登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
侵食率60%。
「男の子たちのマヌケなドタバタ劇」を冷ややかに見下ろし、スポーツブラの構造美をドヤ顔で伝授していた元女子組(工作員、狙撃手、ハッカー)。
しかし、洗脳プログラムと身体急速成長プロトコルの魔手は、彼女たちにも牙を剥いた。
身体機能の二次アップデートが完了したその日、物資保管庫の「元女子会」に戦慄が走った。
【01. 狙撃手の照準器(スコープ)干渉】
「……解せぬ」
小柄な少女兵の姿をした狙撃手(元5年生女子)が、長距離対物質ビームライフルを構えたまま、瓦礫の上で固まっていた。
いつもなら無感情な彼女の青い動体予測UIが、チカチカと不規則に点滅している。
「……照準補正、不可。……頬付け(ストックへの顔固定)が、できない」
「え? どうしたの狙撃手?」
耐Gスーツを着たパイロット(元6年生男子)が操縦席から顔を覗かせる。
「うむ……狙撃手、姿勢が崩れているぞ?」
175cmの長身指揮官指揮官(元1年生男子)も首を傾げた。
狙撃手は無言のまま、自分の胸元を俯きがちに見つめた。
少女兵として小柄な体躯に再設計されたはずの彼女だったが、ここ数日の遺伝子調整により、胸元だけが不自然なほど豊かに急成長を遂げていたのだ。
「……伏せ撃ち(プローン)をすると、胸が地面に干渉する。……体が押し上げられて、スコープの位置が3センチ上にズレる。……邪魔」
狙撃手は感情の脱色された顔のまま、小さな拳で己の豊かな胸をポカポカと叩いた。
「……いらない。……射撃の邪魔。切り落としたい」
「やめなさいよ!! 切ったら死ぬわよ!!」
パイロットが即座に叫んで止めた。
【02. 影に潜めない工作員】
「……くそっ! なんなのよこの欠陥構造は!!」
防衛区画のダクト内。漆黒のステルススーツを着た工作員(元2年生女子)が、狭い通気口の中で身動きが取れなくなっていた。
大人の女工作員へと引き伸ばされた彼女の身体は、元々しなやかで細身だったはずだ。
しかし、今回の成長アプデにより、彼女の胸元もまた、爆発的なボリュームを獲得してしまっていた。
「あたしは! 潜入工作員なのよ!? 直径40センチのダクトを無音で通り抜けるのがあたしの仕事なのよ!!」
ギシギシッ……メリメリッ……
「胸がダクトのフチに引っかかって進めないし戻れない!! ステルススーツの胸元が擦れて摩擦音が響く!! 工作員として完全に詰んでるじゃないのよぉぉっ!!」
ダクトの下を通りかかった衛生兵(元4年生男子)が、ほんわかとした笑みを浮かべて見上げる。
「あはは、工作員ちゃん、お尻と胸がツッカエ棒になっちゃってるねぇ~。引っ張ってあげようか?」
「見ないで!! 助けなさい!! ……あと、笑うな!!」
かつて男の子たちを「バカね」と見下していた冷酷な工作員は、ダクトの中で真っ赤になって絶叫した。
【03. 戦術ローブの容量オーバー】
「……計算エラー」
保管庫の隅。ぶかぶかの戦術ローブを着たハッカー(元3年生女子)が、ホログラムキーボードを叩く手を止めていた。
光のない瞳で、自分の胸元を見下ろす。
身体能力を極限まで削られ、10歳児の姿で固定されたはずのハッカー。
しかし、コロニーの変態的な科学者たちの手によって、「ぶかぶかのローブの下に隠された圧倒的な豊満さ」というアンバランスな肉体へと改変されていた。
「……ローブのフロントファスナー、破断。……後頭部ポートへの冷却風、胸の肉によって遮断。……CPU温度、上昇中」
ハッカーは無感情にローブの前を開いた。
スポーツブラの補強すら突き破らんとする質量が、ぶかぶかの生地を押し押し上げている。
「……ハッキング速度、12%低下。原因:胸の圧迫による息苦しさ。……結論:この肉体パーツ、戦術的バグ」
「ハッカーちゃんまで……」
衛生兵が、おっとりとした大人の女性の姿で近づき、ハッカーの頭を優しく撫でた。
「わかるよ~。重いよねぇ、温かいよねぇ。これからはみんなで『胸重いクラブ』だねぇ?」
「……クラブ結成、拒否。……ただちに縮小手術を要求」
【04. 立場の逆転】
その日の夜、作戦準備室。
スポーツブラの締め付けにも慣れ、元男子としての吹っ切りがついた指揮官とパイロットは、テーブルを囲んでコーヒー(配給品)を飲んでいた。
そこへ、テンションがどん底まで落ち切った元女子組の3人が入ってくる。
伏せ撃ちができなくなった狙撃手。
ダクトから救出された工作員。
ローブの前が閉まらないハッカー。
「……ふふっ」
パイロットが、不敵な笑みを浮かべて腕を組んだ。
「どうしたのよ、元女子組の皆さん? 『文明の利器(ブラジャー)を使えば余裕』じゃなかったの?」
「黙りなさい……ッ!!」
工作員が仕込みナイフの柄を握りしめ、赤面しながら睨みつける。
「なによ! あたしたちは元々女子なのよ!? なのに……なんで男のお前たちよりデカくなって邪魔にならなきゃいけないのよ! おかしいでしょ!!」
「……肯定」
ハッカーが光のない瞳で言った。
「……コロニーの設計担当者、極めて悪趣味。……後でシステムをクラッキングして、全員の口座残高をゼロにする」
「うむ」
175cmの長身指揮官が、堂々とした立ち姿で軍服の襟を正した。
「兵器としての改造は、我々全員に平等(残酷)だったということだ。
……狙撃手、工作員、ハッカー。これからは我々元男子組が、お前たちの『胸部慣性モーメント補正』の先輩としてアドバイスをしてやろう」
「いらないわよそんな先輩!!」
工作員の叫びが虚しく響き渡る。
「男子の尊厳」を奪われて絶叫していた元男子組と、「女子の余裕」を打ち砕かれて敗北した元女子組。
その後、さすがに任務に支障をきたすので元に戻された事は言うまでもない。
なお工作員は元よりちょっぴり大きくなった(A→B)。