気をつけてください。
結局、私が叢雲のオシオキから解放されたのは1時間後のことだった。解放された後、私は2度と叢雲に対して同じ過ちを繰り返さないことを心に決めたよ……。
「んで?結局ここはどこなのよ」
「それはミヨっち達に聞かなきゃ分かんないんだよー」
「役に立たないわね」
叢雲さん、厳し過ぎないっすか?抗議の視線を向けていると、ジト目でめっちゃ睨まれた。
「おふたりとも、おまたせしたであります」
「です~」
叢雲のジト目に耐えていると、ミヨっちとハカセが何処からか戻ってきた。
「ではこれからせつめいするでありますが、ながくなるので、きゅうけいをはさむあいだに しつもんをうけつけるであります」
「それでいいわ」「はーい」
「では………、まずぜんていとして キタカミどのたちのいたせかいを[アチラ]、いまわれわれが いるせかいを[コチラ]とこしょうします」
そして始まったハカセによる説明は驚くべき内容だった。
[アチラ]と[コチラの]はほぼ同一の、所謂並行世界というものらしい。
この並行世界はお互いがお互いに影響を及ぼしあっているようで、特に大きな出来事は影響が出やすいらしい。
だが例外もある。それが今回の深海棲艦による襲撃だった。[アチラ]ではゲームとしての[艦隊これくしょん]が[コチラ]の現実に反映され始めたのだという。原因は不明だが、それをどうにかする為に連れて来られたのが私なのだと。
「え、今のどの辺に私である必要があったの?」
「キタカミどのは、コチラにくるまえに なにをしていたか おぼえているでありますか?」
「神社に初詣だけど?」
「それがりゆうであります」
「へ?」
初詣が原因?なんじゃそりゃ…、訳が分からん。
「どーゆーこと?」
「みこさまのちからは きょうりょくではあるのですが、さすがに[アチラ]にかんしょうするには ふたんがおおきいのであります。しかし、じんじゃというものはちからの[特異点]であり、ひかくてきかんしょうしやすいのであります」
「そこで私?なんで他のひとじゃダメだったの?」
私以外にもけっこう人いたけど……。
「あー、ひじょうにいいにくいのですが…。あのばしょでキタカミどのが しんでしまったからであります」
「え、そうなの?」
「あくまでみこさまがかんしょうできるのは[魂]にだけであります。そこで、キタカミどのの[魂]がにくたいから はなれたところをみこさまに よびたしてもらったのであります。あとは……[艦隊これくしょん]をぷれいしていたからであります」
「?それがどう関係するの」
「キタカミどのの[魂]はひとのでありますから、[艦魂]のためのよりしろでは ふあんていになってしまうのです」
「へー。でも私大丈夫だけど?」
「そこで[艦隊これくしょん]がじゅうようなのであります。たいせつにされているものには[魂]がきちんとあるのであります。キタカミどのはかんむす[北上]と、ふかいきずなで むすばれておりましたな?そこで、かのじょの[魂]とかさねたじょうたいで よりしろにひょういして もらったであります」
「あー、だから私の格好が[北上改二]なんだ。もしかして口調とかは[北上]の影響が出てる感じ?あとなんで砂浜にいたの?」
「そうですな。いきなりじょせいになって あまりあわてていないのも、そのあたりが かんけいしてるであります。すなはまにいたのは、[けんぞーくん]のちょうせいが いまいちだったことでおきた ふこうなじこでありますな」
「そっかー、不幸な事故かー……」
ハカセってけっこうマッドだよね………。
「ま…いっか。あ、じゃあ叢雲はどうやって?」
「叢雲どのは[コチラ]にキタカミどのがいるので、そのきずなを たどればいいのであります。せかいがちがっても おなじかんむすさんの[艦魂]でありますので、よりしろをじゅんび すればいいのであります」
「とんでもないわね…。でもそれじゃあ元の[北上]はどうなるのかしら?」
「キタカミどのの[魂]がよりしろになじめば、かんむすさんのほうの[艦魂]をぶんりできるであります。もちろん、じかんはかかるでありますが」
「そうなの…」
「……叢雲は、自分達が架空の存在って言われても、大丈夫なの?」
叢雲がさっきの説明で、驚いていたのは気づいていた。今も、俯いている。
「……大丈夫な訳がないじゃない。今だってそんな事ないって否定してやりたいわ。でも………」
そこまで言った叢雲は、俯いていた顔を上げ私に向き直った。
「でも、例えこれまでアンタや皆と生きていたのが幻だったとしても、私はいま今、ここにいるわ」
「…………」
「だから、こ……これから改めて、よろしくしてあげるわ!!感謝しなさい!」
「ん……、そうだね。よろしく、叢雲」
「……えぇ」
最後の方は恥ずかしくなったのか、真っ赤になってそっぽを向いてしまった彼女。私にはもったいないくらいの素敵な子だ。
「ぐすっ……ぐすっ、とってもいいおはなしです~」
「まったくでありますな。みこさま、ちりがみであります」
「ありがとうです~…ち~んっ!!」
……感動に浸っていたいのに、なんか削がれた。ていうか、今のやり取り見られてたの忘れてたな。
「えっと…、まだ質問したいことあるんだけど」
「なんでありますか?」
「ミヨっちやハカセ達は、どうしてこんなところにいるの?二人は別としても、武器や艦載機を扱う子もいるよね」
「じつはですな、[深海棲艦]はわれらようせいやかんむす、にんげんの[魂]をとりこむことでつよくなるのでありますが、ここにあったちんじゅふがおそわれ、そとにでれなくなったのです。このじんじゃにはみこさまのおちからでけっかいをはり、[深海棲艦]のしんにゅうをふせいでいるのであんぜんなのでありますが…」
「えーと、取り込むってつまりは……」
「喰われるのよ」
「うわぁー、やっぱりー……」
「とくにかんむすさんはがいねんとしては[深海棲艦]にちかいでありますからな。かんむすさんが[希望]という[正]の[艦魂]ならば、やつらは[絶望]といった[負]の[艦魂]をもとにしているであります」
「でもどうやってそれが[深海棲艦]になるの?」
「[負]の[艦魂]はほぼすべてがはかいしょうどうをやどしていて、それがどうやってなのかはわからないのでありますが、うみにしずんだふねのざんがいや、しげんをもとにうまれているようなのであります」
「……つまり、だれかくろまくがいるってこと?」
「かのうせいは、たかいとおもうであります」
「そっか………。叢雲はどうする?」
「アンタの好きにすればいじゃない。司令官はアンタなんだから」
「ん、わかったよ」
さてどうするか…。そう考えていると、ミヨっちがもうしわけなさそうにあやまってきた。
「キタカミさん、ほんとうにかってなおねがいですが、どうかわたしたちをたすけてくださいです…わたしはきらわれてもかまわないので…」
「いやいやミヨっち、なんでそうなるよ」
「ふぇ?だって…、やさしくしてもらったのに、こんなおんしらずなことを…」
「いいって、むしろ死んだ私を助けてもらったんだから、感謝こそするけど恨まないって。それに、ミヨっちはもう友達だからね。友達を助けるのは当たり前だしね」
「アンタ、やっぱりお人好しなのね」
「いやー、困ってるのは見捨てておけないしさ。ていうか私、ゲームの中でもこんな感じだったの?」
「そうね、どうしようもないくらいのお人好しだったわ」
ズバリ言われてちょっとヘコむ。でも、人が困ってるのを見て見ぬふりするのは昔から嫌いなのだ。仕方ない。ゲームの中にも自分の性格って反映されるのかな?
「でも…、アンタらしくていいんじゃないかしら?それに、アンタだけじゃ頼りないから私も手伝ってあげるわ」
「うん……ありがとね?」
「別にいいわよ、お礼なんて」
叢雲はまたそっぽを向く。でも恥ずかしがってるのがまる分かりだ、耳が赤くなってる。
「ふぇぇぇぇん!!ありがどうございまずぅ~!!こんなわだじに、やざじぐ、っぐす、じでぐれで、うれじいでずぅ~」
「わぁっ!?っちょ、ミヨっち!?鼻水が!!鼻水が顔に!?」
「……まったく、締まらないわね。はぁ………」
「うんうん。みこさま、ほんとうによかったでありますな」
ちょっと!?叢雲は呆れてないで助けてよ!!ハカセは和んでないでミヨっちを落ち着かせるの手伝ってよ!?あぁっ!?鼻水がーーっ!?
「うー、まだなんかねちょねちょする気が…」
「ごめんなさいです~またわたしこんな……」
「良いのよ、司令官の顔が鼻水で汚れるくらい。どうって事ないわ」
「いやまぁ、洗ってきたから良いけど、叢雲が言うことじゃないよね?」
「あっはっは、キタカミどのはたいへんでありますな」
「ぜんっぜん笑うとこじゃないからね?もう少しさぁ、労ってくれてもいいんじゃないの?」
「ダメよ。アンタ、甘やかしたら絶対だらけるでしょ」
「ぐぬぬ……」
あぁどうしよう、叢雲の尻に敷かれる未来しか想像出来ない!!どうにかしなければ!!
「そ、そうだ!!深海棲艦を倒さなきゃいけないなら、他の娘達も連れてこなきゃいけないよねー?」
「逃げたわね」
「にげたでありますな」
「だいじょうぶです!キタカミさんは、とってもがんばってくれていますです!!」
「ミヨっち…」
「キタカミさん…」
「「ぎゅー!」」
「なにこの茶番」
叢雲が白い目で見てくるけど、気にしたら負けだ。
「まぁキタカミどののいうことももっともであります。じつはわがはい、そうおっしゃるだろうとおもってすでに[けんぞーくん]にてけんぞうをはじめていたので、そろそろしゅうりょうするころであります」
「アンタはアンタで用意が良すぎよ」
そんなこんなで[けんぞーくん]の様子を見に来た私達。どうやらもう建造は終わっていたようだ。
「ではあけるであります」
[けんぞーくん]の扉が開く。そこにいたのは…。
「コレは利根さんだねー」
「そうね…、私一人で抑えられるのかしら…」
そこにいたのは、重巡洋艦の[利根]。ゲームでは史実の影響なのか、カタパルトの不調に悩まされるセリフがあって、二次創作ではよくネタにされる。姉妹艦の妹、[筑摩]より身長が低い事などを気にしているので、姉であることを強調するところがあり、それが逆に子どもっぽさを加速させる。喋り方も独特で、「我輩」や「~なのじゃ」と爺臭い口調で話す。
ちなみにウチの艦隊では第二次改装を経て航空巡洋艦重巡になっていて、練度もlv99であった。
「利根さんも改二になるのかな」
「[魂]がせいちょうしてるのであれば、よりしろはそれにあわせてしんかするであります」
「そっか。じゃあ即戦力って訳だねー」
「そんな呑気に…。抑えにまわる私のことも考えなさいよ。普段は良いお姉さん役なのに、すぐ調子にのるんだから」
「まぁまぁ、私もちゃんとフォローするから大丈夫だってー」
利根さんそんな感じなのか。でも戦場で頼りになるなら、まだ練習すらしていない私よりよっぽど良いと思う。
「ところで、私は利根さんのこと考えてれば良いの?」
「よろしくたのむであります」
「わたしもがんばりますよ~」
「そうだね。がんばろっか、ミヨっち」
叢雲の時と同じように利根さんの事を考える。
「うわっ!?」
「すごくまぶしいです~」
「ちょっと!!大丈夫なのコレ!?」
「よりしろが[魂]にあわせて きゅうそくにしんかしているだけなので だいじょうぶでありますよ」
やっと光が収まると、そこには[利根改二]な利根さんが眠そうに瞼を擦っていた。てゆーかさっきまで立ってたじゃん。何故に横になってるの
「んー?なんじゃぁ、もう朝か?筑摩ぁ~、まだ眠いからあと1時間は寝かせて欲しいのじゃー」
「…………。頼りになるんだよね?」
「私に聞かないでよ………」
「ぬ……おぉ!?なんでお主達が我輩の部屋に居るんじゃ!?筑摩の奴はどうしたのじゃ!?そもそも部屋が違うではないか!!いったいどうなっておるんじゃ!?」
目が覚めたのか、凄い勢いで立ち上がりまくし立てる利根さん。こんなで本当に頼りになるんだろうか…。
~次回予告~
「雨はいつかやむさ…」
「でもまだまだどしゃ降りっぽい?」
遅くなりました、ブドウ糖です。
設定に不備が見つかったので、ちょっと書き直してました。急いだので誤字脱字が多いかもしれません。
また超ご都合主義のオリジナル設定マシマシですね。本当はどんな感じなのか明言されていない筈なので、これで大丈夫だと思いますが…。
あくまでもブドウ糖の独自設定なので、「この作品だけの設定」と理解して頂きたいです。
それはそうと、約2日も放置していたのにお気にいりが200件を突破致しました!
これも、こんな自己満足な作品を楽しんで下さる皆さんのお陰です。本当にありがとうございます!!
次からは、週に1、2回ぐらいの更新になると思いますが、これからもよろしくお願いいたします。
次は日曜日の深夜辺りに更新する予定です。