神殺し、墓場より還りしもの   作:ちじさん

97 / 111
遠い灯りが、窓になる

 

第九十六話 遠い灯りが、窓になる

 

 窓に、客室の明かりが映り始めていた。

 

 キーノは額をガラスへ近づけ、外を見た。昼間は遠くまで見えていた畑がなくなり、木々の影が重なる。その向こうに、空よりも暗い山の形があった。

 

 汽車の揺れは変わらない。

 

 それなのに、座っていられる時間が、急に短くなった気がした。

 

「そろそろ、着替えた方がいいかな」

 

 ハリーが言った。

 

 ロンは窓を見てから、自分の荷物へ手を伸ばす。

 

「そうだね。着いてからじゃ、間に合わないかも」

 

 キーノも、制服を出しておいた包みを膝へ載せた。

 

 横丁の店で合わせたときには、鏡に映る自分を見る余裕があった。今は留め具を外す手に、少し力が入る。

 

 向かいで鬼太郎が、読みかけの本を閉じた。

 

「キーノさん、先に着替えますか。僕たちは通路へ出ていますから」

 

「ああ。すぐに済む」

 

 ハリーも頷き、ロンと一緒に立ち上がった。

 

 三人が外へ出ると、狭い客室が広くなった。

 

 キーノは扉を閉め、窓に映る自分を見た。

 

 ここへ来るまでに、知らない名前をいくつも聞いた。

 

 自分も、名前を答えた。

 

 何を話せばよいか分からない時間はあった。怒ったことも、笑ったこともあった。それでもハリーとロンは、別の客室へ行かなかった。

 

 廊下から、ロンの声が聞こえる。

 

「兄貴たち、もう着替えてるかな」

 

 キーノは包みを開いた。

 

 黒い布を広げる。

 

 まだ寮の色も紋章もない制服を、頭からかぶった。

 

     ◆

 

 ハリーは客室へ戻り、畳んでいたローブを取り出した。

 

 キーノは今度は自分が外へ出ると言い、扉の向こうへ行った。鬼太郎が通路側の窓の覆いを引く。

 

 ロンはネズミを座席へ置いてから、服を着替え始めた。

 

「同じ寮になるといいね」

 

 ローブの袖に腕を通しながら言う。

 

 ハリーは、頭が襟を抜けるまで返事を待った。

 

「うん」

 

 眼鏡を掛け直す。

 

「別々だったら、授業も全部違うの?」

 

「全部じゃないと思う。兄貴たちは、ほかの寮と一緒の授業の話もしてたし」

 

 ロンは少し考えた。

 

「でも、寝る部屋とか、談話室は違うよ」

 

 ハリーは自分の袖口を直した。

 

 学校へ着けば、この客室で話していた時間が、そのまま続くと思っていた。

 

 誰かに寮を決められることは、さっきも聞いた。そのときには寮の名前が気になったが、今は、ロンと別の場所へ行くかもしれないという方が気になった。

 

 鬼太郎は着替えを終え、旅に使っていた上着を畳んでいた。

 

 大きな黒い杖を、すぐ取り出せる位置へ収める。

 

「授業が同じでなくても、話す機会はあるでしょう。食事をする場所も、同じでしたね」

 

「大広間だよ」

 

 ロンが答えた。

 

「寮ごとにテーブルがあるんだって」

 

「では、そこで顔は見られますね」

 

 鬼太郎はそう言って、服の包みを閉じた。

 

 簡単なことのように聞こえた。

 

 まだ決まっていない寮のために、今から話せなくなるわけではない。

 

 ハリーは少し息をつき、扉を開けた。

 

「もう大丈夫だよ」

 

 キーノが顔を向ける。

 

 黒いローブの裾が、通路の揺れに合わせて動いた。

 

 彼女も、ロンも、鬼太郎も、同じ服になっていた。

 

 ハリーはそのことが、何となく嬉しかった。

 

     ◆

 

 到着が近いことを告げる声が、車内へ響いた。

 

 大きな荷物は汽車に残すように、という案内も続く。

 

 鬼太郎は拡張鞄の口を閉じ、留め具を確かめた。移動に使ったものを戻した後、財布と杖は身につけたままにする。

 

 キーノも帳面をしまった。

 

「これも、運んでくれるのか」

 

「そういう案内でしたね」

 

 鬼太郎は、鞄を席の下へ寄せた。

 

 どこへ運ぶかは、学校側が分かっているらしい。寮がまだ決まっていない新入生の荷物まで扱うなら、その後で振り分ける手順があるのだろう。

 

 車輪の音が変わった。

 

 ロンがスキャバーズをポケットへ入れる。ハリーは網棚の方を見てから、立ち上がった。

 

 通路には、もう何人も出ていた。

 

 鬼太郎は扉のそばへ立ち、先の動きを見る。まだ汽車は止まっていないのに、出口へ向かって身体を押す者がいる。

 

「止まってからでよさそうです。ここからでも、降りられますから」

 

 キーノは頷いたが、窓の外へ顔を戻した。

 

 小さな明かりが、いくつも後ろへ流れていく。

 

 やがて、その間隔が広がった。

 

 最後の揺れに合わせて、通路の子供たちが一斉に足を踏み直す。

 

 汽車が止まった。

 

     ◆

 

 ホームへ降りると、ハリーの頬に冷たい空気が当たった。

 

 ロンドンを出たときとは違う匂いがする。

 

 湿った土と、汽車の煙。

 

 すぐ前を、大きなトランクを持たない生徒たちが歩いていく。あちこちで友達を呼ぶ声が上がり、扉から降りてくる者の足音が重なった。

 

 ハリーは一度、後ろを振り返った。

 

 ロンがすぐそばにいた。

 

 キーノが段差を下り、その後ろから鬼太郎も降りてくる。

 

「こっちかな」

 

 ロンが、人の流れる方へ首を伸ばした。

 

 その向こうで、ランプが揺れた。

 

 子供たちの頭より、ずっと高いところにある。

 

 一年生を呼ぶ、大きな声が聞こえた。

 

 ハリーは顔を上げた。

 

「ハグリッド!」

 

 髭に覆われた顔が、こちらを向く。

 

「おお、ハリー! 着いたな。汽車はどうだった?」

 

「楽しかったよ」

 

 返事は、考えるより先に出た。

 

 ハグリッドが笑った。

 

 ハリーも笑い、後ろの三人を見た。

 

「同じ客室だったんだ」

 

 ロンたちが近づく。

 

 ハグリッドは三人へ頷いたが、その間にも、後ろから来る小さな生徒を手で招いていた。

 

「一年生は、こっちへ集まってくれ。そこの子もだ。上級生についていくんじゃないぞ」

 

 呼び掛けに、迷っていた少年が戻ってきた。

 

 ハリーはその様子を見ながら、ハグリッドのそばへ寄った。

 

 ここに知っている顔がある。

 

 それだけで、暗いホームが少し歩きやすくなった。

 

     ◆

 

 鬼太郎は、ランプを持つ手を見た。

 

 指も、手の甲も大きい。

 

 ホームの人混みでも、肩から上はほとんど隠れなかった。傍に立つと、自分たちの顔を見るために、かなり視線を下げなければならない。

 

 森で会った人間たちよりも、サーシェスよりも、ずっと大きかった。

 

 巨人の血でもあるのだろうか。

 

 今の姿だけで決めることはできない。だが、足を置く幅と、荷物のない片手を動かす様子は、よく見えた。

 

 彼は、後ろから押されてきた子供の肩に手を添えた。

 

 大きな手で道を変えさせ、隣へ寄せる。

 

 それからもう一度、ホームの奥へ声を掛けた。

 

「まだいるか? 一年生、こっちだぞ」

 

 声はよく通るが、急いで来た者を叱りつける調子ではなかった。

 

 鬼太郎の隣で、キーノが見上げている。

 

「大きいな」

 

「ええ」

 

 鬼太郎は答えた。

 

 キーノはハグリッドの顔から、ランプへ目を移す。

 

「あれなら、どこにいるか分かる」

 

「助かりますね」

 

 ランプが動いた。

 

 ハグリッドは集まった子供たちを見回し、ついてくるように言った。

 

 鬼太郎も足を進める。

 

 ホームを離れると、足元の明かりが少なくなった。

 

     ◆

 

 細い道は、下り坂になっていた。

 

 キーノは前を歩くハリーの背を見ながら進んだ。道の端には草が生え、その先で木が重なっている。

 

 足元に小石があった。

 

 避けて歩く。

 

 後ろで誰かが滑り、短く声を上げた。鬼太郎が振り返ったが、近くの子供がその腕を支え、すぐに列は動き出した。

 

 闇の中に、何人もの足音があった。

 

 森を歩くのには慣れた。それでも今夜の道は違う。

 

 前にも後ろにも、自分と同じような制服を着た子供がいる。誰かが声を落として話すと、それを聞いた別の子が笑う。

 

「学校って、まだ先なのか?」

 

 キーノが尋ねた。

 

 ロンは木々の向こうを見た。

 

「もうすぐだと思う。兄貴たちは、一年生は湖を渡るって言ってた」

 

「湖?」

 

「舟で行くんだって」

 

 キーノは顔を上げた。

 

 建物の入口まで、道を歩いていくのだと思っていた。

 

「お前の兄たちも、そうしたのか」

 

「うん。毎年、一年生はそうらしいよ」

 

 ロンは答え、裾を踏まないよう片手で持ち上げた。

 

 その先で、ハグリッドが歩く速さを落とした。

 

 もうすぐ城が見える、と後ろへ知らせる。

 

 子供たちの話し声が小さくなった。

 

 キーノはハリーの肩越しに、前を見た。

 

 木々が途切れた。

 

     ◆

 

 ハリーは、足を止めた。

 

 目の前に、黒い湖が広がっていた。

 

 その向こうの高いところに、城があった。

 

 塔の先が夜空へ伸び、いくつもの窓から明かりがこぼれている。遠くからでも、壁の広がりが分かった。

 

 どこを見ればよいのか、すぐには決まらなかった。

 

 一つの塔を見上げると、その隣にも塔がある。

 

 窓の並びを目で追うと、もっと奥へ建物が続いている。

 

 あそこへ行く。

 

 そう思ってから、ようやく、自分がそこへ住むことも思い出した。

 

「……あれが」

 

 ロンの声がした。

 

 彼も、顔を上げたままだった。

 

 兄たちの話を知っていても、この場所から城を見るのは初めてなのだ。

 

 ハリーは隣のキーノを見た。

 

 彼女は口を少し開けていた。

 

 寒さのせいで袖の中へ引いていた手が、外へ出ている。

 

「大きい」

 

 さっきハグリッドを見たときにも、同じことを言った。

 

 今度は、その後の言葉がなかなか出てこなかった。

 

 ハリーは城へ顔を戻した。

 

 明るい窓が、湖の上にも映っている。

 

 家を出る前には、今日の夜、こんなところへ立っているとは思わなかった。

 

 隣で誰かが息をついた。

 

 それが自分の声だったかもしれない。

 

     ◆

 

 岸辺には、小舟が並んでいた。

 

 ハグリッドは一艘に乗る人数を四人までにするよう告げ、子供たちを促した。

 

 ロンが近くの舟へ向かった。

 

「これに乗ろう」

 

 ハリーが続き、キーノも足を進める。

 

 鬼太郎は舟の縁に手を置いた。

 

 押した分だけ、船体が水の上で動く。

 

 ロンが乗ったときに傾いたが、沈み込みは浅かった。ハリーは片足を床へ下ろしてから、身体を移した。

 

 キーノは岸から舟までの幅を見た。

 

「そこへ足を置けば、大丈夫だよ」

 

 ハリーが空いているところを指す。

 

「分かる」

 

 キーノは答えたが、彼の指した場所を使った。

 

 舟が小さく揺れる。

 

 腰を下ろすと、湖面がずいぶん近くなった。

 

 最後に鬼太郎が乗った。

 

 膝を少し横へ向け、ローブの裾を足元から上げる。

 

 隣の舟には、ハーマイオニーとネビルがいた。ネビルはまだ岸の方を見ており、空いた手で服のポケットを押さえている。

 

 トレバーは、見つかっていないらしい。

 

 鬼太郎は水へ目を戻した。

 

 櫂がない。

 

 船体のどこにも、漕ぐためのものは見当たらなかった。

 

 ハグリッドが自分の舟から全体を見渡す。

 

 乗り遅れた者がいないことを確かめ、出発を告げた。

 

 舟が進み始めた。

 

     ◆

 

 キーノは舟の縁を握った。

 

 自分たちの舟だけではない。

 

 岸に並んでいた小舟が次々に離れ、湖の上へ出ていく。

 

 船首が水を分ける音がした。

 

「勝手に動くのか」

 

「魔法だろうね」

 

 ロンが答えた。

 

 鬼太郎は船首を見てから、後ろへ目を向けた。

 

 岸が遠ざかる。

 

 箒は、乗る者が扱っていた。これは全員が座っているだけで、前の舟と同じ方へ進む。

 

 行き先が決まっているのか。

 

 それとも、先頭の合図に従うよう作られているのか。

 

 速度も、隣の舟との間隔も、今のところよく揃っていた。

 

「どこへ行くかも、舟に分かるのだろうか」

 

 キーノが言った。

 

 鬼太郎は彼女へ顔を向けた。

 

「そこは、僕も気になります。運ぶ相手を選ぶのか、同じ道を進むだけなのかで、作り方が違いそうですね」

 

「お前は、乗った途端にそれか」

 

「キーノさんも、聞いたでしょう」

 

「聞いたが」

 

 彼女は城を見た。

 

 水の上へ出ると、塔の間に隠れていた壁も見えた。窓の光が水面でほどけ、近くの舟の影に遮られる。

 

「今は、あっちの方が気になる」

 

 鬼太郎も顔を上げた。

 

「ええ。僕もです」

 

 いつもの笑みが、そのまま少し深くなった。

 

 広い建物には、それだけ人もいるのだろう。

 

 教科書で読んだものを、実際に扱う者がいる。箒にかかった魔法も、この舟を進める仕組みも、尋ねる相手を探せる。

 

 ダンブルドアから教わったことは、すでに自分の動きに役立っていた。

 

 ほかの教師は、何を教えるのか。

 

 鬼太郎は、明るい窓の並びを見た。

 

 城の大きさを眺めているだけでは、待ちきれなくなりそうだった。

 

     ◆

 

 キーノは、舟の縁から指を離した。

 

 座っていれば、舟はちゃんと進んでいた。

 

 ロンが小声で、食事の話を始める。

 

 兄たちから聞いた皿の数や、好きなだけ食べられるという話だった。

 

「さっき、あんなに菓子を食べたのに?」

 

 ハリーが言った。

 

「だって、あれから何時間も経ってるよ」

 

 ロンが答え、自分の腹へ手を置いた。

 

 キーノも、空腹に気がついた。

 

 それまで、窓と城を見ていて忘れていた。

 

「食べる前に、寮を決めるのだったな」

 

「うん」

 

 ロンの声が、少し小さくなった。

 

 ハリーも彼を見た。

 

 何をするのかは、まだ分からない。

 

 キーノはローブの袖口を押さえた。

 

 自分にできることだろうか。

 

 それを終えたら、別々の寮へ行くかもしれない。

 

 胸の奥が、また少し縮んだ。

 

 それでも、向かいに座るロンの顔は見えた。ハリーは、城から目を離すたびに誰かへ話しかけている。鬼太郎も、今は同じ舟にいた。

 

「もし、寮が違っても」

 

 キーノは言った。

 

 三人がこちらを見る。

 

「明日、会ったら声を掛けてくれ」

 

 ハリーが頷いた。

 

「もちろんだよ」

 

「僕も」

 

 ロンがすぐに続けた。

 

 鬼太郎はキーノを見て、穏やかに目を細めた。

 

「見つけたら、そうしますね」

 

「私も、見つけたら呼ぶ」

 

 キーノは答えた。

 

 それだけ言うと、少し落ち着いた。

 

 昨日の帳面には、名前を聞くと書いた。

 

 明日は、その名前で呼べる相手がいる。

 

     ◆

 

 城が近づくにつれ、ハリーは顔を高く上げなければならなくなった。

 

 岸から見たときには、塔と窓を一度に眺められた。今は、目の前の崖と、その上に続く壁が視界を占める。

 

 ハグリッドの声が、水の上を渡った。

 

 頭を低くするように言っている。

 

 ハリーは身をかがめた。

 

 舟が岩の近くへ進み、垂れた葉の下をくぐる。葉先がローブへ触れ、頭の上から空が消えた。

 

 キーノも膝へ身体を寄せた。

 

 狭いところを通り抜けると、舟の音が変わった。

 

 水を切る音が、壁へ返ってくる。

 

 地下へ入ったのだと分かった。

 

 前のランプの明かりが、濡れた石を照らしている。舟はそのまま進み、小石のある岸へ寄った。

 

 ハリーは舟が止まってから立った。

 

 ロンが先に降り、ハリーも岸へ足を置く。

 

 キーノと鬼太郎が続いた。

 

 後ろの舟から、ハーマイオニーの声が聞こえる。

 

 ネビルが慌てて岸へ上がり、ハグリッドの方へ駆け寄った。

 

 大きな手の中に、ヒキガエルがいた。

 

「トレバー!」

 

 ネビルの顔が、一気に明るくなった。

 

 受け取る両手が、ずっと大事そうに動く。

 

 ロンがそれを見て、ハリーへ肩を寄せた。

 

「やっと、見つかったね」

 

「よかった」

 

 ハリーも答えた。

 

 ネビルはヒキガエルを確かめながら、何度も礼を言っていた。

 

 ハグリッドは全員が降りたか確認し、ランプを持ち直す。

 

 また歩き始めた。

 

     ◆

 

 石の通り道を抜けると、夜の空気が戻ってきた。

 

 鬼太郎は階段を上りながら、城の壁へ目を向けた。

 

 湖から見えた灯りのいくつかは、もう頭上にある。

 

 近づけば、どの窓も小さな光の点ではなくなる。厚い壁の中に、部屋があるのだと分かった。

 

 そのどこかで、授業を受ける。

 

 キーノも、歩きながら見上げていた。

 

「首が痛くなりますよ」

 

 鬼太郎が言う。

 

「お前も見ているだろ」

 

「そうですね」

 

 キーノは彼を一度睨んだが、すぐにまた上を見た。

 

 その顔には、疲れよりも、もっと見たいという気持ちが出ていた。

 

 ハリーとロンが、先の数段を上る。

 

 二人が立ち止まったところで、鬼太郎も顔を戻した。

 

 大きな扉があった。

 

 子供たちの列が、その前へ集まっていく。

 

 ハグリッドは後ろを見渡し、最後の生徒が上がるのを待った。

 

 ランプを下げた手の向こうに、黒い制服の肩が並ぶ。

 

 鬼太郎はキーノの隣へ立った。

 

 彼女は袖口を直し、一度だけ深く息を吸った。

 

 ハリーも扉を見ている。

 

 ロンは口を閉じ、自分のローブの前を撫でた。

 

 ハグリッドが、扉へ手を上げる。

 

 叩く音が、厚い木を通って響いた。

 

 鬼太郎は、その奥から来る音を待った。

 

 今度は本の頁をめくるだけではない。

 

 まだ知らないことを、知っている者に尋ねられる。

 

 キーノの足が、ほんの少し前へ出た。

 

 扉の向こうで、人が動く気配がした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。