超機械生命体アストライア   作:桂ヒナギク

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1.宇宙からの来訪者

 航空自衛隊のヘリコプターのローター音が空に鳴り響く。

 地上にはゴジラのような巨大怪獣。

 もちろん、これは特撮の撮影でもCG映像でもない。

 実際に東京の街で起こっている災害級の事象である。

 怪獣は火球を吐いて街を破壊している。

 地上では陸上自衛隊や警察が誘導をして住民を避難させている。

 これが巨大変身ヒーローものの特撮映像であれば、どこからかウルトラマンが現れて怪獣を倒してくれることであろう。

 しかし、これは現実でこの世にはウルトラマンなど実在するわけもなく、ただただ目の前の惨劇に人類は怯えるばかりである。

 上空では戦闘機も飛び回っており、怪獣を攻撃している。

 怪獣が現れたのは少し前だ。

 いつもの平和な東京で、住民の買い物や他県の観光客などで賑わっていたが、突如として大地震が起き、地中から怪獣が出現したのである。

 怪獣が現れたのは今まで一度もなくこれが初めてだった。

 避難誘導中の自衛隊員の一人が、逃げる人々の波に逆らって怪獣の方へ歩いていく長髪の端正な顔立ちをした少女を見つける。

「君!」

 少女は無言で立ち止まり振り向く。

「この先は危険だ。早く逃げなさい」

「私は誰からの指図も受けない。私の歩く道は私が決める」

 そう言って少女は、怪獣に向かって再び歩き始める。

「はあ?」

 ちょっと待てよ、と隊員は少女を制止する。

 少女は隊員の手を振り払う。

「私に触るな」

 少女はどんどん進んでいく。

 一方で怪獣は疲れたのか、破壊活動をやめて地中に潜って行った。

「……………………」

 少女は歩みを止め踵を返す。

 

 

 束の間の静寂。

 陸上自衛隊員の柳田(やなぎだ) 光一(こういち)は駐屯地の寄宿舎で先ほどの少女のことを考えていた。

 変な少女という印象があった。

 あの少女は何をしたかったのだろうか。

 色々考えを張り巡らせている。

 その時、寄宿舎にアナウンスが流れる。

 どうやら作戦司令室への招集だった。

 他の隊員たちも合流し、一斉に作戦司令室へ。

 隊員たちが点呼で全員集合を確認し司令官の元部(もとべ) 公彦(きみひこ)に報告する。

「みんなに新隊員を紹介する」

「新隊員?」

「入れ」

 扉が開き、光一が見た先ほどの少女が入ってきた。

(この子はさっきの)

「……………………」

 少女は光一をチラッと見ると、元部の横に立った。

「高木隊員だ」

高木(たかぎ) 恭子(きょうこ)です」

 光一は疑問をぶつける。

「司令官、なぜ少女なんですか?」

「上からの指示だ。俺にはわからない」

 その時、警報と共に怪獣出現の報が入る。

「全員出動!」

 司令官の指示で恭子含め隊員たちが怪獣の現れた渋谷へと急行する。

 先刻、足立区が壊滅し、次は渋谷が焦土と化するのだろうか。

 皆が一様に不安を抱えながら渋谷に車で向かう。

 その車の中で、光一は恭子に聞いた。

「君、なんで自衛隊員に?」

「教える義理なんてないわ」

「あのさ、一応、俺は先輩なんだけど、礼儀を弁えたら?」

「別に減るもんでもなし、放っておいて」

「はいはい、そうですかい」

 やがて車は渋谷に到着し、隊員たちは避難誘導や銃器で怪獣への攻撃を始める。

 上空では航空自衛隊の航空機が怪獣を迎撃していた。

「くそ、なんだって怪獣なんかが現れるんだよ。あんなの特撮だけの存在なんじゃないのか」

 と、光一は怪獣に攻撃しながら言い放った。

「こんな時に悪いんだけどあんたの名前は?」

 と、恭子が光一に訊ねる。

「ああ? 柳田 光一だよ」

「柳田、やつの弱点は胸の赤い部分よ。そこを狙いなさい」

「後輩が命令すんなよ。自衛隊は階級社会だぞ」

 そう言いつつも光一は言われた通りに怪獣の胸の赤い部分を攻撃する。

「ぎゃああああおおおおああああ!」

 怪獣が苦痛に怯み、悲鳴を上げた。

「効いてる?」

「もっと撃ち込んで」

 光一は銃を撃ちまくり、弾切れを起こしては弾丸を補充して再度狙う。

「すげえ。すごいよ君。一瞬で怪獣の弱点を見抜くなんて」

 しかし、光一が怪獣を銃撃してる隙に、恭子は姿を消していた。

「あれ? 高木さん?」

 怪獣は光一の攻撃の手が緩んだ隙に、彼に向かって火球を放った。

(しまった!)

 死ぬ、そう思った刹那、地面から巨人が飛び出して光一を庇って火球をその背中で受け止めた。

 その姿は白銀のボディに、どこかロボットっぽさのある女性のような格好だった。

 その名はアストライア。もちろん、母星のヴァルシアでの呼び名である。

 アストライアは立ち上がりざまに踵を返して怪獣の方を向いて構える。

 光一は踏み潰されないようになるべく遠くへ移動する。

 アストライアは飛来した火球を上空へ弾き飛ばし、地面を蹴って怪獣に突進する。

 足の着地の度に地面が激しく揺れる。

 怪獣の懐に潜ったアストライアは拳を乱打し、追い詰めながらダメージを与えていく。

 反撃の隙もなく、怪獣はただただ弱っていくだけだった。

「であ!」

 アストライアは怪獣を背負い投げで後方に投げ飛ばし、必殺技の体勢に入る。

 広げた右手を倒れる怪獣に向かって突き出し、そこから一気に光線を撃ち放った。

 ヴァルシアブラスト。

 怪獣に光線が炸裂し、その図体を一瞬で大爆発に追い込む。

 だが、その大きすぎる爆風は、周りの建造物にも影響を与え、無事では済まなかったが、怪獣が暴れ回るよりかはマシである。

 アストライアは地面を縦に蹴って飛翔し、空の彼方へと消え去るのだった。

 その一部始終はマスコミの報道でも取り上げられ、さまざまな意見がSNSで拡散された。

「せっかく面白いものが拝めたのに、高木さんはどこに行ったのだろう?」

 と、光一は疑問符を浮かべるのだった。

 

 

【挿絵表示】

 




次回のアストライアは

外傷もないのに全身の血液を抜かれて殺害されるという奇怪な事件が起こった。
捜査を開始した恭子と光一は二人の被害者の共通点に気づく。
犯人を誘き出し、追い詰める恭子。
攫われた光一にそれを救出しに向かう恭子。
恭子は無事に光一を助け出せるのか……?
次回、吸血殺人事件。

守りたいと思った時、それが私の戦う理由だ!
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