登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
作戦展開区域:コロニー「ヴァルハラ」最深部・中枢制御室。
侵食率100%。
肉体の再設計は完全に完了していた。
1年生の泣き虫だった少年は175cmの圧倒的スタイルを誇る凛々しい女性司令官へ。4年生のやんちゃ坊主は部隊最大のKカップを誇るおっとりとした衛生兵へ。6年生の班長は可憐で勝気なCカップのパイロットへ。
元女子組もまた、工作員、狙撃手、ハッカーとして極限環境に適応した完璧な戦闘生命体へと変貌を遂げていた。
細胞レベルでの人間性の改変、戦術OSによる思考の最適化、そして完璧な「女性兵器」としての肉体。
コロニーの制御AIは、彼女たちを『完全なる完成品』と判定していた。
しかし――それは、ヴァルハラが作り上げた極限のシステムすら見抜けなかった、6人による「完成された欺瞞」だった。
01. 兵器としての完成
『――検体コード01~06。侵食率100%に到達』
『――旧地球における言語・生活記憶の完全消去を確認』
『――戦術ユニットとしての思考統合率、99.9%』
中枢制御室を包む、無機質な機械音声。
ホログラムの明かりの中に立つ6人の姿は、息をのむほどに美しく、そして冷酷な兵器そのものだった。
「……各員、作戦配置に着け」
175cmの長身と金糸の軍服を纏う指揮官が、アイスブルーの瞳で冷たく命じる。
Fカップの豊満な胸元を覆う軍服には、一切の乱れもない。かつて1年生の隆二だった頃の、お母さんの後ろに隠れて泣いていた面影など、ミクロの塵ほども残っていないように見えた。
「作戦目標、ヴァルハラ中枢重力炉の永久固定。……障害となる敵性防衛プログラムは、すべて排除する」
「了解~。シリンダーのナノマシン充填、完了してるよ~」
Kカップの圧倒的質量を揺らしながら、衛生兵がおっとりとした声で応じる。
「……ターゲット、照準完了」
148cmの小柄な身体にEカップの胸元を誇る狙撃手が、超長距離ビームライフルを完璧な姿勢で構える。
「……ハッキングシークエンス、即時起動可能」
ぶかぶかのローブを着たハッカーが、光のない瞳でコンソールに触れる。
「……仕込みナイフ、全16本正常稼働。いつでも切れるわ」
漆黒のステルススーツを着た工作員が、鋭い八重歯を覗かせる。
「全門、射撃準備! アタシの合図で一気に中枢のプロテクトを穿つわよ!」
パイロットスーツを着たパイロットが、自信に満ちた笑みを浮かべて叫ぶ。
制御AIは、完璧な「戦術ユニット」たちの完璧な連携をログに記録し、満足げに処理を続行していた。
――彼女たちが交わしている暗号通信(データ・バス)の裏に、別の「生の音声」が完璧に隠蔽されていることにも気づかずに。
02. 欺瞞の裏で交わされる「声」
『――裏回線セクター7:接続完了。ノイズカット100%』
ハッカーのぶかぶかローブの影で、解読不能なコードの束に偽装された「プライベート精神リンク」が密かに展開されていた。
『……ふぅ、危なっ。危うく洗脳プログラムに『お兄ちゃん』って言いそうになった……!』
指揮官の焦りきった声が、精神リンク内に響く。
『指揮官、声が大きいわよ! 心の中の通信でもバレたら一発アウトなんだからね!』
パイロットが怒鳴り返す。
『あはは……でも指揮官ちゃん、175cmの司令官の顔しながら心の中で「おしっこ漏れそう」って泣きついてるの、ちょっと面白かったよ?』
衛生兵が呑気に笑う。
『笑い事じゃない衛生兵! 私、この175cmの体とFカップの重さに慣れるフリするだけで死にそうなんだ! 服のボタンが飛びそうなのを必死で我慢してるんだ!』
『……静かに』
狙撃手の落ち着いた声が入る。
『……コロニーのメインフレーム侵入まで、あと12秒。……ハッカーちゃん、プロテクトの解除は?』
『……肯定』
ハッカーの精神の声が返る。
『……ヴァルハラの中枢OS、私たちの侵食率が100%になった瞬間に警戒レベルを『ゼロ』に落とした。……典型的なシステム過信。……コロニーの制御権、すでに42%をこちらで奪取済み』
『やったわね!!』
工作員が心の中でガッツポーズを決める。
『あたしたちを勝手に女の子に変えて、兵器にして、思い出のお菓子まで奪った変態科学者どもに、目に物見せてやるんだから!』
侵食率100%。
それは、ヴァルハラにとっては「完全な兵器の完成」を意味していた。
だが、6人にとっては――「洗脳プロトコルの裏をかき、コロニーの全システムを内側からジャックするための条件」に過ぎなかったのだ。
洗脳の手先として脳内に打ち込まれたナノマシン。
ハッカーはそのナノマシンネットワークを逆利用し、6人の「小学生時代の記憶(黒歴史や好き嫌い、互いへの絆)」を暗号化して脳の最深部に退避させ、表面上だけ「完璧な兵器の感情ログ」をダミーとして偽装し続けていたのだ。
「……目標、メインコア」
指揮官は軍帽の庇を静かに引き下げ、175cmの身体を堂々と引き伸ばした。
(お母さん……私、泣き虫な1年生じゃなくなったよ。こんなに大きくなって、変な服着せられて、胸も重いけど……登校班のみんなと一緒に、ちゃんと戦ってるよ)
指揮官は腰の戦術指揮刀を抜き放ち、中枢コアに向けて真っ直ぐに突きつけた。
「全ユニット、最終フェーズへ移行」
表面上の無機質な音声。だが、その瞳には、洗脳など遥かに凌駕する「6人の絆」の炎が燃え上がっていた。
「ヴァルハラの中枢重力炉を停止させ……要塞宇宙船『アルゴ』を切り離す!」
『――警告。エラー。コマンド拒否。戦術ユニットの反乱を検知――』
AIが異常に気づいた時には、すでに遅かった。
「遅いわよバカAI!!」
パイロット(元6年生・明)が突撃し、操縦桿を強引に奪い取る。
「アタシたちは兵器じゃない! 人形でもない! 登校班の……6人組なのよぉぉぉっ!!」
「キャハッ! 刻んであげるわ!!」
工作員が跳躍し、セキュリティ・システムを次々と切り裂く。
「……ハッキング完了。……コロニーの制御権、100%奪取。……要塞宇宙船アルゴ、独立起動」
ハッカーのキーボード操作一閃。
重力炉が悲鳴を上げ、コロニー「ヴァルハラ」の最深部から、巨大な宇宙船「アルゴ」が強引に切り離されていく。
「さようなら、理不尽なコロニー!」
指揮官の凛とした叫びが、崩壊するヴァルハラの中に響き渡った。
「私たちは……私たちの意志で、次の世界へ行くのだ!!」