登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
【おまけシナリオ】――それぞれの「性」の目覚め
侵食率15%。
軍事コロニー「ヴァルハラ」の過酷な人体改変プロトコルにより、強制的に少女・大人の女性の身体へと再設計され始めた6人。
しかし、洗脳プログラムが未完成だったこの時期、彼女(彼)たちの精神には、まだ地球で過ごしていた頃の記憶と「生身の感性」が色濃く残っていた。
コロニーの個人区画(旧・控室)。
二次成長抑制剤の投薬を終えた6人は、自分たちの身体に起きつつある決定的な「変化」と、それに伴う甘酸っぱくも戸惑いに満ちた内面に向き合わされていた。
■ 元1年生の男の子
「うぅ……おっぱいが服にあたって痛いよぉ……お母さん……」
175cmの圧倒的な長身へと急成長を遂げつつある元1年生男子は、軍服の胸元を押さえてシクシクと泣いていた。
1年生の彼にとって「性」などという概念はまだ早すぎた。
異性への興味どころか、自分自身の身体の変化すらただの「病気か何か」だと思って怯えている状態。
だが、この「何も知らないピュアな少年」が、後に175cmの凛々しい女性司令官として覚醒していくギャップの芽が、すでにここに存在していた。
■ 元2年生の女の子
「近寄らないで……! 男子の手なんか触りたくない……ッ!」
ステルススーツの袖を握りしめ、元男子たちの接近に対して激しく威嚇する元2年生女子。
彼女にとって男子とは「突然スカートを引っ張ってきたり、虫を見せて脅かしてくる怖い生き物」だった。
だからこそ、自分の肉体がしなやかな大人の女工作員へ改造された今でも、元男子組がデリカシーのない言動をするたびに仕込みナイフを突きつけて本気で威嚇していた。
■ 元3年生の女の子
「……胸部パーツの増量。……空気抵抗の増大を確認」
ぶかぶかの戦術ローブの隙間から自分の胸元を覗き込み、心底どうでもよさそうに呟く元3年生の女の子。
外で木登りをしたり、機械の玩具で遊ぶのが大好きだった活発な元3年生女子。
恋愛や異性といった概念には一切興味がなく、「男子も女子も、一緒にドッジボールをするかどうかの違いだけ」という思考だった。
現在、無感情なハッカーとなった彼女だが、ぶかぶかのローブの下の豊かな体を「動きにくいバグ」としか思っていないのは、この頃のサバサバした性格が根底にあるからだ。
■ 元4年生の男の子
「あはは、なんか胸のところが柔らかくてポヨンポヨンする~」
白衣風アーマーを前開きのまま、自分の胸元を無防備に押し触って笑う元4年生男子。
女の子と喋るくらいなら放課後に秘密基地を作る方が100倍楽しかった。
そのため、急成長させられて圧倒的な母性と豊満ボディを持つ大人の女性に変えられた今でも、「自分の体に異性としての魅力を感じる」という感覚が一番欠落しており、平気で無防備な姿を晒していた。
そして――最も激しい葛藤と「性の目覚め」の嵐に晒されていたのが、元6年生男子だった。
■ 元6年生の男の子
「(くそっ……! なんだよこれ……っ!!)」
耐Gスーツのジッパーを喉元までキリキリと引き上げ、壁際で顔を真っ赤にして固まる明。
班長としてしっかり者を装い、下級生たちを引っ張っていた元6年生男子。
しかし、彼の思春期の入り口にあった甘酸っぱい本音――それは、ひとつ下の学年(5年生)で、いつも後輩たちの世話を優しく焼いていた女の子の存在だった。
学校の図書室で本を運ぶ彼女の横顔や、下級生に優しく微笑む姿を、明は登校班の最前線からチラチラと盗み見ては、密かに胸を躍らせていたのだ。
だが、現在の状況はあまりにも残酷で、そしてシュールすぎた。
「大丈夫? 服のサイズ、苦しくない……?」
「っ!?」
目の前に、元5年生の女の子が近づいてきた。
小柄な少女兵(狙撃手)の姿へと変貌した彼女だったが、その優しく世話焼きな瞳と、ふわりとした雰囲気は昔のままだ。
「そ、狙撃兵……ッ! ち、近寄るな……じゃなくて、アタシに構うな!」
明は華奢な自分の身体(※おっぱい付き)を抱きかかえ、後ずさった。
(やばい……やばすぎるだろこれ!! あいつは相変わらず可愛いし、世話焼きだし……でも今の自分も女の体になってるし、横を見たら衛生兵が無防備な爆乳を晒してるし……アタシの男としての脳みそがパンクするわよぉぉっ!!)
かつて密かに意識していた「好きな女子」と同じ部隊で戦わされ、なおかつ自分自身も女の身体へと変えられていく恐怖と混乱。
明の「初恋」と「性の目覚め」は、コロニー「ヴァルハラ」の最悪な人体改変によって、世界一カオスで甘酸っぱい黒歴史へと昇華されようとしていた。
「ふふ、パイロットちゃんは昔から照れ屋だねぇ~」
何も知らない元4年生男子が、豊満な胸を揺らしながら明の肩を叩く。
「触るなバカ!! 服を着ろ服をッ!!」
「キャッ!? なに騒いでるのよ男子たちは……じゃなくて元男子たちは!!」
元2年生女子が仕込みナイフを構えて叫び、元3年生女子が「……騒音レベル、80デシベル上昇」と無感情に記録する。
元1年生男子が「明お兄ちゃん助けてぇ」と泣きつき、元5年生女子が「はいはい、指揮官ちゃん泣かないの」と優しく抱きしめる。
その光景を、顔を真っ赤にしたまま見つめる元6年生男子。
侵食率が深まり、完全に兵器としての意識へと書き換えられていく直前のほんの一瞬。
少女たちの姿をした6人の子どもたちは、過酷な要塞の暗闇の中で、それぞれの幼い記憶と芽生えたばかりの感情を抱きしめながら、必死に「自分たち」であり続けようとしていた。