回収車の窓の外を流れていく夜の街の明かりをぼんやりと見つめながら、ライカは膝の上で固く拳を握り締めていた。車内の静寂が、さっきまで目の前で繰り広げられていた悪夢のような光景を何度も脳裏に蘇らせる。
(足が一歩も動けなかった)
目の前に化け物――ガナードが迫ってきたというのに、アサルトライフルを構えたまま、恐怖に金縛りに遭ったように立ち尽くすことしかできなかった。敵の攻撃を完璧にいなし、圧倒的な強さで次々と撃退していく宗吾の背中を、ただ守られるように見上げるだけで精一杯だった。
その不甲斐なさと、自分のあまりの無力さが情けなくて、悔しくて、胸の奥が熱く焼けるように痛んだ。もっと強くなければ、あの人の隣に立つ資格なんてない。そう思い知らされるには、あまりにも残酷で鮮烈すぎる初の実戦だった。
同時に、心の隅に押し込められていたもう一つの感情が胸を締め付ける。恐怖に震え、涙をこらえていたとき、宗吾が差し伸べてくれた大きな手や、決して見捨てず前を守ってくれた頼もしい背中。
(私は、強くなりたい……あんな風に、誰かを守れる強さを……あの人の隣に並べる自分になりたい)
溢れそうになる涙を必死に飲み込み、ライカは震える唇を固く引き結ぶ。隣の席で静かに目を閉じる宗吾の横顔を彼女は熱を帯びた瞳でそっと見つめながら、心の中で固く誓う。
回収車の静まり返った車内で、宗吾は席の背もたれに深く体を預け、うつむくライカの姿を視界の端にとらえた。震える肩、必死に飲み込もうとしている涙。その姿を見つめるうち宗吾の脳裏にはふと、遠い過去の記憶がフラッシュバックのように蘇る。
(……いや、当たり前だ)
1年前、あの離島で起きたバイオテロの悪夢。崩壊していく研究施設の中であの地獄からどうにか生還を果たした日のことを、宗吾は嫌でも思い出す。
あのとき極限の恐怖と絶望のなかで足がすくみ、呼吸の仕方も忘れて立ち尽くしていたのは、ほかならぬ自分自身だったはずだ。あの時の自分は、今涙を流しているライカと何一つ変わらなかった。いや、もっと醜く怯えていたかもしれない。
宗吾が強さを追い求め、圧倒的な戦闘者に至ったのには拭えない原点があった。一年前のバイオテロの混乱の渦中、ウイルスに感染して発症しかけている娘を抱え父親が絶望に陥り叫んでいた声が、今でも鮮明に脳裏をよぎる。
『あんた武偵なんだろ。なんでこんなことになったんだ? なんで俺たちがこんな目に遭う!?』
助けを求めることも、理不尽な運命を呪うこともできず、ただ縋るように泣き叫ぶ父親。そしてその直後、感染の拡大と娘の苦しみを断ち切った。閉ざされたドアの向こう側から響いた乾いた銃声は、今なお宗吾の耳の奥で決して消えない耳鳴りのように激しく響き続けている。
父親の問いかけに対して宗吾は何も言い返すことができなかった。人々を救い、理不尽に見舞われる人を守るために自分は武偵の道を志したはずなのに。守るべきものを何一つ救えず、ただ目の前で崩れ去る絶望を見届けるしかなかった無力感が彼の心を焼き尽くした。
だからこそ彼は、その苦しみから逃れるように次々と修羅場をくぐり抜け生き残るために戦い方を覚えた。あの夜を、後悔を少しでも忘れられるなら。けれど強大な戦闘力と引き換えに人が本来持っているはずの瑞々しい感情や、他者の痛みに共感する柔らかい何かを、少しずつ削ぎ落としてきたのではないか、そんな疑問が毎日に流れてくる。
(俺は――いつの間にか、人間として一番大切な何かをすり減らして、化け物側に……いや)
自嘲気味に浮かびかけた苦笑いを、宗吾は静かに押し殺す。失ったものの大きさを数えたところで過去には戻れない。たとえ、血にまみれた手で得た強さでも、自分や隣で震える少女の命をつないでいるのだから、今はそれで良い。
やがて回収車は武偵高へと到着し、宗吾たちは任務の報告を終えた。上層部からは今回の件――プラーガに関する一連の事態について口外しないよう厳重に釘を刺される。その後、ライカは念のため自宅まで護衛付きで送り届けられることになり、寮暮らしの宗吾とはここで別れることになった。ライカは複雑な感情を瞳に宿しながらも深々と頭を下げる。
「守川先輩、今日は本当にありがとうございました!」
「……気にするな」
そっけなく、しかしどこか重みを含んだ返答を残し、宗吾は一人で夜の学内へと歩き出す。背後で遠ざかる足音を聞きながら彼は冷え切った夜風の中に単身、静かに溶け込んでいく。
次の日、武偵高の裏手にある静かな中庭で、宗吾は一服するわけでもなく、ただ冷たい缶コーヒーのプルタブを引っ張っていた。あの港での一件から、学園と警察組織の裏ルートを通じて、渡ったガナードの残骸は「国家機密」として厳重に処理された。
一般の生徒たちがその真相を知ることはない。しかし、あの夜に現場を共にしたライカの態度は、それ以前とは明らかに変わっていた。廊下で偶にすれ違うと背筋をピンと伸ばして挨拶してきたり、時折妙に熱っぽい視線を送ってきたりと後輩の純粋すぎる憧れと畏敬の念は、宗吾にとっても少し気恥ずかしいものだった。
「…すっかり面倒な保護者役だな」
缶コーヒーを一口飲みながら小さく呟いたその時、背後からタタタと軽やかな足音が近づいてくる。
「ちょっと宗吾!」
聞き慣れた勝ち気な声に振り返ると、そこにはピンク髪のツインテールを揺らしながら、ぷんすかと怒った様子のアリアが立っていた。そのすぐ後ろには、相変わらず気まずそうな顔をしたキンジが控えている。
「朝食を食い損ねたのか?」
宗吾が皮肉で返すとアリアはズイッと鋭い歩幅で詰め寄り、ビシッと人差し指を突きつけた。
「とぼけないで!あんた、この前の放課後、勝手に港の密輸事件を片付けてきたって本当なの!?」
「……耳が早いな。誰だ、そんな無駄口叩いたのは」
「そんなのどうだっていいでしょ! 私たちがパーティーを組もうって話をしてる最中に、なんで勝手に単独……正確には1年連れて実戦こなしてのよ! 私たちの話、聞いてたわけ!?」
アリアが両手を腰に当てて抗議の声を上げるが、宗吾は普通のトーンで返す。
「あれはただの偶然だ。掲示板で依頼を選んでたら、その子が隣にいてな。譲ろうとしたけど、進んで一緒に来たいって言ってきたから連れていった」
「連れていったって……あの子、すごく青い顔して先生に報告に来てたわよ! 先輩としてもっと自覚を持ちなさい!」
アリアの発言に、宗吾は少しムッとするが顔には出さず、わずかに言葉を詰まらせた。アリアはライカの友達である間宮あかりをアミカにしており、ライカの事も知っているのだ。
(……あの場にガナードが混ざって交戦したなんて言えるわけないか)
「ガナード」の存在は、アリアたちにもまだ詳細を明かされていない機密事項。ここで迂闊にペラペラと喋るわけにはいかない。宗吾は視線を逸らし、ごまかすように缶コーヒーをもう一口あおる。
「……もう終わったことだ。それより、お前らが組もうと言っていたパーティの話はどうなったんだよ」
これ以上昨日の件を追撃されるのを避けるため、宗吾はわざと話題をすり替えるようにアリアへと問いかけた。見事に話を逸らされたアリアは、「むっ」と両頬を膨らませて不満そうな顔をするが、すぐにフンと鼻を鳴らして腕を組んだ。
「そ、それはこれからよ! あんたが勝手に単独行動するから、私たちも予定が狂っちゃったじゃない!」
「別に、お前らを待たせた覚えはないが」
アリアは「もうっ!」とさらに頬を膨らませる。隣で見かねたキンジが、やれやれといった様子で間に割って入った。
「よせよ、アリア。結果として密輸の武器も押さえて、片付いたんだからいいだろ……」
「……で、結局どうするんだ。俺を引っ張り込んで何か面倒なヤマでもやるつもりか?」
宗吾が尋ねると、アリアは気を取り直したようにキッと鋭い視線を向け、胸を張った。
「決まってるでしょ。私たちの本格的なチーム結成を兼ねて、ちょっとした『作戦会議』! あんたも絶対参加だからね!」
勝手知ったる強制的なお誘いに、宗吾は盛大にため息をつきつつも、拒否はしなかった。穏やかだった放課後の空気が、再びトラブルの予感を帯びた厄介な日常へと引き戻されていく。
「それにしても宗吾、お前、本当に休む気ないのか?」
キンジのその問いかけに、宗吾はふっと表情を緩め、持っていた缶コーヒーを放り投げてキャッチする。
「休むよ……お前らのそのワガママな事件が片付けばな」
宗吾のその言葉を聞いた瞬間、アリアの怒っていた表情がパッと明るくなり、ニヤリと自信満々な笑みに変わった。
「……ふん、ようやくその気になったってわけね!素直に言う事聞くのは嫌いじゃないわよ?」
「泣けるぜ....」
呆れながらもどこか楽しそうな不敵な笑みを浮かべ、宗吾はアリアの後を追って歩き出す。 ――平穏な学園の日常のすぐ裏側で、彼らを巻き込む新たな事件の歯車が、音を立てて回り始めていた。
翌日。宗吾は武偵の教師に呼び出され、朝のまだ静かな校舎に足を運んでいた。指定された教室の扉を開けた瞬間、鼻を突く強烈なヤニの臭いが周囲に充満している。
「おぉ、来たか宗吾」
白煙の向こうから気だるげな声を掛けたのは、ソファーに深く腰掛けた一人の女性教師だった。宗吾は露骨に眉をひそめ、冷ややかな視線を向ける。
「なんで、綴先生なんすかね? 強襲科の蘭豹先生はどこに行ったんですか?」
「あいつはちょっと用事で外しててな。代理で私ってわけだ」
「そうですか……」
「そう露骨に嫌そうな顔をするなよ。もしかして、蘭豹の方が良かったのか?」
からかうように唇を歪める綴に対し、宗吾はフッと鼻で笑って皮肉を飛ばした。
「ヤクやってる教師と、イラついたら直ぐ暴行する教師から指導を受けられるなんて、最高ですね」
この東京武偵高の教師共は一癖も二癖どころか、犯罪スレスレの人物ばかりが揃っている。元自衛隊、警察OB、特殊部隊の歴戦の猛者は兎も角、傭兵、マフィア、果ては殺し屋崩れまでが多数在籍しており、強襲科の実習、謎の地下倉庫と並び、
宗吾の目の前にいる綴梅子は、尋問の技術において日本国内でも五本の指に入る名人だ。彼女にかけられれば、いかに口の堅い凶悪犯であっても洗いざらいすべてを白状させられるという。
常にくわえているタバコらしき代物は、キンジ曰く「絶対に違法物」であり、生徒に対して平然と根性焼きを行うことでも悪名高かった。宗吾自身も、以前皮肉を返した際、満面の笑みで焼印を押し付けられかけた記憶がある。
そして、彼女が口にした蘭豹という教師もまた、かつて香港で「無敵の武偵」と恐れられたほどの女傑だったが、そのあまりの凶暴さと度を超した破壊活動ゆえに、国内外の武偵高を次々とクビになり、流転の末にこの東京武偵高に流れ着いたという曰く付きの人物である。
紫煙をくゆらせながらソファに腰掛けていた綴梅子は、気だるげな視線を宗吾に向けると、手元にあった一枚の報告書をテーブルの上に放り投げた。
「お前らが昨日、港の一件で片付けた連中のこと……報告は上げたが、どうやら面倒な代物が混じってたらしいな?」
呟くように吐き出された煙の向こうで、綴の細い目が鋭く光る。
「上層部は表向き『ただの不法滞在者の武装グループ』で押し通すつもりらしい……ま、お前みたいな優秀な実戦部隊崩れが生き残ったからいいものの、一年を連れてよく無事で戻って来られたもんだ」
宗吾は煙たそうに眉をひそめ、冷ややかな視線を返した。
「そもそも、元の依頼は武器密輸者の逮捕とその武器の押収が目的だったはずじゃ?」
「それに関しては申し訳ないと思っている。あの件は厳重に管理していた筈だが何者かが掲示板に貼っていた。教師陣はお陰でピリピリしてるよ」
タバコの灰をトレイに落としながら、綴は宗吾に目を向ける。
「あのガナードの出所は?」
宗吾が鋭い視線を投げかけると、綴はタバコに火をつけ不気味に笑った。
「断定するのは早いが、おそらく東スラブ共和国だ」
東スラブ共和国――ソ連の元構成国であり、冷戦終結後に独立した東欧の小国。かつては貧困問題から激しい独立運動が起きていたが、女性大統領の呼びかけによって一度は終焉を迎えたはずだった。しかし、政府が反政府側の自治区に有用な地下資源を発見したことで状況は一変。再び攻撃を開始したことで独立運動は再開され、今や東スラブは泥沼の内戦の地と化している。
「あの国は何かと黒い噂が絶えない国でな。政府そのものが真っ黒と言われているレベルだ」
東スラブは元々土地の資源が豊富であることから、オリガルヒと呼ばれる一部の富裕層が政治に深く介入し、目覚ましい経済発展を遂げている。だが、その実態は富裕層寄りのディストピアと言われる始末であり、その恩恵を全く受けられない貧困層の人々は長きにわたって冷遇され続けていた。結果として、国内の貧富の格差は広がる一方となっている。
「政府がプラーガなどのB.O.W.を意図的に独立派に流出させて、連中を『B.O.W.を使用した凶悪なテロリスト』に仕立て上げるっていう、ひでぇマッチポンプやっているって噂もあってだな。その騒乱のときのプラーガやガナードが、何者かの手によって今回の日本へ運び込まれたんじゃないかって意見もあんだよ」
綴の解説を聞きながら、宗吾はわずかに顔をしかめた。
「……否定出来ないのが、何とも言えないですね」
バイオテロの現実を知る彼にとって、国家権力が平然とB.O.W.を政治利用するという黒いシナリオは、絵空事ではなく十分にあり得る最悪の可能性だった。冷たい現実を突きつけるその情報の重さに、宗吾は静かに息を呑む。
「それと、あん時連れて行った一年についてだ」
紫煙を軽く宙に逃がしながら、綴は不敵な笑みを引っこめ、やや真面目なトーンへと切り替えた。
「火野のことですか?」
宗吾が怪訝な視線を向けると、綴は面倒くさそうに肩をすくめる。
「あぁ。あいつ自身は直接戦闘に加わらなかったとはいえ、ガナードの存在を生で目撃した……見ちまったのは、上からとしても非常に面倒くさいそうだ」
綴はくゆらせていた煙を天井へと逃がしながら、冷めた調子で語り続ける。
「政府は一応、過去に国内でバイオハザードなんて発生していないと公式に発表している。無論、ウイルスやプラーガが持ち込まれたなんて事例もな。日本は治安が良いと言われるが、今ではそれが国家の箔になっている節がある。武偵制度が生まれたとはいえ世界の修羅場に比べれば日本はまだ可愛いほうだからな」
その言葉の裏にある重たい現実に、宗吾は眉をひそめる。綴が語るには、バイオテロの深淵に一年生という若さで関わり、なおかつ生還を果たした前例など、東京武偵高全体を見渡しても宗吾を含めて片手で数えるほどもいないという。つまり、それ以外の者たちは――その結末は語るまでもなく明白だった。
更に一部の高官たちは、自らの保身や政治的利益のために、かつて宗吾が体験した離島のバイオテロの事実すらも無かったことにねじ曲げている。
「だから宗吾。火野ライカをお前のアミカにして徹底的に鍛え上げろ」
「……は?」
予期せぬ指示に、宗吾はわずかに眉根を寄せる。しかし綴はお構いなしに言葉を続けた。
「お前みたいに海外の修羅場を駆け回れとまでは求めんよ。だが、万が一またあんな泥沼に引きずり込まれたとき、実戦で最低限生き延びられる程度には使えるようにしろってことだ――もっとも、お前レベルの化物じみた動きを期待する気はない。つか、そんなの無理だし」
要するに、ライカは知らぬうちに、そして望んでもいないのに、世界の裏側に広がるどうしようもない深淵へと足を踏み入れてしまったということだ。一度その影を見てしまった以上、もう元の安全な日常には戻れない。
彼は鋭い視線を向けたまま、重いため息を一つ吐き出し、わずかに眉をひそめ、冷ややかな視線のまま綴へと問い返した。
「でも、火野は中学生のアミカを取ったって聞きましたけど……俺が火野をアミカにしたら、面倒な事になりませんか?」
ライカが以前、中学生のアミカを取っていたという噂を耳にした記憶があったからだ。自分が今度はそのライカをアミカにするなどとなれば、学内で余計な憶測や嫉妬を買うのは目に見えている。
しかし綴は、まるで他人事のことのようにケラケラと軽薄に笑い飛ばした。
「あぁ、あの子ね。けどお前が何気にしてんだよ。アミカの制度なんて上も下も、現場じゃ形骸化して久しいだろ」
綴はくゆらせていたタバコをもみ消すと、面白がるような意地の悪い笑みを浮かべる。
「それに、お前にアミカができるなんて、学内の連中にしちゃ、いい娯楽の話題だ。面倒ごとが嫌なら誰にも文句を言わせないくらい徹底的に、あの娘を叩き直してみな」
「……っ全く、好き勝手言いやがって」
宗吾は露骨に不快感を露わにし、綴へと鋭い視線を向けた。だが、綴はそんな彼の不満などどこ吹く風とばかりに、やれやれといった様子で首を横に振る。
「文句を言うんじゃないよ。お前以外に、あんな化物どもの現実を知った上で、あの一年の面倒を見られる奴が学内にいる? 運命共同体ってやつだな」
逃げ場のない事実を突きつけられ、宗吾は苦々しく舌打ちを一つ噛み殺した。
(……あの現場に連れていったのは俺自身だ)
昨夜、回収車の中で震えていたライカの瞳が脳裏をかすめる。恐怖に怯えながらも「強くなりたい」と必死に涙をこらえていた彼女の姿と、かつて自分が味わった絶望が重なり合う。ここで見捨てるのは簡単だが、あのまま中途半端に放置すれば、彼女はいずれ本当の地獄に足元をすくわれて命を落とすだろう。
「……分かりました。暇を見て、最低限の護身くらいは叩き込んでおきます」
渋々といった様子で宗吾が承諾すると、綴は満足げにふっと口角を釣り上げた。
「話が早くて助かるよ。ま、せいぜい後輩の面倒を可愛がってやんな」
ふざけた調子で言い捨てる綴を背に、宗吾は重い足取りで教室をあとにする。綴先生との息の詰まるような会話を終えると、宗吾は足取り重く1年A組の教室へと向かうのだった。