登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
深夜の巨大要塞宇宙船「アルゴ」。
静まり返った艦内通路を、パトロールと称して歩き回る人影があった。
漆黒と金糸刺繍の最高指揮官用ドレス軍服を身に纏い、戦術指揮刀を腰に提げたルージュである。
「……くっ、総司令官たるもの、夜間巡回は当然の務めだからな……。だ、誰もいないからって、別に怖くなんかないんだからねっ……!」
誰もいない冷徹な廊下に、18歳前後のスレンダーグラマラスな美貌を誇る女将軍の震え声が虚しく反響する。
Fカップの豊かな胸元を腕で隠し、八の字眉を全開にしながら、ルージュは恐る恐る仲間たちの「自室(という名のカオスな拠点)」を覗いて回ることにした。
第一の扉:第1艦橋直結・高級将校用スイートルーム(ルージュの部屋)
まずは自分の部屋である。
元・艦長専用室を丸ごと乗っ取ったこのフロアは、圧倒的な広さと豪華さを誇る。
しかし、広大なフロアの真ん中にぽつんと置かれたキングサイズの豪華な天蓋付きベッドに、175cm・Fカップの巨体を持つルージュがぽつねんと寝転がると、あまりの広さに寂しさが爆発する仕様になっている。
「総司令官たるもの、一番偉そうな部屋でなければならない」という小学生全開の背伸びしたイメージでここを選んでしまったがゆえの自業自得なのだが、夜の静寂に包まれたこのだだっ広い空間は、彼女の心の防壁を容易に粉砕する。
「かっこいいお姉さん」を演出するためにドローンに無理言って作らせたアンティークの地球儀や謎の勲章は、夜の暗がりの中ではただの不気味なシルエットにしか見えない。
「ひっ……! な、なんか地球儀の影が動いた気が……っ! いやあああ、お母さぁん……!」
耐えきれなくなったルージュは、かっこいいドレスの裾をたくし上げ、司令官としての尊厳をかなぐり捨てて部屋から飛び出した。
第二の扉:特大メディカルラウンジ(ヴェールの部屋)
「うにゃ~……んふふ、特大クッション最高だねぇ……」
次に通りかかった医療ブロック隣接の特大メディカルラウンジでは、部隊最大のKカップを誇る衛生兵ヴェールが、自動マッサージチェアの上でだらしなく溶けていた。
前開き仕様の戦術ナースアーマーは重力に負けて完全にパッカーンと開き、Kカップの爆乳の質量がソファのクッションを盛大に圧迫している。
部屋中にはドローンに作らせた無数のクッションと、飲みかけの紅茶のカップが散乱し、完全にダメ人間の巣窟と化していた。
そこに、半泣きで飛び込んできたルージュが転がり込む。
「ヴェール! 助けて! 私の部屋の地球儀が生き物みたいにこっちを見るのっ!」
「あはは、ルージュちゃん相変わらず怖がりだな~。ほら、私の大きなお胸でよしよししてあげるからおいで~」
「うわっ、胸が顔面に埋まるっ、苦しいっ、でも温かい……!」
中身がやんちゃな4年生男子のくせに、装備と母性だけがバグったKカップのお姉さんに包み込まれ、ルージュは複雑な羞恥心に悶絶するのだった。
第三の扉:物資備蓄倉庫の貨物リフトの裏側(ノワールの第5アジト)
一方その頃、貨物ターミナル内の死角に存在する小さな空間では、工作員ノワールが膝を抱えていた。
セキュリティ管理室の隣にある自室をプライバシー的な理由から早々に見切り、彼女がアルゴの各所に密かに設置した九つの隠しアジト、その中でも実際に拠点として利用するギリギリのラインに位置付けている暗くて狭い秘密基地の一つである。
「……ふん、あんな広くて無駄に豪華な部屋、いつ敵が侵入してくるかわかったもんじゃないわ。
この狭さと、仕込みナイフの匂いに囲まれてる方がよっぽど落ち着くんだからね……」
ツインテールを揺らしながら持参の保存食をかじりつつ、ノワールはアジトに設置した監視用モニターから聞こえてくるヴェールの笑い声とルージュの悲鳴に「まったく、あいつら気が緩んでるんだから!」と赤眼を鋭く尖らせて悪態をつく。
だがその実、狭い空間で一人きりでいるその姿は、かつて男子から逃げるように押し入れの隅に陣取っていた頃の寂しがり屋な面影を色濃く残していた。
第四の扉:第3ブロック・アーカイブルーム(シアンの部屋)
艦内の電子図書館に指定されたアーカイブルームは、青く光る巨大なディスプレイの明かりと、無数の電子書籍データに包まれた静寂の空間だ。
無感情系クール美少女であるシアンは、お気に入りのソファに小さく丸まり、古の地球の紙の本を模したタブレット端末を無言でめくっていた。
そこへ、パイロットのブランが、耐Gスーツの裾を整えながら恐々とおずおずと足を踏み入れてくる。
「あ、あのさ、シアン……。ちょっと資料を確認したくて……」
シアンは音もなく振り返り、感情の抜けたダークパープルの瞳でブランをじっと見つめる。
そして言葉を発せぬまま、無言でお茶を淹れ、トコトコとブランに近づくと、その小さな手でブランの頭を優しく、しかし容赦なくナデナデと撫で回し始めた。
「なっ、ちょっ、シアンっ!? 急にそんな無言で頭撫でるなよっ、あとその、近いっ……!」
密着する距離で漂うシアンのほのかな甘い香りと、容姿端麗なEカップの隠れグラマラスな体躯による強烈な不意打ちデレに、元・6年生班長のプライドを持つブランはたった一撃で顔面を真っ赤に沸騰させ、脳内炉心溶融(爆死)を起こして床に崩れ落ちた。
シアンは倒れたブランを不思議そうに見つめたあと、再び何事もなかったかのように読書に戻るのだった。
第五の扉:第7ドローン・プラント直結・床下メンテナンススペース(ジョーヌの寝床)
そして、誰の目も届かないドローン・プラントの床下。
巨大サーバーラックの隙間に敷いた薄汚れた(しかしハッキング機能付きの)ブランケットの上で、ハッカーのジョーヌは、ぶかぶかの戦術ローブをすっぽりとかぶって丸まっていた。
枕元には分解途中の回路基板と半田ごて、そして無機質なゴールドの瞳をうっすらと開けたまま、彼女は艦内の全ドローンのログを脳内スレッドで直結処理している。
「……コード正常。……上層のバグ(ルージュのパニック)、処理完了。……やっぱり、この配線の磁場と機械油の匂いが、一番の安眠スポット……」
誰に邪魔されることもないサイバーと鉄屑の巣窟で、ジョーヌは小さく呟くと、そのまま心地よいスリープモードへと落ちていった。
こうして、今日も今日とて、最強最悪の肉体改造を受け入れた「元・登校班の6人」は、宇宙の果てを駆ける巨大要塞の中で、それぞれの歪で愛おしい自室(と逃げ場所)にしがみつきながら、賑やかで騒がしい夜をやり過ごしていくのだった。