登校班から宇宙戦士へ 作:匿名希望
次元跳躍実験のログエラー。
時空の歪みに飲み込まれた要塞宇宙船「アルゴ」がたどり着いたのは、侵食率0%――あの懐かしい地球の、なんてことのない通学路だった。
黄色い帽子をかぶり、ランドセルを背負って歩いてくる6人の小学生。
物陰からそれを見つめるのは、侵食率100%を経てアルゴで旅立った6人の「今の姿」だった。
【01. 175cmの女性司令官と、1年生の泣き虫】
「ふぇぇ……明お兄ちゃん、待ってよぉ……っ!」
通学路の最後尾で、大きな黄色いカバーのランドセルに背負われるようにして歩いていたのは、1年生の隆二だった。
その様子を電柱の陰から見下ろしているのは、175cmの圧倒的スタイルとFカップの胸元を誇る、美しき女性司令官ルージュ。
「……あ……私だ……っ! 1年生の、ちっちゃい私なのだ……っ!」
ルージュは口元を両手で覆い、感極まって涙をボロボロとこぼした。
「かわいい……っ! なんだあの生き物は……っ! 天使か……っ!? 守りたい、あの無垢な笑顔を……っ!!」
「ルージュ、落ち着きなさい! バレたらタイムパラドックスよ!」
ブランが慌ててルージュの軍服の裾を引っ張るが、175cmの巨体は止められない。
ルージュは感無量といった表情で、1年生の隆二に向かってそっと手を振った。
(私……大きくなったら、こんなに背が高くてカッコいいお姉さん司令官になるんだからね……っ! だから、泣かないで頑張るのだよ……っ!)
その時、風が吹き抜け、ルージュのFカップの胸元が強調された。
振り返った1年生の隆二と、バッチリ目が合う。
「……うわぁぁぁん!! なんかすごいでっかい女の人がこっち見てるよぉぉっ!! こわいよぉぉっ!!」
「ギャァァァン!? 泣かれたぁぁぁっ!!? 私だよ!? 未来の君だよ隆二ぃぃぃっ!!」
「叫ぶなバカ司令官!!」
【02. 超弩級ボディの衛生兵と、やんちゃな4年生】
一方、路地裏では、Kカップの爆乳を揺らした衛生兵ヴェールが、膝にバンソウコウを貼った4年生の茂を遠くから見つめていた。
「あはは……私、昔はあんなに元気に走り回ってたんだねぇ~」
ヴェールはおっとりと目を細め、自分の豊満すぎる胸元を見下ろした。
「あの頃の私に教えてあげたいな。『君は大きくなったら、胸のサイズがKカップになって、部隊のみんなのお母さんみたいになるんだよ』って~」
「絶対に教えるんじゃないわよ!!」
ノワールが横から飛び蹴りを食らわせる勢いで突っ込んだ。
「トラウマになるでしょ!! 4年生の男の子にそんな恐ろしい未来を予告したら、その場で泡吹いて倒れるわよ!!」
その時、4年生の茂が、道端で「巨大な水たまり」を見つけた。
ニヤリと悪ガキの笑みを浮かべ、助走をつけて飛び込もうとする。
「あっ! ダメだよ昔の私~! それやったらとなりのノワールちゃんに泥水がかかって怒られ――」
ジャッパーン!!
「きゃああっ!? 茂のバカぁぁっ!! 泥水飛ばさないでよ!!」
通りかかった2年生の小春に、見事な泥水がクリーンヒットした。
「……あはは、やっぱり怒られちゃった~」
ヴェールは苦笑いし、ノワールは「あいつ(昔の茂)マジでナイフで刺す……」と殺気を滾らせていた。
【03. 班長の甘酸っぱい敗北感】
「ふん……くだらないわね」
パイロットスーツを着たブランは、腕を組んでフンと鼻を鳴らした。
その視線の先には、黄色い班長帽をかぶり、班旗を握りしめて歩く6年生の明の姿があった。
「アタシの昔の姿か……。フフン、まあ悪くないんじゃない? ちゃんと班長として下級生の面倒を見てるし……」
ブランが自惚れていると、6年生の明が、少し後ろを歩く5年生の杏奈に声をかけた。
『なぁ、杏奈! 今日の放課後、一緒に図書室行かないか?』
『え? うん、いいよ。明ちゃん』
微笑み合うふたり。
それを見た瞬間、ブランの顔が真っ赤に沸騰した。
「~~~~~~~~~~っっ!!!!(無言の悶絶)」
「……ブラン? どうしたの?」
隣にいたシアン(現・元5年生女子)が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「な……なんでもないわよっ!!」
ブランは自分のCカップの胸元を抱え込み、床(路地裏の地面)に突っ伏した。
(やめてぇぇぇっ! 昔の自分(明)が好きな女子(杏奈)に必死にアプローチしてる甘酸っぱい記憶をリアルタイムで見せないでぇぇぇっ!
しかも今のあたし、そのシアン(杏奈)より胸が小さいのよ!? どんな顔して昔の自分を見ればいいのよぉぉっ!!)
「……大丈夫。……ブランちゃんは、昔も今も……かっこいいよ」
シアンがそっとブランの頭を撫でる。
「やめてぇぇぇぇっ!!(本日二度目の絶叫)」
【04. クール組の対比】
「……検知」
ハッカーのジョーヌは、オーバーサイズのローブから光のない瞳を覗かせ、3年生の順子を見つめていた。
3年生の順子は、ランドセルに分解途中のおもちゃをぶら下げ、機械の仕掛けに夢中になって歩いている。
「……当時の私のIQ、計測不能なほど低い。……あんな簡易的なギア構造に感動している。……愚か」
そう言いながらも、ジョーヌはポケットから「未来の高度なナノマシン知恵の輪」を取り出し、ポイと3年生の順子の足元に転がした。
『ん……? 何これ……すごい、見たことない構造……!』
夢中で知恵の輪を拾い上げる3年生の順子。
「……フフ。……過去の私に、最高の『おもちゃ』をプレゼント。……これで彼女のハッキングスキルは3年早まる」
「タイムパラドックス起こすんじゃないわよ!!」
ノワールがツッコむ。
一方、工作員のノワールは、泥水をかけられて半泣きになっている2年生の小春を見つめていた。
「……泣かないで、昔のあたし」
ノワールは自分の手に握られた漆黒のナイフを見つめ、静かに呟いた。
「……大丈夫よ。あんたは将来、あんな泥投げ男(茂)なんて一瞬で制圧できる、最高にカッコいい暗殺者(工作員)になるんだから。……だから、堂々と胸を張りなさい」
「小春ちゃん、Bカップで成長止まるけどね~」とヴェールが余計な一言を挟み、「殺すわよ!?」とノワールが飛びかかった。
【05. 元の時代へ】
『――時空歪曲セクターの修復完了。アルゴ、帰還シークエンスに移行します』
ブリッジからの自動アナウンスが響く。
6人は光の粒子となり、ゆっくりと過去の地球から消え去っていく。
通り過ぎていく小学生の登校班。
黄色い帽子、赤いランドセル、賑やかな笑い声。
175cmのルージュは、涙を拭って最後にもう一度、泣き虫な1年生の自分(隆二)を見つめた。
「さようなら、昔の私たち。……私たちは、もう二度とあの頃には戻れないけれど」
ブランが、自分の胸に手を当て、力強く微笑む。
「――戻れなくたって、関係ないわよ!」
ブランは仲間たちを見回した。
175cmの凛々しい司令官。Kカップの心優しい衛生兵。漆黒のカッコいい工作員。無表情だが温かい狙撃手。ぶかぶかローブの天才ハッカー。
「アタシたちは今、最高に強くて、最高に賑やかな『新しい登校班』なんだから!」
光が収まり、6人は再び要塞宇宙船アルゴのブリッジへと戻ってきた。
失われた過去を愛おしく思いながら、彼女(彼)たちは自らが選んだ新しい名前を胸に、今日も広大な宇宙へと艦を押し進めるのだった。