ゼンゼロ世界に来た元MSF兵さん 作:何処にでもいるエセBIGBOSS
任務を終え、コヨーテはリュコス達を連れてツイッギーの元へと戻った。
「お帰り。それで帰ってくる途中で考えてくれたかしら?」
「ツイッギー。俺はボスなんて肩書きを背負うなんて無理だ。俺は一介の兵士に過ぎない。それに部隊の創設はお前の考えだったろ?」
「そうね。その通りよコヨーテ。本来なら私がボスって名乗っても違和感はないわ。でも、それを貴方が連れてきた兵士達が納得するのかしら?」
ツイッギーはそう言ってリュコス達を見ると気まずそうにしている。
「貴方が拾ってきたのよ。貴方に忠誠が向くのが通り。私としても貴方がボスなら納得できる」
「だがな……俺はボスと言う肩書きは軽いもんじゃないのを知っている」
「それは私だって同じよ。部隊の長の責任の重みを私は間近で見てきたのだから」
コヨーテはBIGBOSSを、ツイッギーはシルバー小隊の隊長の影を思い浮かべる。
各々の長の偉大さを知るからこそ長の重みを知り、それに己が相応しいと自信を持って言えなかった。
押し付け合いと取られるがそれは二人が己の尊敬する者への敬意と憧れがあるからこそ長への地位を遠慮する状態になってしまったのだ。
コヨーテとツイッギーの話し合いがなかなか終わらない中、リュコスが口を開いた。
「突然すみません!具申します!それならばお二人で部隊を指揮していけばよろしいかと!」
「二人でか?」
「駄目よ。指揮系統が二つもあるなんて混乱の元よ。……いえ、そうね……リュコスと言ったかしら。その話、乗ってみるわ」
「ツイッギー?」
「コヨーテ。こうしましょう。貴方は司令。私は副司令として部隊を纏めるわ。司令、副司令と地位分けしてるけど立ち位置的に対等と言う事にすれば良いわ。異論はある?」
「……それは然り気無く俺にやらせたいだけじゃないのか?」
「対等よ。副が付いてるだけよ。それで指揮系統の序列は決まるし、彼らも着いていきやすくなる。騙されたと思って乗って」
ツイッギーのその言葉にコヨーテは困った事になったとツイッギーを見つめ、その後にリュコス達を見る。
地位的には序列はあるが対等でいる。
その言葉は違和感は無いが上手く乗せられた様な気分にもなる。
コヨーテは溜め息をつくと結論を言う。
「分かった。もうそれで良い」
結論、コヨーテは諦めた。
司令コヨーテ、副司令ツイッギーと部隊で収まるとツイッギーは手をパンッと叩いた。
「さて、一通りの事は決着が着いたわ。改めて私はツイッギー。今、副司令として就任したわ。よろしく。私達はまだ始まったばかりの部隊だけどこれからも大きく拡大させたいと思ってるわ。だから傭兵として仕事を通して信頼と実績を重ねる所から始める事になるわ」
「部隊を作ったからと言ってそれで簡単に仕事を取れる程、傭兵業は優しくないからな」
コヨーテはそう言って傭兵の仕事の過酷さを思い出す。
傭兵とは特定の国家に帰属しない兵士。
国家に属さないが故に自由は効くが自己責任、自己負担、国家に帰属しない以上は捕虜の権利は守られない。
正規の兵士よりも過酷であり、下手をすれば使い捨ての駒にされかねないし、それ以前に信頼が無ければ雇われもしない。
仕事が欲しいなら実績と信頼を得るしかないのだ。
「その通りよ。私達は仕事はする。でも、駒に成り下がるつもりはない。ある程度まで仕事を選び、そして確実に信頼へ繋げていく。それが私達の部隊の最初の方針よ。質問はあるかしら?」
ツイッギーはそう言ってリュコス達を見つめると兵士の一人が手を上げた。
「何かしら?」
「えーと……部隊名は?」
その言葉に周りがシーンと静かになった。
「部隊名が無いと信頼以前に評判も得られないと思いますが……?」
「……そう言えばすぐに人が集まるとは思ってもなかったからまだ考えてなかったわね」
ツイッギーのその言葉に周りはガクッとなるとツイッギーは少し顔を赤くする。
「し、仕方ないじゃない。二人だけしかいなかったし、急ぐものでもないからって思ってたら急に人が増えたんだから」
「まぁ、確かに予想外の収穫だったからな。妙案はあるか?」
「無いわね……貴方達は候補とかはある?」
「え!?そんな急に振られても!」
「いや、無理して言わなくても大丈夫だから。一応、念の為よ」
ツイッギーはそう言うとリュコス達も考え始めた。
「部隊名か……」
コヨーテはMSFの名を過らせながらBIGBOSSがMSFが曾て誇ったメタルギアZEKEがパスによって乗っ取られた事件の後の演説の最後に言った事を思い出した。
「アウターヘブン……」
天国の外側。
天国でもあり、地獄でもある。
国を棄てた戦士達の居場所であり、家であり、楽園でもある。
規範や時代に囚われない外側の世界と意味合いを持つ言葉だった。
「アウターヘブン?」
ツイッギーはコヨーテのその言葉に反応した。
「あぁ……俺のいた組織……そのボスが言った言葉だ……平和という天国から見放された外側の世界、即ち戦場と言う地獄でしか生きる事ができない者達が、永久に戦場で生きる為の楽園……そんな意味が込められている……」
「平和と天国に見放され……戦場と言う地獄でしか生きる事が出来ない者達の楽園……ね……今の私達みたいね」
ツイッギーのその一言でリュコス達も同調し始めた。
「コヨーテ。貴方の言ったアウターヘブン……私達の部隊名にしない?」
「アウターヘブンを?」
「今の私達は居場所を無くして、戦う事でしか生きる術がない存在よ。私達がこれからも部隊を拡大させていく事になるなら反乱にもテロにも加担する覚悟も必要になる。でも、この部隊こそが私達の居場所になる。平和とは程遠い外側で私達だけの家として部隊名にアウターヘブンの名を掲げたい」
ツイッギーのその言葉にコヨーテは迷いを見せ、暫く考えた末に腹を決めた答えを出した。
「分かった。今日から俺達の部隊の名は……アウターヘブンだ。俺達は平和と言う天国に見放され、戦う事でしか意義を見いだせない。だが、この部隊は仲間を単なる兵士としてではなく、家族として扱う。俺達は家族だ。血ではなく絆によって結ばれる家族だ。この先、俺達に多くの苦難があるだろう。だが、恐れるな。俺達がこの絆を失わない限り俺達は負けない。例え俺達の家と呼ぶべき場所を失ったとしても……最後まで足掻いた者が勝利を掴む。来る者は拒まないし、去るのも拒まない。必要なのは自分の戦う理由を見い出す事だけだ」
コヨーテのその言葉を終えると全員がコヨーテに敬礼した。
この日、コヨーテを長とした傭兵部隊、アウターヘブンが此処に結成されたのだった。