登校班から宇宙戦士へ   作:匿名希望

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【おまけシナリオ】――ふと思い出した恥ずかしい記憶

侵食率65%。

戦術思考が定着し、身体改変のドタバタもひと段落したある日の夜。

コロニーの哨戒任務を終えた6人は、暗い兵舎のベッドに腰掛け、明日の作戦プロトコルの確認を行っていた。

 

そこへ、脳内の「地球の記憶セクター」の破損データが、何の前触れもなく唐突に復元されるというシステムエラー(大事故)が発生した。

 

【01. 指揮官の黒歴史】

 

「……ッ!?」

 

175cmを超える圧倒的な長身と金糸の軍服を纏う指揮官(元1年生男子)が、突然コンソールを握りしめたまま激しく硬直した。

完璧な威厳を誇る美しき女性司令官の顔面が、みるみるうちに沸騰したヤカンレベルで真っ赤に染まっていく。

 

「ど、どうしたの指揮官? 敵のサイバー攻撃!?」

 

耐Gスーツを着たパイロット(元6年生男子)が飛び起きる。

 

「ち……違う……っ! 脳内アーカイブのセクター3から、失われたはずの映像データが一時復元された……っ!」

 

「どんなデータ~?」

 

白衣風アーマーの衛生兵・衛生兵(元4年生男子)がおっとりと覗き込む。

指揮官は175cmの体躯を丸め、膝に顔を埋めて震え上がった。

 

「私……1年生のとき……登校班の集合場所で……っ。

 黄色い帽子を前後逆にかぶって、アニメのヒーローの真似をしながら『我は闇の覇王! ランドセルは漆黒の翼!』って叫んで、みんなの前でドブに落ちた記憶が……っ!!」

 

「「「ぶっ」」」

 

「やめろ! 思い出すな! 消去しろオーディン!!」

 

長身のカリスマ指揮官が、幼少期の黒歴史のフラッシュバックにより精神的致死ダメージを受けて転がり回っていた。

 

【02. 工作員の秘め事】

 

「ふん……くだらない。1年生のガキのタワゴトね」

 

漆黒のステルススーツを着た工作員(元2年生女子)が、壁の影で暗視バイザーを押し上げ、冷ややかに鼻で笑った。

……が、直後。

 

ピクッ。

 

工作員の動きがピタリと止まった。

暗視バイザーの下から覗く瞳が、激しく動揺に揺れ動く。

 

「工作員ちゃん……? 顔がすごく赤くなって、手汗がナノマシンセンサーに反応してるよ??」

 

「な、なんでもないわよ!!」

 

工作員は仕込みナイフをガチャガチャと意味なく開閉させながら、必死に壁際へ後退った。

 

「あたしは……あたしは絶対に思い出してないわよ!? 2年生の国語の時間、先生のことをうっかり『お母さん』って呼んじゃって、クラス全員に夕方までいじられたことなんて……っ! 絶対に思い出してないんだからねッ!!」

 

「自分で全部言ってるわよ、工作員」

 

パイロットが半目でツッコミを入れた。

クールな殺し屋として完璧に振る舞っていた元2年生女子は、顔を両手で覆い隠してその場にしゃがみ込んだ。

 

【03. 狙撃手のポエム】

 

「……データ同期」

 

小柄な少女兵の姿をした狙撃手(元5年生女子)が、長距離対物質ビームライフルを抱えたまま、静かに口を開いた。

 

「……私の脳内にも、破損ファイルが復元された」

 

「えっ、狙撃手も!? 何を思い出されたの!?」

 

パイロットが身を乗り出す。狙撃手は感情の脱色された無機質な声のまま、淡々と朗読を始めた。

 

「……『5年2組、杏奈の自由ノート』。……タイトル【蒼き孤高の狼】。……『私の右腕には、前世で封印した暗黒竜が眠っている。触れると、世界が滅ぶ』……」

 

「やめてぇぇぇぇっ!!」

 

今度は175cmの指揮官が飛び起きて、狙撃手の口を両手で塞ぎにかかった。

 

「狙撃手! それ以上はダメだ! 兵士としての精神汚染レベルが致死量に達する!!」

 

「……まだ続きがある。……『クラスの子たちには分からない。私が影から世界を護っていることを』……」

 

「あぁぁぁぁっ!(叫)」

 

無感情な狙撃手による過酷な黒歴史の朗読劇に、待機室の空気が激しく削られていく。

 

【04. パイロットの真実】

 

「あはは! みんな昔は可愛い黒歴史があったんだねぇ?」

 

衛生兵衛生兵がほんわかとおっとり笑う。

ハッカー(元3年生女子)も、ぶかぶかのローブの中から光のない瞳で、コンソールの画面を指さした。

 

「……パイロットのセクター12も、解凍完了」

 

「は!? アタシ!? ちょっと待ちなさいハッカー! 余計なログを再生するんじゃないわよ!!」

 

パイロット(元6年生男子)が叫ぶが、時すでに遅し。

ハッカーの後頭部ポートから、ホログラムの音声ログが再生された。

 

『~♪(鼻歌)』

『俺は最強の6年生~♪ 班長だから誰よりも足が速い~♪ 帰ったらママのホットケーキ食べるんだ~♪』

 

「「「「…………」」」」

 

待機室が静まり返った。

 

華奢な身体に圧倒的な撃墜衝動を宿し、「アタシが一番強くてカッコいいのよ!」とイキり散らしていた撃墜王パイロット。

その彼女(彼)が、6年生の時にノリノリで歌っていた自作の鼻歌ログ。

 

「消せぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

パイロットは耐Gスーツのヘルメットをハッカーのコンソールに投げつけ、顔を真っ赤にして叫んだ。

 

「ハッキングして消せ! 今すぐアタシの脳ミソごとフォーマットしなさぁぁぁい!!」

 

「……拒否。バックアップ、永久保存セクターへ転送完了」

 

「ハッカーの意地悪ぅぅぅっ!!」

 

改造され、大人や兵器の肉体を手に入れ、冷酷な戦術理論を叩き込まれた6人。

しかし、どんなに兵器としての完成度が高まろうとも、ふと蘇る「かつての幼く恥ずかしい思い出」の前には、威厳もカリスマも完全に崩壊してしまうのだった。

 

 

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