ある日のことだ。
ACRの司令室で、光一がボーッとしていた。
「どうしたんだ、あいつ?」
と、隊員の一人が別の同僚に訊ねる。
「僕が知るわけないじゃないですか」
隊員は光一に声をかけた。
「おい、柳田」
反応しない。
「ダメだ」
隊員は諦めた。
訓練の時も一人参加せず光一は隅っこの方で上の空だった。
「はあ……」
息を吐く。
光一は恭子の言葉が気になっていた。
養子。
5000年前の王子。
アルテウス。
まだ心の整理ができていないのだ。
そこに恭子が割って入る。
「いつまでうじうじしてんのよ、みっともない。男でしょ?」
「はあ……」
ため息。
その時、恭子の通信機に連絡が入る。
超広域銀河警察惑星ポリシアからの通信だ。
添付されていたPDFファイルを私物のコンピュータで開く。
『ガイアコット』
『アルテウス』
『精神転移』
最後に一行。
『閲覧権限不足』
開けないファイルがあった。
(なにこのファイル?)
一方、ポリシアの捜査官室では。
「電子頭脳紛失事件は?」
「未解決です」
捜査官室を沈黙が支配した。
「……嫌な予感がする」
と、捜査員が沈黙を破った。
その日の夜。
光一は帰宅する。
育ての親の写真を見る。
「実の息子じゃないってか……。俺は……誰なんだ」
その瞬間、テレビで緊急速報が流れる。
火星で正体不明の機械生命体目撃。
「……火星?」
画面にノイズ。
ダークアストライアの影が一瞬だけ映り込む。
「なんだこれ?」
光一はニュースの映像に見入った。
映像と共にニュースキャスターが概要を話す。
『今朝未明、火星で巨大な生命体が目撃されました。その生命体はアストライアに酷似しており、体の色は黒でした。その後、アストライアと戦闘になり、黒いその巨人はアストライアに倒されたとのことです』
火星での戦闘の一部が映像で流れる。
『現地の日本火星報道部によると、戦闘になる前に何らかの事故が発生していた模様です』
映像がニューススタジオに切り替わる。
『
『どうやら火星政府庁総長の影のボディガードと言われたエルザーレ研究員が起こした事件のようです』
『そのエルザーレ研究員は何をしたのですか?』
『エルザーレ研究員は——』
小此木というニュースキャスターが事件の流れを説明する。
『——その後、何者かの手によって、エルザーレの中に入った人工機械生命体はエルザーレとして最期を迎えたとのことです』
「高木さん、大活躍じゃねえか」
光一はクスッと笑う。
元気の出た光一は、自分の生い立ちなどどうでもよくなってきた。
その時だった。
スマホが鳴る。
「ん?」
画面を見ると恭子の電話番号だった。
「噂をすれば」
通話マークをタップしてスマホを耳に当てた。
『もしもし?』
「ただいま、電話に出ることができまーん。発信音の後にメッセージお入れください。ピー」
『何ふざけてんのよ?……ちょっとは元気が出たみたいね。あ……それよりも、ニュース見た?』
「見た見た。火星で大暴れしてたらしいな」
『大暴れって何よ! 人聞き悪い!』
「いや、ニュースの映像だけだと完全に怪獣映画だったぞ」
『……あれ編集の仕方が悪いのよ』
光一は少々黙り込んだがすぐに口を開いた。
「高木さん」
『なに?』
「ありがとな」
『……何よ急に』
「いや、なんとなく」
『気持ち悪い』
「ひでえ」
通話が切れる。
光一は携帯を見つめる。
そして笑った。
「過去は過去、今は今だ」