冬木市に向かってある一つの電車が走っていた。中は多くの客で混雑し、変な熱気が充満していた。
その中、ある男性が女子高校生の尻を撫で回していた。
「はぁ…はぁ…」
男性の吐息が激しくになるにつれて、撫で回していた手はいつの間にか鷲掴みになっていた。
「あ、あの…やめて」
女生徒が勇気を振り絞って声を上げるが残念な事に、その声はか細いせいで男性どころか周りの人にさえ聞こえない。
ある王様曰く、現代に生きる人間は増えすぎたらしい。もちろん多くなった人間の中には男性の様に良からぬ諸行をする者がいる。
(誰か…助けて)
だが、それに反して悪業を正す正義の味方はいつの世にも現れる。
「おい貴様…ナニしている?」
「えっ!」
男性は背後から聞こえた声に驚いたのか声を上げる。後ろを振り向くと褐色の肌に赤い外套をした青年が立っていた。
いや立っているのでは無い。男性に後ろから密接していたのだ。
「だ、誰だね君は?」
声を潜め質問を投げかける。
だが青年は人差し指を口の前に置く。
「静かにしろ」
「は、はい」
男性は勢いに圧倒され始め、その手は女生徒から離れていた。
すると青年は男性の耳元で囁き始める。
「今…ナニをしていた?」
「……。」
問いに答えるつもりは無いと言わんばかりに男性は黙秘する。
「答えろ」
より一層声音を低くし、威圧するかのように男性に問いかける。
「尻を…触っていた」
「そうか。ならハンムラビ法典というのは知っているか?」
「目には目を、歯には歯をって奴か?」
「そうだ。だから…今からそれを実行する」
「えっ?」
すると、青年は男性の尻をスッと軽く撫で回し始めたのだ。その奇行に着いていけない男性は混乱に陥る。
「どうだ?今の心境ってヤツは?」
「…こ、怖いです」
「…聞こえん」
「怖いです!」
「そうか」
男性の答えに満足したのか、青年は撫で回していた手が離した。
「ふぅ〜。助かった」
「な訳無かろう」
「えっ?」
すると今度は尻を鷲掴みし始める。
そして…
「なぁ…スケベしようや」
「ぎゃあああああ‼︎」
男性は尻餅をつき叫び声を上げる。そう、男性の心は恐怖に支配されたのだ。
「貴様は負けたのだ…私との闇のゲームに…」
男性の叫びが響く電車の中、青年はその身をそっと消したのであった。
* * * *
「これが私が英霊になる前の武勲だ」
「「「ぎゃははははは!」」」
ある飲み屋の一席でアーチャーは一緒に居る三人に今までの話を聞かせ終えた所であった。
「アーチャー!貴方の話は面白いですね!」
「闇のゲームって遊戯王のパクリじゃねーか!」
「フェイカー!貴様ゲイだったのか⁉︎」
「いや私は綾瀬絵里、その一択だけだ」
その日は夜まで英霊達の笑い声が止まらなかった。
アーチャーはゲイではありません。