心は永遠の中学二年生様のリクエスト
原作でアインズ様が「休日制を取り入れよう」とか言って、シモベたちに「えっ?働いちゃダメな日…?ナニソレ拷問…??」ってなってた部分をセバスがどう解決するか気になる。
「逆に考えるのです。『休日は何をしていてもいい』というならば『アインズ様当番の手伝い』をやりたいからやっちゃっていいんだと考えるのです!!」みたいな。
日時:2026年10月11日(日) 23:08
◇
「……まさか、あんなに反発されるとはなぁ」
モモンガはため息交じりに言った。
休日制度を導入しようとしたら、労働禁止の日なんて拷問だ! と猛反発を受けたのである。
「というわけで、知恵を貸せ」
ナザリックの三賢者――アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターを集めて、モモンガは相談した。
ついでにセバスも当然のような顔をして控えている。
今日のモモンガ様当番のメイド、フォアイルも控えているが、その顔色は悪い。
「まずはデミウルゴス」
作る側のデミウルゴス。
すぐにアイデアを出すかと思われたが、その反応は鈍かった。
「は……モモンガ様、本当に休日制度を導入しようと……?」
「もちろんだ。
休日があってこそ、労働の質も上がろうというもの。
もっとも、お前たちの労働の質が低いなどとは思っていない。
だが、より上を目指すのは、あるべき姿だろう?」
「なるほど……そういう事ですか」
メガネすちゃっ。
デミウルゴスは薄い笑みを浮かべた。
何かを納得したようだ。
「どういう事なの、デミウルゴス?」
アルベドが尋ねた。
「魔導国を立ち上げてしばらく経ちます。
国土は限定的で、人口もそれほど多くありません。
しかし、同盟の盟主として、見るべき範囲は膨大です。しかも今後ますます広くなっていく。
そんな中、我々が今まで通りの働きをしていたのでは、増えた分の仕事をする人材が追加で必要になってしまうでしょう?
ですが、外から人材を登用するとなると、裏切りや怠慢の心配をしなければならず、非常に効率が悪い。
その点、ナザリックの者が出来るようになってくれれば……と、モモンガ様はお考えなのだよ」
「それはエルダーリッチを増やせばいいだけではなくて?
今だってそうしているわよ?」
内政担当のアルベドは首を傾げた。
デミウルゴスがこの程度のことを間違えるはずがない。
「その通り。
しかし、一時的に足りなくなる可能性がある」
「同盟が拡大していけば、隣接する非加盟国が増えるから、ということですか?
しかし、加盟国からは無縁仏を中心に死体を集めておりますが……その処理能力が追いつかなくなる可能性をお考えで?」
財政担当のパンドラズ・アクターが尋ねた。
数字の収支に関しては、アルベドよりも精密に把握している。
「それだって担当するアンデッドを増やせば良いだけだわ」
アルベドが反論すると、デミウルゴスは満を持して、ボールでも持つように両手を広げた。
「この世界が球体だとしたら?」
知恵者たちに衝撃が走った。
ユグドラシルはゲームだった関係で、フィールドの全体像が平面なのだ。従って、ナザリックのシモベたちはフラットアーサーである。
ただしユグドラシル全体で言えば、独立した平面がいくつもある、という理解になる。樹木に茂る葉の1枚1枚がひとつのフィールドと考えれば良い。枝や幹を伝って移動できるが、それぞれの葉は、葉としてはつながっていない。
幹から9本の枝が伸びていて、その先でダンジョンなど個別のフィールドに分かれている。そんな構造だ。あとから枝を増やせば、アップデートで新しいフィールドを追加できる。
一方、世界全体が球体だとしたら、同盟を拡大していく途中で、半分くらいの時点が、最も前線が拡大している。その後は前線が縮小するわけだ。
人員不足は一時的なもの、と最初から決まっているわけである。
「まさか、そんな……いったいどのようにしてモモンガ様はその真実にお気付きになったというの!?」
「世界が球体ならば、人員不足は一時的なもの。無限に広がる平面でないのなら、いずれ収束することは既定路線、というわけですね」
アルベドが驚き、パンドラズ・アクターが格好をつける。
デミウルゴスは己が一番早く御方のご認識に気付けた、と満足していた。だが同時に、それは答えを知っているモモンガがヒントを与えてくれたからこそ。いったいどうしてモモンガが気付けたのか、ということは分からないままだ。
視線が集まり、モモンガは小学校で習った理科の授業を思い出した。
「月の満ち欠けは、どのようにして起こるか、だ。
月面のうち、太陽の光を反射している部分が明るく見えるのだが、月が円盤だとすると光を遮る何らかの障害物が必要だ。もしそれが我々の居る大地なら、この大地は丸みを帯びているということ。
だが、もっと単純に、月が球体なら、単に太陽の位置と我々が見ている位置との関係が変わるだけだ。
そして、その変化の周期と、不規則に起きる月食の関係とを考えてみた時、私はこの大地が球体であると結論した」
「なるほど。大地が平面なら月が落ちてこない事や、毎晩東から昇ってくることは不可解――西に沈んだあと、どうやって東に戻っているのか、という疑問が残ります」
「しかし大地が球体ならば、単に遠心力と釣り合っているから」
「もし大地が円盤だとすれば、毎日太陽と月を東から西へ飛ばしている何者かが存在しうる――しかし球体なら、そんな何者かは必要ない。
さすがは父上。見事な推理です」
三賢者の尊敬の眼差しを一身に受けて、モモンガは居た堪れない気持ちになった。
全部学校で教わったから知ってるだけだし、ユグドラシルやこの世界が平面かも、なんて事は考えもしなかった。
なんだろう、この羞恥プレイは。
モモンガは数回抑制された。
「まあ、それはともかく、だ。
だからといって、人材確保のために休日という名の勉強会をやろう、とかは考えていない。
休日とは、仕事をしない日だ。労働に備えて力を磨く日ではなく、労働から解放される日なのだ。
働くのが好きだというのは支配者として嬉しく思うが、働くことしか知らないというのでは、支配者として困ってしまう。
このあたりは、アルベドのほうが理解が早いかと思うが、どうだ?」
「働くことしか知らないと支配者が困る……市井の、たとえば流行だとか、小さな困りごとだとか、そんな情報を仕入れる窓口が不足する、といったところでしょうか?」
「それもある。
パンドラは何か思いつくか?」
「影武者として外へ出る機会をいただく身からしますと、他国からどう思われるか……風評被害が、という事でしょうか」
「そうだな。
そして……セバス、どうだ?」
「文化振興の遅れにつながる……ナザリックだけがいつまでも変わらないでいると、やがて時代遅れとそしられかねない……ということでしょうか」
ナザリックを下に見る発言に、三賢者から殺意のこもった視線が集まった。
だが、モモンガは即座に手で制する。
「その通りだ。
死の支配者たる私は、不変の死こそ己の文化と割り切ることも可能ではあるが……生きている者たちは、その退廃的な性質に浸かったままでは居られない。
やがて反発し、爆発するか、別の形へ変化しようとするか、あるいは現実逃避に走るか。
だが、それもいつまでも続かない。やがて、ひとまとめに『こういうジャンル』とは言えない個人の直接的な感情投射が始まるだろう。極めてカオスな状態だ。
やがてそのカオスは確率的に収束し、ふたたび何らかのジャンルを形成するだろう。さらに発展するか、その発展が及ばない部分に集中するか、カオス以前の文化の歴史を繰り返すか。
……重要なことは、どのような流れになっても、止まっているものは存在しないということだ。同盟を形骸化させないために、私たちは常に世界の最先端を走り続けなくてはならない」
「「おお……」」
モモンガの予測は、リアルで起きた文化の変遷をなぞっただけのものだが、NPCたちはモモンガが遥か未来の、終焉の先に繰り返しがあるところまで読み切っている、と解釈し、ますます感服した。
今なら行ける、とモモンガは直感し、大号令を出すことにした。
「休日制度を設けるのは、そのような目的によるものだ。
今ある仕事を取り上げられて苦しむ代わりに、将来の仕事を発生させる。
余暇とは無駄な時間ではない。将来のナザリックを発展させるための種を蒔く行為だ。何をしてもよい。そのすべてはナザリックのためになると知れ」
NPCたちは直ちに平伏し、この日からナザリックに休日制度が誕生した。