「合言葉は当然?」「力こそジャスティス…!!」   作:あいいろ ののめ

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日常

―――…あの日から全てが変わった。

 

 そう、全てが……

 

「朝ごはんは何がいい?」

 

「ホットケーキ、ふわふわのやつ」

 

「わかった♪ シローさんもいつものホットケーキでいい?」

 

「はい!プロテイン生地ならあとはルミヤさんにお任せします!

…料理ができるまで自分はもう暫く鍛錬に勤しみますね!!」

 

 あたしの目の前にはこの前買ったという新しいフリルエプロンの紐を結んで、楽しそうに鼻歌を奏でながらフライパンをクルクル回すルミヤ。

 

「じゃあヒートロトム、この蒸し野菜の調理お願い。カラマネロはホットケーキの生地を混ぜるの手伝ってくれる?」

 

 相変わらず、ルミヤの手際の良さは凄い。

 キッチンにはルミヤを含めた何匹もの彼女のポケモンが居るのに、身体をぶつけてしまったりする様子も無い。

 

 料理を手伝うと言い出すのも躊躇ってしまうような、無駄のない踊りのような動きで調理は進んでいたのだから。

 カンコンと、生地を混ぜ終えたホイッパーがボウルを叩く子気味いい音が部屋に響いた。

 

「ルミヤ、忙しい?」

 

「ん〜?…どうしたの?」

 

「ルミヤは…料理好きだよね。わざわざあたしやシローに朝ごはん作ってくれるぐらい」

 

「うん、最初にこの料理の工程をどうするかの流れを頭のなかで考えて、それを実践に移すのが好きなんだ。

 上手くいくこともあるし、上手くいかないこともある。でも上手くいかなくても次に挑戦するときはもっと上手な工程にして、もっと美味しい料理を作れたら…それはすごく素敵だとおもわない?」

 

「あれ、ルミヤ…それは?」

 

 ルミヤが手元のお盆に載せていたのは、カップケーキのようななにか。

 

「これはもう少しでホットケーキ生地が無くなりそうだったから、余りもので作れそうだった蒸しケーキ!

 あとはレンジで加熱すれば完成だから、冷蔵庫の中に入れておくね? 」

 

「わかった」

 

 いつもと変わらない日常、いつもと変わらない兄とルミヤ。

 

 

 

 

 

 

……でも、あたしのせいで…

 

「は〜い、ムクちゃんっ!」

 

「んむっ!?」

 

 考え事をしていた最中、ルミヤがスプーンでなにかをあたしの口の中に押し込んだ。それでようやく考え事をしてたあたしの口が半開きになっていたことを自覚した。

 

「…これは?」

 

「ルミヤさんの本日のメニュー、オムットケーキっ!

 野菜をちょっと大きめに切ってオムレツ生地に混ぜてみたんだけど…どう?」

 

「……。もっと野菜は小さい方が、良い…」

 

「駄目かあ〜、ルミヤさんはこのぐらい食感の残ってる方が美味しいと思ったんだけどなあ?」

 

 そう言ってころころ笑うルミヤの姿は一見、以前と変わらないように見える。

 けれどあたしは見逃さなかった。料理をしているルミヤがその途中、どこか遠いところを見ていたのを。

 

(病室でのルミヤと同じ…)

 

「どうしたの、ルミヤ?」

 

「えっ?」

 

「なにか考えごと?」

 

「……」

 

 料理で背中を向けているルミヤの言葉と手が止まる。

 けれどそれはほんの一瞬で、すぐにルミヤはいつもの様子で話し始めた。

 

「うん、実は最近…ZAロワイヤルに参加しててね。たしかシローさんもけっこう上のランクに居るんだよね?」

 

「うん」

 

 ZAロワイヤルっていうのは、最近夜のミアレシティで行われるポケモンバトルのイベント。大きな会社が主催してるイベントで、一番上のAランクに到達したら何でも願いが叶うらしい。

 

…そう、願うなら何でも。

 

「ルミヤは…ルミヤは、何か叶えたい願いがあるの?」

 

「……うん。ちょっとだけね…」

 

「…そう」

 

 なんで、なんで教えてくれないの…?

 ルミヤが叶えたい、それだけ重要な願いなんて…。

 

「ムクちゃん、わたしが叶えたい願いは身体の火傷じゃないよ?」

 

「え…?」

 

「なんか、そんな事だろうと思って。でもハズレ、火傷跡を綺麗にするだけならできるだろうけど、手術跡が全く残らないのは…さすがにムリだよ」

 

「じゃあルミヤはなんの…」

 

「それはヒ・ミ・ツ♪ はいっ!朝ごはん出来たよ!シローさ〜ん!!」

 

 お皿に乗った三段の厚いホットケーキをテーブルに乗せたルミヤは、あたしが問い詰める前に兄を呼びに行ってしまう。

 

 

 

 だからこそ…―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら答えて。なんでルミヤの事を調べているの、ミアレの名探偵マチエールさん」

 

「できれば誰にも秘密で調査を進めたかったんだけど…このままじゃムクさんも何も答えてくれなさそうだね」

 

「当たり前。コソコソ人のこと調べるような人に、友だちの事を簡単に教える訳ない」

 

「…そっか、ムクさんは優しいんだね。…うん、決めた!

 もしもの事があると困るからムクさんにはちゃんと伝えておくね」

 

「?」

 

 だからこそ、信じられる訳が無かった。

 

「ルミヤさんはね、私が調査する限りでは最近ミアレシティで有名なテロ組織『ミルファミリア』と関係してるか、若しくはその一員の可能性が高い」

 

「は?…え?」

 

 

 

 

 ルミヤが? テロ組織? 何を言ってるの、この人は…?

 

 

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