クールな美少女に脅されて秘密の恋人になりました。   作:めろんちゃん

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第7話今日も二人でお昼ご飯です!

 

 翌朝。

 

「おはよう、ひなた」

 

「……あ、おはよう。玲奈」

 

 教室に入ると、玲奈が声をかけてきた。

 

 私は笑顔で返事をする。

 

 ……あれ?

 

 少し前までなら、玲奈に話しかけられるだけで緊張していたのに。

 

 今は、こうして普通に話せる。

 

「今日は早いのね」

 

「玲奈もね」

 

「私はいつもこのくらいよ」

 

「そうだっけ?」

 

「そうよ」

 

「じゃあ、私が覚えてなかっただけか」

 

「そういうことね」

 

 そんな他愛のない会話をしていると――。

 

「……朝から仲良しだねぇ」

 

「え?」

 

 後ろから声がした。

 

 振り返ると、美咲がニヤニヤしながら立っていた。

 

「お、おはよう、美咲」

 

「おはよう、ひなた。月城さんも」

 

「おはよう」

 

 美咲は私と玲奈を交互に見る。

 

「なんか最近、二人とも自然な感じになったよね」

 

「そう?」

 

「うん。付き合い始めたばかりの頃は、ひなたなんて月城さんと目が合うだけで挙動不審だったじゃん」

 

「そ、そんなことないよ!」

 

「あったよ」

 

「……」

 

 玲奈が淡々と頷く。

 

「玲奈まで!」

 

「事実でしょう?」

 

「玲奈は私の味方じゃないの!?」

 

「恋人だから、正直に答えただけよ」

 

「……っ!」

 

 顔が熱くなる。

 

「おーおー」

 

 美咲が楽しそうに笑った。

 

「朝からごちそうさまです」

 

「美咲!」

 

「はいはい。邪魔しませんよー」

 

「そういう言い方やめて!」

 

 美咲は笑いながら自分の席へ戻っていった。

 

 ……もう。

 

 美咲は最近、私と玲奈をいじるのが楽しくて仕方ないみたいだ。

 

 でも――。

 

 こうしてからかわれるのも、前ほど嫌じゃなくなっていた。

 

     * * *

 

 午前の授業が終わり、昼休み。

 

「やっとお昼だー!」

 

 私はお弁当を取り出した。

 

 すると、すぐに玲奈が私のところへやってくる。

 

「ひなた。今日も一緒に食べましょう」

 

「……!」

 

 私は反射的に教室を見回した。

 

 周りにはクラスメイトがいる。

 

「えっと……」

 

「どうしたの?」

 

「その……」

 

 私は少しだけ迷う。

 

「今日くらい、別々に食べてもいいんじゃないかな……?」

 

 そう言った瞬間、玲奈の表情がわずかに曇った。

 

「……そう」

 

 さっきまでの穏やかな顔から、笑みが消える。

 

 玲奈は視線を落とし、手にしていたお弁当を静かに握り直した。

 

「分かったわ。ひなたがそうしたいなら」

 

「……」

 

 その声は、いつもより小さかった。

 

 胸の奥が、きゅっと締めつけられる。

 

 玲奈は、別々に食べたいわけじゃない。

 

 ただ、私と一緒にいたいと思ってくれている。

 

「……あの」

 

「何?」

 

 玲奈が顔を上げる。

 

 その目が少し寂しそうに見えて、私は慌てて首を振った。

 

「やっぱり、一緒に食べよう」

 

「……いいの?」

 

「うん」

 

「でも、みんなに知られたくないのでしょう?」

 

「それは……そうだけど」

 

 私は玲奈の袖をそっと掴む。

 

「玲奈がそんな顔するなら、別々なんて無理だよ」

 

「そんな顔?」

 

「……寂しそうな顔」

 

 玲奈は一瞬、目を丸くした。

 

 それから、ほんの少しだけ頬を緩める。

 

「ひなたは、よく見ているのね」

 

「だって、玲奈のことだから」

 

「……そう」

 

 玲奈は嬉しそうに微笑んだ。

 

 そのとき、横から美咲が口を挟んだ。

 

「はいはい。結局、今日も二人でお昼ね」

 

「美咲!」

 

「だって、ひなたが月城さんの顔見て、すぐ折れたじゃん」

 

「折れたって言わないで!」

 

「じゃあ、愛の力?」

 

「もっと言わないで!」

 

 美咲は楽しそうに笑いながら、玲奈を見る。

 

「月城さん、ひなたの扱い上手くなったね」

 

「そうかしら?」

 

「うん。ちょっと寂しそうな顔するだけで、すぐ甘やかしちゃうし」

 

「美咲!」

 

 玲奈は少し考えるように首を傾げた。

 

「私はそんな顔していないわ」

 

「でも、ひなたと一緒に食べられるなら嬉しいわ」

 

「……っ!」

 

 また顔が熱くなる。

 

 美咲が机に頬杖をつきながら、にやりと笑った。

 

「はい、今日もごちそうさまです」

 

「もう! 行くよ、玲奈!」

 

「ええ」

 

 私は玲奈の袖を引っ張った。

 

「じゃ、いってらっしゃーい。恋人さんたち」

 

「だから声大きいって!」

 

 美咲の笑い声を背中に聞きながら、私たちは教室を出た。

 

     * * *

 

 いつもの空き教室。

 

 誰もいないことを確認して、二人で机を並べる。

 

「……はぁ」

 

 私は椅子に座って息を吐いた。

 

「疲れた?」

 

「美咲のせいだよ……」

 

「そう?」

 

「絶対楽しんでるもん」

 

「ええ。楽しんでいると思うわ」

 

「玲奈まで……」

 

 私はお弁当を開く。

 

「いただきます!」

 

「いただきます」

 

 二人で昼食を食べ始める。

 

 窓から入ってくる風が気持ちいい。

 

 教室には私たち二人しかいない。

 

 静かで、落ち着く。

 

「……ここで食べるのも、すっかり慣れたね」

 

「そうね」

 

「最初はすごく緊張したのに」

 

「私はそうでもなかったわ」

 

「玲奈は最初から余裕だったよね」

 

「そうかしら?」

 

「そうだよ」

 

 私は笑う。

 

 すると、玲奈が私のお弁当を見た。

 

「それ、美味しそう」

 

「これ?」

 

「ええ」

 

「食べる?」

 

「いいの?」

 

「うん」

 

 私は箸で卵焼きを取る。

 

 そして玲奈のお弁当のほうへ差し出した。

 

「はい」

 

「……」

 

 玲奈が少し目を見開く。

 

「どうしたの?」

 

「いえ」

 

 玲奈はそのまま卵焼きを食べた。

 

「……美味しい」

 

「でしょ?」

 

「ひなたが食べさせてくれたから、余計に美味しいわ」

 

「そ、それは関係ないと思うけど……」

 

「そう?」

 

「そうだよ」

 

 玲奈は小さく笑った。

 

「でも、嬉しいわ」

 

「……そっか」

 

 私もなんだか嬉しくなる。

 

 こんな何気ない時間が、最近は楽しい。

 

 玲奈と二人でお昼を食べることも。

 

 くだらない話をすることも。

 

 少しずつ、当たり前になってきている。

 

「……ねえ、玲奈」

 

「何?」

 

「私たち、最近こういう時間増えたよね」

 

「ええ」

 

「なんか……いいね」

 

「私もそう思うわ」

 

 玲奈はそう言って、優しく笑った。

 

 私はその笑顔を見ながら、お弁当を食べる。

 

 ……やっぱり。

 

 玲奈と一緒にいるのは、好きかもしれない。

 

「……」

 

 そこまで考えて、私は慌てて首を振った。

 

 まだ。

 

 まだ恋とは限らない。

 

 脅されて付き合わされただけだから。

 

 ただ、一緒にいるのが楽しいだけ。

 

 ……たぶん。

 

     * * *

 

 午後の授業も終わり、放課後。

 

 私は鞄を持って立ち上がる。

 

「今日も疲れたー!」

 

「お疲れ様」

 

 玲奈が隣に来る。

 

「ひなた」

 

「ん?」

 

「今日の放課後、予定はある?」

 

「ないよ」

 

「そう」

 

 玲奈が少しだけ間を置く。

 

「……私の家に来ない?」

 

「……え?」

 

 思わず固まった。

 

「玲奈の家?」

 

「ええ」

 

「今日?」

 

「今日」

 

「……いいの?」

 

「もちろん」

 

 玲奈は少しだけ視線を逸らした。

 

「家に帰っても、一人だと思うから。」

 

「……」

 

「ひなたが来てくれたら、嬉しいわ」

 

 胸が少しだけ温かくなる。

 

「……うん」

 

 私は頷いた。

 

「行きたい!」

 

「本当に?」

 

「うん!」

 

 玲奈の表情が少し柔らかくなる。

 

「じゃあ、一緒に帰りましょう」

 

「うん!」

 

 そのとき。

 

「おや?」

 

 美咲がこちらを見ていた。

 

「二人で何の相談?」

 

「えっ!?」

 

 私は慌てて振り返る。

 

「な、何でもないよ!」

 

「ふーん?」

 

 美咲がニヤニヤする。

 

「今日も二人で帰るの?」

 

「う、うん……」

 

「へえ」

 

 美咲は玲奈を見る。

 

「月城さん、ひなたのことよろしくね」

 

「ええ。任せて」

 

「ちょっと! 何の話!?」

 

「別に?」

 

 美咲は笑っている。

 

「じゃあ、また明日ね。ひなた」

 

「う、うん。また明日!」

 

「月城さんも」

 

「ええ。また明日」

 

 美咲と別れ、私たちは校門へ向かう。

 

「……美咲、絶対何か勘違いしてる」

 

「そうかしら?」

 

「絶対そうだよ」

 

「なら、今度聞いてみれば?」

 

「やだよ!」

 

 玲奈が小さく笑う。

 

「ふふ」

 

「もう……」

 

 私は頬を膨らませる。

 

 でも。

 

 これから玲奈の家へ行く。

 

 そう思うと、自然と足取りが軽くなった。

 

     * * *

 

 学校を出て、二人で並んで歩く。

 

「玲奈の家って、学校から近いの?」

 

「電車に乗るほどではないわ。少し歩けば着くわよ」

 

「へえ」

 

「ひなたは、私の家に来るの初めてね」

 

「うん」

 

「緊張してる?」

 

「ちょっとだけ」

 

「どうして?」

 

「だって……玲奈の家だよ?」

 

「私の家だから?」

 

「そう!」

 

 玲奈が不思議そうに私を見る。

 

「変なの」

 

「変じゃないよ!」

 

「そう?」

 

「そうだよ!」

 

 私は少しだけ笑う。

 

「でも、楽しみ」

 

「……私も」

 

「玲奈も?」

 

「ええ」

 

 玲奈は少しだけ微笑んだ。

 

「恋人を家に呼ぶの、初めてだから」

 

「……!」

 

 また胸がどきっとする。

 

「そ、そういうこと言うと緊張するって!」

 

「ふふ」

 

「笑わないでよ!」

 

「ごめんなさい」

 

 そんなやり取りをしながら、私たちは歩いていく。

 

 今日のお昼も楽しかった。

 

 放課後に玲奈の家へ行けるのも嬉しい。

 

 少し前の私は、こんなふうになるなんて想像もしていなかった。

 

 脅されて始まったはずの関係なのに。

 

 今では――。

 

「……なんか、楽しみだな」

 

「私もよ」

 

 玲奈と並んで歩く。

 

 そして私たちは、そのまま玲奈の家へ向かった。

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