緋弾のレクイエム   作:レゾリューション

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機械からのラブコール

街の個人まりとした定食屋で染み入るように久々の夕食を日本食で胃袋に収めた後、宗吾は武偵高校の男子寮へと帰還した。自室の扉を開けようと足を向けたその時、隣の部屋のドアが開き、見知った顔がひょっこりと姿を現す。

 

「宗吾、帰ってきてたのか」

 

変わらない気だるげな声音を響かせながら声をかけてきたのは、遠山キンジだった。宗吾は軽く片手を挙げて応じる。

 

「そうだよ、キンジ」

 

キンジは、宗吾の寮の隣人というべき存在だ。元々は1年生の時からSランクに君臨していた文字通りの「化け物」だったはずだが、なぜか強襲科を自ら辞め、探偵科に転科してる。その後の期末試験もボイコットした結果、現在はEランクへと落ちぶれている変人――というのが、宗吾の知る彼の姿だった。

 

宗吾自身、彼が抱える複雑な過去や裏の事情までは詳しく知らないため認識としてはその程度で止まっていた。

 

「やっぱり、日本食は美味いってことをしみじみ知ったな」

 

宗吾はポケットに手を突っ込み少し遠い目をしながら呟いた。キンジは呆れたような、しかしどこか親しげな視線を隣の少年に向ける。

 

「お前、昔からそんなに食にこだわりなんかあったか?」

 

「海外のレーションばっか食わされてりゃな、舌も肥えるぞ……すっかり贅沢な舌になったもんだよ、俺も」

 

フッと自嘲気味に笑った宗吾の肩には、世界をまたにかけて修羅場を潜り抜けてきた者特有の、どこか煤けた空気がまとわりついていた。

 

「春休みって言っても、今日しかないぞ?」

 

気だるげにキンジが指摘すると、宗吾は面倒くさそうに片手をひらひらと振った。 

 

「休みが少しでもあれば充分だ」

 

「なるほどな……」

 

キンジが乾いた笑いを漏らしたのを背中に聞き、宗吾はそれぞれの自室へと戻っていった。自室に戻った宗吾は銃のメンテナンスを手際よく済ませる。ススの汚れを落とし、オイルを塗り、各部の稼働を確認するその手つきは熟練の兵士そのものだった。装備を所定の位置に収めると、海外での長旅の疲れを癒やすように、そのまま深い眠りへと落ちていった。

 

そして迎えた翌日新学期の始業式。宗吾が校舎に足を踏み入れたものの、なぜか肝心のキンジの姿がどこにも見当たらない。首を傾げていた矢先、学内の一角で「武偵の生徒がチャリジャックに巻き込まれた」という物騒な情報が耳に飛び込んできた。

 

「まさか……アイツか?」

 

嫌な予感が脳裏を過った宗吾は、始業式をあっさりと抜け出し、現場へと走り出す。宗吾はすでに卒業までの単位を1年次のうちに荒業で取り終えており、授業に出なくとも実害はない。むしろ留年するよりも実戦の任務で死ぬ確率のほうが圧倒的に高い。気配を頼りに校内を駆け抜け、たどり着いたのは体育館の裏手。その衝撃の現場を見た瞬間、宗吾の足がピタリと止まった。

 

勢いよく吹き飛ばされた体育館の倉庫の扉の向こう、そこに広がっていた光景はあまりにも....予想の斜め上を行く空間だった。なんと、UZI短機関銃を搭載した無人セグウェイの群れが、銃弾をまき散らしているという有様だった。

 

「機械からのラブコールとは....キンジは人気もんだな」

 

宗吾は呆れたような皮肉を呟きながらも、瞬時に戦闘態勢へと移行する。ホルスターから愛用の『SG-09R』を鮮やかに引き抜き、流れるような手つきでスライドを引く。

 

これはH&K社のUSPをベースに徹底的なカスタムが施された銃だ。これは彼にサバイバル術を叩き込んだエージェントが使っていたものであり。渡す際、その男は「新型の銃のテストを兼ねて、俺のは数年おきに装備が変わるからな」と軽口を叩いていた。

 

かつて、宗吾と同じように令嬢を単身で救い出し、地獄のサバイバルを生き抜いたというどこか似た境遇の男が、「お前の好きにイジっていい、制作元からの許可は取ってある」と託してくれたのだ。

 

手に入れた当初、銃の上部にはピカティニーレール規格のレーザーサイトがマウントされていたが、世界中の荒れ狂う戦場やバイオテロの現場で幾度となく引き金を引くうちに、宗吾はそれを外し、より直感的なエイミングが可能なダットサイトへと換装してる。

 

そして、無人セグウェイがUZIを制御している脆い結合部分めがけ正確無比な連射を叩き込む。銃弾は見事に急所を穿ち、数台のセグウェイが次々と沈黙していく。残る一台が死角へと隠れようとしたが、それも間一髪のところでキンジの手によって完全に沈黙させられた。

 

静寂が戻った倉庫のなか、宗吾は銃をホルスターにしまいながら声をかける。

 

「キンジ、無事か?」

 

「……あぁ、ナイスタイミングだったよ、宗吾」

 

その声を聞いた瞬間、宗吾は内心で鋭く見抜いた。

 

(あ、コイツ……今、ヒスってるな)

 

キンジが持つ特異体質――「ヒステリア・サヴァン・シンドローム」性的興奮やそれに準ずる状況を感じることで、思考力・判断力・反射神経などが通常の30倍にまで劇的に向上するという代物だ。

 

本人は「ヒステリアモード」と呼んでいるが、女性の存在が最優先され、事あるごとにキザな言動や黒歴史を量産するという厄介すぎる能力だった。

 

「お前……今、ヒスってるな?やけにキザったいぞ」

 

「うっ……」

 

宗吾の冷めた目で見つめられた瞬間、気まずさを突かれたのか、キンジのヒステリアモードは強制的に解除された。その足元、ガタガタと揺れる跳び箱のなかから、ピンク色の髪をツインテールに結んだ小柄な少女が這い出てくる。

 

「べ、別にあんたがいなくたって、あんなの私だけでもどうにかできたわ!本当よ!本当の本当!」

 

少女は頬を真っ赤に染めながら喚き散らすと、すぐさまキンジをキッと睨みつけた。

 

「それで誤魔化されないんだからね!あんたは私を脱がそうとしたわ!それは立派な犯罪よ、変態!」

 

「おい、キンジ。一体何をやらかしたんだ?」

 

宗吾はジト目を向けたまま問う。

 

「いや、あらぬ誤解を盛大に招かれているんだ……」

 

「何が誤解よ!私を脱がせた癖に!胸見た癖に!」

 

少女はベルトで乱れたスカートをピシャリと押さえ直すと跳び箱の上から勢いよく飛び降りた。しかし、こうして間近で見ると、驚くほどに小柄な体躯をしている。

 

「せ、責任取りなさいよ!」

 

怒りに震える少女に向かって、キンジは必死に弁明する。

 

「待つんだアリア……俺はもう高校2年生だ……こんな可愛い……いや、中学生に手を出すわけがないだろう?」

 

(またヒスってる……ていうか、アリアっていうのか、アイツ)

 

宗吾の冷たい視線がさらに一段と温度を失っていく。それと同時にキンジの軽率な発言に反応したアリアの表情が、ビキッと凍りついた。

 

「わ、私はっ!中学生なんかじゃないわよ!」

 

アリアは悔しそうにドンドンと子供じみた地団駄を踏み鳴らす。それを聞いたキンジは、余計な一言を親切心(のつもり)で付け加えてしまった。

 

「ああ、インターンで入ってきた小学生か……いや、あんな危険なところに来るなんて、偉いよアリアちゃんは……」

 

キンジがそこまで言い放った瞬間、空気を切り裂く鋭い銃声が響き渡った。キンジの足元のコンクリートに、見事な真新しい銃痕が穿たれる。

 

「こんな奴助けるんじゃなかった……!私は……高2よ!」

 

「えっ……!?」

 

あまりの急展開とアリアの絶叫に、その場にいたキンジは完全に言葉を失う。凄まじい殺気を察知したキンジは慌てて叫んだ。 

 

「宗吾、助けてくれ……っ!」

 

しかし、ほんの一瞬前まですぐ隣で気だるげに立っていたはずの横の空間には、もはや宗吾の姿など微塵も残っていなかった。残されたのは、風に揺れる空気の残像と、呆れるほどに素早く現場から姿を消した男の足音だけである。

 

「宗吾っ!? 見捨てるのかよっ!?」

 

叫ぶキンジの耳に届いたのは、遠くから聞こえる「部外者は退散」と言わんばかりの足音だけだった。怒りでさらに顔を真っ赤に染めたアリアが、ヒステリックに二丁拳銃を構え直す。

 

「逃げるなああああ!」

 

「ひっ……!」

 

絶望的な修羅場と化したその場所で、キンジの悲鳴が再び武偵高の空に虚しく響き渡るのだった。

 

 

 

 

そうして、ほぼ1年ぶりとなる通常の授業を耐え抜き、宗吾はそのまま強襲科(アサルト)の科目をしようと足を運んでいた。彼が日本に戻ってきたのは、ハッキリ言って奇跡的な「休暇」のようなものだった。この1年間で数多の組織を潰して回ってきたが、彼にまともな休日など無いに等しい。一歩間違えれば、過労でとうの昔に死んでいてもおかしくない過酷なスケジュールだ。

 

しかし、そんな彼に無理やり休暇をもたらした存在がいた。かつて彼が命がけで救出した、ある巨大財閥の令嬢、阿州梨花(あしゅうりか)であり、あだ名でアシュリーと呼ばれてた女子である。彼女は政府や上層部に対し、「危険任務を行うメンバー達に十分な休みを与えなきゃ武偵への莫大な資金援助をすべて打ち切って更に、アン元ブレラ社との黒い繋がりもすべて世間に暴露する!」と言い放ったのだ。

 

あの事件以降、財閥は武偵高への資金援助も惜しまなくなっており、それを止められては政府としても非常に頭が痛い。結果として、宗吾は上層部から半ば強制的に「休息」を言い渡されることになった。

 

当分の間、特命による危険任務は他のメンバーに任されており休みはローテーションという形だ。もっとも、そのチームのメンバーは宗吾を含めてわずか4人しかいない。元々は8人いたが、任務の途中で半分が命を落とした。とはいえ、それはあくまで「バイオテロやB.O.W.絡みの裏任務」の話に限る。通常の武偵としての義務や、学内のカリキュラムをこなす分には何の問題もない。

 

「さて……どれにするか」

 

選択制の訓練や余暇のプログラムを眺めながら宗吾が小さく思案していると、背後からスッと気配のない足音が近づいてきた。 振り返るまでもない。その無機質で静かな足音の主へと、宗吾は呟くように名を呼んだ。 

 

「……レキか?」

 

「お久しぶりです」

 

淡々とした、しかしどこか透き通るような声で答えたのは、ヘッドホンに碧のショートの少女――レキだった。 彼女の本名は不明であり、ただ「レキ」という名前だけで通している彼女は、常軌を逸した射撃の天才であり、入学時にはキンジと同様に最高峰の「Sランク」に格付けされた怪物の一人だった。

 

宗吾自身も過酷なサバイバルと訓練を経て狙撃技術は一通りこなせる自負はあるが純粋なスナイピングの腕前においてレキに及ぶことはない。一度日本に帰国したとき強襲科時代のキンジを含めた3人で、依頼をこなしたこともあった。久々の再会を果たす二人の周囲に、静かで落ち着いた空気が流れていく。

 

「そっちも元気そうだな」

 

レキは無言のままこくりと小さく頷いた。無機質な双眸が、宗吾の顔をじっと捉える。

 

「……宗吾は前より少し痩せました、無理をしている」

 

「これでも飯は食べてるぞ。気のせいじゃないか?」

 

苦笑する宗吾だったが、レキの鋭すぎる洞察力の前では、海外の戦場で削られた心身の疲労をごまかすことなどできなかった。彼女は言葉こそ少ないが、宗吾のわずかな変化をも正確に見抜いていた。

 

「必要なら、私が代わります」

 

「気持ちは嬉しいが。あいにく今回は『何もしなくていい権利』を強制的に買わされてるんだ」

 

宗吾が冗談めかして笑うと、レキはわずかに首をかしげ、「……贅沢な悩み」と呟いた。こうして学舎で言葉を交わしているのも、どこか奇跡的な時間に思える。バイオテロの影が潜んでいない、ただの平和?な武偵高のワンシーンだ。

 

「……レキがわざわざ俺のところに足を向けるなんて珍しいな」

 

宗吾がそう尋ねるとレキはわずかに視線を逸らした。その反応に宗吾は少しだけ眉をひそめる。彼女は無言のまま小さく頷き返し、そしてスカートのポケットから小さな包みを取り出して宗吾へと差し出した。

 

「あげます」  

 

「なんだこれ?」

 

受け取った宗吾が首を傾げると、レキはボソッと呟く。

 

「日本のレーションです」

 

「おぉ.....!ありがとう」

 

差し出されたのは、彼女なりの不器用な気遣いが詰まった保存食だった。静かで温かな時間が、平穏な廊下のなかに流れている。レキは宗吾の言葉を静かに聞き届けるとぽつりと告げた。

 

「何かあれば連絡をしてください」

 

「……心強いな。いざとなったら頼ませてもらう」

 

宗吾が軽く手を上げて応えると、レキは満足したのか、ふっと小さな頷きを見せた。レキと別れ、宗吾はそのまま足向けて強襲科の射撃訓練場へと向かった。銃声が絶え間なく響く訓練エリアの扉を開けると、すぐに顔なじみの一般の強襲科の生徒が気づいて声を上げてくる。

 

「おお、宗吾!いつの間に帰って来てたんだよ!?」

 

「長い海外旅行から帰ってきたぜ」

 

さらりと冗談交じりにそう返しながら、宗吾は軽く手を上げて挨拶を交わす。生徒たちは、「相変わらずだな」と笑いながらそれぞれの訓練に戻っていった。他愛のないやり取りのあと、宗吾は空いていた射撃ブースへと歩みを進める。愛用のハンドガンを手に取り、静かに標的のほうへと視線を据えた。呼吸を整え、引き金を引く。

 

タンッ、タンッ、タンッ――!

 

乾いた銃声と共に、一分の狂いもない正確な軌道を描いた弾丸が、すべて的の中心を撃ち抜いていく。周囲の生徒たちがその圧倒的かつ無駄のない射撃の腕前に思わず手を止め、どよめくような視線を向ける中、宗吾は静かに銃を下ろし、淡々とスコアを確認する。

 

そうして訓練を終え、男子寮のフロアへと足を踏み入れた宗吾は自室の机に置かれた一通のファイルを開いた。そこには朝方校内で一悶着起こしたばかりの少女についての纏められた資料が記されていた。

 

『神崎・H・アリア』

 

イギリス人と日本人のハーフであり、父親の血を引くクォーター。転校してくるまではイギリスに拠点を置いており、1年の3学期から東京武偵高校に留学扱いでやってきた少女。祖母がイギリスの勲位であるデイムの位を持つ格式高い一族の出身らしい。

 

武偵ランクは宗吾と同じく最高峰の「S」。事実、14歳の若さからロンドン武偵局の武偵としてヨーロッパ各地を駆け巡り、数々の凶悪な犯罪者を逮捕してきた実績を持つ彼女を前にすれば、そのランクにも納得せざるを得ない。愛用の二丁拳銃と二振りの刀を持ち歩くその戦闘スタイルから、『双剣双銃(カドラ)のアリア』という二つ名で恐れられている。

 

資料から目を離し、宗吾はふと小さく呟いた。

 

「ミドルネーム持ちか……あの人も持ってたな」

 

記憶をかすかに脳裏に蘇らせながら、宗吾は静かに資料を閉じるが、隣の部屋のあたりがやけに騒がしかった。

 

「キンジの周りは相変わらず賑やかだな……」

 

呆れたような皮肉が独り言としてポロリと口からこぼれ落ちる。そのタイミングを見計らったかのように乾いた電子音が廊下に響き渡った。玄関のドアスコープを覗くわけでもなく、そのままガチャリと鍵を開けて扉を引く。そこに立っていたのは、キンジと朝方に体育館の裏で強烈な出会いをしたばかりのピンク髪のツインテールの小柄な少女――神崎・H・アリアだった。

 

「騒音の苦情でも言いにきたのか?」

 

宗吾が冷ややかな皮肉を飛ばすと、そのあまりの正論にキンジの胸がズキリと痛んだのか、バツが悪そうに目を泳がせた。

 

「さっさと用件を話せよ」

 

アリアがキンジを軽く制するように一歩前に出ると、ビシッと宗吾の鼻先に人差し指を突きつけた。

 

「宗吾、あんた……私の奴隷になりなさい!」

 

「……?」

 

斜め上を通り越して宇宙の彼方から飛んできたような要求に宗吾は完全に思考を停止させ、ただ間抜けな声を漏らした。

 

「アリア、話を色々とすっ飛ばしすぎだ。見てみろ、宗吾が盛大に困惑してるぞ」

 

キンジが頭を抱えながらツッコミを入れる。

 

「そうね……要するに、私とキンジとあんたで、三人一組のパーティーを組むのよ!」

 

「キンジは探偵科に転科したんじゃなかったか?」

 

「今から強襲科に戻すわ」

 

(お嬢様ってのは、なんで、どいつもこいつも強引なのか……)

 

内心で盛大にため息をつきながら、宗吾は冷静に突っ込む。

 

「で、そのパーティーとやらは、いつまで組めばいいんだ?」

 

「武偵殺しを逮捕するまで」

 

「あれは逮捕されただろ?」

 

武偵殺しとは数ヵ月前に起きた事件で武偵を狙って来ると言うその名の通りの事件で、宗吾の言う通り逮捕されたはずだ。

 

「じゃあ無理だ」

 

即答だった。

 

「キンジにも言ったけど、『無理』『疲れた』『めんどくさい』――この三つは人間の可能性を押し止める最もよくない言葉よ。 もう二度と使わないこと!」

 

アリアがぷんぷんと両頬を膨らませて抗議するが、宗吾は涼しい顔で首を横に振る。

 

「そういう気持ちの問題じゃなくて、物理的な『時間』の問題だ」

 

「どういうことよ?」

 

「俺が普段やってる任務は、海外を飛び回って主にバイオテロの原因を潰すヤツだ。今はあの手この手で政府から買わされた休暇中だが、いつ上層部から呼び戻されるか分かったもんじゃない。いつまでも協力出来るわけじゃ無いんだ」

 

アリアとて、目の前に立つ守川宗吾という男がどのような人間であるかを知らないわけではない。自分よりも圧倒的な実戦経験と底知れぬ戦闘力を思えば彼を今回の事件に引き入れることができれば、パーティーとしての安定感や戦力は計り知れないものになる。

 

だからこそ、アリアはただの我儘ではなく、計算の上でも絶対に彼を手に入れたかった。

 

「……だからこそよ、宗吾」

 

アリアは先ほどまでの怒気を少し和らげ、しかし頑として引かない強い眼差しを宗吾に向けた。

 

「あんたがどれだけ重要な任務を抱えてようと、海外で化け物を相手にしてようと関係ないわ。今、この日本で起きている武偵殺しを逮捕するためには、あんたのその力が必要なのよ!」

 

アリアの必死の訴えを聞きながら、宗吾は内心で小さく舌打ちをした。

 

(……面倒なのに目をつけられたもんだ)

 

休暇中とはいえ、彼が背負っているのは国家機密レベルのバイオテロ案件だ。しかし、目の前の小柄なツインテールの少女は、その全てを知った上で、真っ直ぐに自分の力を求めている。

 

その時、脳裏にふと、かつて海外の任務で地獄を共にし彼に戦闘技術を叩き込んでくれたアメリカのエージェントの顔が浮かんだ。皮肉屋だが、熱い正義感を隠そうとしなかったあの男は、こんな状況でよく決まり文句のように呟いていたのを思いだす。   

 

 

 

状況によって言葉は違うが女性に振り回される時の場合、日本語に訳して言うのなら..... こうなるそうだ。

 

 

 

 

 

「……Woman. (泣けるぜ)

 

 

 

 

 

思わず零れ落ちたその言葉に、アリアはキョトンと目を丸くし、隣にいたキンジも「は?」と間抜けな声を上げた。

 

「な、何よ急に。バカにしてるの!?」

 

不服そうに頬を膨らませるアリアを横目に、宗吾は静かに息をついて続ける。

 

「協力する……ただし、この休暇が終わるまでだ。それ以上は付き合えん」

 

条件付きながらも協力を取りつけたアリアは、「ふん、まあいいわ!」と鼻を鳴らし、ようやく納得したように腕を組むのだった。

 




ヒロイン候補が2人いて迷ってます。※アリアではありません。
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