新たなタイトルは『ポケットモンスターEMOTIONAL』!!!略して『ポケエモ』!!!
ギャグあり、シリアスあり、涙あり!シアンの口癖である『エモ』が心の底から溢れ出すような物語を紡げるように頑張ります!
読者の皆様!応援よろしくお願いしますっ!!!!!
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CHARACTER SELECT
SAKURAGI ARUKA
▶︎SIAN
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《No side》
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『数で黒龍伝説』――それは、クロマツシティに伝わる古き伝承。
その
ーー
同時に、『至聖の宝』がその真なる力を発揮するには、100年もの途方もない歳月を要するという。
そして……クロマツの民が待ち望んだ100年の時が満ちた
「ピッピカチュゥゥゥゥゥ!!!!!」
「ヌゥン!!!」
ーーズガァァァァァン!!!!!
数多の『困難』を乗り越えた果てに、残酷な『裏切り』が待ち受けていようとも。
終着点たる祠へと辿り着いた“生命”による、死闘が繰り広げられていた。
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第9話『目覚めよ、火を噴く大怪獣』
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「ピカカカッ!!!それなり以上に良いスピードだッ!!!……けどよォ……オイラにゃあ、敵わねェぜッ!!!」
人間大の大きさを誇る異形の妖狐を前にしても、
彼がニヒルな笑みを浮かべると同時に、右手に解き放たれたのはーー“黄金の稲妻”。
「喰らいやがれぇぇぇぇぇ!!!!!《ボルテッ拳》!!!!!」
凄まじい速度で繰り出される黄金の鉄拳。速度に長けた漆黒の妖狐は、紙一重のところでその拳を躱してみせる。
だがーーー
「隙ありィ!!!」
拳を避けたことで生じた僅かな体勢の崩れを、ヒーローは見逃さない。
「グ……ッ!?」
腹部へ直撃するピカチュウ仮面の鋭い回し蹴り。
モロに打撃を喰らった妖狐は、苦悶の声を漏らしながら片膝を地面へ突いた。
「コッチは1人と1匹。それに対し、キミは1匹。オマケにボクたちは、キミから情報を聞き出す為に手加減してるときた……それでも、まだやる気?」
「………」
立ち塞がるヒーローと、ひざまずく妖狐。
二人の目線の高低差ーーそれは、両者の間に聳え立つ実力差そのものだった。
「キミ……確かに強いっちゃ強いけど、アーク・ポケモンと比べれば大したことないね。純粋なフィジカルなら、ピカさんはおろかボクの方が上だ」
自らを“ルナール”と名乗った漆黒の妖狐。
その実力は決して低い訳ではない。だが、ピカチュウ仮面基準で言えば脅威とは程遠かった。それどころか、純粋なフィジカルだけなら先程退けたガチグマにすら劣る。
互角の勝負を繰り広げているように見えて、その実態は手加減されているに過ぎないのだ。
影で謀略を巡らせ無慈悲にも仲間を裏切った妖狐と、絆と共に脅威を退けた英雄。両者の実力差は、もはや歴然だった。
……しかし。
「……それが貴様の持論か?ピカチュウ仮面よ」
「……どういうこと?」
裏切りの妖狐は、その“劣勢”すらも嘲笑う。
「貴様は言ったな、『数で劣る私には勝ち目は無い』と。それが貴様の“勝利の定義”ならば……
不敵に嗤う妖狐は、左手にドス黒い影のような気を纏わせると……突如として、転がる岩の破片へ向けて解き放ちーーー
「これより……。悠久なる大怪盗の“奇術”をお見せしよう……!!」
ーーパチンッ!!!!
“影”が破片へと吸い込まれた直後、妖狐は軽やかに指を鳴らす。
一連の所作に要した時間は、僅か一秒にも満たない。……だが、この一瞬の隙を見過ごした事こそがーーピカチュウ仮面最大の
「嘘……っ!?コレって……!!」
乾いた指鳴りが洞窟に木霊した瞬間、岩に吸収されたはずの“影”が、何十倍もの質量となって溢れ出す。
影は岩の破片を飲み込みながら、蠢く巨体……二足歩行の大型
「ワギアアア!!!!!」
その額に紅月を宿した、滅びし巨獣が姿を現す。
「な、なんで……!?あのポケモンは……!ガチグマは……!シアンさんが倒したはずなのに……!?」
「ギャウゥ……!」
突如として蘇った巨獣の姿に、岩の陰で怯えるツバキとリズ。
一方、ピカチュウ仮面……その中の人たるシアンは、脳内を支配していた異様な違和感の正体を確信する。
「チ……ッ!てことはよォ……!!」
黄鼠型の仮面の奥で、鋭い眼光が妖狐を射抜いた。
「やっぱり……!あのガチグマはオマエの差し金か……っ!!」
「フッ……。いつまでも“過去”に拘ってる場合か?時間とは常に前に進む概念なのだぞ?」
「グゥガァァァァァ!!!!!」
間髪を容れず、真紅に染まった右目をギラつかせたガチグマが、ピカチュウ仮面へと襲い掛かる。
その出力自体は先ほど撃破した個体と同等。ーーだが、一度敗れた記憶を継承しているのか、はたまた妖狐による洗練された遠隔操作ゆえか。
巨獣は退路を絶つような徹底的な近接戦を仕掛け、シアンに“波動”を練り上げる隙すら与えない。
「く……っ!」
「相棒……ッ!オイ、クマ公ッ!!今度はオイラが相手だッ!!!」
相棒の危機を察し、ピカさんは速攻で救援に駆けつけるが……
「それよりも、だ。貴様はオマケは好きか?私は大好きだ。病気以外は何でも貰う主義なのでな」
妖狐は、1人と1匹のヒーローがガチグマの対処に手を焼く、まさにその隙を見計らいーーー
「コレで
「ワァギァァァァァ!!!!!」
岩石を媒介に、もう一体の紅月の巨獣を召喚する。
「そ、そんな……!ただでさえ強い“アカツキ”のガチグマが……!2体も……!?」
「行け。
「「グルガァァァァァ!!!!!」」
妖狐の奇術により現世へ復活を果たした二体の巨獣……の幻影。
紅月の滅獣達は昂る殺意を爆発させ、苛烈な怒号と共にヒーローコンビへ襲い掛かる。
「コレは……ちょっとしんどいかも……っ!」
「ピィ……!!邪魔だァ!!デカブツゥ!!!」
数の優位をいとも容易く覆された事で、二人の間へと割って入る巨体により、彼らの最大の武器である連携は瞬く間に分断されてしまう。
「さて……。既に雌雄は決した」
滅獣の創造主たる妖狐は、これ以上一歩たりともピカチュウ仮面たちに近付こうとはしなかった。
何せ、彼にはもうヒーローと交戦する理由など存在しないのだから。
その代わりに、彼が向かった先はーーー
「ひ……っ!!」
ヒーローの庇護を失った、幼き少女の元であった。
「こ、来ないで……っ!!!嫌ぁ!!!」
「一度は行動を共にした仲だというのに、ここまで拒絶されるとは心外だな。せっかく、
ワザとらしく溜め息を吐いてみせる妖狐だが、少なくとも彼に少女を責める資格など存在するはずもない。
そもそも、最初に『縁』を利用し裏切ったのは、他ならぬ彼自身なのだから。
「ギャ、ギャウッ!!!」
主人の危機を察知したリズは、恐怖に震える全身を必死に奮い立たせ、鋭い爪を立てて妖狐へ斬りかかろうとする。
だが……。
「邪魔だ、未熟な火龍如きに用など無い」
「ギャウ!?」
「リズっ!!!」
リズの渾身の一撃すらも右手一本で容易く受け止められ、一矢報いる事すら叶わぬまま、無慈悲に地面へ叩きつけられてしまう。
妖狐の実力が脅威ではないと言っても、それはあくまで規格外の力を持つピカチュウ仮面基準の話。
まだ十分な戦闘経験すらない幼いリザードンでは、初めから抗う術など存在しなかった。
「ひ、ひどい……!簡単に人を裏切って……今もリズを傷つけた……!あなたの心は傷まないの……!?」
「さあな。そんな感情……とっくの昔に枯れ果てたよ」
少女の必死の抗議すら冷淡に一蹴した妖狐は、彼女の首根っこを雑に掴み上げると、至宝が祀られし祠の奥へと歩みを進める。
「は、離して……っ!!!」
「断る。貴様には、これから“器”になって貰わねばならないからな」
「う、器……?」
『器』という不吉な言葉を耳にした少女は、蒼白な顔で妖狐へ問いかける。
しかし、妖狐は答える事すらなく、ただ淡々と宝の封印を解く最後の鍵たる“神器”を懐から取り出す。
【アーク・スパーク……!】
その造形は、シアンの持つ【ボルテック・スパーク】と酷似していながらも、全体は漆黒に染まり、薄紅色のラインが這う妖美かつ禍々しい異形を誇っていた。
「さあ……!クライマックスだ……ッ!!」
間髪を容れず、妖狐はさらに一枚のカードを取り出すと、一切の躊躇もなく“神器”の先端へと翳す。
その表面に刻まれていたイラストは、間違いなくーーー
「はぁ……っ!!?? そのカードのイラストって……!ボクたちがこの前倒したアーク・ポケモン……!?」
ガチグマの対処に追われる視界の端で、シアンが目撃できた時間はほんの一瞬。
だが、そのカードに刻まれていた異形の姿は間違いなくーー先日、自分達が死闘の末に打ち破った漆黒のアーク・ポケモンそのものであった。
聞く者全てに根源的な恐怖を抱かせる不穏な電子音が響いた瞬間、薄紅色の神器から解き放たれた禍々しいオーラが祠に納められた至宝へと吸い込まれていく。
すると……。
「……
かつて神聖な装飾が施されていた宝は瞬く間に侵食され、灰色と真紅が歪に混ざり合う怪石ーー【ソウル・ルーン】へと姿を変えた。
「そ、そんな……!お宝が……!」
「……喜べ、人の子よ。貴様の“理想”を叶えてやろう……ッ!!」
妖狐は変化した【ソウル・ルーン】を手に取ると、拘束した少女の顔をさらに強引に持ち上げーーー
「マズいよ、ピカさんっ!!!あのゾロアークの怪人はツバキちゃんを使って“ナニカ”をしようとしてる……っ!!!」
「チッ……!コイツはあーだこーだ考えてる場合じゃなさそうだな……ッ!!!」
その一部始終を目撃した二人は覚悟を決める。
これまで本気を出すのを躊躇っていたのは、自分達の持つ超火力によって洞窟が崩落する危険、そして生息ポケモンへの被害を考慮しての事であった。
だがーー罪のない少女の命が脅かされている以上、もはや手加減などしている余裕はない。
「「最大出力……ッ!!!」」
“全力”を解き放ったシアンは、洗練された体術でガチグマの巨腕を軽やかに捌き、間合いを取る。同時にシアンは左手を、ピカさんは右手を同時に構えーーー
「《
「《ボルテッ拳》!!!!!」
己の解き放ち得る最高峰の一撃を、一切の躊躇なく紅月の幻影たちへ叩き込む。
「「アギィィィィィ!?!?!?」」
二体の巨獣はその絶大な威力の前に防御すら叶わず、一瞬にして跡形もなく消し炭へと変えられた。
「はぁ……!はぁ……!っ……!!」
ガチグマの幻影を打ち砕き、灰へと変えた直後ーーシアンの“ココロ”に鋭い針で刺されたような痛みが走る。
確かに今のガチグマは、妖狐が生み出した“質量を持った幻影”に過ぎない。
……だとしても、目の前にある命を自らの手で刈り取ってしまったという暗い罪悪感は、確実にヒーローの肩へと重くのしかかっていた。
「オイ、相棒ッ!!!」
「分かってる……っ!!」
それでもシアンは……ヒーローは歩みを止めることを許されない。
心優しき少女を魔の手から救い出すべく、妖狐へ向かって力強く地面を踏み込みーーー
「ツバキちゃんを……!離せぇぇぇぇぇ!!!!!」
蒼炎の炎を噴出させ、凄まじい速度で空間を跳躍する。………が。
「だが、断る」
その伸ばされた手は届かず、無慈悲にも【ソウル・ルーン】は少女の体内へと溶け込むように侵入していった。
「あ……が……っ!?きゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
禍々しき【ソウル・ルーン】が少女の体内へ埋め込まれた刹那、ツバキの全身から凶悪な紅蓮の炎が爆発的に吹き上がる。
「ギャウッ!!ギャウーーッ!!!」
「ツバキちゃん……!」
「フハハハハハッ!!!!!さァ……!始まるぞ……ッ!!真なる“英雄”を迎える饗宴の……第二幕がッ!!!」
「か、体が……!熱い……っ!!!」
絶叫すら途切れ、少女が自身の胸を掻きむしるように倒れ込む。
次の瞬間、その小さな体から溢れ出た紅蓮の炎は猛烈な渦を描き、爆風となって周囲を薙ぎ払った。
「ツバキちゃーー熱っつ!!??」
蒼炎使いであるシアンですらも、思わず腕で顔を覆ってしまう程の熱気が放出される中……激しく燃え盛る炎が異様な変容を見せる。
噴き出す火炎は外へと広がるのではなく、まるで意思を持っているかのように彼女の体を包み込み、内部へと凝縮されていく。
ーーーゴオォォォォォ!!!!!
鼓膜を揺らす重苦しい燃焼音と幾重にも重なった炎の層は、一切の隙間なくツバキの姿を完全に覆い隠す。
「ツバキちゃん……!」
「哀れだな、ピカチュウ仮面よ。貴様がもっと早く決断していれば、その小娘は“器”とならずに済んだだろうに」
炎の境界線がぬらりと滑らかな輪郭を描き出す。
そこに現れたのは、心優しき少女の面影はもはや存在せず、ただ淡々と禍々しい胎動を繰り返す巨大な『卵』であった。
ーーーピシ……ッ!!!
その直後。密閉されていた炎の『卵』の表面に、筋状の亀裂が一本奔る。
それを合図とするかのように、乾いた破砕音が洞窟内に幾重にも響き渡り、網目状のヒビが瞬く間に全体へと広がっていった。
「コレって……!この前のアーク・ポケモンと同じ……っ!!?」
シアンの戦慄した叫びをあざ笑うかのように、亀裂の隙間から溢れ出したのはーー見る者の正気を削り取るような、禍々しく妖しい漆黒の光芒。
ーーピシ……ッ!ピシ……ッピシ……ッ!!!
乾いた破砕音とともに炎の殻が爆砕し、真紅の破片が四方へと激しく飛び散る。
その光景を目にした妖狐は、仮面ゆえに表情こそ窺えないものの、声色を歓喜に躍らせて盛大な拍手を送り、禍々しき“ナニカ”の生誕を祝福した。
「今ココに“復活”せよォ!!!忌まわしき黒龍の楔に封じられし、真紅のアーク・ポケモン……『リリス・ボルガ』ァ!!!!!」
立ち籠める高熱のモヤと爆炎の残光の奥から、純粋な少女の“願い”を過酷な糧として生を受けた“ナニカ”が、殻を打ち破り現世へと降臨する。
『ウ“ァル……ガァアアアァァッッ!!!!』
バンギラスを思わせる凶暴な形相と圧倒的な巨体を誇り、灰色の皮膚には無数のヒビ割れた真紅のラインが駆け巡る。だがその胸元には唯一、少女の髪色と同じ淡い光を宿す六角形の結晶が歪に埋め込まれていた。
かつて心優しかった少女の面影はどこにもなく、ただ禍々しい殺意を放つ巨大な
「ツバキちゃんが……アーク・ポケモンに……!?」
『ウ”ァルルルル……ッ!!!!』
百年の時を経て、遂に復活を果たした『リリス・ボルガ』は、虚空を見つめたまま凶暴な爪を深く地面へと突き立てる。
直後、胸元の六角形から溢れ出した淡い光芒が、全身の亀裂を巡る真紅のラインへと一気に流れていく。
体内から轟くような不吉な脈動。次の瞬間、怪獣の巨大な顎が大きく割れ開かれた。
「マ、マズい……っ!!リズちゃんっ!!!伏せてっ!!!」
「ギャウ……!?」
『グラアアアアアアアアアッッ!!!!』
鼓膜を破壊せんばかりの咆哮と共に吐き出されたのは、超高熱の圧縮された漆黒と真紅の炎塊であった。
直線状に放たれた破壊の濁流は、遮る空間の空気すら一瞬で焼き尽くし、山頂の洞窟を支えていた分厚い岩壁へと着弾する。
―――ドォォォォォォォン……ッ!!!!!
爆発音すら遅れて届く程の衝撃。長年あらゆる天災に耐え抜いてきた極厚の岩盤は、熱線の前に豆腐のように溶かされ、一瞬にして広大な大穴へと変えられた。
「マジかよ……ッ!?一体……!あのブレスは何度あんだ……ッ!!?」
崩落する巨岩と、立ち込める土煙。
空いた風穴の向こう側には、どこまでも広がる夕映えに染まった空と、下界に広がる街の灯りが覗いている。
怪獣は爆風の残光を背に受ける事もなく、開け放たれた破壊の道を悠然と歩み進める。
『ウ”ァル……ッ!!ガル……ッ!!』
その巨大な足取りが一歩刻まれる度、洞窟全体が悲鳴を上げるように激しく揺揺した。
「さあ、ピカチュウ仮面!ヤツを下界に解き放てば何千、何万もの人間が死ぬぞ?記憶も力も失った、今の貴様に止められるかな?」
「ふざけるな……っ!!初めからボクたちが狙いなら、ツバキちゃんを人質なんかに取らずに正々堂々と戦え……っ!!!」
「フ……ッ。褒め言葉として受け取っておこう。では、目的を果たした怪盗はここらでお暇させてもらおうか。期待しているぞ?“紛い物の英雄”よ」
その瞬間、あれほど禍々しい気配を放っていた妖狐は、まるで影が解けるように輪郭を曖昧にさせると、一切の残り香すら残さず無色透明へと消えていく。
「待て……っ!!!逃げるなぁぁぁぁぁ!!!!!」
掴みかけた手はただ虚空を切り、冷ややかな静寂だけがその場に取り残される。
見事なまでに踊らされ、罪もない少女をアーク・ポケモンへと変えられてしまい、挙句の果てには黒幕の逃走すら許してしまう。ヒーローとして落第同然の失策を犯したシアンの胸には、途方もない虚無感だけが静かに横たわっていた。
「……落ち着け、相棒。もう、ヤツは完全に逃しちまった……。なら、オイラたちがやるべきことは、ゾロアもどきを追うことじゃねェ。アーク・ポケモンに変えられちまったツバキ嬢を元に戻すことだ」
「……うん、分かってる……。全っ然、エモさの欠片も感じない状況だけど……!絶対にツバキちゃんを助けよう……っ!!!」
相棒からの静かな諭しを受け、深い呼吸とともに落ち着きを取り戻したシアン。
ヒーローは、この絶望的な状況の渦中にあっても自らの“
「1つーー“ルナール”ってヤツの掌で踊らされたこと……」
「2つーーまだボクたちは戦える……」
「3つーーなんとしてでも、アーク・ポケモンに囚われたツバキちゃんを助けだす……っ!!!」
「覚悟は決まったか!?んなら……行くぜェ!!!相棒ッ!!!」
「レッツ……!ゴーっ!!!!」
ーービュン!!!
決意を固めた二人のヒーローは、熱線によって溶け落ちた大穴を通り抜け、
そして、主役が次々と退出した事で静寂を取り戻した洞窟の奥ではーーー
「ギャウゥ……」
幼きリザードンが、最愛の家族の理不尽な変貌と凄まじい破壊を前に、ただ体を小さくして怯える事しか出来ずにいた。
ーーーーー
CHARACTER SELECT
▶︎SAKURAGI ARUKA
SIAN
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《No side》
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ツバキを“器”にリリス・ボルガが復活を果たした、まさにその同時刻。
スェパルトラ山の薄暗い地下通路ではーーー
「………」
「どうしました、クリスさん?」
「……いや、妙な胸騒ぎがしてね。もしかしたら……地上で何かあったかもしれない」
「もしそうだとしたら、あまり猶予はありませんね……。急ぎましょう!僕の予想が正しければーー伝承に記された“不浄の化け物”こそが、“宝”に封印された災いを退ける唯一の鍵です!」
アルカは既に、山頂に祀られし『宝』こそが、百年前にこの地へ降り立った“邪悪なる影”そのものであると察していた。
シアンの言動と【ボルテック・スパーク】の導きを照らし合わせれば、その正体が先日遭遇した個体とは異なる新たなアーク・ポケモンである可能性は極めて高い。
そう判断したからこそ、彼は山頂の対処をシアン達へ委ね、自身は地下へと足を運んだのだ。
そしてーーアルカは、伝承の裏に伏せられた“不浄の化け物”こそが、シアンの語っていた『リザさん』その
(……もしも、僕の仮説が的中していたら……やっぱり、シアンくんとピカさんは100年前からやって来たタイムトラベラーってことになるのかな……?)
そう仮定すれば、シアンの持つ曖昧な記憶や、知識や常識が100年前の時代で止まっている理由にも綺麗な説明がつく。
『なぜ』彼らは100年前の過去から現世へとやって来たのか。
『どうして』時間旅行の行き先に、この現代を選んだのか。
そしてーー『なにがあって』記憶まで失ってしまっているのか。
一つの謎を紐解いたと思えば、瞬く間に三つもの新たな謎が浮かび上がってくる。
だが、少なくともこの事態を解決すれば真相へ一歩前進する筈ーーアルカは自身にそう言い聞かせ、足元に注意を払いながら暗い地下の深部へと潜り込んでいく。
(もしそうだとしたら……あまりにも切ないな……。だって、100年前から来たってことは、既に知ってる人のほとんどはこの世から居なくなってるってことなんだから……)
もしかするとーーシアンが見せるあの陰りのない底抜けた明るさは、人知れず抱える孤独感の裏返しなのかもしれない。
「しっかし……スェパルトラ山も広かったが、地下もまた相当に広大だなぁ……。そもそもアルカ君、君は件のお宝の位置を把握しているのかい?」
「フフン!素人知識で恐縮ですけど、この手は封印は東方大陸に古くから存在する“イン”と“ヨウ”に基づくと相場が決まってるんです!既に『天の至宝』のおおまかな位置は割り出せてますから、あとはそのちょうど真下に向かえば目的地へ到着するって寸法です!」
「おー、東方大陸の古代哲学まで網羅しているとは……。君は私の思ってる以上に優秀だねぇ。……ところで、その知識の
「……コミックと映画です」
「・・・まあ、いいだろう」
そんな何とも言えない会話を交わしながらも、二人は危険なポケモンに襲われる事も、どちらか一方による裏切りに遭う事もなく、着実に地下深くへと進んでいく。
そしてーーー
「ーー!!! 止まってくださいっ!!クリスさんっ!!!」
ある特定の地点に到達した直後、アルカはハッと目を見開き、二人分の足を止めさせた。
暗く湿った地下の空気の中に立ち込めていたのは、単純でありながらも深い奥ゆかしさを持つ、仄かな香り。
芳醇で香ばしいその匂いが、アルカの鼻腔をくすぐる。
「この匂いって……コーヒー……!?」
鼻腔をくすぐるのは、アルカもよく知る芳醇なコーヒーの香り。
しかし、周囲に生い茂る木々を手際よく調べたクリスは、静かに首を横に振った。
「どうやら、匂いの元はここ一帯に生えている“コーヒーの木”のようだね。……うん、実に素晴らしい品質だ。この豆で淹れたコーヒーなら、極上の一杯が出来上がるだろう」
「コーヒー……。そういえばーーー」
“コーヒー”という単語に思考の糸が強く引き寄せられ、アルカの脳裏にシアンの言葉が鮮明に蘇る。
ーー『コーヒーで思い出したんだよ……!リザードンのリザさん……っ!!それが、ボクたちの仲間の名前っ!!!』
シアンはかつて、“コーヒー”の響きから『リザさん』というリザードンの存在を思い出した。そして今、目の前には異様なほど青々と生い茂るコーヒーの木々が存在している。
これらの符合が、単なる偶然であるとは到底思えなかった。
そもそも、このような陽の光も届かぬ薄暗い地下渓谷の奥底で、コーヒーの木が整然と群生している事自体が異常なのだから。
「…… どうやら、我々は思った以上に“真相”の近くまで辿り着いているようだね。そして……私のトレジャーハンターとしての勘は、この大岩が怪しいと告げている」
アルカの気づきを察したクリスは、どこか芝居がかった口調で語りながら、木々の奥地に聳え立つ巨大な岩へと指をさした。
「……クリスさんは爆弾か何かを持ってないんですか?」
「いーや?流石の私もそこまで準備万端じゃあない。そもそも、そんな物騒な物を日頃から持ち運んでいれば、即座にジュンサーさんとの
「ハァ……もういいです。……来て、バンギラス」
アルカは深く溜め息を吐くと、腰のモンスターボールを取り外して地面へと投げつけた。
ポンッ!!!
軽い解錠音が静かな地下に木霊させ、ボールから解き放たれた眩い光線の中から現れたのはーーー
「・・・んらー」
こだわりの強そうなイカついサングラスを装着しているにも関わらず、鼻水を垂らし、どこか気の抜けた鳴き声を漏らすバンギラスだった。
「ほー、こりゃすごい! まさか、育成が難しいと言われる“大器晩成型”のポケモンを連れているとはねぇ」
「……知り合いに腕の良いポケモンブリーダーが居るので、代わりに育ててもらっただけです。それより、危険ですから数メートルほど離れていてください」
「はい、はい……っと」
クリスが素直に距離を取るのを確認すると、アルカは表情を引き締め、目の前の大岩へと鋭い視線を向けた。
主人の視線に気付いたバンギラスもまたずしりと踏み込み、巨体から発せられる強烈な圧力が地下の空気を激しく震わせる。
「バンギラス!!《破壊光線》!!!」
「ンーーーラァァァァァ!!!!!」
肚の底から響く怒号と共に、バンギラスの開かれた口腔へ破滅的な光が爆発的に収束していく。
直後、解き放たれた極太の光線が地下洞窟の暗闇を激しく切り裂き、目前の大岩へと容赦なく着弾した。
ーードッカァァァァァン!!!!!
バンギラスの放った《破壊光線》を真正面から浴びた大岩は、爆音と共に粉々に砕け散り、跡形もなく吹き飛ばされた。
まるで侵入者の立ち入りを拒むかのように立ちはだかっていた巨岩。その消失と同時に立ち込める土煙の向こう側にはーーー
「ビンゴです。やはり、更に下へ続く道が隠されていましたね」
クリスの直感は見事に的中し、立ち込める土煙の向こうから、地下深くへと伸びる古びた人工の階段が姿を現した。
「それにしても……バンギラスが《破壊光線》を使うとは珍しいな。この子なら、もっと適した技があるだろうに」
「あー……それには、割と深い事情がありまして……」
クリスが放った純粋な疑問に対し、アルカは何やら気まずそうに言葉を濁す。
何か言いづらい事情があるのだと察したクリスは、あえて追及することなく階段へと足を踏み出した。
するとーーー
ーー『ウ”ァル……ガァアアアァァッッ!!!!』
突如として数十メートルも離れた地上から響き渡る、この世の存在とは思えぬ程おぞましい咆哮。
直後、凄まじい衝撃と共に強烈な地響きが地下通路全体を揺らし始めた。
「わぁぁぁぁぁ!!!?な、何が起こって……!!?」
「ーー!!! 今すぐ、そこから離れるんだッ!!!アルカ君ッ!!!」
「え……!?」
ーーパキ……
いち早く異変を察知したクリスが凄まじい悲鳴のような警告を飛ばすも、時すでに遅し。
「嘘でしょ……!じ、地面がぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
アルカが足をつけていた岩盤が、まるで熟した果実のように真っ二つへ亀裂を走らせる。
次の瞬間、足場そのものが底抜け、強烈な浮遊感がアルカの全身を襲った。
「うわぁぁぁぁぁーーーっ!?!?!?」
「アルカ君……!アルカくーーんッ!!!!!」
クリスの悲痛な叫びが洞窟の奥へ虚しく響き渡る中……暗闇にて重力加速度に身を任せながら、アルカはどこか他人事のように思った。
ーーあっ、僕……普通に死んだ。
……と。
ーーーーー
これまでの冒険を日記に記録しますか?
はい◀︎
いいえ
アルカは三途の川を渡る数秒前を日記に記録した!
ーーーーー
ポケエモの執筆にあたって、影響を受けた作品は数多くあり、特に作者最推しのイラストレーターである、『あすてろid』様が描く幻想的なポケモン絵と、モ様が描いた優美なポケモン絵……それに加えて、楽曲+特撮+ゲームなどなど……作者の趣味がごちゃ混ぜとなって抽出されたのが、今作だったりします。
特に上記にイラストレーター様は素晴らしい作品ばかりですので、興味のある方は、ぜひリンク先から閲覧してみてください!!!
あすてろid様: https://www.pixiv.net/users/2033916/artworks
モ様: https://www.pixiv.net/users/7411932/artworks