三崎龍我様のリクエスト
アインズが、ふとセバスは、どこまで対応できるのか?っと思い、いろいろ頼ったら、全部、こんな事も有ろうかと言って用意してあり、最初の10件くらいは、流石完璧な執事と言ってたけど20件くらいでいや、どこまで用意してあるのってやつ
日時:2026年09月17日(木) 16:50
20個も「セバスに投げる問題」を思いつきませんでした。
ですが、そういう終わり方もありかなと思ったら、完全なる狂騒と組み合わせて、前話のような形に落ち着きました。
なので今回はリクエストの前半部分に当たる「セバスに無茶振り」から思いついた内容になります。
ご笑納ください。
◇
「死体が足りない……!」
モモンガは頭を抱えた。
平和同盟を拡大していった結果、死体が非常に少ないのだ。
カルネ村を襲った陽動部隊と陽光聖典、死を撒く剣団。まとまった数の死体は、それだけだ。総数は100体を少し超える。
エ・ランテルの警邏を任せるには十分だが、同盟の拡大を考えると足りなくなる可能性が高い。
「デミウルゴスが墓荒らしを提案してきたけど……さすがになぁ~」
墓荒らしはバレるから却下した。
この世界では土葬が主流で、教会が墓地を管理している。すると3つの問題が起きる。
①土葬は火葬よりも広い面積が必要だが、城塞都市は使える面積が限られる。
②土葬は棺が朽ちると地面が陥没する。
③以上の理由で、教会は陥没した頃に墓を掘り起こし、出てきた骨は納骨堂へ、陥没した地面は整地して墓石も片付け、次の埋葬者のために土地をあける。
つまり遅くとも③の時点で、骨が出てこないことから盗掘が発覚する。
倫理的な理由からも却下するのは正しい。ギルメンが戻ってきたときも堂々と主張できることだ。
余談だが、種族の精神構造に引っ張られて、頭では理解できても心ではそこに重きを置けない。ただ、この問題は先日の失敗で一応解決した。完全なる狂騒を使えば、効果中は種族の精神構造がリセットされる事が分かったのだ。そして効果が切れても記憶を失うわけではない。
だから、あの後モモンガは完全なる狂騒を量産させることにした。定期的に使って、倫理観を取り戻すようにするためだ。根本的には解決しないが、対症療法としては効果的である。
「まあ、短期的には有効な方法ではあるんだが……。
マーレなら土を動かす魔法を使えるが、動かせるだけで『増やす』わけではないんだよなぁ」
凸凹になった地面を均すことはできるだろう。
ただし墓石の配置はぐちゃぐちゃになって土石流に飲み込まれたみたいになる。
元通りに直そうとすれば人海戦術だ。アンデッドの自然発生への対策として、夜でも墓地に通じる門と防壁には番兵が立っている。すぐに見つかってしまうだろう。
それでは駄目だ。
住民感情を考えれば、バレないようにこっそり持ち出すのが良い。そしてそれは不可能だ。
時間停止と組み合わせて人海戦術で……というのは技術的に可能だが、消費MPと得られる死体の数とを比べると、いかにもコスパが悪い。
「――というわけで、何か良い考えはないか、セバス?」
「同盟に加わった各国へ、死刑囚や無縁仏の引取を打診するのはいかがでしょう?」
参考までに、年間で日本の死刑囚の人数は100人程度で、無縁仏は4万以上。
日本の人口は1.2億人程度で、リ・エスティーゼ王国の人口は900万人程度。
およそ13分の1だから、死刑囚7人程度、無縁仏3000人程度を見込める。
しかもこれは王国だけの数字で、他の同盟国も時間経過とともに人口が増えて、墓地問題が深刻化する。いずれ火葬へ切り替えねば、という議論は起きるだろう。
「将来的には実現可能だが、今すぐは難しそうだな」
「はい。早期に、という事でしたら、無縁仏は拷問の悪魔らに命じて解体し、火葬したことにして骨だけ返還すれば、反発はある程度抑えられるかと。
アンデッド化するのを防ぐのにも効果的、などと宣伝すれば、なお一層よろしいかと存じます」
「そうだな。まずは効果的かどうか調べてみなければ……」
効果的だった。
原作では両脚羊からスクロールの素材を手に入れるための実験で判明している事だが、剥ぎ取った素材はそのままだと回復魔法を使ったときに消滅し、加工品になると消滅しなくなる。
同じ理屈で、解体するだけならアンデッドの素材にできるが、火葬すると不可能だった。つまり、ある程度成分が変化した段階で、もはや「死体」ではなく「素材」になるのだろう。
余談だが、パーツが足りない程度ならアンデッドの素材にするには問題ない。ワーカー招き入れ作戦のあとジルクニフが謝罪に訪れたとき差し出した貴族の首も、首だけからデスナイトが作れた。回復魔法における実験結果からすると、あの時点で「首から下」は埋葬地から消滅したのではなかろうか。
なので、解体しただけで火葬しない場合はアンデッドの素材になり、ある程度以上朽ちてしまった死体はアンデッドの素材にできない。地面が陥没した頃に納骨堂へ、というのは実は理にかなった方法だった、というわけだ。
「というわけで、火葬は死者の安寧を約束する効果的な方法だと分かった。
財政面から言っても、墓地の警備コストや土地の管理コストを大幅に削減できる良い方法だと思うのだが、どうかね? 導入してみないか?」
友人ということで、ザナック王とジルクニフ皇帝に話を持ちかけてみた。
だが、2人とも難しい顔をした。
「火災が起きて焼死した犠牲者の死体なら見たことがある。
だが、黒焦げになるだけで、骨しか残らないというわけではない。
そこまでしっかり焼くには、かなりの燃料が必要だろう?」
「ああ。燃料を節約するには、専用の窯炉が必要だな。
この窯炉は、燃焼効率が悪いと火災現場の死体のようになるし、良すぎると骨も残らず全部灰になってしまうので納骨堂へ納めるものが無くなってしまう。
魔導国では窯炉ではなく、魔法で焼くことにしたが、それには長時間焼き続ける高位の魔法が使える人材と、その威力を適切な範囲に調節するための装備品が必要だ。
窯炉の設計から始めるとコストが見合わないというのなら、魔導国で火葬サービスを始めようか? 輸送もこちらで引き受けよう。魔導国は人件費を大幅に削減できるからな。手数料だけ貰えれば黒字だ」
「死者の安寧も大切だが、遺族の悼み偲ぶ気持ちにも配慮せねばなるまい。
遺族が墓参りに来るようなら墓は必要だろう。
だが無縁仏は管理費の徴収先がないのでコストばかりかかって、確かに問題だ。
それを大幅に削減できるなら、まずは無縁仏だけ頼むのは手だな」
「では契約書を作ろう。
ああ、それと死刑囚についてだが」
「死刑囚が何か?」
「アンデッドの私がこんな事を言うのはおかしく感じるかもしれないが、執行人の心理的な負担というのは、どのように対策しているのかね?」
「対……策……?」
ザナック王もジルクニフ皇帝も宇宙猫になった。
死刑執行人はそれが仕事なのだから、対策もクソもあるまい。
彼らの感覚では、そういうものだった。
「考えていないのか。
己の手で直接人を殺すというのは、存外忌避感が強いものらしいぞ。ある国では、3つのボタンを3人の執行人が同時に押して、どのボタンが本物か分からないようにして心理的負担を分散・軽減している。別の国では、執行人一族というのがあって、代々それ専用の教育を受け継いで、死刑執行の負担に耐えられるように鍛えているとか。当然その教育内容は、なかなか非人道的なものになるだろう。
それと、執行人が周辺住民からどんな扱いを受けているか、調べてみると良い。まるで殺人犯のように扱われ、孤立している可能性がある。
つまり、執行人を辞めたいと考えている執行人が居るのではないか? という事だ。
好んで執行人になりたがる人間も居ないだろう。居たらそいつはヤバい奴だ。武器を持たせてはいけない。
従って、よければ死刑囚も魔導国で引き取ろう。人間がモンスターを殺すことに人殺しほどの忌避感を覚えないのと同じで、人間を殺すことにそれほど強い忌避感を覚えない異形種が、魔導国には数多く存在する」
「……一考に値する提案だ。感謝するよ。
しかし、アインズはずいぶん人間心理に詳しいのだな?」
「いやいや、私など王になりたての初学者だ。
学ぶ順番が違うだけさ。
君たちは生きているから『生き方』から学んで『死に方』が最後だが、私はアンデッドだから『死に方』から学んで『生き方』が最後だ。自分と縁遠いことは理解が難しいだろう?」
「……アインズ。それはジョークなのか?
だとしたら、君はジョークのセンスがないか、あっても人間とは極端に異なるようだな」
アンデッドあるある、みたいな気配を感じて、2人は尋ねた。
本気なのか冗談なのか分からない。いや、両方なのだろう。
「ふーむ……笑ってくれないのか。
もう少し初心者向けのアンデッドジョークのほうが良いのか?
出されたお茶を飲もうとして、下顎骨からバシャー! とかの方が面白いかね?」
「ははは……そっちは確かに笑えるかもな。
アインズはそういう事もするのかね? 思ったよりお茶目なところがあるんだな」
「あまり披露したくはないがな。
あとで体を洗うのが大変なんだぞ? 骨を1本ずつ洗うのは、皮膚を洗うよりも面倒なんだ。肩甲骨の裏側とか手が届かないし」
「あっはっはっ! 意外と苦労があるのだな。
だが頭を洗うのは楽そうだ」
「髪がないからな。
その代わり頭蓋骨の内側とかも洗わなきゃならんが」
「あー……どうやって洗っているんだ?」
「三吉くん……それ専用のスライムに頼んでいる。
スライムは不定形だから、複雑な形でも問題なく洗えるんだ」
「『くん』というからにはオスなのか?」
「ああ……あれ? そういえばスライムのオス・メスってどうやって区別するんだ?
というか、オス・メスの区別がある種族なのか……?」
ヘロヘロとぶくぶく茶釜を思い浮かべて悩むモモンガ。
形状にわずかな違いはあるが、色以外はほとんど同じと言っても過言ではない。
2人並んで黙って立っていたら、知らない人には男女の区別などつかないだろう。
「知らずに!?
それって、もしかして……」
メスだったら、毎回とんでもない奉仕をさせていることに……と、人間基準で考える2人。
モモンガは意外と性豪なのか? などという考えが一瞬浮かぶが、どう考えてもそういう感じには見えない。
「……なあ、アインズ。我が友よ。
これは、ほんの興味本位で聞くんだが……あの絶世の美女を王妃に娶っていて、夜はどうしているんだ?」
「…………」
ぱっかーん。
モモンガの下顎骨が落ちて、連続で沈静化を繰り返した。