セバス・チャンは完璧な執事である   作:目ん玉

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9 「今はソーイ様にお願いするほどの依頼は来ておりません」

 原作でモモンガが王都へ向かった時期よりも、冒険者ソーイが王都へ向かった時期は少し早い。

 なぜなら、原作の冒険者モモンよりも、冒険者ソーイは色々とアグレッシブに動いたからだ。

 原作アインズ演じる冒険者モモンは、息抜きにナザリックから出ることが主目的であり、デミウルゴス主導の計画についてろくに理解しておらず、行き当たりばったりで動く。誠実だがやや高慢に振る舞うといったら良いのか、受付嬢に「モモン様にお願いするほどの依頼は来ておりません」と言われたら「そうか」とあっさり引き下がる。

 一方、冒険者ソーイはもっと組織的かつ積極的に動く。名声を高めることが主目的であり、デミウルゴス主導の計画についてもよく理解しており、手が空けばナーベラルとエクレアの「ワガママお嬢様」チームを手伝ってスクロール集めや資金集めに精を出す。

 たとえば――

 

「今はソーイ様にお願いするほどの依頼は来ておりません」

 

 と受付嬢が「ランク相応の仕事」だけを探して無いと伝えれば、

 

「じゃあ他の冒険者に避けられてる依頼は?」

 

 と食い下がる。

 稼ぐために働く冒険者にとって、割に合わない仕事は避けたいと思うのが当然である。

 遠くの小さな村が出した依頼で「村の近くに魔物が居るっぽいから調査して可能なら討伐してくれ」みたいな依頼は、移動する手間がかかる割にそのコストは自腹になり、調査にかかる時間も不明で、依頼人が「もう十分」と言うまでに長くかかることが珍しくない。3日のつもりで準備したが、依頼人が納得するまでに1週間かかった、なんて事になるわけだ。どう見ても安全なのに、感情的になった村人たちが不安に煽られて同調圧力にさらされた依頼人がなかなかOKを出さないという事もある。しかも資金的に豊富とは言えないので、頑張ったあげく報酬はしょっぱい。

 

「こんな依頼ならございますが……」

 

 と、遠慮がちに紹介する受付嬢に、ソーイは二つ返事を返す。

 

「よし、それを受けるぜ。

 どうせ暇だしな」

 

 名声を高めるのが目的のソーイにとって、これは美味しい依頼だ。

 冒険者ギルドからも依頼人からも感謝され、他の冒険者達からも英雄視される上、リスクは低い。

 時間がかかるという難点も、ソリュシャンならば破壊的なまでに短縮できる。

 

「あんたが依頼人の村長さんかい?」

 

「そうです。

 依頼を受けてくださった冒険者の方ですか?」

 

「そういうこと。ソーイだ。よろしくな。

 早速だけど仕事内容を確認させてくれ」

 

「よろしくお願いします……ってアダマンタイト級!?」

 

「そうだよ。アダマンタイト級の仕事がたまたま無かったから暇つぶしで受けたんだ」

 

「い、良いのでしょうか……?」

 

「料金は変わらないから安心しな。

 それにアダマンタイト級なんて貴族とでもコネがなけりゃ暇なもんだよ。

 逆に、しょっちゅうアダマンタイト級の仕事があったら、危なすぎてあんたらこんな場所には住めないぜ?」

 

「そ、それはまあ……」

 

「それより、まずは地図を確認してくれ。

 エ・ランテルで手に入る地図だと、この村の周辺はこうなってるんだが、間違いないか?」

 

「はい……ええ、大丈夫です。間違っておりません」

 

「で、調査範囲は?」

 

「この森ですね」

 

「魔物の種類には見当がついてるかい?」

 

「おそらくゴブリンかと」

 

「調査期間は今日から3日で延長なし、で間違いないかい?」

 

「……はい。それで調べきれる、という事でしたら」

 

「面積には問題ないよ。ただし調べたあとで、よそから追加のモンスターが来たとしても、それは仕方ないことだと諦めてもらう。移動する相手の調査なんだ。日々刻々と変わるものをいつまでも調べ続けたってキリがないからね。

 逆に言えば、調べて見つけたモンスターが、次の日には居なくなってる事だってある。移動したり死んだりするからね。

 オーケー?」

 

「わかりました。ごもっともです」

 

「じゃあ、今日・明日・明後日、この森を調査して、ゴブリンを見かけた位置と数を報告する。

 調査依頼であって討伐依頼ではないから排除はしない。

 これで良いか?」

 

「よろしくお願いします。

 ですが、可能なら討伐していただけるとありがたいのですが……」

 

「そいつは別料金だ。アダマンタイトは高いからやめときな。領主の徴税にアダマンタイトの借金なんて、あんたら首が回らなくなっちまうぜ?

 数が少なかったらアイアンに、多かったらシルバーあたりに頼めばいい」

 

「来てもらえるのでしょうか?」

 

「場所と時間をきちんと区切って示してやるのがコツさ。しっかり調べて何もないのに、不安だからもっと調べろ、完了のサインはやらん、と言われるのが一番面倒だからな。まだモンスターが残ってるかもしれないから、もう少し村に居てくれ、なんて事は言わないほうが良いぜ。

 それと、往復と滞在中の食料を支給する条件をつけてやるのも良いはずだ。移動が自腹で拘束時間が長いくせに報酬が安いというのが、避けられる原因だからな」

 

「な、なるほど……色々とやりようがあるのですね」

 

「自分の都合ばかり押し付けないで、相手のことを考えてやるのが大事だぜ。

 討伐を断るにしても『そんなもん知るか。あたしが受けたのは調査の依頼だ』と突っぱねたんじゃあ、あんただって気分が悪いだろう?」

 

「おお……! まさに今やっていただいたように、という事ですね」

 

「そういうこと。

 じゃあ、調査を始めるぜ」

 

 と出かけていって、わずか半日でゴブリン十数匹を連れて戻ってくる。

 

「ほら、あんたら、挨拶しな!」

 

「近くの森に流れてきたゴブリンです。よろしくお願いします」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

 ばっ、と一斉に頭を下げるゴブリンたち。

 よく教育された様子を窺わせる。

 

「こいつらには、盗むな、奪うな、勝手に増えるな、と教えておいたぜ。

 村での仕事は村長さんの采配に従うように言いつけてある。仕事を割り振って畑を増やすなりして、食料の余裕と相談しながら人数調整にも目を光らせてくれ。うまく使えば便利な連中だ。人並み以上に働く力があるし、体が小さいから食事量は意外と少ない。

 まあ、いきなり渡しても不安だろうから、もう1日だけこの村に居てやるよ。何かあったら言ってくれ」

 

「…………」

 

 信じられない、と村長は言葉もなく首を振るばかりだった。

 もちろん戦闘メイドのソリュシャンが「きちんと振る舞う」という事にかけて、その教育を間違えるはずもない。

 翌日には何の問題もなく、どころか惜しまれながら村を出ることになった。

 

 

 ◇

 

 

 ――とまあ、こんな調子なので。

 王都に行こうと決めた頃には、本当に「お願いする仕事がない」状態になっていた。

 

「いつもありがとうございます。

 便利に使うだけ使ってこんな事を言うのは申し訳ないんですが、他の冒険者の仕事を奪う形になるのはギルドとしても避けたいところでして……本当にお願いできる仕事がないんです」

 

 なので「しばらく留守にするぜ」と出ていったソーイを引き止める理由は何も無かった。

 そして、そうやってソリュシャンが少し早く王都へ向かった結果、八本指の拠点襲撃が早まったことで、セバスは報告書にとある人物の名前を発見する。

 

「モモンガ様、今お時間よろしいでしょうか?」

 

「どうした、セバス?」

 

「先日の八本指の拠点襲撃に関する報告書なのですが、こちらをご覧ください」

 

「ツアレニーニャ? 娼館で働かされていた女たちの1人か。この人物が何だ?」

 

「ソリュシャンが冒険者として活動した最初の仕事ですが、同行した『漆黒の剣』のメンバーに『ニニャ』という人物がおりました。魔法修得を早めるタレントを持った人物です」

 

「ああ、あの……少年に偽装している少女、だったな? 覚えている。あれでタレントというものの存在を知れたのだからな。

 ん……? ツアレニーニャ……ニニャ……?」

 

「それでございます。

 タレントの存在を知るに至ったこと。

 ンフィーレア・バレアレに関する重要な情報をもたらしたこと」

 

「『あらゆるマジックアイテムを使用できる』というタレントだな。

 まだマジックアイテムを使わせる機会はないが、いずれ役立つだろう」

 

「はい。

 加えて高名な薬師の孫として腕を磨いており、ユグドラシルのポーションを再現する研究を始めております。

 ニニャがもたらした利益は、それなりに大きいと言っても良いのではないでしょうか?」

 

「えーっと……そうだ。ニニャには誰だったか探している人物がいたのだったか? それがツアレニーニャだと?」

 

「はい。ソリュシャンが聞き出しましたところ、貴族にさらわれた姉を探していると。

 その名前が、ツアレニーニャでございました」

 

「褒美として引き合わせてやれ、という事か」

 

「左様でございます。

 ツアレニーニャの状態はかなり悪く、複数の病気、歯の欠損など、現地の治癒魔法では治せないものがございます。

 ゲヘナ作戦の前置きとして、ニニャの目の前でツアレニーニャの健康状態を取り戻してみせてやる、というのは効果的かと存じます。場所はソリュシャンがソーイとして使っている宿屋。対応はわたくしが。わたくしの気功やソリュシャンの毒などでかなりまで処置できるかと存じますが、あえてペストーニャをお借りして、劇的な回復を見せる演出が効果的かと」

 

「そこまでするのか?」

 

「はい。そこまですれば、おそらく――」

 

 セバスが語った見通し。

 それをモモンガは承認した。

 

「なるほど。了解した。では任せる」

 

「ありがとうございます。つきましては――」

 

「うむ。それも了解した。では……そうだな、外向きには、ギルド名のアインズ・ウール・ゴウンを名乗ることにしよう。外ではアインズと呼ぶが良い」

 

 

 ◇

 

 

 王都の宿屋にセバスが現れ、受付カウンターで従業員を通してソーイを呼ぶ。

 ややあって、従業員に案内されたソーイがやってくる。

 

「あちらです」

 

「ありがとよ。

 ……セバスさん」

 

「こんにちは、ソーイさん」

 

「状況は?」

 

「我らが主は『メイド長』の派遣を許可なさいました。

 その出迎えはわたくしにお任せください。

 あなたはニニャさんをここへ案内していただけますか?」

 

「了解だぜ」

 

 以上の会話は、すべて受付カウンターの前、従業員の目の前でおこなわれた。

 これで宿屋の従業員たちは、ソーイとセバスが仲間だと認識する。さらに「メイド長」なる人物がいるらしい、とも。

 この認識は、たとえばセバスに用があると言って訪れる人物が居た場合、「そんな名前の人は泊まっていない」と追い返すことがなくなるし、ソーイが活躍したという話を聞けばセバスのことも思い出すという具合になる。

 

「てことで、悪いんだけどあたしが取ってる部屋をそのまま彼に使わせてほしい」

 

 高級宿の従業員は、こういう時に融通がきく。

 事情はよく分からない。

 だが、1つの客室を使う客が途中で入れ替わるというのは分かった。確かに少々特殊な状況ではある。だが宿屋としては、「客の知人が訪れる」と「客が外出する」が同時に発生するだけで、特別に何かする必要はない。客室清掃やベッドメイクは不要。改めてセバスに宿泊プランの案内などをする必要もない。

 

「かしこまりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ」

 

 料金さえ払うなら、あとは客の注文通りに。

 従業員はきれいに一礼してソーイを見送り、セバスを部屋に案内した。

 

「こちらのお部屋でございます」

 

 とドアの外までの案内で終わったので。

 

「あなたがツアレニーニャさんですね?」

 

 ベッドに横たわる人物を、従業員が目にすることは無かった。

 

 

 ◇

 

 

「姉さん!」

 

 ニニャがやってきた。

 一緒についてきた仲間たちは、ドアの外で待機だ。見せられる状態だとは限らない。

 そして、その予想は当たっていた。

 ベッドサイドに駆けつけて、姉のあまりに凄惨な姿に、どんな悲惨な目にあってきたのか理解して顔を歪める。ニニャの目に、たちまち涙が浮かんだ。

 

「もっと早く見つけていれば……でも、生きててよかった……」

 

「セリーシア……?」

 

 お互いを認識して、今にも抱き合わんとする2人。

 だが、その感情には、微妙な温度差があった。

 ひたすら姉を探し続けたニニャことセリーシアは、姉がどんな状態であれ生きて再会できたことに純粋な喜びしかない。

 一方のツアレニーニャは、己が受けた仕打ちの数々は、もはや家族に姿を見せることもできないほどだ。再会できても素直に喜べない。

 そこへ、セバスである。

 

「感動の再会に水を差す無礼をお許しください。

 わたくし、ソーイと同じく、とある御方にお仕えしている執事のセバス・チャンと申します」

 

「セバスさんはモンクの職業をもつ凄腕の格闘家でね、戦うことに関しちゃあたしなんかよりよっぽど上だぜ」

 

「アダマンタイト級冒険者よりも……?」

 

 にわかに信じがたい話だった。

 だが、セバスの立ち姿を見れば、それが嘘ではないことも分かる。

 アダマンタイト級らしい強者の風格を感じていたソーイが薄く思えるほどの、巨木のごとき圧倒的存在感。

 魔法詠唱者とはいえ、数多くの戦士を見てきたセリーシア。それぞれ別の場所で出会っていたら分からないかもしれないが、こうして並べて比べれば、その違いは見て取れる。

 

「それに、回復の気功も使えるんだ。

 あたしがあんたを呼びに行ってる間、あんたの姉を世話してくれてたのも彼なんだぜ」

 

「そうなの。おかげでだいぶ食事もとれるようになってきたわ」

 

 セバスを見上げる視線に「感謝」以外の感情が交じるツアレニーニャ。

 食べるものを食べれば、出るものも出るわけで、まだ体力が回復しておらずろくに動けなかったツアレニーニャはセバスの献身的な介護を受けることになった。

 捨て置かれるのでもなければ、乱暴に水を浴びせられるのでもない。まるで美術品のように丁寧に拭き上げられる。奴隷として受ける世話でもなければ、娼館の従業員として受ける客からの扱いとも違う。徹底的に破壊された尊厳の欠片を、ひとつひとつ丁寧に拾い上げ、組み立て、修繕していくような所作――。

 その体験は、ツアレニーニャに特別な感情をもたらした。セバスは己の全てを任せるに足る人物だ、と。

 

「ニニャさん……いえ、セリーシアさんでしたか。

 我らの主は、あなたの働きに感謝してます」

 

「ボ、ボクに……?」

 

「そうです。

 あなたはソーイにいくつかの重要な情報をもたらしました。

 それは我らが主にとって非常に有用なものでしたので、我らが主はあなたに感謝の意を示すことになさいました」

 

「ボクそんな重要なことを言ったおぼえは……というか、感謝なら姉を見つけてくれた事が何よりも――」

 

「いいえ。お姉さんを探すことは、ソーイがあなたと約束していたこと。

 我らが主は、それとは別に、御自ら感謝の意を伝えることをお望みです。

 では……我らが主、アインズ・ウール・ゴウン様のお出ましです」

 

 何もない場所へ頭を下げるセバス。

 見ればソーイも同じ場所に向かって頭を下げているではないか。

 すると、突如そこに「黒い穴」が現れた。

 何らかの魔法――しかし、見たことも聞いたこともない現象だった。

 そこから、宝石がはめ込まれた黄金の杖が現れ、その杖を握っている骨の指が、漆黒のローブの袖が、そして白骨の恐るべき顔が――死の支配者が降り立った。

 

「出迎えご苦労」

 

 セバスとソーイに声をかけるアインズ。

 その間に、転移門からさらに現れる犬頭のメイド。

 

「さて、『漆黒の剣』の魔法詠唱者ニニャよ」

 

「は、はいっ……」

 

 名前を呼ばれただけで、背すじが伸びる思いだった。

 同時に、縮こまりたくもある。

 アンデッドだが、だから何だ? と鼻で笑いたくなるほどの圧倒的な「魔術師」だ。

 ニニャ・ザ・スペルキャスターなんて言われることを、今日ほど恥ずかしいと思ったことは無い。

 

「ありがとう。

 君がくれた情報は、大いに役立った。……いや、今もなお役立っていると言って良い。

 そこで、感謝の印として、君にひとつプレゼントをしよう」

 

「プレゼント……?」

 

「君が最も欲しいものだ。

 ペストーニャ」

 

「はい。……あ、わん。

 ――軽傷治癒。……ふむ、この程度の回復ですか。

 ――中傷治癒。……なるほど。

 ――重傷治癒。……こうなりましたか。

 ――大治癒。……なるほど、なるほど……では――」

 

 ペストーニャが次々と治癒魔法を唱える。

 これは回復量の確認をおこなう検証実験でもあった。真実の部屋で「歓迎」を受けた盗賊などを実験台にする手もあったが、そちらは専用の担当者がいる。真実の部屋にはニューロニスト以外にも、シモベである「拷問の悪魔」達が4体ほど存在し、ニューロニストの「歓迎」を手伝う他、対象に治癒の魔法をかけて簡単には死なない様にする役割も担っているのだ。

 軽傷治癒は第1位階。

 中傷治癒は第2位階。

 重傷治癒は第3位階。

 セリーシアに理解できたのは、そこまでだ。

 大治癒は第6位階。信仰系は不得意だからフールーダにも使えない。法国であれば巫女に使わせることは可能かもしれないが、それは法国にとって重要機密だ。王国で活動する冒険者セリーシアにとっては、存在すら知らない魔法である。

 だが理解できる事もある。それは、ツアレニーニャの失われた歯が再生するなど、目に見えて状態が良くなったという事だ。すでにソリュシャンの処置とセバスの気功を受けていたとはいえ、それらは「自己治癒力の強化」という域を出ない。だがペストーニャが使ったのは、その領域を超える魔法だった。欠損部位が再生する。罹患した病気はたちまち消失し、手ひどく殴られるなどして骨折し変形したまま治ってしまって歪な部分さえも、元通りの美しい形に戻る。

 鏡を渡されたツアレニーニャは泣き崩れ、セリーシアは今度こそ姉と抱き合って喜ぶことができたのである。

 そして――

 

 

 ◇

 

 

 せっかく来たから、と王都を観光してから帰ることにした「漆黒の剣」は、そのままゲヘナ作戦に巻き込まれることになった。

 

「こんなに悪魔が……!」

 

「やべえぜ、これは……」

 

「シルバー級の我々には手に負えない状況であるな」

 

「でも、ソーイさんたちなら……きっと……!」

 

 そうして「漆黒の剣」からソーイに情報が届き。

 ソーイからアインズに情報が届いて。

 

「今回は仮面をつけるのだったな。

 デミウルゴスも仮面をつけるのだったか。

 ふふ……まるで仮面舞踏会だな」

 

 王都に再び、死の支配者が現れた。

 セバスを前衛にしてソーイとアインズが後衛を務める。ソーイの仲間としてではなく、主として――変に偽装身分を用意するまでもなく、それそのままが偽装であり真実である。嘘のつき方として最も上等な手法だ。

 つまりはアインズ登場の根拠をソーイだけでなく「漆黒の剣」にも分担させることで、より強固にする。そしてセリーシアにはあえて骨の顔を見せたことで、好印象を植え付ける作戦をより強化する。ニニャの才能とタレントがあれば、最終的にフールーダに匹敵するのだから。

 マッチポンプはナザリックのお家芸なれば。

 結果は語るまでもないだろう。




誤字報告を頂きました。
tino_ue様 pess様
ありがとうございます。
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