神殺し、墓場より還りしもの   作:ちじさん

121 / 128
小さな手に、間合いは宿る

 

第百十九話 小さな手に、間合いは宿る

 

 呪文学の教室には、長い床ができていた。

 

 机は壁際へ寄せられ、中央には誰も座っていない。奥に厚い敷物があり、その手前で、木製の人形が短い棒を握っていた。

 

 鬼太郎が扉の前で足を止めると、キーノが脇から中を覗いた。

 

「昨日と、ずいぶん違うな」

 

「練習には、十分ですね」

 

 セドリックは既に来ていた。鞄を机へ置き、袖口を確かめている。

 

「こんにちは。二人とも、準備はいい?」

 

「ええ。よろしくお願いします」

 

「私も、本は読み直してきた」

 

 キーノが答えると、教卓の向こうからフリットウィックが顔を出した。

 

「結構。では、本と鞄は机へ。杖だけ持って、こちらへ来なさい」

 

 鬼太郎は帳面を置いた。

 

 先生は三人へ、使える呪文を尋ねた。

 

 鬼太郎はルーモス、ノックス、レパロ、ウィンガーディアム・レビオーサ、リクタスセンプラを挙げる。前世の魔法には触れなかった。

 

「ルーモスは、以前、かなり強く光らせたことがあります」

 

「それは今日、相手の目へ向けないように。狭い教室ですからね」

 

「分かりました」

 

 キーノとセドリックの返事も聞き終えると、先生は床に引かれた線を示した。

 

「手合わせでは、この内側を使います。私が止めたら、その場で杖を下げること。杖が飛んでも、拾おうとして急に屈まないように。まず相手を見て、練習を止めたことを確かめなさい」

 

 セドリックが頷いた。

 

「はい、先生」

 

「それでは、武装解除から。ディゴリー、少し手伝ってください」

 

 先生が教卓から離れた。

 

 鬼太郎は、その足元を見た。

 

     ◆

 

 フリットウィックの声は、普段と変わらなかった。

 

 羽根を浮かせた生徒へ拍手を送るときと、同じ声だ。

 

 だが、セドリックへ向き直った姿は違った。

 

 小さな身体が、床の上で静まる。

 

 杖を握る手にも、肩にも、余計な力が見えない。かといって、相手が動いたときに、そのまま押し倒せそうな緩みもなかった。

 

 鬼太郎は、先生の手から足へ、もう一度目を移した。

 

 杖を向ければ、その瞬間に何かが返ってくる。

 

 まだ何もされていないのに、そう思えた。

 

「いつもどおり構えてください。抵抗しようと、指を固く握り込む必要はありませんよ」

 

 セドリックが杖を持ち上げる。

 

「エクスペリアームス」

 

 赤い光が走った。

 

 セドリックの杖が手を離れ、宙へ跳ねた。

 

 鬼太郎がその軌道へ目を向けたときには、先生の杖先は既に下がっていた。落ちる杖を空いた手で受け取っても、目はセドリックから離れていない。

 

「このように、手にしている杖を奪います」

 

 先生が杖を返した。

 

 鬼太郎は笑みを浮かべた。

 

「もう一度、見せていただけますか」

 

「今度は、何を見たいですか?」

 

「唱える前の動きを。僕は、杖が飛んでから目で追ってしまいました」

 

 フリットウィックの目が細まった。

 

「では、ゆっくりやりましょう。手首だけを真似せず、杖先がどこを向くかも見てください」

 

 今度は説明が入った。

 

 鬼太郎も、杖を持つ。

 

 先生が隣へ来て、握りと手首の位置を直した。

 

 先ほど向かいに立った姿を、鬼太郎はまだ覚えていた。

 

 間近に来た先生は、いつもの小柄な教師だった。

 

 それでも、その手が自分の杖へ触れると、鬼太郎は自然に指の力を抜いた。

 

     ◆

 

 最初の光は、人形の肩を掠めた。

 

 握られた棒は動かなかった。

 

「終わりを急ぎましたね。狙ったところへ杖先を収めてから、力を送りなさい」

 

 鬼太郎は杖を下ろした。

 

 銃なら、引き金を引く前に狙いをつける。

 

 だが、この呪文では、杖を動かしている途中にも、しなければならないことがある。狙いだけを先に整えれば済むわけではなかった。

 

 説明された動きを、声を出さずに繰り返す。

 

 隣ではキーノも、先生に手首を直されていた。

 

「エクスペリアームス」

 

 次の光は、棒を握る手へ届いた。

 

 棒が小さく跳ね、指の間から抜け落ちる。

 

「ええ、今のは発動しました。もう一度、同じようにできるか確かめましょう」

 

 人形が棒を拾い直した。

 

 鬼太郎はすぐに唱えようとし、止まった。

 

 直前と同じつもりで構えても、手首が少し上がっていた。

 

 戻す。

 

 先生は口を挟まずに待っていた。

 

     ◆

 

 キーノの呪文で棒が飛んだのは、鬼太郎が何度か発動を繰り返した後だった。

 

 彼女は棒の落ちた床を見て、それから自分の杖を見た。

 

「できた」

 

「ええ。最後の音が、先ほどよりはっきりしましたね」

 

 フリットウィックが言った。

 

 キーノは口の中で、もう一度呪文をなぞった。

 

 鬼太郎は、次の人形へ向き直っていた。

 

 こちらは棒を持たず、敷物の前に立っている。

 

 全身金縛りの実演では、人形の腕が体側へ寄り、脚が揃った。そのまま後ろへ倒れ、厚い敷物が音を受け止める。

 

 鬼太郎は倒れた身体を見た。

 

「掛かった後も、意識はあるんですね」

 

「人を相手にした場合は、そうです。動けなくても、あなたの声は聞こえます。解除すると伝えてから、解いてあげなさい」

 

 先生は呪文を解き、人形を起こした。

 

 キーノが、敷物の厚みへ目を落とす。

 

「硬い床なら、頭も打つな」

 

「そのとおり。掛ける場所も、効果の一部だと思っておくことです」

 

 鬼太郎は頷いた。

 

 動きを止めた相手が、自分の方へ倒れてくることもある。

 

 足場によっては、目の前から消える。

 

 帳面に書いた注意が、実際の動きになっていた。

 

     ◆

 

「ペトリフィカス・トタルス」

 

 キーノの声が、教室へ通った。

 

 人形の腕が揃った。

 

 倒れる。

 

 彼女は一歩進みかけ、先生を見て止まった。

 

「次は、解くんだな」

 

「ええ。先ほど練習したとおりに」

 

 キーノは息を整え、解除の呪文を唱えた。

 

 人形の腕が床から離れる。

 

 起き上がるのを見届けてから、彼女の肩が下がった。

 

「鬼太郎」

 

「ええ。動きませんでしたね」

 

「これなら、近づいてくる前に止められる」

 

 キーノは人形へ目を戻した。

 

 トロールの前へ出たときには、身体を差し込むしかなかった。

 

 同じ相手に、この呪文が通じるかは分からない。

 

 それでも、誰かへ伸びる腕を止める手段が、自分にも一つできた。

 

「当てられれば、ですが」

 

 鬼太郎が言う。

 

「分かってる。だから練習するんだろ」

 

 キーノが返すと、セドリックが笑った。

 

「じゃあ、次は僕の番かな」

 

     ◆

 

 セドリックは、最初はゆっくり歩いた。

 

 鬼太郎が武装解除を唱える。

 

 赤い光は、杖を持つ手の横を通り過ぎた。

 

 移動先は読めていた。

 

 しかし、杖を振り終える頃には、狙っていた位置から相手が進んでいた。

 

「歩く速さを、落とそうか?」

 

「いえ。もう一度、お願いします」

 

 鬼太郎は構え直した。

 

「墓場。相手へ追いつこうとして、動きが大きくなっていますよ」

 

 先生の声が入った。

 

「先ほど、止まった対象へ使った動きを思い出しなさい。速く唱えれば、そのまま速く使えるとは限りません」

 

 鬼太郎は、上げかけた杖を戻した。

 

 慣れた手段なら、ここで撃てる。

 

 そう思う瞬間へ、新しい呪文を押し込もうとしていた。

 

 詠唱を崩せば、そもそも発動しない。

 

 セドリックの歩幅を見る。

 

 今度は、もう少し早く準備を始めた。

 

 光が走る。

 

 杖が手を離れた。

 

「今のは、よかったですね」

 

 先生が飛んだ杖を受け止めた。

 

 鬼太郎の目は、セドリックへ残っていた。

 

 相手は杖を失っても、まだ立っている。

 

 その足が次に動くところまで、見えた。

 

     ◆

 

 キーノが移動する相手への練習を終える頃には、窓の光が長く床へ伸びていた。

 

 彼女の武装解除は、まだ外れることが多かった。

 

 それでも、当たった一回の動きを先生に確かめ、杖を下ろしてからも、指で小さくなぞっている。

 

「今日は、ここまでにしましょう。疲れてから無理に繰り返すと、直した動きを崩してしまいます」

 

 フリットウィックは二人を休ませ、水を飲む時間を取った。

 

 鬼太郎が杯を置く。

 

 先生は、その顔へ目を向けた。

 

「短い手合わせも、するのでしたね」

 

「お願いできますか」

 

「ええ。ただし、今習った二つは、まだ使わないこと。今日は、発動を確かめた段階です。動きながら繰り返すには、もう少し練習が要ります」

 

 鬼太郎は頷いた。

 

 セドリックも、杖を取る。

 

「僕は、武装解除を使っても?」

 

「あなたは構いません。ほかは、先ほど確認した範囲で」

 

 先生が二人を床の中央へ呼んだ。

 

 キーノは、線の外側へ移った。

 

「また、楽しそうな顔になってるぞ」

 

「そんな顔ですか?」

 

「ああ。始める前から笑ってる」

 

 鬼太郎は小さく笑った。

 

 向かいで、セドリックも口元を緩めた。

 

「楽しみにしてくれてるなら、誘った甲斐があるね」

 

「ええ。とても」

 

 先生が二人の間から離れた。

 

     ◆

 

 一礼を終えた瞬間、セドリックの表情が変わった。

 

 笑みが消えたわけではない。

 

 だが、鬼太郎を見る目は、図書館で帳面を覗いていたときよりも、ずっと細かく動いていた。

 

「始め」

 

「エクスペリアームス!」

 

 鬼太郎は斜めへ踏み出した。

 

 赤い光が、先ほどまで杖のあった場所を抜ける。

 

 足を止めず、杖を向けた。

 

「リクタスセンプラ」

 

 セドリックが身体を引く。

 

 鬼太郎は、その足の置き方を見た。

 

 ただ後退したのではない。

 

 次に杖を振れるだけの位置を、残している。

 

 二つ目の赤い光が来た。

 

 鬼太郎はまた避けた。

 

 今度は、床の線が近い。

 

 セドリックは追いかけてこなかった。

 

 中央へ半歩寄り、鬼太郎が戻る場所へ杖先を向ける。

 

 鬼太郎の笑みが深まった。

 

 避けた先まで、使われている。

 

「リクタスセンプラ」

 

 鬼太郎は踏み出すと同時に唱えた。

 

 セドリックが横へ動く。

 

 鬼太郎も、その動きへ身体を合わせた。

 

 距離が縮まる。

 

 近づけば、相手の杖が向きを変えるまでに、自分の呪文を届けられる。

 

 そう考えて出した杖へ、セドリックの目が落ちた。

 

 鬼太郎は手を引いた。

 

 まだ光は来ていない。

 

 だが、そのまま出しておけば、奪われる。

 

 引いた分だけ、次の詠唱が遅れた。

 

「エクスペリアームス!」

 

 今度の光は、低かった。

 

 鬼太郎は身体を捻った。

 

 大きな杖の先端が、赤い光のそばを通る。

 

 足を置き直す前に、セドリックはもう次の構えへ移っていた。

 

     ◆

 

 フリットウィックは、二人の足を見ていた。

 

 ディゴリーは、最初の武装解除を避けられた後、同じ場所へ撃ち続けなかった。

 

 相手がどちらへ動きやすいかを見て、立つ位置を変えた。

 

 墓場は、その誘導へすぐに気づいた。

 

 後退を続けず、呪文を返しながら間合いを詰めている。

 

 足と目の働きに、杖が追いついていない。

 

 それでも、間に合わないと分かれば、その動きを途中で捨てられる。

 

 先生は、腰の杖へ指を添えた。

 

 教室の床に、昔の練習場が重なった。

 

 順番を待つ生徒。

 

 負けた直後、相手へ何を見ていたのか尋ねる声。

 

 次の週には、その失敗を直して戻ってくる者たち。

 

 決闘クラブが残っていれば。

 

 この二人には、ぜひ参加してもらいたかった。

 

 腕前だけの話ではない。

 

 相手がいるからこそ、変えられる動きがある。

 

 その面白さを、既に二人とも知っている。

 

 鬼太郎が、線の内側へ戻った。

 

 先生は思い出から目を離し、杖を持つ手を見た。

 

     ◆

 

 鬼太郎は、セドリックの肩が動く前に踏み出した。

 

 先ほどから、武装解除の前に同じ動きがある。

 

 そちらを見ていれば、唱え終わるまで待つ必要はなかった。

 

「リクタスセンプラ」

 

 光がセドリックの腕へ触れた。

 

 息が短く漏れる。

 

 肩が揺れた。

 

 鬼太郎は、続けて杖を向けた。

 

 しかし、セドリックの足は止まらなかった。

 

 笑いを噛み殺すように口を結び、身体を横へずらす。

 

 その手が持ち上がった。

 

「エクスペリアームス!」

 

 赤い光が、鬼太郎の杖を捉えた。

 

 指が開く。

 

 鬼太郎は飛んだ杖へ手を伸ばしかけ、それを戻した。

 

 セドリックから目を離さず、もう一歩、横へ動く。

 

「そこまで」

 

 先生の声がした。

 

 セドリックが杖を下げた。

 

 鬼太郎も足を止めた。

 

 大きな黒い杖は、床へ落ちる前に、フリットウィックの呪文で止まっていた。

 

 教室に、二人の呼吸だけが残る。

 

 セドリックが口元へ手を当てた。

 

「……今の、ちゃんと当たったね」

 

 声に、まだ笑いが混じっている。

 

「ええ。ただ、止まりませんでした」

 

 鬼太郎は答えた。

 

 残念そうな声ではなかった。

 

 先生が呪文の効果を解き、鬼太郎へ杖を返す。

 

「当てた後、すぐ次へ移れたのは結構です。ただ、相手がどれほど動けるかを見ずに、同じ速さで続けてしまいましたね」

 

「はい。もう少し、崩れるかと思いました」

 

「ディゴリーも、慌てずに動けました。苦しくても、先に杖を向けたところはよかったですよ」

 

 セドリックが頷いた。

 

「当たるまで、あんなに近くへ来ていたと気づきませんでした」

 

 鬼太郎は自分の杖を握り直した。

 

 取られた瞬間にも、できることはあった。

 

 だが、今日は杖と、決めた呪文での練習だ。

 

 そこで武装解除を許した。

 

 その事実は、消えなかった。

 

「もう一度、と言いたいところですが」

 

 鬼太郎が先生を見る。

 

 先生は笑った。

 

「今日は終わりです。今の手合わせで、腕にも力が入ったでしょう。まず、直すことを書き留めなさい」

 

     ◆

 

 キーノが帳面を持ってきた。

 

 鬼太郎が受け取ると、彼女はセドリックへ顔を向けた。

 

「当たっても、杖は使えるんだな」

 

「笑わされながら唱えるのは、簡単じゃないけどね」

 

 セドリックは喉へ触れた。

 

「もう少し強かったら、あの返し方はできなかったと思う」

 

 鬼太郎は、その言葉を記した。

 

 強さを変えれば、発動までに要る時間も変わる。

 

 相手が止まるほどの効果を狙うのか。

 

 少し崩した間に、別の呪文を使うのか。

 

 覚えている呪文にも、まだ試すことが残っていた。

 

「先生」

 

 セドリックが言った。

 

「また、こういう練習をお願いできますか」

 

 フリットウィックは、二人の顔を見た。

 

「ええ。授業や宿題に支障が出ないよう、日を決めましょう」

 

 キーノも、一歩寄った。

 

「次は、私も動く相手へもっと当てたい」

 

「あなたは今日、できたときの動きを、よく確かめていました。その続きをやりましょう」

 

 先生は教卓へ戻り、三人へ帳面を開くよう促した。

 

「以前は、こうした練習をする決闘クラブがあったのですよ」

 

 鬼太郎が顔を上げた。

 

「今は、ないんですか」

 

「ええ。廃部になって、今は活動していません」

 

 先生の指が、教卓の縁へ置かれる。

 

「今日の二人を見ていると、あの場所で練習させてあげたくなりますね。互いの動きを見て、変えようとする。決闘で伸びるには、大切なことです」

 

 セドリックは鬼太郎を見て、少し照れたように笑った。

 

 鬼太郎は、先生へ目を向けたままだった。

 

 さっき、相手の前へ立った小さな身体。

 

 飛んだ杖を受け取りながら、次の動きへ備えていた手。

 

 あの先生が指導する場所へ、何人もの相手が集まる。

 

 考えただけで、試したいことが増えた。

 

「それは、楽しそうですね」

 

「でしょう? けれど、まずは今日の練習です。墓場、最初の武装解除で、何を直したのでしたか」

 

 鬼太郎は帳面へ目を戻した。

 

 先生は答えを待っていた。

 

     ◆

 

 教室を出る頃には、廊下に灯りがともっていた。

 

 セドリックは階段の手前で足を止めた。

 

「次は、近づかせないようにしないとね」

 

「では、僕は近づく方法を考えておきます」

 

「それを先に言うんだ」

 

 セドリックが笑う。

 

「またね。キーノも」

 

「ああ。またな」

 

 別の廊下へ向かう背中を見送り、鬼太郎はキーノと歩き始めた。

 

「負けたな」

 

「ええ。杖を取られました」

 

「嬉しそうだぞ」

 

「面白かったですから」

 

 鬼太郎は鞄の中の帳面へ触れた。

 

「ディゴリーさんは、僕が避けた後の場所まで使っていました。それに、先生も」

 

「先生?」

 

「普段の授業では、あんなふうに立たれませんね」

 

 キーノが、少し考えた。

 

「杖を取るときは、速かった」

 

「ええ。ただ、速いだけではありませんでした。向かいに立ったら、何をしても見られている気がしそうです」

 

「お前、相手をしてもらいたくなったんだろ」

 

 鬼太郎は答える前に笑った。

 

 キーノが息を吐く。

 

「分かりやすい」

 

「でも、まずは教わったことからです」

 

 杖を振る角度。

 

 唱え始める時機。

 

 効いた後も動く相手。

 

 どれも、次に直したいことだった。

 

 キーノは自分の杖を、鞄へ収め直した。

 

「私も、次までに発音を練習する」

 

「一緒に確かめましょうか」

 

「夕食の後でな」

 

 大広間へ続く階段から、食器の触れ合う音が聞こえた。

 

 鬼太郎は頷いた。

 

 今日は、杖を奪われた。

 

 その瞬間を、今度は自分の手で変えてみたかった。

 

 隣では、キーノが新しい呪文の最初の音を、小さく口の中で繰り返していた

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。