超機械生命体アストライア   作:桂ヒナギク

3 / 32
3.無人惑星の怪獣

 日本に現れた怪獣や戦闘ロボットの騒動で、世界各国は合同で国際地球防衛組織・ACRを設立した。

 ACR日本支部には防衛省が参入し、陸上自衛隊の光一と恭子が選任されてチームへの異動を命じられた。

 二人は駐屯地の寄宿舎の荷物を整理し、ACR日本支部へと向かう。

「まさか一緒に異動になるとはね」

「血液消失事件でもバディ組んだし、何かと縁があるのかしらね」

 ACR日本支部は地球上空に配置されていた宇宙開発施設を改修して衛星基地として運用されている。

 宇宙空間から周囲を見渡した方が効率よく警戒できるからである。

 地上との移動には、正体不明の者から技術提供を受けて開発された空間転移機能で行き来をする。

 何処の馬の骨ともわからぬ存在から技術提供を受けるのはあまりにも信用できたものとは言えないが。

 ACR日本支部の司令室では、国際地球防衛機構に選任された特別な訓練を受けた公務員たちが集まっていた。

 それぞれが初対面で、軽く自己紹介をしていた。

「なんかこの状況、ウルトラマンレオを思い出すなあ」

 光一が司令室内を見渡して、子どものころにテレビで見たウルトラマンレオを回想する。

「柳田、私はそのウルトラマンってのがよくわからないんだけど、どういう作品なの?」

「そうか。高木さんと俺では年代が違うよね。そりゃ知らなくても当然か」

 光一は初代ウルトラマンの話をする。

 初代ウルトラマンは輸送中の怪獣ベムラーを地球に落っことしてしまい、回収のために進入した地球で科学特捜隊のビートルに追突して搭乗者のハヤタ隊員を死なせてしまい、自身がその遺体に憑依して一心同体となって怪獣や宇宙人と戦う使命を帯びるところから物語は始まる。

「それは楽しそうで興味深いお話だね」

 恭子はそう言いながら、ウルトラマンのデザインを想像する。

「俺、子どもの時はウルトラマンは実在すると思ってたんだよね。本当に戦ってるところを撮影してると思ってたんだ。だけど、実際は特撮技術って言って、ミニチュアやワイヤーを使ってそれっぽく再現してたんだよね」

「でもアストライアは本物よ」

「そこなんだよね。アストライアがいるなら、ウルトラマンも実在できそうな感じだけどね」

 二人が楽しそうに話していると、隊長の鈴間(すずま) 京佑(きょうすけ)が声をかけてきた。

「お前たち、ウルトラマンの話をしているのか?」

「あ……鈴間隊長。そうなんですよ」

「ウルトラマンは俺も好きでな。怪獣も映画の中だけの存在だと思っていたら実在していたということには度肝を抜かされたよ。さらにウルトラマンのような巨人も存在する。もう興奮ものだし、この組織に異動になった時は運命的なものを感じたよ」

 その時、レーダーを見ていた女性隊員の我妻(あがつま) 聡子(さとこ)が口を開いた。

「鈴間隊長、何かが接近しています」

「うん?」

 鈴間がレーダーを確認する。

「柳田と高木両名は専用機で偵察に向かってくれ」

「了解!」

 光一と高木が格納庫に移動し、宇宙戦闘機に乗り込む。

 戦闘機は基地を飛び出し、接近中の未確認物体の偵察に向かう。

「なんだあれは?」

 光一は遠くから接近してくる物体に目を凝らす。

 恭子は眼球に搭載された望遠レンズで視覚情報を拡大調整して確認する。

(怪獣だ)

 やがて飛行物体は姿がはっきりして、光一は怪獣と認識した。

「怪獣だと? 生物だろ。生身で真空の宇宙空間で活動できるなんてあり得ないだろ」

 怪獣は火球を吐き出した。

 操縦に不慣れな光一は、火球を避けきれず接触してしまう。

「うわああああ!」

 被害を受けた戦闘機は付近にあった未知の惑星へ落下していく。

 横に座っている恭子は目の前のもう一つの操縦桿を握る。

「不時着するわよ」

 恭子は淡々と戦闘機を操縦し、機体を未知の惑星に不時着させた。

 地面を滑走し、機体が激しく振動する。

「これじゃ飛べないわね」

「どうするんだよ」

「とりあえず、降りましょうか」

「ちょっと待ってくれ。大気検査をする」

 戦闘機に備えられた装置で、光一は外気の酸素濃度を測定する。

 奇跡的なことに、機外には地球と同等量の空気があった。

「生身で降りれるぞ」

 ハッチを開け、機外に出る二人。

「ああ、右の羽がやられちまってる」

 光一は戦闘機の右翼を見て言った。

 右翼は完全に破損しており、飛ぶことは不可能だった。

「とりあえず、探索してみるか?」

「そうね。このまま手を(こまね)いていてもどうにもならないからね」

 二人は人里を探して歩き出す。

 だが、行けども行けども人は(おろ)か、虫一匹すら見つからない。

 恭子は体内の生体探知機を起動する。

(生体反応なし。無人惑星か)

 この星をどう脱出したものか、恭子は考えを張り巡らせる。

「アストライアさえいればなあ……」

 と、光一はアストライアに一縷の希望を見出す。

(柳田は私を便利屋かなんかと思ってるのか?)

「柳田、アストライアがいつも私たちを助けてくれるとは限らないわよ」

「いや、アストライアならきっと来てくれるさ」

「なんでそう思うの」

「わかんないけど、近くで見守ってくれている気がするんだ」

(鋭いなこいつ)

 確かに、アストライアは光一の横を一緒に歩いていた。

 しかし、彼女は彼に正体を明かすわけにはいかない。そうしてしまうと、光一が恭子に依存してしまいそうだからだ。

「ところで、どうやって脱出するつもりなの? 生命体なんてどこにもいないわよ?」

「空間転移で地球に戻れないかな?」

「空間転移は万能だけどエネルギーは無限じゃないのよ」

「じゃあどうすんだよ?」

「一応、植物は生えてるみたいだから、ベジタリアンとして二人でこの星に住む?」

「冗談だろ」

 その時、先ほどの怪獣が現れた。

「ぎゃああああん!」

 怪獣の咆哮(ほうこう)が辺りに響き渡る。

「さっきはよくも!」

 光一は拳銃を取り出す。

「高木さん、やつの弱点は?」

 恭子は怪獣の体をX線で透視する。

「頭部の鋭利なツノが怪獣のコアよ」

「君は本当に博識だな」

 光一は怪獣のツノを銃撃。

「ぎゃあ!」

 怪獣は怯みながら悲鳴を上げる。

「ぎゃああああ!」

 怪獣は体勢を整えると、頭のツノからエネルギービームを放ってきた。

(避けれない!?)

 光一は対応ができなかった。

 恭子は目にも留まらぬ速度で、光一を捕まえて横に飛んで回避した。

 一瞬の出来事に光一は驚いている。

(しまった。有事とはいえ、本気で避けちゃった)

「今の高木さんがやったの?」

「いや、怪獣の光線が外れて地面に当たって風圧で私たちの体が横に飛んだのよ」

 無茶苦茶な理論だった。

「そっか。なんだ、偶然か。でも直撃を免れて助かったよ」

(本当に信じちゃったよ……)

「柳田、確か戦闘機にロケットランチャーが積まれてたはずよ。私、それを取りに行ってくるから、怪獣を引きつけといて」

「任せとけ」

 恭子は戦闘機に向かって走り出した。

 光一は怪獣を牽制している。

 戦闘機に辿り着いた恭子は、機体からロケットランチャーを取り出して、光一の元に急ぐ。

 アストライアを召喚しないのか、と突っ込まれそうなところだが、それには理由がある。

 地球付近のアストライアの宇宙船とこの星とでは距離がありすぎて転送ができないのだ。

「行くわよ、柳田!」

 光一は振り返る。

「持ってきたのか!」

 恭子は怪獣に向かってロケットランチャーを構える。

「あんたみたいな化け物、吹っ飛んでしまえ!」

 恭子はロケットランチャーの引き金を引き、ロケット弾をぶっ放す。

 飛び出したロケット弾はまっすぐ怪獣に飛んでいきその巨体に大ダメージを与える。

「ぎゃああああ!」

 怪獣は悲鳴をあげて地面に倒れ伏す。

「やったのか?」

「いや、まだ微かに鼓動が……」

(どうしたものか……)

 恭子はロケットランチャーの弾倉を確認する。

(あと一発ある)

「どいて!」

 光一は動線を空けた。

 恭子は最後の一発を倒れ伏す怪獣めがけてぶっ放した。

 怪獣はロケット弾が直撃して大爆発を起こして跡形もなく消え去った。

「すげえ! 人間の知恵で怪獣を倒したぞ!」

 と、歓喜の声を上げる光一。

「おーい!」

 その時、仲間が宇宙船で救助にやってきた。

 二人は仲間の宇宙船に乗り、基地に戻るのだった。

 




次回のアストライアは

ヴァルシアで警察官をやっているアリス。
たまたま見学していた研究所で運命的な出会いが待ち受けていた。
破壊活動を行うロボットに動かないアストライアの姿。
アストライアはロボットを倒せるのか?

守りたいと思った時、それが私の戦う理由だ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。