ドラクエⅤ〜リュカの親友に転生した男の生存戦略〜 作:M1tarash1
01.アレンとリュカ
液晶画面の向こう側の世界。
子供の頃に何度もプレイし、大人になってからもリメイク版を繰り返し遊んだ
不朽の名作『ドラゴンクエストⅤ』
まさか自分が、その世界に放り込まれるなんて、誰が想像できるだろうか。
「おーい、アレン!早く早く!もうお父さん行っちゃうよ!」
目の前で小さな手をブンブンと振っている紫色のターバンを巻いた少年。
大きな瞳に無邪気な笑顔。彼がこの世界の主人公であり、後に過酷なんて言葉では足りないほどの壮絶な運命を背負わされる少年、リュカだった。
「待ってくれよリュカ、今行くから。……ったく、パパスの旦那はストイックすぎるぜ」
俺ーー前世は交通事故であっけなく死んでしまったんだが今はアレンという名前の少年は、苦笑しながら小さな足で駆け出した。
俺がここがドラクエVの世界だと確信したのはおよそ3年前。
自分が「サンタローズ」というのどかな村の住人であり、「パパス」と「リュカ」が引っ越してきた時だった。
最初こそ夢だと思っていたんだが…頬をつねれば痛いし、村の洞窟にはスライムやドラキーがうろついてる。
(そしてこのままじゃ……原作通り進んでしまえば、数年後にはパパスはゲマに惨殺され、サンタローズは焼き払われ、リュカは10年間も奴隷生活を送ることになる)
そんな人生を、前世のドラクエファンとしても、今親友になったアレンとしても、絶対に歩ませたくない。
幸いなことに俺にはこの先起こる出来事を知る『原作知識』がある。
「ははは、すまないなアレン。私の足並みが早すぎたか」
村の入り口で待っていたのは、熊のように大柄で見るからに頼りがいのある戦士。
リュカの父親、パパスだ。その背中に背負われた大きな剣が、朝日に輝いていた。
パパスは俺たちの手をわしゃわしゃと撫でた。
「アレン、今日もリュカの面倒を見てくれてるな。同い年だというのにお前は本当にしっかりしてるな。リュカにも見習って欲しいものだ。」
(そりゃまあ…中身はもうアラサーに片足突っ込んでますから…)
「お父さん!」
頬を膨らませて怒るリュカ。
「わっはっは!わかっているとも、リュカも日々成長している。さあ目指すはアルカパの町だ!」
パパスが豪快に笑い、歩き出す。リュカもその隣を嬉しそうに跳ねるように追う。
俺はその2人の背中を見つめながら、ぎゅっと拳を握りしめた。
(そうだ…今目の前で笑い合ってる景色も見れなくなってしまうんだよな……この2人がそんな凄惨な目に遭っていいはずがない)
腰に差した小さな短剣に触れる。
この3年間、俺はただ遊んでいたわけじゃない。パパスに頼み込んで剣の基本を教わり夜な夜なサンタローズの洞窟に潜っては死なない程度にレベルを上げていた。
レベルはすでに9。レヌール城攻略には充分なレベルだ。
(待ってろよゲマ、光の教団。リュカを世界一不幸な主人公になんてさせない。)
俺は改めて覚悟を決め、光あふれるフィールドへと一歩踏み出した。