一と亮は先生から呼び出しを食らっていた。何故そんなことになったのか、一には十分すぎるほど思い当たる節がある。
もちろん、思い当たる節とは昨日、亮と一緒に学校の外へ抜け出したことである。
「二人で昼の12時ぐらいに学校を抜け出し、その後商店街に行った
「はい………」
「……赤鬼はともかく、水上は何か辛いことがあったのか?」
「あっ……いえ……ない…………です」
「そうか……もし辛いことがあったら遠慮せずに言うんだぞ?」
「はい………」
「それと……赤鬼はもう少し反省しなさい」
「は? なんで?」
亮は先生に反抗的な態度を見せる。先生は軽くため息を吐くと二人に課題を課した。それは、原稿用紙一枚に反省文を書くことだった。
二人とも反省文を原稿用紙一枚に書くように言われ、提出し終わるまで帰れない。
一は何とか原稿用紙に書き終え、先生に渡そうとした。だが、視界の端で鉛筆を持って固まっている亮を見て足を止めた。
そのまま置いて行くことも出来たのだが、一は何故か亮が見捨てられなかった。
「あ……えと」
「なんだよ」
「……書けたのかなって……」
「書くことないだろ、こんなの」
「だ……だよね」
「お前は書けたのか?」
「う……うん……」
一は亮の原稿用紙をチラッと見る。そこには個性的な文字で『はんせいしてます。もうしません。』とだけ書かれていた。
流石にこんな反省文は見せられるわけがない。一は亮の反省文を書くのを手伝うことにした。
数十分後、やっと反省文を書き終わった二人は先生に提出しに行く。先生は二人の反省文をじっと見る。そして、見終わった先生は二人にそれぞれ、言葉を掛けた。
「水上は、反省しているのが文から伝わってくるな。今回は見逃すが、今後気を付けるように」
「は、はい!」
「赤鬼は……本当にこれ、赤鬼が書いたのか? 文字は確かにお前の字だが、文は水上が手伝ったのか?」
『………………』
「……まぁいい。二人とも反省文は書けているので、帰っても大丈夫だろう」
先生から帰っても大丈夫だと言われた二人は、なんとなく一緒に帰った。亮は先生から怒られたのが原因か、不機嫌そうに見える。
一はそんな亮に声を掛けることが出来ず、只々、沈黙の時間が過ぎていった。
公園の近くを通ると、不意に亮に手を引かれた。そして、たくさんある木のうちの一つに登った。
一は亮に『木の上まで来い』と言われたが、木登りなんてしたことない一は戸惑ってしまう。
亮はそんな一を見て、木の何処に足を引っ掛けたらいいのか教えてくれた。一は言われた通りに足を掛ける。
半分まで登ったところで亮が手を差し伸べた。
「……ありがとう……」
「別に」
無事に木の上に登れた一は亮にお礼を言った。亮は特段、顔を変えず、バランスよく木の上に寝そべる。
一も木の上に座って周りを見渡した。木々に遮られ景色こそ見えないものの、風のさざめきが心地よい。
「……落ち着く……」
「…………嫌なことがあったらここに来ることにしてる」
亮はそう言って、ポケットから輪ゴムを一つ取り出した。そして、その輪ゴムを木の先に引っ掛ける。すでに木の先には、何個か輪ゴムが掛かっていた。
「……それは……何を……」
「ここに登った記念だ」
亮は輪ゴムを一に渡した。どうやら、一にも『掛けろ』と言っているみたいだった。
一はそっと、木の先に輪ゴムを掛ける。そして、もう一度木にもたれ掛かり、ゆったりとした時間を過ごした。
気が付けば、日が暮れかかっていた。
別れ際、一は連絡先を交換しようと思った。何でそう思ったかは分からない。でも、どうしてもそうしたかった。
「……あっ! 連絡先……!」
「は?」
「交換……したら……また遊べる……から……!」
亮は少し考えた後、スマホを取り出した。そしてお互いの連絡先を交換した。
亮は登録された一の名前をじっと見つめている。一瞬の沈黙の後、亮は一言呟いた。
「じゃあ
「!! …………えっと……りょ、
二人とも、軽く挨拶を交わして別れる。一はその帰り道、交換した連絡先を見て軽く微笑んだ。
夕焼けに染まる道、一の背中はそれはそれは嬉しそうであった。