ピカチュウ仮面!!! -The Heroic Tale of Yellow Mask- 作:月兎タンク
もしも気になるって方がいたら、感想で教えてください!その際は原作表記でいくかのアンケートを取ります!
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CHARACTER SELECT
▶︎SAKURAGI ARUKA
SIAN
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……僕は、これまでの人生でいくつもの『あり得ない』と遭遇してきた。
それもそうか。ただでさえ、『あり得ない』の擬人化のような存在であるポケモンが、ゴロゴロ居る世界なんだ。一つや二つ程度で収まる筈がない。
けど……。
「そういやキミって、アローラのガラガラに似てるけど、もしかして親戚だったりする?」
『ジュピラ……!ルロォォォォォイイッ!!!!!』
「“ルロォイ”?そんなポケモンいたっけ……?」
目の前で起きている『あり得ない』を素直に受け入れられるほど……。僕は利口でもなければ、素直でもない。
だって……!
「みてみて!ピカさんっ!手から蒼い炎が出たよっ!!ガチエモにカッコよくないっ!?」
「だ〜か〜ら〜!そんな事イチイチ、報告すんなっての!口より手を動かせってんだ!オイラみてーになッ!!!」
蒼い炎を出してる人間と喋るピカチュウがあの怪物と互角以上に戦ってるんだもんっ!!!
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第4話:『HERO -君が望む未来を教えてよ-』
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なんだろう……。ここって……『ポケットモンスター』の世界であって、『○ンハン』とか『ゼ○伝』の世界じゃないよね?
主役はポケモンであって、人は常に一歩引いた立場に居なきゃいけないよね……?
・・・って何を言ってるんだ僕は……。そもそも、『モ○ハン』や『ゼ○伝』って何?
『ルロォラァァァァ!!!!』
……はっ!マズい……!二対一は手に余ると判断したのか、怪物の矛先がピカチュウに向いた……!
ダメだっ!喋るピカチュウでも、所詮はピカチュウ……!彼単体じゃーーー
「ピカカカッ!!!その骨棍棒がオマエさんの武器かいッ!?オイラにゃ……止まって見えるぜッ!!!」
『ルロッ!?』
ーーズドンッ!!!
『ルグホォ!?』
「もう一発ッ!!!デェリャァァァァァ!!!!!」
ーーズガァァァァァン!!!!
『ルグァァ……!』
嘘だろ……っ!?怪物が骨棍棒を振り下ろすよりも先に怪物の下顎に打撃を与えた……!?
しかも、ガラガラの《フレアドライブ》ですら有効打にならなかった怪物をグラつかせるなんて……!パワーもピカチュウとは思えない……っ!
「ピカァ?オマエさん今、オイラのことを『速ェ』って言ったか?悪いが……
敵の予想外の火力を前に、怪物に生まれてしまった致命的な隙……。ピカチュウはこの隙を逃さず、更なる追撃へと移った。
「もっと速くしてくぜッ!!《疾風迅雷》ッ!!!」
地面を蹴ると同時に、ピカチュウの姿が僕の視界から消えた。
次の視界に入った時には、既にピカチュウは怪物の懐に潜り込み、高速ラッシュを打ち込んでいる最中だった。
「連打連打連打連打連打連打ァァァァァ!!!!!ピッピカ、チュウーーーッ!!!」
『ルゴァ!!!?』
ズシンッ!
ラッシュのダメージに耐え切れなくなった怪物は、遂に大きな音を立てて尻もちを付いた。
それ程までに小さな手から繰り出される一撃一撃は、僕の想像を絶する威力なんだろう。
それにしても凄いなあの技……。《電光石火》の燃費の良さと《神速》の威力を両立させた、まさに先制技の完成系だ……。
「やっぱりスゴイね〜、ピカさんの戦闘力は。コレはボクが加勢しなくても何とかなる感じ?」
「……いや、
……何言ってるか全っ然分かんないや……。
さっきまでの戦闘中の声は“ロトフィック”で拾ってたけど、ラッシュの衝撃で10メートル以上離れちゃったせいで、流石にここまで離れた距離からじゃ、ロクな声も拾えない。
「おいデカブツ、とっと起きろ。オマエさんは
『……ルロッ!!!』
マジか……!あれだけの攻撃を喰らっても、まだピンピンしてる……!
薄々分かってたことだけど、やっぱり、あの怪物の耐久力は尋常じゃない……!
『ジュピラ……!』
……けど、明らかに様子がおかしいぞ?さっきまで打撃主体だったにも関わらず、突然ソラくんたちから距離を取り始めた。
パッと見、逃走を企ててるように見えるけど、かといって逃げる雰囲気でもない。一体何を……?
『ジュラッシャァァァァァ!!!!!』
「うっわ……マジか……。キミってそんなこともできんの……!?」
そんな疑問の答えは、すぐに答え合わせがあった。
距離を取った怪物は、四本中一本の骨棍棒を天に翳すと、なんとその先端から漆黒のエネルギー弾が生成される。
一見すると、《波動弾》に準ずる技……。だけど、《オーバーヒート(仮)》の件から考えても、ロクでもない効果が備わっているのは間違いない。
『ルゥ……ラァァァァァ!!!!!』
ある程度エネルギーが溜まったところで、怪物は振りかぶった骨棍棒を勢いよく振り下ろした。
同時に解き放たれた漆黒の波動弾は、挑戦的に射出され今度の矛先……ソラくんに襲い掛かる。
プロ野球選手の投手が素人に思えてしまう程のスピードで、ソラくんに向かう波動弾の大きさは精々、怪物の掌に収まる程度のサイズ……。
それでも、肌で感じる圧力からは、大型トラック一台……下手すればビル一棟粉砕できてもおかしくない威力を感じる。
ソラくんがどれだけの防御力を持っているかは分からない。ただ……抱えられた際に皮膚から伝わった感触は、人間の
僕は武術や格闘術はそこまで詳しいって訳じゃない。
……でも、一連の攻防を軽く見ただけで、ピカさんとは違ってソラくんはそこまでスピードに優れてる戦士でないことくらいは分かった。
刻一刻と人1人の命を容易く奪いかねない魔弾がソラくんに迫る中……僕はただ、叫んだ。
「危ないっ!!!ソラくんっ!!!」
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CHARACTER SELECT
SAKURAGI ARUKA
▶︎SIAN
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『ルゥ……ラァァァァァ!!!!!』
……ダ〜メだ。何度試そうとしても、やっぱり理解できない。
さっきから、このアーク・ポケモンの攻撃に感じる感情は“怒り”や“憎しみ”といった負の感情ばっかり……。
攻撃を加えたボクたちを恨むのならまだいいけど、その他大勢の生命体も同類と言わんばかりに、文字通り『全て』に恨んでるし、怒ってる。
……どうして
一体……罪もない生命がキミに何をしたっていうの?
ーーー『もういい……。もう……いいんだよ……。だから……“おやすみ”』
………。
確かにボクは記憶喪失だ。名前は思い出せても姓は思い出せてないし、ピカさん以外の仲間たちとの思い出だって未だにアヤフヤだ。
……そんな記憶喪失のボクでも分かることはある。
全身から溢れ出す蒼い焔はーーーーー
間違いなくボク自身の“怒り”だ。
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CHARACTER SELECT
▶︎SAKURAGI ARUKA
SIAN
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「危ないっ!!!ソラくんっ!!!」
ダメだ……!ただ見ているだけじゃ、もどかしいにもほどがある……っ!
今すぐにでもソラくんを助けに行きたい……っ!けど、僕の走力じゃ到底間に合わないし、そもそも僕が加勢に入ったところで何になる……っ!?
……だからといって、このまま見捨てることもできない。
無駄だと分かっていながらも、僕は意を決して岩陰から飛び出して、ソラくんの元へ向かった。
すると……
「………!」
「………」
ほんの一瞬……本当に瞬き程度の一瞬だけど……ソラくんと視線が合った。
この一瞬では、互いに一切の言葉は交わしていない。けど……
ーー『心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ』
……そう言って、仮面の奥で微笑んでるーーそんな気がした。
「……行くよ」
すると、ソラくんは右手を前方へ突き出し、人差し指と小指以外は全て折り畳んだ状態ーーーそう……最も適切な表現をするなら、ピカチュウの頭の形を思わせる手の形を作る。
瞬間、ソラくんの全身から溢れ出る蒼い炎が、人差し指と小指の間に収束していき、指の間に小さなエネルギーの塊が発生する。
その右手の形状はまるでーー“砲身”……それ以外の表現が見つからない。
『ジュロ……!』
怪物も、ソラくんの右手の異変に気づいたようで急いで回避の姿勢を取るけどーー
「ピカカカッ!!!させるかよォ!!!《ボルテッ拳》ッ!!!!!」
気づいた時には、『全て』が遅かった。
『グロォガァ!?』
ピカチュウの稲妻をまとった鉄拳によって、怪物は地面へ叩きつけられ、せっかくの回避行動も無駄に終わる。
「ナイス!ピカさんっ!!そんじゃ……“ぶっ放しタイム”といこうかっ!!!」
ピカチュウが作った一瞬の隙。ソラくんはその機を逃さず、蒼炎を纏わせた右手を魔弾の真正面へと
魔弾の直撃まであと数センチーー秒ごとに近づく『死』と背中合わせの距離で、ソラくん静かに、けれど絶対的な自信を込めて小さく呟いた。
「《
その名を呟いた瞬間、右手の砲身から解き放たれた蒼炎と雷撃の束が、漆黒の魔弾を簡単に掻き消す。
あれだけの質量を誇っていた筈の魔弾を貫通した、え〜と……“レールガン”?ーーは直線上に居た怪物の胸元へ着弾して……。
ーーズドォォォンッ!!!!!
「うわぁっ!!??」
半径30メートル以内の領域に、まるで空間ごと削り取るような凄まじい爆音を響かせる。
その轟音は、まるですぐ隣に落雷が発生したかのように激しい音……。所詮、人間でしかない僕は反射的に身を屈めてしまう。
『ジュ……ラ……ッ!』
すると、怪物の苦悶の声が聞こえたから不思議に思って、声の方へ視線を向ける。
そこには驚くことに右半身が消滅した怪物が片膝を地面に突いていた。……いや、誇張表現とかじゃなくて、文字通りの意味で……。
多分……ソラくんが放った蒼炎の破壊光線に丸ごと抉られたんだと思う。
「やった……っ!」
いかに規格外の存在である怪物であっても、右半身がなければ戦闘能力は大きく低下する。
ましてや、五体満足の状態でもソラくんたちに苦戦する実力なんだ。もうここまでくれば、“討伐”はほぼほぼ確定したようなもの……!
僕は小さくガッツポーズをしてソラくんたちの“勝利”を確信する。
ーーーだけど……
「あー……アルカくん……。それは“フラグ”だって……」
「へ……?」
『ルオォッ!!!!』
またしても、僕の怪物に対する“規格外”の認識が甘いすぎたことを嫌でも実感させられる。
苦悶の表情を浮かべた怪物の身体から、突如として黒いモヤのようなオーラが立ち昇ったと思うと、次の瞬間には断面から抉られた部分が生えてきて、右半身が再生してしまった。
「嘘だろ……っ!?せっかく破壊したの右半身が……あっという間に再生しちゃった……!」
『ルゥワァァァァァァ!!!!!!』
うっわ……!当たり前だけど、メチャクチャ怒ってる……!
まるでプロのドラマーみたいに、ガムシャラに骨棍棒を振り回すその姿は、鬼を思わせる外見も相まって、まさに“響く鬼”って感じだ……!
……けど、どうしてだろう……?
確かに怪物は負傷箇所を完治させた筈なのに、その雰囲気からは『こんな筈では……!』みたいな焦燥感を抱いているようにも見える。
『ルロォガァァァァァァァーーーッ!!!!!!』
その刹那、突然怪物が空高く飛翔すると、どんな原理を使ったのかは分からないけど、翼もないのに空中で対空する。
そして、全ての骨棍棒を天へ掲げると、凄まじいスピードでさっきの魔弾を超える大きさのエネルギー弾が作り出される。
そのデカさは……既に直径20メートルを超えている……。
「あ〜ン?失敗作した作戦のマイナーチェンジかァ?さっきの失敗で、オマエさんの“波動”は
「・・・いや!ちょっと待って!!!」
「・・・え?何……これ……?」
ソラくんが“何か”に気づいたとほぼ同時刻に僕もまた、周囲に起きた異変に気づいた。
「植物が……木々が……!ドンドン黒ずんで枯れていく……!?」
怪物が漆黒の魔弾を生み出した直後から周辺の植物からドス黒いオーラが抽出されて、魔弾へと吸収されていく。
しかもたった数秒でこの大きさ……。生成速度と大きさから察するに……吸収範囲は最低でも数百メートルーーー下手すればキロ単位の可能性だってある……!
ビーッ!ビーッ!
もはや世界の終わりと言わんばかりの光景を前に唖然する中…… 僕の腰から鳴り響いた甲高いブザーにより、僕の意識は現実世界へ連れ戻される。
「え……っ!?なんで……!?」
今度は現実を飲み込むことができなかった。
だって……警告音が鳴っているのは
『警告!警告!登録ポケモン全てのバイタルが急激に低下中!!!繰り返します!登録ポケモン全てのバイタルが急激に低下中!!!直ちに最寄りのポケモンセンターへ向かってください!!!』
バカな……っ!?重症を負ったガラガラならまだしも、戦闘に出していないポケモンまでも……!?
・・・ーー!!! まさか……!
「ソラくんっ!!!」
「分かってるっ!アイツ……草木だけじゃなくて……!ココら一帯に存在する全ての生命体から、生命エネルギーを吸収してる……っ!」
「チッ……!このままじゃ……ココら一帯はペンペン草も生えねェ、死の大地と化すぞ……ッ!!!」
最悪だ……。どうして……そんな簡単に
僕たちが……
「もう……ダメだ……」
もはやどう足掻いてもどうにもならない“絶対的な絶望”を前に僕は膝から崩れ落ちる。
確かにソラくんたちは強い。仮にポケモンリーグに挑戦すれば、瞬く間に殿堂入りするだろう。それくらい……彼らは強い。
……けど。
ピカチュウの《ボルテッ拳》でも。
ソラくんの《レールガン》でも。
彼らがどんなに強くたって、毎秒ごとに大きくなってる超巨大隕石級の魔弾を打ち抜ける
「……なに、項垂れてるだい?アルカくん?」
「ソラくん……!」
そんな絶対絶命の絶望に打ちひしがれている最中。
ソラくんは背後の怪物へ完全に背を向け、仮面の奥に穏やかな光を宿しながら、怯える僕と視線を合わせるように膝を折って真っ直ぐに手を差し伸べていた。
「ダメだよ、ソラくん……。君は今、戦闘中……。役立たずの僕に構ってる余裕なんかないだろ……!」
「ダイジョーブ!あのアーク・ポケモンは、確実にボクたちを殺せる 多分、あと10秒くらいは猶予があるよ〜」
「・・・じゃあ……今のうちに怪物に攻撃して怯ませれば、大技を阻止できるんじゃないかな……?」
「ん〜……。それは少しキビしいかな?ピカさんは近接主体で特殊技は苦手だし、何よりあの距離じゃ、《
「……そうだよ!そうなんだよっ!!!」
自分でも恐怖を誤魔化しきれなくなった瞬間、僕の中で張り詰めていたナニカがブツリと切れた。
気づいた時にはソラくんの胸ぐらを掴み、自分でも驚くほどの怒号を撒き散らしていた。
「あの怪物は……規格外だ……!常識が一切通用しない強さ……!それに再生能力だってある……っ!そんなバケモノ相手に……どう立ちむかえっていうんだよ……!」
分かってる……。頭の中では本当は分かってるんだ……。
今ここでソラくんに当たったって何一つ解決にはならない。むしろ、命を救ってもらった恩を仇で返す、最悪最低の行為だ。
……だけど、そうでもしなきゃ、押し寄せる恐怖と無力感で胸が押し潰されそうだったんだ……。
ーーーでも、ソラくんは僕の“理不尽”を前にしても……“ヒーロー”であり続けた。
「……大丈夫だよ、アルカくん」
胸ぐらを掴み、必死に肩を上下させる僕の手の上に、ソラくんの手がそっと重ねられる。
あれだけ激しい怒号を叩きつけられたというのに、彼は怒るでも焦るでもなく、取り乱す僕を落ち着かせるように……仮面の奥で静かに、けれど包み込むような優しさで微笑んでいた。
「分かるよ。キミの“焦り”、“恐怖”、“無力感”……。今……キミは“自分”を見失ってる」
……そうだよ。その通りだよ……!僕が本当に怒ってるのは、ソラくんでも怪物でもない……!
こんな時に、何一つ動けない自分自身に怒ってるんだよ……!
「恥じることはないよ。誰だって……どうしようもない絶望を前にすれば、正気を失っちゃう。……だから、特別なおまじないを教えてあげる!」
「おまじない……?」
「こーゆー時はね…………コレから先の“未来”を思い浮かべるんだ」
「・・・はぁ?」
おまじないの予想外の正体を耳にし、僕は思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
だってそうじゃん……。僕が絶望している最大の理由は、今まさにその“未来”が潰されようとしているからだ。こんな生きて帰れるかも分からない土壇場で、先のことを思い浮かべたって気休めにすらなりやしないんだから……。
「これから潰される“未来”なんて……想像しても意味はないじゃないか……」
「守るよ。守ってみせる。ボクとピカさんで、キミの大切な“未来”を。だって、それが……!」
握られた僕の手に更に力が込められる。そこから伝わってきたのは、震える僕を包み込む温もりと、理不尽な悪意に満ちた世界をねじ伏せるための揺るぎない決意だった。
どれほど強大な敵を前にしようとも、決して折れない意志。仮面の下に秘められた誇り高さが、言葉となって熱く胸を打つ。
「ヒーローの役目だからっ!」
……なんでなのかな……?ソラくんの身長は僕よりもほんの少し大きい程度なのに……この場にいる誰よりも大きく見えた。
「ヒーロー……」
『ルゥロォォォォォイッ!!!!!』
天地を震わせる邪悪な咆哮……。
エネルギーチャージが完了したことに気づいたソラくんは、僕から背を向け、ダイヤモンドのように硬い決意とともに、怪物と対峙する。
「この先はボクたちに任せて。だから……っ!アルカくん、キミが思い描く“未来”を……ボクたちに教えてっ!!!」
……ずっと、僕は“未来”を望んじゃいけないって思ってた……。
「僕は……。僕は……!」
けど……!こんな僕でも……もう一度、一歩を踏み出せるっていうのなら……!
「ーーー未来……!」
「聞こえないっ!もっと大きな声で!!!」
「理不尽な悪意によって……!誰も悲しむことのない未来ーーーっ!!!!!!」
僕は……!これから先の“未来”を見てみたい……っ!
「ふふ……っ!やっぱりキミは……!誰よりも“最っ高”で、“良い人”じゃん……!」
「ピカカカッ!!!んじゃ……“
怪物が漆黒の魔弾を放つのとほぼ同時。ピカチュウと並び立ったソラくんは、一切怯むことなく謎のデバイスを構えた。
そして間髪入れずに、グリップにあるスイッチを二度押し込むーーー
【フィニッシュタイム!】
滅びの騒音すらも切り裂き、まるで特撮作品のおもちゃのような、ハイテンションな電子音が、僕の脳内に直接響き渡った。
「さぁーてと!ハッピーエンドで締めようかっ!!!」
決め台詞を言い放つと、ソラくんは左手に持っていた
【ロード!“エモーショナルプラズマ”!!!】
再び脳内に響き渡るハイテンションな電子音。
直後、僕の目の前であり得ない光景が巻き起こる。
「へぇっ!?う、うっそ……!?」
なんとピカチュウがそのままデバイスへと吸い込まれ、ソラくんの全身が蒼と黄色の眩い光に包み込まれたんだ……!
「コレで……!フィニッシュだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
頭上から襲い来る漆黒の超巨大魔弾ーーその真っ芯へ向けてデバイスの剣先を突き立てると、ソラくんは渾身の力で三度スイッチを押し込んだ……!
「「
必殺の一撃を叫ぶその音波は、重なる二つの声となって空を切り裂く。
……不思議だよね。僕の耳に届いたその声はソラくんだけでなく、デバイスに吸い込まれたはずのピカチュウの声が、ぴったりと重なり合って聞こえたんだから。
ーーズグァァァァァァァァンッ!!!!
ソラくんから解き放たれた蒼と黄の極太ビームが、大気を激しく震わせながら破滅の黒球と真っ向からぶつかり合う。
見た目のサイズだけで言えば、黒球の方が遥かに巨大だ……。
『ルルガァ!?』
だけど、なんでだろう……。さっきまでの絶望が嘘のように……今の僕にはあの怪物がソラくん……いや、“ヒーロー”に勝てる『
『今だ、相棒ッ!!!全力全開……!フルスロットルだァァァァァァーーーーッ!!!!!!』
「波あぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!!」
一人と一匹の雄叫びとともに、極太のビームは更にその光量を増し、巨大な黒球の表面へと瞬く間に無数の亀裂を走らせていく……!
「「貫けぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」
世界の“未来”と自身の“全て”を賭したヒーローの一撃が、遂に邪悪な黒球を真っ向から貫通しーーー
『ルロォギャァァァァァァーーー!!!???』
そのまま怪物の身体ごと撃滅の閃光が突き抜けた。
ーーチュドォォォォォンッ!!!!!
閃光に包まれた怪物は、断末魔の叫びを残して夜空の中でけたたましく爆散した。
「今度こそ……やったのか……?」
思わず呟いた一言がまた“フラグ”になるかもしれない、と慌てて手で口を塞ぐ。……けれど、怪物が再び僕たちの前に姿を現すことは、終ぞなかった。
爆煙が夜風にさらわれて消えていくと、空から無数の黄金の光粒子が降り注いでくる。
月明かりに照らされた夜空をバックに舞い散るその光景は、まるで流星群のようだ。
「あ……っ!草木が……!」
降り注ぐ光に触れた瞬間、黒ずんで枯れ果てていたはずの草木や森林が、息を吹き返すように青々と生気を取り戻していく……!
ビーッ!ビーッ!
『報告。登録ポケモンのバイタルが安定しました。生命維持モードを解除します』
腰の端末から流れるアナウンスを聞き、僕はようやく理解した。
理不尽に奪われた弱者の命や未来は、あの怪物が“返した”んじゃない。ソラくんとピカチュウが……あの二人が命がけで“取り返して”くれたんだ、と。
「しゃあッ!討伐完了ッ!!相棒、勝ち鬨をあげっか!!!」
「オッケー!ピカさんっ!100年ぶりにド派手にいこうか!!」
「「ピカっと解決っ!オールオッケー!!!」」
無事、世界を崩壊の危機から守り抜いたヒーローたちは、バシッとポーズを決めて決め台詞の勝ち鬨をあげる。
月光に照らし出された二人の立ち姿は……僕がこれまでの人生で目にした何よりも美しく、そして何よりも偉大に見えた。
「……ソラくん……」
「あっ!アルカくん!ボクたちの活躍見てくれた?だから言ったでしょ?ボクたちがーーー」
ギュッ!
「……アルカくん……?」
「った……!ソラくんが無事でいてくれて……!本当に良かったぁ……!」
気づけば僕は、無意識のうちにソラくんへしがみつくように抱きついていた。
あれだけひどい八つ当たりをした手前、あまりにも勝手で調子がいいのは分かっている。……それでも、世界滅亡の危機が去ったことなんかより、目の前のソラくんが生きて笑ってくれていることに、安堵の涙が止まらなかったんだ。
「ピカカカッ!お熱いねェ、相棒もちょっと見ねェ間にいいダチができたじゃねェかッ!!!」
「うんっ!!記憶のないボクを助けてくれた……最っ高の友達!!!」
「………」
「ん?どったの、アルカくん?急に顔が青ざめて?」
え〜と……本当にごめんね、ソラくん……。
最後に一言だけ言わせてもらっていいかなぁ……?
「喋るピカチュウ……。やっぱりこれって……夢だぁ……!」
バタンッ!
「ちょ……っ!?アルカくん!?アルカくーーーんっ!!!???」
土壇場の緊張から解放された途端、喋るピカチュウという最大級の『あり得ない』を思い出し、僕の脳キャパは完全に限界を迎えてオーバーヒートを起こした。
薄れゆく視界の隅で、大慌てで僕の名前を叫ぶソラくんの顔が見えた気がしたけれどーーー僕の意識は、そこで完全に途切れた。
ーーーーー
これまでの冒険を日記に記録しますか?
はい◀︎
いいえ
アルカは正体不明のヒーローとの初遭遇を日記に記録した!
ーーーーー
ーーーーー
《??? PHASE》
ーーーーー
ーー『ルロォギャァァァァァァーーー!!!???』
アルカ達の前に立ち塞がった、現存するどのポケモンとも酷似しない謎の怪物ーー“アーク・ポケモン”。
その異形なる存在は確かに、シアンとその相棒ピカさんの放った“1000万ボルト”によって爆散したーー
怪物が爆散した刹那、溢れ出た生命エネルギーの光粒子とは明らかに異なる、禍々しい“影”がどこかへ飛び去ったことに、満身創痍のヒーロー達が気付く事はなかった。
飛び去った“影”は、何らかの意志に吸い寄せられるように、真っ暗な森林の奥深くへと無我夢中に疾走する。
そしてーー。
「ご安心を。貴方が還るべき場所は“ココ”です」
夜の静寂を溶かすような、甘く妖しい声。
漆黒の闇から差し出された手に握られていたのは、一枚の白紙のカード。
まるで求める場所へ辿り着いたかのように、“影”は吸い寄せられてカードへと収束していく。
瞬間、白紙だったカードに怪物の姿が色鮮やかに刻印される。
平面の世界に閉じ込められ、静止しながらもなお猛々しく躍動する怪物の足元には、今や滅びた超古代文字でこう記されていた。
ーーー『ユベル・リズガ』と。
「まずは一枚。上出来だ」
暗い森林に溶け込む、どこか妖しい声ーー。
その持ち主である怪盗を思わせる和洋折衷の衣装を着こなした黒髪の青年は、手に入れたカードを腰のホルダーへ静かに収めると、気配すら残さず闇の中へと歩を進める。
その瞳に映る“未来”は、ただ一つーーー
「ウェンヒッヒ!遂に始まるんだね〜!“あのお方”の復活への儀式がさぁっ!!!」
「長かった……!我ら一同、この日をどれだけ待ち望んだことか……!!」
「そうだ。この世界はあまりにも長い間、“虚構”に覆われていた……。だからこそ、我々は“真実”を掘り返さなければならない。忌まわしき神々に塗り潰された“英雄”の名を……!」
暗闇の中、青年は頭上に浮かぶ満月を仰ぎ見ると、静かに……だが酷く深く微笑んだ。
「さあ、始めようか……!
苦労して怪物ーーユベル・リズガを倒せたと思ったら、闇夜に紛れて現れた凶悪極まりないアーク・ポケモンを復活させた黒幕達……!
次回、第一話『ユベル・リズガ編』完結!
【用語解説】
■アーク・ポケモン
《概要》
本作の敵勢力であり、特撮作品でいうところの今週の怪人・怪獣枠。
かつて、記憶を失う前のシアンとその仲間達によって封印されていたが、何らかの要因によって現代に復活。同じく復活を果たしたシアンと再び熾烈な戦いを繰り広げることとなる。
今週の怪獣枠と聞いて侮る事なかれ。一体一体が世界を滅ぼしかねない強力な力を持っており、その実態は生物というよりは「人類の理解と知性の範疇を大きく超えた“自然災害”そのもの」に近い。
分かりやすくゲームで例えるならば、アーク・ポケモンは「中ボス」や「大ボス」クラスの存在。