クールな美少女に脅されて秘密の恋人になりました。   作:めろんちゃん

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第4話お昼ご飯まで一緒に食べるんですか!?

 

 昼休み。

 

 私はいつものように、美咲と一緒にお昼ご飯を食べようとしていた。

 

「ひなた、今日のお弁当なに?」

 

「今日は卵焼き入ってるよ!」

 

「じゃあ一個ちょうだい」

 

「え〜前もあげたじゃん」

 

 そんな話をしながら、お弁当箱を開こうとした、そのときだった。

 

「ひなた」

 

「……え?」

 

 聞き覚えのある声。

 

 振り返ると、そこには月城玲奈が立っていた。

 

「一緒にお昼を食べたい」

 

「…………」

 

 心臓が跳ねた。

 

 周囲にはクラスメイトがたくさんいる。

 

「え、月城さん?」

 

「橘さんとお昼食べるの?」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 

 私は慌てて玲奈のそばへ駆け寄った。

 

「ちょ、ちょっと……! ここでそういうこと言わないでよ!」

 

「どうして?」

 

「私たちが付き合ってるの、秘密なんだから!」

 

「私は別に、知られても困らないけど」

 

「私は困るの!」

 

 思わず声が大きくなってしまい、周囲の視線が集まる。

 

「ほら、見られてる!」

 

「なら、早く行こう」

 

「どこに?」

 

「誰もいないところ」

 

 玲奈はそう言って、私の手首を掴んだ。

 

「ちょっと、玲奈!?」

 

「静かに」

 

「二人きりになれればいいんでしょ?」

 

「そういう問題じゃないの!」

 

 私は周囲を気にしながら、玲奈に引っ張られて教室を出た。

 

 ◇

 

 連れてこられたのは、ほとんど使われていない空き教室だった。

 

 窓から差し込む日差しが、教室の中を柔らかく照らしている。

 

「ここなら誰にも見られない」

 

「……本当に誰も来ない?」

 

「大丈夫」

 

「玲奈は、付き合ってることがバレても平気なの?」

 

「うん」

 

 玲奈は迷いなく頷いた。

 

「どうして?」

 

「隠す理由がないから」

 

「私はあるの!」

 

「ひなたは、知られたくないの?」

 

「だって、急に月城さんと付き合ってるなんて知られたら、みんなに何を言われるか分からないし……」

 

「私は、ひなたと付き合っていることを知られてもいい」

 

「……玲奈はそうでも、私はまだ無理なの」

 

 玲奈は少し考えるように私を見つめた。

 

「分かった」

 

「本当に?」

 

「ひなたが隠したいなら、協力する」

 

「……ありがとう」

 

「でも、二人きりのときは我慢しなくていいでしょう?」

 

「え?」

 

 玲奈はそう言って、自分のお弁当を机の上に置いた。

 

「ここでは恋人らしくしてもいい」

 

「…………」

 

 その言い方は、ずるい。

 

 私は何も言えず、自分のお弁当を開いた。

 

「じゃあ、食べよう」

 

「うん」

 

 向かい合って座る。

 

 それだけなのに、なんだか妙に緊張する。

 

「……なんか変な感じ」

 

「何が?」

 

「学校で玲奈と二人でお昼を食べてるの」

 

「恋人だから?」

 

「…………」

 

 そういうことをさらっと言うのも、ずるい。

 

「……そういうの、まだ慣れてないから」

 

「なら、少しずつ慣れて」

 

 玲奈が微笑む。

 

 私は慌ててお弁当のおかずに箸を伸ばした。

 

 しばらく二人でお弁当を食べる。

 

 静かな空き教室。

 

 聞こえるのは、窓の外から聞こえてくる生徒たちの声くらい。

 

 なんだか不思議と落ち着く。

 

 ……こういう時間も悪くないかも。

 

 そう思ったときだった。

 

「ひなた」

 

「ん?」

 

 玲奈が箸で卵焼きを一つつまんだ。

 

「これ、食べて」

 

「……え?」

 

「はい」

 

 玲奈が卵焼きを私の目の前に差し出してくる。

 

「…………」

 

 状況を理解するまで、数秒かかった。

 

「……もしかして」

 

「うん」

 

 玲奈が平然と頷く。

 

「食べさせてあげる」

 

「…………っ!」

 

「ほら」

 

「いやいやいや!」

 

 私は慌てて首を横に振る。

 

「ここ学校だよ!?」

 

「でも、この場所には誰もいない」

 

「そういう問題じゃないって!」

 

「ひなたは、私と付き合っていることを隠したいんでしょ?」

 

「そうだけど……」

 

「なら、ここでなら問題ない」

 

「問題はあるよ!」

 

「じゃあ、食べない?」

 

 玲奈が少しだけ首を傾ける。

 

「……食べてほしかった」

 

「うっ……」

 

 その顔はずるい。

 

 私はしばらく葛藤した。

 

「……一回だけだからね」

 

「分かった」

 

 私は恐る恐る口を開ける。

 

「あーん……」

 

 玲奈が卵焼きを口元まで運んでくる。

 

「……ん」

 

 ぱくっ。

 

「…………」

 

 甘い卵焼きの味がする。

 

 でも、それ以上に恥ずかしい。

 

「……どう?」

 

「お、美味しい……」

 

「よかった」

 

 玲奈が嬉しそうに微笑む。

 

「じゃあ、もう一個」

 

「え!?」

 

「ダメ?」

 

「…………」

 

 私は玲奈を見る。

 

「……一個だけって言ったでしょ」

 

「そう」

 

 玲奈は素直に箸を引っ込めた。

 

 ……意外とあっさり引いてくれるんだ。

 

 そう思った次の瞬間。

 

「じゃあ、今度はひなたが私に食べさせて」

 

「…………え?」

 

 玲奈が口を開けて待っている。

 

「あーん」

 

「…………」

 

「ひなた?」

 

「いや、待って。なんで私が?」

 

「さっき私が食べさせたから」

 

「それはそうだけど……」

 

 恥ずかしい。

 

 ものすごく恥ずかしい。

 

「……嫌?」

 

 玲奈がこちらを見る。

 

 その目は少し寂しそうだった。

 

「…………」

 

 またその顔。

 

 私はこの顔に弱いのかもしれない。

 

「……一回だけだよ?」

 

「うん」

 

 私は箸で小さなおかずをつまむ。

 

 玲奈の口元へ持っていく。

 

「……あーん」

 

「…………」

 

 玲奈がぱくっと食べる。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……どう?」

 

「美味しい」

 

「そ、そう」

 

「ひなたに食べさせてもらったから」

 

「…………っ!」

 

 顔が熱くなる。

 

「そういうこと言わないでよ!」

 

「どうして?」

 

「恥ずかしいから!」

 

 玲奈は楽しそうに笑った。

 

「ひなた、可愛い」

 

「もう……!」

 

 私は顔を隠した。

 

 そのとき。

 

 玲奈が突然、私の耳元で囁いた。

 

「ひなた」

 

「な、なに?」

 

「もう一回、食べさせて」

 

「嫌!」

 

「……じゃあ」

 

 玲奈が少しだけ目を細める。

 

「あの写真、クラスのみんなに見せてもいい?」

 

「わーっ!」

 

 私は慌てて玲奈の口を塞いだ。

 

「そのことは言わないで!」

 

「ふふっ」

 

「もう! 脅すの禁止!」

 

「じゃあ、食べさせてくれるでしょう?」

 

「それとこれとは別!」

 

「ひなたは、私たちのことを知られたくない」

 

「……っ」

 

「私は知られてもいい」

 

 玲奈は、私の反応を楽しむように微笑んだ。

 

「だから、私が写真を見せても困らない」

 

「困るのは私なの!」

 

「なら、お願いを聞いて」

 

「……ずるい」

 

「うん」

 

 玲奈は悪びれずに頷いた。

 

「玲奈のくせに……」

 

「私の恋人でしょう?」

 

「そういう言い方もずるい!」

 

「でも、食べさせてくれるでしょう?」

 

「…………」

 

 私は玲奈を睨む。

 

 ……この人。

 

 付き合い始めても、やっぱり強引だ。

 

「……あと一回だけだからね」

 

「うん」

 

 私は仕方なく箸を持った。

 

「……あーん」

 

「……ん」

 

 玲奈が嬉しそうに食べる。

 

 その顔を見ていると――。

 

 不思議と嫌な気持ちはしなかった。

 

 むしろ。

 

 ……ちょっとだけ嬉しい。

 

 ◇

 

 昼休みが終わる少し前。

 

 私たちは教室へ戻る準備をしていた。

 

「ねえ、ひなた」

 

「なに?」

 

「今日の放課後、予定ある?」

 

「特にないけど」

 

「じゃあ」

 

 玲奈が私を見る。

 

「放課後デートでもしない?」

 

「…………」

 

 私は固まった。

 

「……デート?」

 

「うん」

 

「私たちで?」

 

「恋人でしょう?」

 

「……そうだけど」

 

 また顔が熱くなる。

 

「でも、学校の人に見られたらどうするの?」

 

「学校の外なら、隠す必要はないでしょう?」

 

「私は学校の外でも、知り合いに見られたら恥ずかしいよ!」

 

「なら、見られない場所に行けばいい」

 

「そんな場所あるの?」

 

「探せばある」

 

 玲奈は真剣な顔で答えた。

 

「ひなたと二人でいられるなら、どこでもいい」

 

「…………」

 

 また、胸が大きく跳ねた。

 

「どこに行くの?」

 

「まだ決めてない」

 

「じゃあ、これから決める?」

 

「うん」

 

 玲奈が小さく笑う。

 

「楽しみ」

 

「……私も」

 

 思わずそう答えてから、私は自分の言葉に気づいた。

 

「……あ」

 

「何?」

 

「いや……」

 

 私は顔を逸らす。

 

「……なんでもない」

 

 玲奈がそんな私を見て、嬉しそうに微笑んだ。

 

「じゃあ、約束」

 

「うん」

 

 こうして私たちは、初めてのデートの約束をした。

 

 脅されて始まったはずの関係なのに。

 

 最近、玲奈と一緒にいる時間を――。

 

 私は少しずつ楽しみにしている。

 

 そんな自分に気づいてしまって。

 

 また、胸が少しだけドキドキした。

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