに落ちていたサプレッサー付きの拳銃を手にしてチェックする。
「……俺達の世界と似た構造だな」
コヨーテはそう呟いてマガジンの弾数を確認し、スライドを引いて中に入っていた弾を抜くとホルスターの中へ入れた。
「この人……私を手術した人よね……」
「そうだ……残念だ……俺達を助ける為に……」
「……行ってコヨーテ……これ以上……見たくない……」
ツイッギーはそう言って医者から目を反らして言うとコヨーテも頷き、移動する。
コヨーテは手に入れたサプレッサー付きの拳銃を片手で構えてクリアリングを行い、兵士達が現れないか警戒していると目の前に二人の兵士が現れ、コヨーテ達の存在に気付くが叫ばれる前にコヨーテが素早く兵士二人を撃ち抜いた。
一人は死んだがもう一人は瀕死でのたうち回っている。
そこへコヨーテが近付くとトドメの一発を入れて今度こそ絶命した。
「素敵な夜の御礼代わりだ。受け取れ」
そんな事をコヨーテは言ってからそのまま移動を再開、病院の裏口を見つけた。
コヨーテは警戒しながら近付き、ブービートラップの類いが無いかしっかりと調べると裏口の扉を開け、外へと出た。
コヨーテは周りを警戒しながら外を歩く。
病院は都市から少し離れた位置にある病院でこれだけの騒ぎが起きているのにも関わらず治安局の影すらない以上、情報規制がしかれているのは明白だった。
しかも都市から離れた位置の為、騒音で騒ぎを聞き付けられてやって来る者も皆無の為、襲撃者である兵士達が好き勝手に虐殺して回れる状態だった。
それが幸いしてコヨーテは病院の周りに生えている草木に紛れながら脱出、少しでも病院から離れようと試みていると病院の方へ戦車の様な兵器が向かって行くのが見えた。
「あれは防衛軍の保有する対人重装甲砲撃車、タートルよ。俗に言う戦車だけどあくまでも対人想定の兵器だからあまり見なかったのだけどわざわざ持ち出して来るなんて」
「そこまでして俺達を始末したいのか?」
「俺達?私を狙ったのよ。貴方は関係ない」
「いや、ある。俺はお前と深く関わった。この先は俺も狙われるだろう」
ツイッギーはそれを聞いて落ち込む素振りを見せ、コヨーテは笑って見せた。
「別に構わないぞ。俺が此処に来なくて向こうで生き残っても残党狩りにあっていた筈だ。一人だったら流石に堪えるがお前と一緒なら何とかなりそうだがどうする?」
「どうって……」
「俺は銃を握る事しか生き方を知らない。だからこの世界でも傭兵をしていくつもりだ。お前に他の生き方があるなら良いが一緒にやるか?」
コヨーテの誘いにツイッギーは迷いを見せた後、返事を返した。
「やるからには二人だけの規模では納めないわよ」
「何処までやるんだ?」
「貴方が言っていたMSF。それくらい或いはそれ以上の勢力を作る。私は彼奴らを許せない。絶対に殺す。でも力が無い……例え四肢を義手と義足で補っても足りなさ過ぎる。大きな武力が必要なのよ。そう……軍隊と呼べる力が」
ツイッギーの憎悪の込められたその目標にコヨーテは何も言わずに聞き続ける。
「彼奴らは防衛軍の所属。どんな部隊でどんな役割なのかは具体的には分からない。分かるのは圧倒的な武力を持っている事よ」
ツイッギーはそう言って病院に視線を向けると襲撃者達のヘリが数機飛び、タートル数台が包囲する形で砲身を向けている。
明らかに過剰戦力とも言える兵器の数だった。
「だから私は奴等に対抗する。その為の力、軍隊を作る。……て、言っても私はこんな状態だから絶対に叶わないと思うけどね」
ツイッギーは諦めた様に言った時、コヨーテが口を開いた。
「なら、俺達の部隊を作ろう」
「え?」
「お前は部隊を作りたいんだろ?なら、少しでも色葉のある俺も加えろ」
コヨーテのその言葉にツイッギーは戸惑いつつ、自分の考えを伝えた。
「待ってコヨーテ。私は貴方を巻き込むつもりはない。これは私の因縁よ」
「いや、俺の因縁にもなった。あの病院の医師達には世話になった。良い奴等だったよ……特にあの医者は自分の命を掛けて俺達を救った。彼奴がいなかったら俺達は……俺を仇討に加えろツイッギー。嫌でも加わるからな」
コヨーテはそう言って意思を示すとツイッギーは呆気に取られながらも笑った。
「仕方ないわね。そんなに一緒にやりたいなら勝手に来れば良いわ。でもその前に私の手足が欲しいのだけどね」
「宛はあるのか?」
「無いわね。私はこの方、軍の中でしか生きた事がないから。宛はあるとしても……彼処に戻るのは気が引けるわ」
ツイッギーはそう言って病院の方へ視線を向ける。
包囲からの砲撃を受けている病院は瞬く間に崩れ去る光景が見え、もはや戻る意味すら無くなった。
「何とか探すか……お前の手足をな」
「そうね……私、疲れたわ……このまま寝させて貰うわよ?」
「あぁ、良いぞ。ゆっくりと寝ていろ。起きた時にはホットゾーンくらいは抜けているだろうからな。腰を落ち着ける場所を見つけてそこで計画を話し合おう」
コヨーテはそう言ってツイッギーを背負い直し、ツイッギーはコヨーテの背中に残った体を遠慮無く預けてそのまま眠りについた。