「よーい!ドーン‼︎」
そう叫んだ切嗣が一発の銃弾を空に向かって鳴らすと階段を駆け下り、料理王も負けじと並走する。
「待ちやがれ!」
料理王がおにぎりを投げつけるが切嗣は難なくそれらを避けるとアクロバティックに跳び上がり、二人は踊り場へ足を止めた。
「まさか英雄嫌いなアンタがサーヴァントになってるなんてな」
「うるさい。僕は目的があって召喚に応じただけさ」
対立する二人。以前の主従関係から敵同士になった今、二人の間に張り詰めた空気が漂う。
それを破り捨てんと言わんばかりに飛び出したのは料理王。
やはり手にしているのはおにぎり。それを直接切嗣に食わせる寸法だ。
遅れを取った切嗣は慌てるどころかニヤリと口を歪ましていた。
「固有時制御4倍速」
速度が増した動きで料理王の攻撃を避け鳩尾に拳を入れる。
「ぐはっ!」
「これは今まで犠牲になった服達の分だ」
続いて脇に拳を入れ肋骨を砕く。
「これはお前のせいで消耗し切った僕の心の分」
次は顎を足裏で蹴り飛ばした。
「これは士郎がお前のせいで服を着なくなった分。最後に…やはり消耗し切った僕の心の分だ‼︎」
顔面に頭突きをくらった料理王は階段から転げ落ちる。
「さ、最初に出会った頃から…消耗し切ってたじゃん」
「違う。お前の言葉を借りるとすれば」
かつてのサーヴァントに銃口を向け静かに睨む。
「『俺は悪くねぇ』ってね」
引き金を引き破裂音と共に料理王の腹に銃弾を浴びせた。
「グッ、」
「安心してくれ、起源弾は使っていない。僕は簡単に貴様を楽にはしない」
「切嗣…アンタの話を聞いて目を覚ましたよ」
「ふん。何を今更」
「やっぱり俺は悪くねぇ」
「貴様!」
立ち上がった料理王は小皿にダシを入れる。
「何だそれは⁉︎」
「味見だ」
ダシを口に入れた瞬間、料理王のコックコートは破け散り全身を露わになるが、すかさずエプロンを着用する。
(は、裸エプロンだと…‼︎)
「本番はこれからだ!無限の料理‼︎」
周囲の風景が侵食され居酒屋へと変わる。 切嗣はスーツを着用しバーカウンターに料理王と対面する形で座る。
「お待たせしました。手羽先の唐揚げです」
「.ふん。貴様の思惑通りにはいかんぞ」
そう言いつつ手羽先を手に取りかぶりつく切嗣。一口一口丁寧に食べるその姿に料理王は焦りを感じていた。
(なぜだ…なぜ食べていられる⁉︎一口食べればパァァァァンって)
「なるのに。って思っているのだろう?」
完食した切嗣は口を拭き、ニヤリと笑みを浮かべていた。
「タネ明かしをしてあげよう。貴様の料理は美味いと感じる事によってあらゆる呪い、魔術、服、魔法さえ払いのける」
「まさか俺の料理が駄作だったのか⁉︎」
「さぁな。僕には分からなかったよ」
「分からなかった…?」
切嗣の口から血が流れ落ちる。
「まさか切嗣、貴様⁉︎」
「そうさ。僕は手羽先を食べる前に…舌を噛み切ったのさ」
周囲の風景が崩れ落ち月の明かりが二人を照らす。
「これで終わりだ、料理王…」
手に持ったコンデンターから銃弾が放たれた。