何か変なところなどあったら教えてください。
一応、メガテンファイナルはプレイ済みですが、他の女神転生はやってないので、一応資料程度に調べてますが意見あるとありがたいです。
ハリポタは、大昔に原作読んで、うろ覚えなので、最近映画見て保管してます。
第176話 帰る朝にも、杖を交わす
呪文学の教室へ入ると、セドリックは既に来ていた。
窓から朝の光が差している。壁際へ寄せた机の前には、キーノのほかにも上級生が何人か立っていた。昨夜、寮の卓から拍手を送ってくれた顔がある。
「おはようございます。早いですね」
鬼太郎が声を掛けると、セドリックが振り返った。
「今日の最後の試合を、寝坊で逃したくないからね」
笑って答えたが、その目は鬼太郎から離れなかった。
鞄を下ろし、黒い杖を取る。いつもと変わらない支度のはずなのに、セドリックは自分の杖を握り直した。
「……何か、変わったね」
「そう見えますか?」
「まだ、うまく言えないけど」
鬼太郎が中央の床へ目をやる。その視線が戻ってきたとき、セドリックは、以前と同じ調子で始めてはいけないと思った。
強い呪文を覚えたと聞いたわけではない。立ち姿を見ているだけで、先に杖を向けた方が有利とも思えなかった。
「始まれば、分かるかな」
「ええ。僕も、確かめたいです」
壁際で、五年生が腕を組み直した。
「今学期の最後だって聞いたからな。見てから帰ろうと思って」
「今日は、僕が相手をしていただきますよ」
セドリックが返すと、彼は笑った。
「分かってる。帰る前に、また相手を増やすなよ」
鬼太郎が答える前に、キーノが鞄を壁際へ寄せた。
「今日は、この一試合だけだ。荷物も残っているんだからな」
「承知しています」
フリットウィックが、二人を中央へ呼んだ。
「杖の呪文だけ。合図と停止の指示を守ること。今日は帰る日ですから、二人とも無事に教室を出てもらいますよ」
鬼太郎とセドリックは返事をし、礼を交わした。
決められた位置へ離れる。
セドリックは、鬼太郎の杖と足元を見た。最初から距離を詰めてくるかもしれない。呪文を防いだ後も、止まってはいけなかった。
「始め」
「ロコモーター・モルティス!」
セドリックが先に放った。
鬼太郎の脚を狙った光が走る。彼は斜めへ踏み出しながら、もう黒い杖を上げていた。
「エクスペリアームス」
「プロテゴ!」
防護に赤い光が当たる。
セドリックは盾の後ろから横へ動いた。反撃へ移ろうとしたところで、鬼太郎の杖が次の狙いへ戻っていることに気づく。
「ペトリフィカス・トタルス」
セドリックは足を運び、その光を避けた。
早い。
呪文の光だけを追っていたら、次に何をされるか見るのが遅れる。避けたばかりの鬼太郎は姿勢を立て直すために止まらず、そのまま次の位置へ入っていた。
セドリックは、向かって左へ身体を寄せた。鬼太郎の移動に合わせて杖先を送り、空いている方の床へ進ませないよう狙う。
「リクタスセンプラ!」
鬼太郎は進めかけた足を引いた。
正面へ杖を戻すより、先に離れる。光が胸のあった場所を抜けた。攻撃を続ければ、その位置に残っていた。
壁際で、四年生が僅かに前へ身を寄せた。
セドリックは距離を取り直した。鬼太郎が動く速さに合わせて、後から杖を追わせ続けるつもりはなかった。
次は、右へ離れる先を狙った。
鬼太郎の足が止まりかける。その瞬間に、セドリックは反対側へ杖を戻した。
鬼太郎が腰を落とす。上着の向こうを呪文が抜け、彼の杖先はまだ床へ近い。
セドリックは前へ出た。
「エクスペリアームス!」
鬼太郎は横へ転がらず、低い姿勢から脚を伸ばして離れた。赤い光が背後を通る。立ち上がりながら返した金縛りを、セドリックは防護で受けた。
二人の間へ、散った光が消えていった。
鬼太郎は笑っていた。
クィレルの身体をあの人が動かし始めたときには、動こうとした先へ、もう呪文が来ていた。反撃を考えて杖を上げる前に、そこを離れなければならなかった。
同じだけの速さが、今の自分に備わったわけではない。
だが、避けてから杖を戻し、改めて狙い、ようやく唱える。その間に失っていた時間は、前よりよく分かった。
セドリックは、そこを詰めてくる。
鬼太郎は足を止めず、相手の胸へ杖を向けた。
セドリックの手首が動く。防護を張る準備だ。しかし、鬼太郎の口が開かないことを見ると、すぐ杖先をこちらへ返した。
撃つ振りだけで守りを誘っている。
その手は、もう知っていた。
「エクスペリアームス!」
五年生が、組んでいた腕をほどいた。
前の試合では、その瞬間に鬼太郎の杖が飛んだ。
今度は、黒い杖を持つ手が横へ動いていた。
鬼太郎は、呪文を放たずにいた間も歩幅を緩めきっていなかった。セドリックが唱えるのに合わせて、踏み出す方向を変える。
赤い光が、右腕の外を抜けた。
「リクタスセンプラ」
セドリックの反撃が通り過ぎたときには、鬼太郎の声が続いていた。
狙いは胸。セドリックは盾を張るために杖を戻すより、身体を捻って外へ離れる方を選んだ。
くすぐりの呪文が逸れる。
避けた先で、彼は鬼太郎へ向き直ろうとした。
「エクスペリアームス」
次の声が、早すぎた。
セドリックは防護を唱えようとした。だが、杖先が正面へ戻る前に、赤い光が手元へ届いた。
指が開き、杖が跳ねた。
「そこまで!」
フリットウィックの声に、鬼太郎は杖を下げた。前へ乗せた体重を戻し、足を揃えずに息を整える。
セドリックは空いた手を見てから、鬼太郎へ顔を向けた。
「……分かってたんだけどな」
「防護を誘おうとしたところですか?」
「それも。その後、僕が避けたら、また来るだろうって」
彼は息を吐き、少し笑った。
「最後が、間に合わなかった」
壁際から拍手が起きた。キーノも、二人の杖先が下がったことを確かめて手を叩く。
フリットウィックが、落ちた杖を拾ってセドリックへ渡した。
「今学期の最後の勝者は、墓場ですね」
鬼太郎は礼をし、セドリックも応じた。
「攻める手を止めても、足まで止めなかった。前の試合で指摘したところを、よく直しました」
先生は、最後に鬼太郎が立っていた位置を示した。
「ただし、最後の武装解除を防がれていたら、どうしましたか?」
鬼太郎は床へ目をやった。
セドリックへ早く届かせるため、最後は少し内側へ踏み込んでいる。防がれれば、最初より近い距離で相手の杖が戻ってきた。
「離れる方を、もう少し残しておくべきでした」
「ええ。速く動けることと、次の攻撃を受けない位置にいることは、両方考えなさい」
「はい」
セドリックにも、先生が向き直る。
「途中で進路を狭めたのは、よい判断でした。最後も相手の狙いには気づいていましたね。その上で、避けた後に杖をどこへ戻すか、考えてみてください」
セドリックは頷き、杖を持ち直した。
五年生が近づいてきた。
「あのときは、そこで止まったんだがな」
「おかげで、よく覚えています」
鬼太郎が答えると、彼は吹き出した。
「なら、次は違う手を考えないとな」
「来学期も、お願いできますか?」
「先生の許可を取ってからだぞ」
隣で聞いていた四年生も、鬼太郎へ目を向けた。
「俺も、盾を張るだけじゃ終わらせないからな」
「楽しみにしています」
セドリックが、その間へ顔を出した。
「僕の再戦も忘れないでよ。今学期の最後は譲ったけど、来学期の最初まで渡すつもりはないから」
「ええ。ぜひ」
鬼太郎は、差し出された手を握った。
初めて声を掛けられたときより、その手に力があった。握り返すと、セドリックが笑う。
キーノは鞄を持ち上げ、二人の傍へ来た。
「約束はできたな。今日は、もう帰る支度だ」
鬼太郎は頷き、フリットウィックへ向き直った。
「今学期は、ありがとうございました」
「休暇の間も、教わったことは忘れないように。次に会うときも、今朝のように元気な顔を見せてください」
鬼太郎はもう一度礼をした。
◆
朝食を済ませると、寮は荷物を運ぶ音でいっぱいになった。
ハリーはトランクを閉じ、ヘドウィグの籠を持った。鬼太郎とキーノは、自分たちの荷物を帰還前に受け取れるよう整えてから、皆と駅へ向かった。
汽車は、既にホームで蒸気を上げていた。
窓へ顔を出す生徒と、まだ乗っていない友人を呼ぶ生徒がいる。昨日の宴と今朝の試合が、ここでは同じ出発前の話題になっていた。
「セドリックに勝ったんだって?」
ロンが、トランクを持ち上げる前に尋ねた。
「はい。今学期の最後は、僕がいただけました」
「途中までは、どちらが勝つか分からなかったぞ」
キーノが付け加えた。
「最後は、お前の方が早かった」
鬼太郎は彼女を見て、笑った。
ハリーも、試合を見たかったと思った。だが、昨夜はポンフリーに言われたとおり、眠れるだけ眠っていた。それを破って朝早くから教室へ行ったら、宴へ出したことまで後悔されそうだった。
「次は、見せてよ」
「来学期、また相手をしていただく約束をしましたので」
鬼太郎が答える。
少し離れた乗車口では、セドリックが荷物を渡していた。顔を上げ、こちらに気づくと片手を上げる。鬼太郎も手を上げて応じた。
ハーマイオニーが、ロンの荷物が通路を塞がないよう奥へ寄せた。
「二人とも、休暇は森で過ごすの?」
「ええ。しばらくは、砦で」
「課題も忘れないでね」
「持って帰りますよ」
キーノが横から鬼太郎の顔を見た。
「お前の場合は、課題を忘れるより、ほかの本を増やしすぎる方だろう」
「読む時間は、ありますから」
「私との練習も、忘れるなよ」
「もちろんです」
ハリーは二人を見て、少し笑った。
「手紙、送るよ」
「ええ。お返事します」
鬼太郎が言い、キーノもハリーへ顔を向けた。
「身体は、もう大丈夫なんだろうな?」
「うん。先生にも、ちゃんと診てもらった」
「なら、また九月に」
ハリーは頷いた。
汽笛が鳴り、ホームに残っていた生徒たちが乗車口へ急いだ。ロンが窓を開け、ハーマイオニーがその隣から顔を出す。ネビルも、二人の間から手を上げた。
「またね!」
「皆さん、お気をつけて」
鬼太郎が言い終えたところで、車輪が動き始めた。
ハリーは窓の縁へ手を掛け、ホームに立つ二人を見た。キーノが手を振っている。鬼太郎もその隣で、こちらを見送っていた。
汽車が速くなり、二人の姿が遠ざかる。
学校へ来た日には、同じ汽車に乗っていた。帰る場所は違っても、次に会う日を約束できた。
ハリーは二人が見えなくなるまで、手を振った。
◆
車輪の音が、遠くへ消えていった。
キーノは手を下ろした。線路の先に残る煙を見てから、鬼太郎へ顔を向ける。
「私たちも、帰るか」
「ええ」
二人は駅を後にした。
学校へ戻って荷物を受け取り、帰還の連絡を済ませる。校長との本の調査は、休暇中に改めて予定を相談することになっていた。今日は、そのために校長室へ残る日ではなかった。
学校外の指定された場所へ着くと、鬼太郎は鞄から金属製の輪を出した。
砦とこの場所を繋ぐ、自分のポートキーだった。
荷物を確かめ、片手で輪を支える。キーノも手を伸ばし、同じ金属へ指を掛けた。
「忘れ物はないな?」
「はい」
「では、帰ろう」
輪が働くと、身体が引かれた。
足元の地面が消え、握った輪と荷物の重さだけが手に残る。次に靴底が触れたのは、砦の定められた発着場所だった。
鬼太郎は踏みとどまり、キーノも隣で足をついた。二人とも無事に着いたことを確かめてから、輪を鞄へ収める。
森の匂いがした。
城の石の廊下とは違う、土と葉の湿った匂いだった。砦の壁の向こうで枝が鳴り、頭上を小さな鳥が横切っていく。
キーノが荷物を持ち直した。
「今朝も戦ったんだ。今日は、グロブニクを誘いに行くなよ」
「ご挨拶くらいは、と思いましたが」
「荷物を置いて、落ち着いてからだ」
鬼太郎は笑い、砦の方を見た。
学校で覚えた呪文も、今朝セドリックと交わした手も、持って帰ってきた。鞄の中の帳面には、まだ分からない図と文字が残っている。
どれから手をつけるか、考える時間はあった。
「では、まず帰りましょうか」
キーノが頷いた。
二人で荷物を持ち、馴染みの扉へ歩いた。
第九章「守るものと、選ぶ道」 完
賢者の石編 完