第八十五話 白い境の、その先へ
鬼太郎が北の谷へ向かうと告げたのは、密猟者たちを排除してから数日後だった。
食堂の窓は開いている。
キーノは教科書へ挟んでいた指を抜かず、その向かいへ座る鬼太郎を見た。
「今度は、勝てるのか?」
「確かめに行きます」
「それで、前は血まみれになったんだぞ」
鬼太郎は頷いた。
机には、谷での初戦と、先日の仕事で使った動作を書いた紙がある。
「前より動けます。魔法を続けて使っても、戻るための力を残せる時間が延びました」
「怪我をしなかったから、あの犬にも通じると思ってないだろうな」
「相手が違いますからね。あの方は、見えなくても爪を振れるでしょう」
鬼太郎は初戦の記録へ指を置いた。
「それに、今回は、身体が勝手に動くのを待ちません」
キーノは紙を見た。
前の鬼太郎は、二度避けられた動きを三度目も待った。その結果、岩へ叩きつけられている。
彼女が見たいのは、増えた魔法の数ではなかった。
「また、確かめたいことが残ったとか言って、逃げるのを遅らせるなよ」
「必要なところで終えます。前のように、傷を受けてから決めるつもりはありません」
鬼太郎の声は柔らかかった。
その顔が楽しそうなのも、隠していない。
キーノは眉間を寄せたまま、教科書を閉じた。
「境までは行く。お前が戻るか、自分の目で見る」
「ええ。谷へは入らないでくださいね」
「分かってる」
入口の方で、サーシェスが笑った。
「俺も行くぜ。前と同じ場所からなら、見物する分には困らねえ」
「あんたも、煽るなよ」
「俺が黙ってても、そいつは行く顔だろ」
サーシェスは鬼太郎を見た。
「今度は、戻ってから治す力まで残せよ、坊主」
「そうします」
鬼太郎は記録を揃えた。
前夜までに十分眠り、食事も取っていた。先日の戦闘で重くなった腕にも、朝の短い動作確認では違和感がない。
今日は、使える力を戻してから出る。
◆
白い石は、前と同じ場所に並んでいた。
枝から吊られた折れた杖の下を、風が抜ける。
キーノは石の手前で立ち止まった。サーシェスも曲がった猟銃の近くへ荷を下ろす。
鬼太郎は二人の位置を確かめ、谷の奥へ向き直った。
黒檀の杖を右手へ持つ。
左手は空けたまま、白い石を越えた。
「グロブニクさん」
呼びかけると、岩の向こうで爪が鳴った。
黒い巨体が、木陰から現れる。
塞がった左目と、暗い赤色の右目。欠けた耳がこちらへ向き、鼻先が僅かに動く。
初戦で傷つけた口元は、もう煙を上げていなかった。
「戻ったか」
「ええ。今度は、お話を聞いていただきたいので」
グロブニクの右目が、長い杖へ移る。
それから、鬼太郎の左手と、上着の内側を見た。
鉄と火を忘れてはいない。
「傷を塞いだだけか」
「それだけで来たなら、また同じ傷をいただくでしょうね」
鬼太郎は笑った。
足元には、前回爪で砕かれた木の破片が残っている。少し左には太い枯れ枝が二つに折れて転がり、折れ口が上を向いていた。
彼はそれを一度見て、グロブニクへ視線を戻した。
「あなたを退かせて、どちらも立っている。その条件で、よろしいですか?」
「できるならな」
牙が覗く。
「次も境で止まると思うな」
「承知しています」
鬼太郎は杖を身体へ寄せ、足を半歩ずらした。
グロブニクの後ろ脚が沈む。
肩が前へ傾くより先に、鬼太郎は横へ動き始めた。
◆
黒い前脚が、上着の裾を裂いた。
鬼太郎はもう一歩踏み、低い岩の横へ身体を滑らせる。
爪が土へ食い込んだ。
グロブニクは着地した足を軸に向きを変えたが、その正面には岩がある。鬼太郎へ届くには、岩を回るか越える必要があった。
鬼太郎は左の掌を向ける。
「ブフ」
グロブニクが踏み込もうとした湿った土へ、薄い氷が広がる。
黒い前脚がその手前へ下りた。
相手は凍った場所を避け、岩へ脚を掛ける。
鬼太郎は氷の上を滑らせるつもりで続けようとしたジオを止めた。
グロブニクが高くなる。
岩を蹴って跳ぶ。
鬼太郎は自分へ向かう胸ではなく、落ちてくる脚の間を見た。岩から離れ、斜めに走る。
背後で、牙が噛み合った。
振り向くと、赤い目がすぐそこにある。
鬼太郎は左手を向けた。
「アギ」
短い炎が鼻先へ迫る。
グロブニクは首を横へ振り、炎を頬の毛で受けながら前脚を伸ばした。
鬼太郎は火を消して身を沈める。爪が肩の上を通り、風で髪が持ち上がった。
その下から横へ抜ける。
グロブニクの頬に、焦げた毛が残った。
「前より、近くまで見えますね」
鬼太郎の声が弾む。
頬へ届いた熱と、頭上を通った爪の速さ。
笑みが自然に深くなった。
ただ、今の位置へもう一度潜れば、次は前脚で押し潰される。
彼は近づかず、木の側面へ回った。
グロブニクがその木へ前脚を叩きつける。
樹皮が裂け、幹が震えた。
鬼太郎は止まらず、反対側へ抜ける。
相手の力は落ちていない。
避けるたびに、次に足を置く場所まで必要だった。
◆
キーノは白い石の外から、木々の隙間を追っていた。
黒い背が見え、すぐに隠れる。
少し離れたところから炎が上がった。鬼太郎が木の横へ出て、その後をグロブニクが追う。
前回は、ぶつかったと思ったときには、鬼太郎が岩へ飛ばされていた。
今は、黒い身体が迫る前に、鬼太郎の足が動いている。
それでも、見える差は僅かだった。
「笑ってる」
キーノが言うと、サーシェスが喉で笑った。
「あれが、こいつの楽しい時間だ」
「そんなことは知ってる。だから、心配なんだ」
サーシェスは谷の中を見たまま答えた。
「今の火、続けなかっただろ。犬が首を戻したら、次が来ると分かってる」
鬼太郎が木陰へ消えた。
黒い前脚が、その手前の地面を削る。
「笑ってても、見ちゃいる」
キーノは返事をせず、握った手を少し緩めた。
境を越えない。
その約束が、今はひどく遠い場所に思えた。
◆
鬼太郎は左の木へ進むふりをして、岩の右へ身体を返した。
グロブニクは木へ飛び込まず、足を踏み替えて追ってくる。
同じ回り方が、もう通じなくなっていた。
鬼太郎は止まらず、掌を相手の前脚へ向けた。
「ジオ」
雷が脚の付け根へ当たった。
黒い毛の間を光が走り、前脚が一瞬強張る。着地が乱れ、爪が土へ深く潜った。
グロブニクは低く吠え、後ろ脚で身体を押し出した。
鬼太郎はその前へ立たず、横へ走る。
今は、銃を抜いて右目を狙う時間を取らない。
初戦では、その時間に咆哮を受け、照準を崩された。
次の木へ入ると、鬼太郎は一度息を吐いた。
腿の裏が張っている。
少し前までは、移る先を見つければ足が出た。今は、膝を引き上げる動作へ意識を向ける必要があった。
身体の内側には、まだ力がある。
だが、魔法が残っていることと、脚が同じ速さで動くことは別だった。
鬼太郎は大きく回るのをやめ、近い岩を選んだ。
グロブニクが追いつく。
「逃げるだけか」
「ずっと追ってくださいますからね」
息を継ぎ、鬼太郎は笑った。
「そちらも、少し忙しそうです」
グロブニクの口が開いていた。
牙の間を、太い息が通る。
巨体はまだ速い。だが、着地した直後に次の踏み込みが来る間隔は、始めより長くなっている。
鬼太郎が真っ直ぐ逃げないため、追いつくたびに向きを変える必要があった。
止めた身体を、また押し出す。
その間に火や雷を受ける。
黒い毛の焦げた箇所は、頬だけではなくなっていた。
グロブニクは唇を上げた。
今度は跳ばず、低い姿勢で近づいてくる。
鬼太郎の左右を、赤い目が確かめた。
走り回って追うのではなく、逃げる場所を狭める。
鬼太郎は左へ寄ろうとして、足を止めた。
そちらには、最初に凍らせた土がある。氷は一部が融け、踏み荒らされて滑りやすくなっていた。
グロブニクも、そこを見ている。
鬼太郎は右へ動いた。
黒い前脚が伸びる。
避けたつもりの爪先が、左の上腕を掠めた。
袖が裂け、皮膚に熱い痛みが走る。
鬼太郎は腕を身体へ寄せ、後ろへ跳んだ。
着地した膝が沈む。
転ばずに、岩の外側へ回る。
グロブニクが、その後を曲がった。
鬼太郎は傷を一度見た。
血が袖へ染みている。指は動く。腕を上げても、力が抜けるほどではない。
浅い。
同じところへ、もう一度受けるつもりはなかった。
「今のは、危なかったですね」
彼は笑みを残したまま、岩の向こうへ杖を向ける。
傷を治すための時間は、ここでは作れない。
代わりに、次の攻撃を受けない場所を選んだ。
◆
折れた枯れ枝は、低い二本の根の間にあった。
太い方の破片が根へ引っかかり、短い方はそこから僅かに離れている。どちらの折れ口も見えた。
鬼太郎は、谷へ入ったときに確かめた位置へ戻っていた。
グロブニクの右目が、彼の足を追う。
後ろ脚が沈む。
鬼太郎は左手を上げかけて下ろし、右の杖を枯れ枝へ向けた。
相手の前脚が、二つの破片の間へ入る。
「レパロ」
根へ引っかかった太い破片を中心に、短い方が戻った。
折れ口が閉じる途中で、黒い前脚へ噛み込む。
木が軋んだ。
グロブニクの身体は前へ進もうとしている。止まった片脚へ重さがかかり、肩が傾いた。
鬼太郎は攻撃のために身を乗り出さず、相手の右側へ走った。
次の瞬間、グロブニクが反対の前脚を叩きつける。
枯れ枝は砕けた。
拘束から抜けた脚が土を掴み、黒い首が鬼太郎へ向く。
しかし、彼はもう、直前まで立っていた場所にいなかった。
牙が横から迫る。
鬼太郎は左手を懐へ入れ、〈ケストレル〉を抜いた。
二発撃つ。
一発は頬の毛を散らし、もう一発は、地面を掴んだ前脚へ当たった。浅く皮膚を裂き、血が滲む。
グロブニクの脚は止まらない。
鬼太郎はそれ以上撃たず、爪の届く線から身体を外した。
銃を戻す。
その左手を開いたときには、相手がこちらへ向き直っていた。
鬼太郎は口の中ではなく、近づく肩へ炎を当てた。
毛の表面が燃える。
グロブニクは身体を捻り、低い枝へ肩を擦りつけながら火を振り払った。鬼太郎も炎を消し、焼けた場所を狙って続けようとした雷を止める。
赤い目が、まだ彼を追っていた。
止まったように見えても、前脚は動ける位置にある。
鬼太郎は近づかなかった。
グロブニクが爪を振るう。
届いたのは、二人の間へ垂れた枝だった。
鬼太郎はそこで初めて、短く息をついた。
口元の笑みが消えない。
直った木は砕かれた。それでも、欲しかった時間は作れた。
「そちらも、よく見ていらっしゃいますね」
グロブニクは、荒い鼻息で答えた。
木を砕いた前脚の爪が、土を引っかく。
肩の毛は焦げ、弾丸が裂いた脚から細く血が落ちていた。
鬼太郎の左腕からも、同じように血が伝う。
杖を持つ右手には、汗が溜まっていた。
彼は握りを直した。
◆
それからの攻防は、始めのようには続かなかった。
グロブニクは一気に距離を詰めようとして、途中で踏み込みを変える。鬼太郎が逃げる方向を読んで、横から牙を差し込んだ。
鬼太郎は大きく走らず、岩の端へ身を寄せた。
牙が届く前に、肩の向きを変える。
上着が引かれた。
布を噛まれたまま引き戻されれば、次は首へ来る。
鬼太郎は左手から小さなアギを牙の前へ出した。グロブニクが顔を捻る。焼けた布が裂け、鬼太郎は岩の脇へ抜けた。
そのまま走り続けず、二歩で止まる。
腿が重い。
荒く息を吸っても、胸の奥まで空気が入りきらない。
グロブニクも、すぐには跳ばなかった。
口を開けたまま、鬼太郎へ向き直る。
息に混じって、低い唸り声が漏れた。
鬼太郎は楽しそうに目を細めた。
この距離なら、まだ火を届けられる。
相手も、もう一度地面を蹴れば牙を届けられる。
どちらの傷も、戦いを終わらせる深さではない。
だが、今から同じ攻防を続ければ、脚の遅れが傷へ変わる。
鬼太郎は、白い石の方角を確かめた。
境までの道は残っている。退くための力もある。
ここから使う量を決めた。
通らなければ、離れる。
グロブニクの肩が沈む。
今度は岩の上からではなく、鬼太郎の左側へ回るつもりだった。
鬼太郎は右足を外へ置き、杖先を赤い目へ向けた。
「ルーモス」
白い光が、一瞬だけ谷を満たした。
音も、衝撃もない。
グロブニクの右目が閉じる。
それでも、巨体は止まらなかった。
発声した位置へ、前脚が振り抜かれる。
鬼太郎は光を出した場所から、右斜め後ろへ動いていた。顔を暗い岩の方へ向け、次に足を置く土を見る。
黒い爪が、広くその道を払った。
鬼太郎は身体をさらに沈めたが、一本が左肩を掠める。
鋭い痛み。
上腕の傷より上で、服と皮膚が裂けた。
彼は足を踏み直し、倒れる前に身体を支えた。
グロブニクの前脚が着地する。
右目はまだ細く閉じている。
鼻先が鬼太郎へ向き、口が開いた。
鬼太郎は、痛む左腕を必要な高さまで上げた。
「アギ」
炎が、開いた牙の間へ迫る。
グロブニクは火の明るさを薄く戻った視界で捉え、熱に鼻先を引いた。
さっきまでなら、首を横へ振って、そのまま踏み込めた。
だが、前脚は振り抜いたばかりで、傷のある片脚へも重さがかかっている。
横へ身体を押し出すより先に、炎が口元へ届く。
グロブニクは顎を閉じ、後ろ脚で地面を蹴った。
巨体が後方へ跳ぶ。
牙の先を炎が舐め、鼻の下の毛が焦げた。
着地した脚が土を削り、黒い身体が鬼太郎から離れる。
鬼太郎は、そこで炎を消した。
◆
谷の中に、二つの荒い息が残った。
鬼太郎は左腕を下ろした。
肩の傷から、袖へ新しい血が流れる。
胸は上下し、立っている腿も震えていた。
それでも、足を置き直せる。
右手の杖も、離していない。
グロブニクは数歩先で立っていた。
前脚を開き、右目を細めたまま鬼太郎を見る。
口元と肩から、焦げた臭いが漂う。脚から落ちた血が、土へ暗い点を作っていた。
鬼太郎の顔には笑みがあった。
相手を退かせた喜びも、まだ続けたい気持ちもある。
だが、次の一撃を取りに行けば、グロブニクも迎え撃つ。
今なら話を始められる。
もっと傷つけてから、その同じ言葉を口にする必要はなかった。
「退いていただけましたね」
鬼太郎は一度息を継いだ。
「どちらも、まだ立っています」
グロブニクの耳が動く。
白い石の外には、キーノとサーシェスがいる。二人とも、谷へ入ってはいなかった。
「追わないのか」
「今、追えば、あなたの牙が待っているでしょう」
鬼太郎は微笑んだ。
「まだ続けられますが、その前に、お話を聞いていただけませんか」
グロブニクは低く唸った。
鬼太郎も、杖を身体の近くへ戻すだけに留めた。
まだ手放さない。
相手の前脚は、いつでも地面を蹴れる位置にあった。
しばらく、どちらも動かなかった。
グロブニクが鼻から長く息を吐く。
「我を倒したと思うな」
「ええ。そうは思っていません」
鬼太郎の返事はすぐに出た。
目の前の巨体を殺せるまで追い詰めたわけではない。
相手も、今すぐ鬼太郎を噛み殺せるとは言わなかった。
赤い目が、血の染みた袖と、長い杖を見た。
「前よりは、牙がある」
「認めていただけて、嬉しいですよ」
グロブニクの唇が下りた。
見えていた牙の根元が、隠れる。
「聞くだけだ」
「それで結構です」
鬼太郎は近くの平たい石へ目を向けた。
そこへ腰を下ろす前に、もう一度グロブニクを見る。
「座っても?」
「勝手にしろ」
鬼太郎はゆっくり石へ腰を下ろした。
脚の重さが、そこで一度に分かった。
左肩は熱い。息もすぐには戻らない。
杖は膝の上へ置き、右手を添えた。
グロブニクも、前脚を伸ばして腹を地面へ近づける。
頭は上げたままだった。
鬼太郎の手も、顔も見える向きで、荒い呼吸を続けている。
◆
キーノは、鬼太郎が座ったのを見て、白い石へ一歩近づいた。
越えてはいない。
サーシェスも、肩へ掛けた銃を下ろしたまま、谷の奥を見ていた。
「止まったな」
「今度は、あいつから言った」
キーノの声は小さかった。
鬼太郎は笑っていた。
肩を傷つけられた後にも、その表情は消えなかった。
それでも、グロブニクが退いたときには、次の火を出さずに終えた。
キーノは、ようやく詰めていた息を吐いた。
「また、血は出てる」
「犬の方もな」
サーシェスの声にも、面白がる響きが残っていた。
「今度は、向こうも話す時間を取ったわけだ」
キーノは袖の内側で手を握り、谷へ声を掛けるのを待った。
まだ、二人の間に入るときではない。
◆
グロブニクが、焦げた口元を一度舐めた。
鬼太郎は左手で膝の上の杖を支え、右手で取り出した布を肩の傷へ当てた。指で押さえると、布の端に赤い染みが広がる。
治療は、話を始める許可を得てからでよかった。急な魔法の動きで、決まったばかりの休止を壊すつもりはない。
呼吸が少しずつ落ち着いていく。
彼の目は、まだ楽しそうだった。
次なら、別の動きができるだろう。
グロブニクも、木が戻ることと、杖が白く光ることを覚えている。
その次を考えるのは、今日の話を済ませてからでよい。
グロブニクの右目が、鬼太郎の顔へ戻った。
「何を望む」
前には、言葉の価値を確かめる前に追い返された。
今は、答えを待つ相手がいる。
鬼太郎は背を伸ばし、血を押さえている手とは反対の手で、膝の上の杖を少し脇へ寄せた。
白い石は、彼の後ろにあった。