外惑星。
山奥の一角にポツンと建った一軒の小さな研究所。
所内のモニタールームの画面に、恭子がアストライアになる一部始終が映し出されている。
モニターの前に座る男。
「フハハハハ! お前を失墜させてやる!」
男はそう叫びながら、キーボードのエンターを押した。
すると、研究所の横にある建物が展開し、アストライアそっくりのロボットが姿を現した。
男は研究所から出てくるとロボットのコクピットへ搭乗する。
「こいつで地球へ行って暴れてやる!」
男は目の前のパネルを操作してロボットを地球へと飛ばす。
地球。
東京の下町。
休暇を取っていた恭子は、映画館に来ていた。
劇場スクリーンで某巨大変身ヒーローの映画を見ている。
(これが柳田の言ってたやつね。確かにアストライアに近しいものを感じる。見た目は着ぐるみっぽさがあるから、きっと人間が入ってミニチュアのセットで巨大感を出して戦ってるところを再現してるのね)
物語もクライマックスになり、ヒーローの派手な怒涛の反撃が始まる。
やがて敵を倒したヒーローは人間の姿に変わり、いつもの日常へと戻っていく。
「意外と面白かったわね」
恭子は劇場を出る。
映画館のロビー。
「……?」
微かに床が揺れた。
「地震かしら?」
次の瞬間、大きな揺れが起こる。
周囲の人々が悲鳴を上げる。
ただならぬ気配を感じた恭子は映画館を飛び出した。
外では白銀の女性型巨人が暴れ回っている。
「……!?」
驚き戸惑う恭子。
「いったい、誰が動かしてるのよ!?」
その姿は紛れもなくアストライアだった。
地上の人々は暴れ回るアストライアに恐怖して逃げ惑っている。
恭子はアストライアの転送装置を取り出す。
しかし、目の前には建物を破壊するアストライア。
当然、呼び出せるはずがない。
「止まりなさい、アストライア!」
動きを止めたアストライアが恭子を振り返る。
アストライアは恭子に向かってエネルギーボールを放つ。
「きゃあ!」
爆発で吹っ飛ぶ恭子は地面に叩きつけられ、コロコロと転がる。
「くっ……くっ!」
顔を上げる。
「アストライアが……乗っ取られた?」
絶望する恭子。
今まで共に戦ってきたアストライアが、いとも簡単に敵の手に堕ちてしまったのだ。
絶望しないわけがない。
「アストライア!」
恭子は大声で叫んだ。
アストライアが無言で手を伸ばしてくると、恭子の体を握り込んだ。
「聞こえてるよね、アストライア? 返事して」
「……………………」
「……?」
恭子は思った。
(アストライアとのテレパスができない?)
アストライアは恭子を握り潰そうとする。
「ぐっ!」
恭子は苦痛に顔を歪める。
(こ、この質感……、聞こえないテレパス……、なるほど)
「ちょっとあんた、アストライアの偽物ね!?」
「フハハハハ! よくぞ気づいたな、褒めてやるぞ」
恭子の問いにようやく何者かが返事をした。
「な、何者なの?」
「俺は模造研究員フェイク。自分の実力がどの程度か、貴様の戦闘データを取らせてもらった。最初は正体がわからなかったが、クロウズ戦で気づいたよ。貴様だったのだな、ヴァルシア警察のアリスさんよ」
「フェイクですって?」
恭子は思い出した。
かつて、ヴァルシア星で偽物商品を本物と称して高額で販売していた商標法違反で逮捕した男の名だった。
「あんた、出所してたの?」
「脱獄したんだよ」
「脱獄!?」
「貴様には恨みがあるからな。死んでもらうぞ」
「フェイク、どうやらまた監獄に戻りたいようね」
恭子の体はわなわなと震えていた。
「よくも私をコケにしてくれたわね。赦さないんだから」
恭子は握っていた転送装置のスイッチを押す。
と、恭子の体はアストライアの姿に変わり、徐々に巨大化していく。
拳で掴みきれなくなった偽アストライアは、アストライアを手放した。
アストライアは偽アストライアの懐に飛び込み、怒りの猛攻を浴びせる。
「ぐっ!」
反応が遅れた偽アストライアは反撃する間もなく追い詰められていく。
アストライアの怒涛の乱打は続く。
「くそ! コントーロールができない!?」
偽アストライアに搭乗するフェイクは焦っている。
「これでおしまいよ!」
アストライアは偽アストライアを上空に蹴り上げ、必殺のヴァルシアブラストをお見舞いし、その巨体を爆砕する。
「うわああああ!」
乗っていたフェイクは爆風で吹っ飛ばされ、いくつかの部品と共に空の彼方に消え去っていった。
『アリスよ、私と偽物の区別ができんとは、お主もまだまだよのう』
「う、うるさいわよ!」
アストライアは飛翔すると空の彼方へ消え去った。