超機械生命体アストライア   作:桂ヒナギク

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19.勘違いの交錯

 都内の総合病院。

 有栖の病室にテレスが訪れる。

「あ、お兄ちゃん」

「やあ、妹よ」

 テレスは差し入れとして、ヴァルシアの明産フルーツのモルシアを取り出した。

「確か、我がマイシスターはこれが大好物だったな」

「あ、桃だあ!」

(桃? そうか、この星では桃という名前なのか)

「覚えているか? 小さい頃よくこの桃を取り合いしたよな」

「そうだね。懐かしいわね」

 別人なのに記憶が合致するミステリーが起こった。

「ところで妹よ。妹はどんな仕事をしているんだ?」

「警察官だよ」

「そうか。妹は小さい頃から警察官に憧れていたからな」

 どこかで聞いたことのようなある話である。

「だけど逃走犯押さえる時にうっかり怪我しちゃってこのザマよ」

「そうか。まあ、命が無事だっただけでもよかったよ」

「ありがとう」

 そこに、恭子がお見舞いにやってくる。

「あ、その節はどうも」

 会釈する恭子。

「いらっしゃい、恭子さん」

 と、有栖が微笑む。

「有栖さん、怪我の具合はどうお?」

(なんか自分の名前を呼んでるみたいね)

「来週あたりには隊員できそうだわ。現場復帰もできるみたいよ」

「そうなの」

 そこでテレスが恭子に聞いた。

「君は妹の同僚なのかい?」

「いや、ACRですけど……」

「ACR?」

「国際地球防衛組織Alien Countermesure Room、縮めてACR。私はそこの日本支部の隊員です」

 テレスは考える。

(怪獣対策組織か? ならば警察官であるアリスとも関わりがあるな)

「わざわざ妹のお見舞いに来てくれてありがとう」

「友達ですから」

「君はいい人だ」

 恭子は桃を取り出す。

「そうそう、有栖さんに桃——」

 言いかけてやめる。

 恭子はすでに桃が置かれていることに気づいた。

「あら、恭子さんも桃を?」

「もう持ってきてくれてたのね」

 有栖がテレスを見る。

「実は恭子さんも桃が大好物なのよ」

「へえ」

 恭子がテレスに訊く。

「お兄さんは何が好きなんですか?」

「俺はどちらかというと……」

 ルバーナ、そう言おうとしたが、訳語がわからない。

「バナナだよね!」

 と、有栖が言う。

「そう、それそれ! 皮が黄色で実は柔らかく甘くて美味しいんだ。もちろん、桃も嫌いじゃないけどね」

 ピー。

 恭子の無線が鳴る。

 怪獣出現の報だった。

 出現場所は病院の近くである。

「……!」

 病室の窓の外に怪獣の姿が見える。

 こちらに近づいてきているわけではない。

「怪獣だと!?」

 テレスは慌てて病室を飛び出した。

「お兄さん、どこに行くんですか!?」

 心配になった恭子が「ごめんね!」と有栖に残して追いかける。

 廊下を駆け抜けるテレスと恭子。

 病院を抜け出し、怪獣の方へまっすぐ向かっていく。

「輝須さん!」

 振り返るテレス。

「君も来たか」

「武器も持たず突っ込むのは危険です! それにあなたは警察でもACRでもないですよね!?」

「ああ。探偵だ」

(ん?)

 恭子は違和感を覚えた。

「だけど、あいつをなんとかする方法ならあるんだ」

「え?」

「怪獣は俺が倒す。君は住民を避難させてくれ」

「わかりました」

 恭子とテレスがわかれる。

 すると、怪獣の前にレオードが出現した。

 しかし恭子は構わず住民の避難誘導に徹する。

「皆さん、こっちです! 慌てず押さないでください!」

 恭子はレオードと怪獣の戦いを見つめる。

 そこに、輝須が現れる。

「恭子!」

 恭子は振り返る。

「兄さん!」

「あの巨人は知り合いなのか?」

「ううん」

 首を横に振る恭子。

「しかし巨人がお前以外にもいたとはな」

 その時だ。

 二人を大きな影が覆い被さる。

 吹っ飛ばされて落下してきたレオードだった。

「はっ!?」

 恭子はスティックを取り出してボタンを押した。

 地面から生えてきたアストライアの手がレオードを押し上げ、恭子の体が体内に格納され、その巨体が彼を抱えて飛び出した。

「真上に落ちてくるとか何考えてんのよ!?」

 アストライアが眉間に青筋を立てている。

「すまない」

 と、レオードが頭を下げる。

「とにかく、あの怪獣をぶん殴るわよ」

「おう!」

 二体の巨人が怪獣に怒涛の攻撃を浴びせる。

 ダブルパンチにダブルキック。

 怪獣は手も足も出なかった。

「トドメ!」

 アストライアが怪獣を上空に放り投げ。

 レオードが勢いよくジャンプして怪獣を通過し、落下の勢いで敵を地面に向かって蹴り落とす。

 そしてレイクローディを発動したアストライアが目にも留まらぬ速度で怪獣に向かって飛び蹴りを放ち。

 両者の蹴りで挟み撃ちになった怪獣が爆裂霧散して爆風が巻き起こる。

 そして、上空より二人の巨人が降りてきて着地した。

「今の怪獣は強かった。君がいなきゃ勝てなかったと思う」

「だからって地上人を巻き込んだらお話にならないわ」

 アストライアは輝須を指差した。

 レオードは輝須を見て頭を下げる。

「いや、助かったから結果オーライっす!」

 レオードはその言葉に安心した。

「よかったね。赦してくれるって」

 レオードはアストライアの方を見る。

「君の名を教えてくれないか? 俺はレオード」

「アストライア」

「今後とも力を合わせて戦っていこう」

 二人の巨人が握手を交わした。

 そして同時に地面を蹴り、飛翔して空の彼方へと消えていった。

 夕空。

 恭子が輝須の前にいる。

「さっきはありがとう」

 輝須が笑顔で恭子に言う。

「私の前で兄さんを死なせたりはしないわ」

 それと、と続ける恭子。

「兄さんに確認したいんだけど、兄さんの好物って何?」

「何って、バナナだけど。……?」

「職業は?」

「私立探偵。けど、どうしてそんなこと訊くんだ?」

(テレスという名、探偵、バナナ。私の勘違いね。やはりこの人は兄さんよ)

 もう勝手にしてくれ。

 

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