クールな美少女に脅されて秘密の恋人になりました。   作:めろんちゃん

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第9話玲奈って、こんなに甘えんぼだったの!?

 

「ひなた」

 

「ん?」

 

「せっかく来てくれたんだし何かして遊びましょ」

 

 私は部屋を見回した。

 

「何があるの?」

 

「ゲームとか、トランプとか。本もあるわ」

 

「玲奈の家ってゲームあるの?」

 

「ええ。いくつか持っているわ」

 

「意外……」

 

「そうかしら?」

 

「うん。玲奈って、ゲームより本を読んでいるイメージだったから」

 

「私だって、ゲームくらいするわ」

 

「なんか想像できない……」

 

「ひなたは私を何だと思っているの?」

 

「えっと……いつも静かに本を読んでる人?」

 

「それは否定できないわね」

 

 玲奈は少しだけ笑いながら、ゲーム機を用意してくれる。

 

「何する?」

 

「これ!」

 

 私が選んだゲームを、二人で遊び始めた。

 

「よしっ! 私の勝ち!」

 

「……もう一回」

 

「え?」

 

「もう一回やりましょう」

 

「玲奈、悔しいんでしょ?」

 

「違うわ」

 

「絶対悔しいじゃん!」

 

「……ひなた」

 

「なに?」

 

「次は勝つわ」

 

「ふふっ。いいよ!」

 

 それから何回か勝負をした。

 

 結果は、私が少し勝ち越し。

 

「やったー!」

 

「……今日はここまでにしましょう」

 

「もしかして諦めた?」

 

「違うわ」

 

 玲奈は少しだけむっとした顔をする。

 

「続けたら、ひなたが疲れるでしょう?」

 

「……え?」

 

「せっかく来てくれたんだから、ゲームだけで時間を使うのはもったいないもの」

 

 そう言って、玲奈はゲーム機を片付けた。

 

「じゃあ、次は何する?」

 

「そうね……」

 

 玲奈は少し考えてから、私の隣に座った。

 

「こうやって二人で話すのも、私は好きよ」

 

「話すだけ?」

 

「ええ」

 

「なんか玲奈らしいね」

 

「そうかしら」

 

「うん」

 

 私たちは並んで、学校のことを話した。

 

 今日の授業のこと。

 

 クラスであったちょっとした出来事。

 

 美咲が言っていたくだらない冗談。

 

 そんな何気ない話をしているだけなのに、時間が過ぎるのが早く感じた。

 

「……ひなた」

 

「ん?」

 

「もう少し近くに座ってもいい?」

 

「え?」

 

 玲奈が少しだけ私の方へ寄る。

 

「うん……」

 

 私が答えると、玲奈はさらに少しだけ距離を縮めた。

 

 肩が触れる。

 

「……落ち着くわ」

 

「玲奈?」

 

「ひなたとこうしていると、安心するの」

 

「……そ、そう?」

 

「ええ」

 

 玲奈はそのまま私の肩に、そっと頭を預けた。

 

「……え!?」

 

「少しだけ、このままでいてもいい?」

 

「う、うん……」

 

 玲奈が甘えている。

 

 学校では、いつも誰にも隙を見せない玲奈が。

 

 今は私の肩に頭を乗せている。

 

「……なんか、玲奈ってこういうことするんだね」

 

「嫌だった?」

 

「嫌じゃないけど……ちょっとびっくりした」

 

「なら、よかった」

 

 玲奈は目を閉じたまま、小さく笑った。

 

「……ひなたの隣、私は好きよ」

 

「……」

 

 また、胸がどきっとする。

 

 私はどう返せばいいのか分からなくて、窓の外を見る。

 

 でも、玲奈が安心したような顔をしているのを見ると、なんだか嬉しかった。

 

「……玲奈」

 

「何?」

 

「今日、すごく甘えんぼだね」

 

「そうかもしれないわ」

 

「否定しないんだ」

 

「ひなたになら、いいと思っているから」

 

「……もう」

 

 私は恥ずかしくなって笑った。

 

     * * *

 

 それからしばらくして。

 

 私は何気なくスマホを確認した。

 

「……え?」

 

「どうしたの?」

 

「もうこんな時間!?」

 

 時計を見ると、夕方をかなり過ぎている。

 

「本当ね」

 

「遊んでると時間が経つの早すぎるよ……」

 

 私は立ち上がった。

 

「そろそろ帰らないと」

 

「……もう?」

 

 玲奈の声が、少しだけ寂しそうになる。

 

「うん。家の人も心配するだろうし」

 

「そうね……」

 

 玲奈は頷く。

 

 でも、その表情は明らかに残念そうだった。

 

「……玲奈?」

 

「何でもないわ」

 

「何でもない顔じゃないよ」

 

「……」

 

 玲奈は少し黙ったあと、私を見る。

 

「ひなた」

 

「うん?」

 

「……夕食、食べていかない?」

 

「え?」

 

「もしよかったらだけど」

 

 玲奈は少しだけ視線を逸らす。

 

「もう少し、ひなたと一緒にいたいから」

 

「……」

 

 私は思わず玲奈の顔を見る。

 

 さっきまでゲームをして。

 

 一緒に話して。

 

 肩に頭まで乗せてきて。

 

 今日は本当に、玲奈が甘えてくる。

 

「……玲奈」

 

「何?」

 

「そんな顔されたら、断れないよ」

 

「……本当?」

 

「うん」

 

 玲奈の表情がぱっと明るくなった。

 

「よかった」

 

「そんなに嬉しい?」

 

「ええ」

 

 玲奈は素直に頷いた。

 

「ひなたと、もう少し一緒にいられるから」

 

「ふふっ」

 

 私は笑った。

 

「じゃあ、夕食食べていこうかな」

 

「ありがとう」

 

「でも、家に連絡しないと」

 

「そうね」

 

 私はスマホを取り出して、家に連絡する。

 

 友達の家で夕食を食べてから帰ることを伝えると、すぐに返事が来た。

 

「大丈夫だって」

 

「……よかった」

 

 玲奈は心から安心したように笑った。

 

「じゃあ、一緒に夕食を作りましょう」

 

「え?」

 

「私一人で作るより、二人で作った方が楽しいでしょう?」

 

「た、確かに楽しそうかも、?」

 

「何が食べたい?」

 

「うーん……」

 

 私は少し考える。

 

「カレーがいいな」

 

「カレーね」

 

「うん。せっかくだから、玲奈と一緒に作ってみたい」

 

「ふふ。そうしましょう」

 

     * * *

 

 私たちはキッチンへ向かった。

 

「まず、材料を確認しましょう」

 

 玲奈が冷蔵庫を開ける。

 

「じゃがいも、にんじん、玉ねぎ……ちゃんとあるわね」

 

「お肉もあるね!」

 

「これなら大丈夫そうね」

 

「よーし!」

 

 私は腕まくりをする。

 

「玲奈、私は何すればいい?」

 

「野菜を洗ってもらえる?」

 

「任せて!」

 

 私は野菜を洗い始める。

 

 玲奈はその隣で玉ねぎの皮を剥いていた。

 

「……なんか楽しいね」

 

「そうね」

 

「こうやって二人で料理するの、初めてだよね」

 

「ええ」

 

「なんか……普通の恋人っぽい」

 

「……」

 

 玲奈の手が止まった。

 

「玲奈?」

 

「……そうね」

 

 玲奈は少しだけ頬を赤くして、また玉ねぎに視線を戻した。

 

「私も、そう思ったわ」

 

「……」

 

 今度は私まで恥ずかしくなる。

 

「じゃ、じゃあ次!」

 

 私は慌てて話題を変えた。

 

「野菜切る!」

 

「分かったわ。でも、包丁には気をつけて」

 

「大丈夫だよ!」

 

 私は包丁を持つ。

 

 すると玲奈が私の手元を見る。

 

「……ひなた」

 

「なに?」

 

「少し危ないわ」

 

「え?」

 

「指をこうして」

 

 玲奈が隣に立ち、手元を指差す。

 

「猫の手にするの」

 

「あ、こう?」

 

「そう。ゆっくりでいいわ」

 

「うん」

 

「焦らなくて大丈夫」

 

 玲奈は優しく教えてくれる。

 

「……玲奈って、料理上手なんだね」

 

「一人で作ることも多いから、慣れてるだけよ」

 

「そっか」

 

 私は切った野菜を見る。

 

「私も料理できるようになりたいな」

 

「どうして?」

 

「また玲奈の家に来たときに、一緒に作れるように」

 

「……また来てくれるの?」

 

「え?」

 

「……」

 

 玲奈は少しだけ期待するような目で私を見る。

 

「もちろんだよ」

 

「……そう」

 

 玲奈が嬉しそうに笑った。

 

「それなら、今度は別の料理を作りましょう」

 

「うん!」

 

「ひなたは何が作りたい?」

 

「オムライス!」

 

「じゃあ、次はオムライスね」

 

「約束!」

 

「ええ」

 

 私たちは小指を絡めた。

 

「……約束」

 

 なんだか、こういうのも楽しい。

 

     * * *

 

「じゃあ、玉ねぎ炒めるね」

 

「お願い」

 

 玲奈がフライパンに油を入れる。

 

 玉ねぎを入れると、ジュッという音がキッチンに響いた。

 

「いい匂い!」

 

「まだこれからよ」

 

「お腹空いてきた……」

 

「さっきお菓子食べてなかった?」

 

「それは別腹!」

 

「ふふ」

 

 玲奈が笑う。

 

 しばらくすると、玉ねぎが少しずつ透明になっていく。

 

「玲奈、これくらい?」

 

「もう少しね」

 

「料理って難しい……」

 

「慣れれば大丈夫よ」

 

「玲奈が教えてくれる?」

 

「もちろん」

 

 玲奈が私の隣に立つ。

 

「次はお肉を入れるわ」

 

「はい!」

 

「ひなた、混ぜてみる?」

 

「やる!」

 

 私は木べらを受け取った。

 

「こう?」

 

「そう。焦げないように、ゆっくり混ぜて」

 

「分かった!」

 

 私は一生懸命鍋を混ぜる。

 

「……なんか本格的!」

 

「そんなに難しいことはしていないわ」

 

「でも楽しい!」

 

「そう?」

 

「うん!」

 

 玲奈はそんな私を見て、嬉しそうに笑った。

 

「……私も楽しいわ」

 

「本当?」

 

「ええ」

 

「一人で作るより?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、これからも一緒に作ろうね」

 

「……ええ」

 

 玲奈は少し照れたように頷いた。

 

     * * *

 

 カレーが煮込まれている間、私たちはキッチンの椅子に並んで座っていた。

 

「いい匂いになってきたね」

 

「もう少し煮込めば完成よ」

 

 私は鍋を眺める。

 

「……なんか、不思議」

 

「何が?」

 

「今日、玲奈の家に遊びに来ただけだったのに」

 

「ええ」

 

「まさか夕食まで一緒に作るとは思わなかった」

 

「私もよ」

 

 玲奈は小さく笑う。

 

「でも……嬉しいわ」

 

「……うん」

 

「ひなたが来てくれて、本当によかった」

 

「玲奈……」

 

 玲奈は少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

「今日は、一人で過ごすと思っていたから」

 

「……」

 

「だから、ひなたが来てくれて嬉しかった」

 

 私は玲奈の横顔を見る。

 

 学校ではいつもクールで、何でも一人でできそうに見える。

 

 でも、本当は寂しいと思うこともあるのかもしれない。

 

「じゃあ……また来るよ」

 

「……本当?」

 

「うん」

 

 私は笑った。

 

「玲奈が寂しくならないように」

 

「……それは、ずるいわ」

 

「え?」

 

「そんなこと言われたら……もっと甘えたくなるじゃない」

 

「えぇ!?」

 

 玲奈が小さく笑う。

 

「冗談よ」

 

「絶対ちょっと本気だったでしょ!」

 

「どうかしら」

 

「もう!」

 

 二人で笑う。

 

 しばらくして、カレーが完成した。

 

「できた!」

 

「ええ。盛り付けましょう」

 

 二人で皿にカレーを盛る。

 

「いただきます!」

 

「いただきます」

 

 一口食べる。

 

「……おいしい!」

 

「本当?」

 

「うん!」

 

 もう一口食べる。

 

「玲奈が作ったから?」

 

「二人で作ったからでしょう?」

 

「そっか」

 

 私は笑う。

 

「じゃあ、二人で作ったからおいしいんだね」

 

「ええ」

 

 玲奈も穏やかに笑った。

 

 食事をしながら、今日のゲームの話をしたり、学校の話をしたりする。

 

 ただそれだけなのに、すごく楽しかった。

 

 今日一日、玲奈の家で過ごして。

 

 一緒に遊んで。

 

 たくさん話して。

 

 玲奈に甘えられて。

 

 そして、一緒に夕食まで作った。

 

 最初は、写真で脅されて始まった関係だった。

 

 なのに今は――。

 

「……玲奈と一緒にいるの、やっぱり楽しいな」

 

 自然と、そんな言葉が口からこぼれた。

 

「……何か言った?」

 

「ううん。何でもない!」

 

 私は慌ててカレーを食べる。

 

 玲奈は不思議そうに私を見ていた。

 

 でも、その顔はとても嬉しそうだった。

 

 そして私も――。

 

 もう少しだけ、この時間が続けばいいのに。

 

 そんなことを思っていた。

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