登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
侵食率80%。
身体アップデートの最終工程が完了し、コロニーの物資保管庫(兼・試着室)に絶望と困惑の悲鳴が轟いた。
コロニー「ヴァルハラ」の変態科学者たちが施した肉体改変プロトコル。
それは、元々の性別など一切考慮せず、戦術的役割(と科学者の狂った性癖)のみに基づいて肉体を再構築するものだった。
その結果――恐るべき「質量の逆転現象」が巻き起こった。
【01. 衛生兵の圧倒的質量】
「ふぅ……なんだか新しいアーマー、胸のところがすごくキツいよ??」
白衣風アーマーのフロントファスナーを上げようと苦戦しているのは、衛生兵。
以前から豊満だった彼女(彼)の胸元は、今回の最終アプデにより部隊ダントツの圧倒的超弩級(Kカップ級)へと進化を遂げていた。
「あはは、ファスナーが弾けちゃいそうだよ~」
おっとりと笑う衛生兵。
その横で、元女子組の3人が般若のような顔で固まっていた。
「……ちょっと、待ちなさい」
漆黒のステルススーツを着た工作員が、震える指先で衛生兵の胸元を指さした。
「なんで……? なんで元男子の衛生兵が一番デカいのよ……ッ!? あたしは元々女の子なのよ!? なのに……なんでBカップで頭打ちなのよぉぉっ!!」
「……計測不能」
ハッカーが、ぶかぶかのローブの中から光のない瞳で、自らの薄い胸元を見下ろした。
「……衛生兵の胸部質量、私の約8.5倍。……理解不能。物理法則の敗北。コロニーの設計担当者、完全に狂気」
「……邪魔そう。……撃ちづらくないの?」
狙撃手は、小柄な体躯に急成長した胸元(Eカップ)を肘で押さえながら、無表情だがどこか解せぬといった顔で衛生兵を見上げている。
【02. 長身指揮官の圧倒的スタイリッシュ豊満】
さらに追い打ちをかけたのが、175cmの圧倒的長身を誇る指揮官だった。
「む……? みんな、どうしたのだ?」
金糸の軍服のボタンを留めながら、ルージュが堂々と現れる。
175cmのモデル体型。引き締まったウエスト。そして、その上に君臨する主張の激しすぎる豊満なFカップ。
「な、なによその完璧なグラマラスボディはぁぁっ!!」
工作員が頭を抱えて叫んだ。
「あんた1年生の男の子だったでしょ!? お母さんの後ろに隠れて泣いてた泣き虫だったでショ!?
なんで足も長くて胸も大きくてカッコいいモデル体型になってるのよ!! 理不尽にも程があるでしょーが!!」
「わ、私に言われても困る……っ!」
指揮官は175cmの長身を縮め、顔を真っ赤にして胸元を隠した。
「私も……歩くたびに揺れて重心がブレるし、服のボタンが飛んで敵に当たったらどうしようかと冷や汗をかいているのだぞ……っ!」
「自慢してんの!? 殺すわよ!?」
【03. 撃墜王の格差と複雑な心境】
「ふははは! 工作員、泣くな! アタシを見て元気出しなさい!」
耐Gスーツを着たパイロットが、自信満々に胸を張った。
……が、ブランの胸元は、華奢な撃墜王スタイルとして固定されたため、慎ましいCカップ止まりであった。
「アタシだって元6年生男子だけど、指揮官や衛生兵には負けてるわ!
でも見なさい、この引き締まった美しいフォルム! パイロットとしてはこれが最適解なのよ!」
「うるさいわねバカ!! あんたは元男子のくせに女子っぽい可愛さ出してんじゃないわよ!!」
「誰がバカよ!!」
ワーワーと騒ぎ立てる工作員とパイロット。
その最中、小柄な狙撃手が、トボトボとブランの隣に歩み寄ってきた。
「……パイロット」
「ん? なによ狙撃手?」
シアンは無表情のまま、自分の胸元(Eカップ)と、ブランの胸元(Cカップ)をじーっと見比べた。
そして、かつて世話焼きなお姉さんだった頃の優しい手つきで、そっとブランの頭を撫でた。
「……大丈夫。……パイロットちゃんは、小さくても……可愛いよ」
「やめてぇぇぇぇっ!!」
パイロットは顔を真っ赤にして絶叫した。
かつて密かに意識していた「好きな女子」に、自分より大きな胸を見せつけられながら「小さくても可愛い」と撫で回されるという、最高に惨めで甘酸っぱい敗北感。
「アタシは……アタシは元・登校班の班長だぞぉぉぉっ!!(涙)」
【04. 女子達の敗北宣言】
その日の夜。作戦準備室。
胸の大きさに敗北した工作員は、隅っこで膝を抱えて体育座りをしていた。
「……もう嫌。あたしたち、元男子に『おっぱい』でも『機動力』でも勝てないじゃない……。なにが女子組よ……ただの敗北者じゃない……」
「……落ち着け、工作員」
ハッカーが光のない瞳で、温かいハーブティーをノワールの前に置いた。
「……胸の質量とハッキング性能には相関関係なし。……私たちは私たちの戦い方をするまで」
「……でも、衛生兵に抱きつかれると、すごく柔らかくて温かい」
狙撃手がポツリと言った。
「「「…………」」」
「……確かに」
工作員も認めざるを得なかった。
衛生兵の超弩級の胸元は、兵器として歪められた彼女たちの疲れ切った精神を包み込む、最高レベルの「抱き枕(癒やし)」でもあったのだから。
「もう……今度ヴェールにお説教しながら、思いっきり抱きついてやるんだから……!」
元男子組の理不尽すぎる豊満さと、元女子組の敗北感。
暗いコロニーの闇の中で、6人は等しく「理不尽なおっぱい格差」に頭を悩ませながら、明日への戦術プロトコルを更新するのだった。