登校班から宇宙戦士へ   作:匿名希望

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【おまけシナリオ】――ノワールの隠しアジト巡回記

要塞宇宙船「アルゴ」の巨大な腹の底、冷え切った金属板と微かに振動する配管の隙間を、一筋の影が滑るように進んでいく。

身長152cmのスレンダーな体躯に、光学迷彩機能を起動した漆黒のステルススーツ。

漆黒のツインテールを揺らし、クリムゾンレッドの鋭い瞳を細めて周囲を警戒するのは、部隊の工作員・ノワールだ。

 

彼女には、この鉄の要塞の中に「九つのアジト」という絶対の防衛網、もといプライベートな生存領域が存在している。

その中でも、艦の表層から中層にかけて構築された「第0~3アジト」は、彼女の警戒心の強さと、かつて小学校の机の下や押し入れの隅にしがみついていた名残が最も分かりやすく形になった場所であった。

 

第0アジト:敵の罠たる「ダミーの自室」

 

「……ふん、相変わらず悪趣味な広さね」

 

ノワールが最初に立ち止まったのは、第1ブロック(司令部・セキュリティエリア)の端に位置する個室だった。

ここが、船内の公式名簿に登録されている彼女の「自室」――通称第0アジトである。

 

セキュリティ管理室のすぐ隣という、一見すれば最も安全かつ目立つ一等地。しかしノワールにとって、この部屋は「敵(主にルージュやヴェールといった元・男子組)が突撃してくる最大の罠」に他ならなかった。

部屋の扉を開けると、そこには無難に整えられたベッドと、支給品の制服が几帳面にかかったクローゼットが並んでいる。

一見すると、真面目な工作員が暮らす静かな個室だ。

 

だが、それはすべて偽装にすぎない。

床の通風口を少しずらせば、即座にダクト網へと逃げ込める緊急脱出ハッチが隠されているし、壁の端末に見せかけた罠回路は、万が一ルージュが「ノワール、お菓子食べるか~?」などと呑気に侵入してきた瞬間、天井から冷水を浴びせるトラップに直結している。

「こんな表向きの部屋、いつ不意打ちを食らうかわかったもんじゃないわ。数日に一度、偽装工作のために覗きに来るだけで十分よ」

そう吐き捨てると、ノワールは音もなく第0アジトを後にし、壁面のメンテナンス用ハッチへと姿を消した。

 

第1~3アジト:元女子仲間にだけ開示された「表向きの拠点」

 

第1ブロックの重々しい警戒網を抜け、第23ブロック(居住区画・生活インフラ)のサービス通路へと潜り込んだノワールは、配管の裏に隠された秘密のロックを指紋認証で解除した。

 

ここから先が、ノワールが「万が一の時のための情報共有」として、シアンやジョーヌといった一部の元女子仲間にのみ存在を明かしている第1~3アジトのエリアである。

もっとも、彼女たちに伝えているのはあくまで「いざという時の避難場所」としての最低限の座標だけであり、その内部の全貌までは把握させていない。

 

第1アジト:サービス通路裏の小部屋

 

配管の合間にしつらえられたこのアジトは、かつての図書室の隅の読書スペースを思わせる造りになっている。

壁には小型のモニターが埋め込まれ、居住区画全体の動線が静かにモニタリングされていた。

「ここはシアンが本を読みに来るかもしれないからって、少しだけ遮音性を高めておいたのよ。

 ……まあ、あいつは自分のアーカイブルームから一歩も動かないから、ほとんど使われた試しがないけれど」

 

第2アジト:非常階段デッドスペースの隠れ家

 

さらに奥まった、使われなくなった非常階段の裏側。

コンクリートと鉄骨の隙間に巧みに組み込まれたこの空間には、ノワールが密かに集めた小型の武器ラックと、非常食のレーションが整然と並んでいる。

「ヴェールみたいな馬鹿力がうっかり壁を叩いても、ここなら衝撃が分散するように耐衝撃緩衝材を仕込んであるわ。

 あんなKカップの化け物が暴れてもびくともしない構造になってるんだから、安心感だけは一丁前よ」

 

第3アジト:生活インフラの結節点

 

居住区画の給水パイプが複雑に交差する一角。

湿度がわずかに高く、常に低い駆動音が響くこの場所は、ノワールが日々の任務の合間にふっと一息つくための空間だった。

床にはフカフカのクッションマットが敷かれ、天井からは彼女のトレードマークである漆黒のツインテールを整えるための専用ブラシが吊り下がっている。

 

「……ふう。ここまで来れば、あのバカデカい胸を誇る元男子どもの気配もしないし、落ち着くわね」

ノワールはここで一瞬だけ肩の力を抜き、持参したチョコレートを口に放り込む。

しかし、これら第1~3アジトは、あくまで彼女の防衛網における「表向きのシェルター」にすぎなかった。

 

もし、このアルゴの艦内でさらに大きな混乱や、元・男子組の執拗な捜索(あるいはヴェールの無自覚なハグ攻勢)が発生した場合、彼女にはさらに奥へ、さらに深くへと潜るための「次の防衛線」が控えている。

 

第4~6アジト――切り捨て前提の陽動防衛ライン、そして誰にも明かされない第7~9アジトへと続く闇の迷宮へ向けて、ノワールは再びスレンダーな体をダクトの奥へと滑り込ませたのだった。

 

 

第23ブロックの静かな生活インフラ圏を抜け、要塞宇宙船「アルゴ」のさらに奥深くへと踏み込むと、艦内の空気は一変する。

 

金属と機械油の熱気が立ち込め、巨大なクレーンやコンテナが縦横無尽に行き交う第46ブロック――工業プラントおよび貨物ターミナルエリア。

広大な空間のあちこちに轟音が響き渡り、センサーの死角が複雑に入り組むこの工業地帯こそが、工作員ノワールの構築した「第4~6アジト」が点在する領域である。

 

「……ここから先は、ただの生活スペースじゃないわ。

 万が一、あのバカども(元・男子組)が本気で私の居場所を突き止めようとした時のための――『生贄』の防衛ラインよ」

 

漆黒のステルススーツに身を包んだノワールは、巨大なコンテナの隙間を縫うようにして、軽快な身なりでダクトを渡っていく。

身長152cmの小柄な体躯と光学迷彩機能を持つ彼女にとって、この広大な工業プラントは格好の遊園地であり、同時に幾重もの罠を張り巡らせた要塞でもあった。

 

第1~3アジトが「万が一見つかった場合に誘導するための表向きの拠点」であるならば、この第4~6アジトは「普段使いの拠点として実用的に機能させつつ、いざとなれば証拠隠滅も兼ねて躊躇なく切り捨てる」という、極めて割り切った設計になっている。

 

第4アジト:資源採掘プラントのコンテナ隙間

 

巨大な鉱石コンテナと壁面の配管が作り出した、わずか数十センチのデッドスペース。

そこにしつらえられた第4アジトには、ノワールが任務の合間に使う予備の仕込みナイフの砥石や、簡易的な修理キットが置かれている。

「ここでよくナイフの手入れをしてるけど、もしルージュやヴェールが勘でここまで踏み込んできたら、このコンテナのロックを遠隔解除して押し潰してやるんだから……!」と、ノワールは物騒な独り言を呟きながら、いつでも逃げ出せる配管の継ぎ目を確認する。

 

第5アジト:大型貨物リフト裏の観測ポイント

 

物資備蓄倉庫の巨大な貨物リフトの裏側、高圧電流が流れるメインケーブルの直近に位置する空間。

ここは艦内の物流データをリアルタイムで傍受できるディスプレイが設置されており、ノワールが「今、誰がどの区画でサボっているか」を監視するための拠点として機能している。

「ふん、ルージュがあの無駄に広いスイートルームでまた地球儀にビビって泣き叫んでる……相変わらずヘッポコね。

 こういう情報を仕入れるには、この第5アジトの立地が一番都合がいいのよ」

 

第6アジト:換気ダクト結節点のトラップ基地

 

プラントの排気ファンが轟音を立てて回るダクトの交差点。

ここに置かれているのは、侵入者を足止めするための罠パーツや、煙幕弾、そしてノワールが密かに隠し持っている非常用チョコレートの備蓄である。

「ここより先は、もう『私の本当の領域(第7~9アジト)』の入り口手前。

 だから、もしここまで敵が迫ってきたら、この第6アジトごとこの区画を自爆プログラムで隔離して、足跡を完全に消し去るのよ」

 

実際に、ノワールは日々の巡回やちょっとした隠れ場所として、この第4~6アジトをそれなりに頻繁に活用している。

広すぎず狭すぎず、メカニカルな機械音が子守唄のように響くこの工業エリアは、スレンダーな小柄ボディの彼女の潜伏生活にとって居心地が良いのも事実だった。

 

しかし、彼女のクリムゾンレッドの瞳は常に冷徹な警戒を失っていない。

「……第1~3までを教えたシアンやジョーヌならともかく、あの脳筋ども(元・男子組)にここから先の気配を嗅がせるわけにはいかないんだから」

 

第4~6アジトという「偽りの防衛線」のさらに奥、反物質エンジンや主冷却ダクトが狂ったような熱量を放つ最深部――。

誰の目も届かず、ノワール自身すら自分の足跡を残すことを極度に恐れる「第7~9アジト(真の隠しアジト)」へ向けて、彼女は影のようにスルスルと身を翻し、さらに深い闇の迷宮へと消えていったのだった。

 

工業プラントの熱気と喧騒を抜け、要塞宇宙船「アルゴ」の最深部――第7~9ブロックへ足を踏み入れた瞬間、周囲の環境は一変する。

 

轟音を立てて脈打つ反物質エンジン、凄まじい熱量を放つ主冷却ダクト、そして空間そのものを歪ませる強烈な電磁パルス。

通常の乗員であれば、重厚な防護服を着なければ一瞬で生命維持が危ぶまれるこの過酷な極限環境こそが、誰にもその存在を明かしていない「真の隠しアジト(第7~9アジト)」が隠された、絶対不可侵の領域である。

 

漆黒のステルススーツに身を包んだノワールは、電磁パルスを相殺するシールドを微調整しながら、まるで自分の庭であるかのように危険地帯の隙間を滑るように進んでいった。

 

「……ここまで来れば、もう誰も追ってこない。追ってくる馬鹿がいたら、それはもう自殺願望者よ」

 

冷徹なクリムゾンレッドの瞳を鋭く光らせ、ノワールは誰の足跡も残さないよう、慎重に自身の移動ログを消去していく。

第1~6アジトが「ダミー」や「陽動用の防衛ライン」としての役割を持っていたのに対し、この第7~9アジトは文字通り「ノワールが絶対に見られたくない私物と、素顔の時間を隠すための聖域」だった。

 

自身の動線から足がつくことを極度に恐れる彼女は、普段はこの最深部へ頻繁に足を運ぶことはない。

だからこそ、この定期巡回こそが、彼女が誰にも邪魔されずに「本当の自分」に戻るための大切な儀式なのだ。

 

第7アジト:主冷却ダクト直近の「静寂の小部屋」

 

高熱の冷却パイプに挟まれた、わずか一畳ほどのメンテナンス用小空間。

一見すると過酷な熱気の地獄だが、ノワールが仕込んだ特殊な断熱・遮音シールドの内側は、驚くほど静かで心地よい温かさに包まれている。

「ここは、艦内の誰の気配もしない最高の場所……。たまにルージュたちのドタバタが遠くの振動で伝わってくるけど、これくらい隔離されてれば上等よ」

彼女は腰の仕込みナイフホルダーを外し、ほっと息をつく。

 

第8アジト:無人ドローン整備プラント裏の「武具と秘密のコレクション」

 

無数の無人ドローンが眠る巨大なハンガーの床下、電磁パルスの嵐に守られた漆黒のデッドスペース。

そこには、表向きのアジトには絶対に置けない「絶対に見られたくない私物」が所狭しと並んでいた。

精密に磨き上げられた無数の特製仕込みナイフのコレクション、最新型の光学迷彩ネット……そして、その奥の箱には、かつて攫われた時に身に着けていた物の残骸を密かに回収・修復した「あの頃の私服(紺色のワンピースと、少し色褪せた水色のランドセル)」が、誰にも触れられないよう大切にしまわれている。

「……ふん、あんな馬鹿な胸(FカップやKカップ)に成長しやがって、ふざけた遺伝子しやがって……! 私だって、いつか見返してやるんだから……!」

誰もいない暗闇の中で、ノワールは小さく頬を膨らませ、誰にも見せない子供っぽい悔しさをひっそりと爆発させるのだった。

 

第9アジト:反物質エンジン直結・究極の「終点シェルター」

 

そして、アルゴの最深部、文字通り艦の心臓部の真裏に位置する、全九つのアジトの最果て――第9アジト。

周囲を強烈なエネルギー流が取り巻くこの場所は、艦の自爆装置や全システムの緊急ロック機構に直結しており、万が一アルゴが乗っ取られるような事態が起きれば、ノワールがたった一人で世界をシャットアウトするための最終防衛拠点となる。

 

しかし、今の彼女にとってここは、そんな物騒な目的のためだけのものではなかった。

極限の狭さと、宇宙の鼓動を感じさせる重低音の振動。

その狭い空間にうずくまるとき、彼女の脳裏によみがえるのは、かつて学校の机の下や押し入れの隅に身を縮こまらせ、男子の足音に怯えていた幼い日の記憶だ。

 

「……宇宙船がいくら巨大になろうと、隠れる場所の居心地が良けりゃあ、結局昔と変わらないじゃない……」

 

ふっと鋭い緊張を解いたノワールは、愛用の漆黒のツインテールを揺らしながら、狭い床に小さな体を丸めた。

ルージュのパニックも、ヴェールの無自覚なハグも、シアンの無言の撫で回しも、ここへは届かない。

 

要塞宇宙船の底の底、誰にも見つからない絶対の闇の中で、孤独を愛する小さな工作員は、満足げに目を細め、静かな眠りへと落ちていくのだった。

 

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